米トレーサビリティ法の取引記録の書き方|農家の記入例と無料テンプレート

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米を農協に出荷したり、飲食店や米穀店に直接売ったりしている農家は、米トレーサビリティ法の「取引等の記録」を作って保存する義務があります。生産者も対象の事業者に含まれ、記録しなかった場合には罰則もあります。とはいえ、農協に出荷した分は荷受明細などの伝票を保存すれば記録に代えられるので、実際に自分で書く必要があるのは、直接取引や庭先での販売など伝票がそろわない取引です。

この記事では、農林水産省の資料と法令で記録が必要な場面・項目・保存期間を確認したうえで、取引記録の書き方と記入例、農家が間違えやすい点を説明します。

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法律で決まった記録項目に用途限定米穀の用途と産地の伝え方の欄を加えた記録表と、記録が必要な場面の早見表。

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米トレーサビリティ法の取引記録とは/なぜ必要か

生産者も「米穀事業者」として対象になる

米トレーサビリティ法(正式名称は「米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律」)は、米や米加工品に問題が起きたときに流通ルートを速やかに特定できるよう、生産から販売・提供までの各段階で取引等の記録を作って保存することを定めた法律です。農林水産省の概要ページでは、対象事業者を「米・米加工品の販売、輸入、加工、製造又は提供の事業を行うすべての方(生産者を含む)」としています。対象品目は、もみ・玄米・精米・砕米のほか、米粉、米飯類、もち、だんご、米菓、清酒などです。

農家にかかる4つの義務

  • 取引等の記録(第3条):他の米穀事業者に米を譲り渡したとき、譲り受けたとき(販売の委託を含む)に記録を作る
  • 産地情報の伝達(第4条):事業者に米を出すときは、伝票や包装への表示などで産地を伝える
  • 搬出・搬入等の記録(第5条):売買をしない移動(乾燥調製の委託など)や廃棄をしたときも記録を作る
  • 記録の保存(第6条):作った記録を決められた期間保存する

記録を作らなかった場合やうその記録を作った場合、事業者への産地の伝達をしなかった場合などは、50万円以下の罰金の対象とされています(第12条、農林水産省Q&A)。

記録が必要な項目

取引の記録に必要な項目は、米穀等の取引等に係る情報の記録に関する省令(記録省令)第2条第1項で決められています。農林水産省のQ&Aでは次のように整理されています。

  • 名称(取引で通常使っている名称)
  • 産地
  • 数量(取引で通常使っている単位)
  • 年月日(搬出・搬入した日。難しい場合は売買した日でも可)
  • 相手方の氏名または名称
  • 搬出・搬入した場所
  • 用途限定米穀(加工用米・新規需要米など)の場合は、その用途

保存期間は原則3年

受け取った伝票、発行した伝票、自分で作った記録は、原則3年間保存します。消費期限が付いた商品は3か月、賞味期限が3年を超える商品は5年です。紙でも電子データでもかまいません。

記入例

米の取引等の記録(米トレーサビリティ法)の記入例
米の取引等の記録(米トレーサビリティ法)の記入例(出典:ミノリス 無料テンプレート)

記入例は、1年分の米の動きを時系列で並べたものです。9月20日にもみをライスセンターに乾燥調製を委託して運び込んだ行は、売買ではない「搬出」なので産地は書いていません。10月5日は農協への販売委託(出荷)で、玄米(うるち)1等を30kg×40袋、産地・用途(主食用)・荷受明細の番号まで書いています。10月20日はレストランへの直接販売、11月2日は直売所の開設者による買い取り、11月10日は加工用米の出荷です。翌年3月15日の種もみ(消毒済み)の購入は、産地の記録は不要ですが、譲り受けとして記録しています。

書き方(項目ごと)

欄 書くこと 記入例
年月日 米を搬出・搬入した日。難しければ売買した日 2026/10/5
区分 販売・販売委託・購入・搬出(乾燥調製の委託など)の別 販売委託(出荷)
相手方の氏名・名称 売った相手、販売を委託した先、買った相手 〇〇農協
名称(品名) 取引でふだん使っている名前 玄米(うるち)1等
産地 「国内産」「国産」、または都道府県名・市町村名など 〇〇県
用途 加工用米・新規需要米など用途が決まった米のとき 加工用
数量 取引でふだん使っている単位(玄米換算は不要) 30kg×40袋
搬出・搬入した場所 米を出した(入れた)場所 自宅倉庫
産地の伝え方 相手に産地をどう伝えたか 納品書に記載
伝票番号など 荷受明細・納品書などの番号 荷受明細 No.1123

「区分」「産地の伝え方」「伝票番号」は法律で決められた項目ではありませんが、伝票と照らし合わせたり、産地の伝達をしたことを示したりするのに役立つので設けています。

農協に出荷した分は「伝票の保存」で記録に代えられる

農林水産省のQ&A(生産者編 問2)では、販売でも販売委託でも、農協などから発行される荷受明細、販売伝票、施設の利用明細など(複数の伝票の組み合わせでも可)で記録事項を満たしているものを保存すれば、記録の作成・保存をしたことになるとされています。販売委託の場合は、相手方の欄に委託先(〇〇農協など)を書きます。この表では、伝票番号の欄に番号を書いて、伝票の置き場所の一覧として使うと便利です。

数量と搬出入の場所の書き方

数量は取引でふだん使う単位でよく、玄米や精米に換算する必要はありません(Q&A 問4)。搬出入の場所は、農協の倉庫から出た場合など引き取る側が場所を把握していないときは、搬出入した者の名称(〇〇農協など)でもよいとされています。

気をつけること・よくある間違い

農協に出した分は記録しなくていいと思っている

農協への出荷も記録の対象です。伝票の保存で代えられるだけなので、荷受明細や精算書を捨ててしまうと記録がない状態になります。3年分をまとめて保管しておきます。

庭先に来た集荷業者の名前を控えていない

庭先集荷業者に売った場合も記録と産地の伝達が必要です。Q&A(生産者編 問5)では、相手の氏名または名称が記録事項に含まれるので、必ず連絡先を尋ねるなどして漏れなく記録するよう求めています。

直売所に出した米を「消費者への販売」と考える

生産者が一般消費者に直接売る場合は、記録の作成は不要です(産地の伝達は必要)。しかし、直売所の開設者に米を買い取ってもらう場合や、開設者に販売を委託する場合は、開設者との取引として記録と産地の伝達が必要です(Q&A 生産者編 問8)。自分が誰に売っているのかを、直売所の契約書などで確かめてください。

乾燥調製の委託やもみの移動を記録していない

売買をしていなくても、ライスセンターへの乾燥調製の委託などで事業所間を移動させた場合は、搬出・搬入等の記録が必要です(第5条、Q&A 問9)。この場合、産地の記録は不要です。自宅の敷地内の移動のように、ひとまとまりの場所の中での移動は記録不要とされています。

加工用米の用途を書き忘れる

加工用米・新規需要米などの用途限定米穀は、用途も記録事項です。主食用と同じ書き方にしないよう、用途の欄を分けています。

作業料や借地料として渡した米を記録していない

Q&A(生産者編 問6・問7)では、作業受託の料金を米で受け取った場合や、借地料として米を渡した場合も、相手が米穀事業者であれば取引等の記録が必要とされています。相手が米穀事業者でなく全量を自家消費する場合でも、渡す側の産地の伝達は必要です。

記録を3年たたずに処分する

保存期間は、記録を作成した日から原則3年です。年産ごとにファイルを分け、3年たったものから処分すると整理しやすくなります。

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紙・Excelで続かないときは

米トレーサビリティ法の取引記録は、出荷・販売の側の記録です。これとは別に、GAPや取引先への説明では、その米をどう作ったか(農薬・肥料・作業・収穫)の記録を求められることがあります。法律の第7条でも、残留農薬などの検査の結果の記録を作って保存するよう努めることとされています。

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ただし、米の取引記録(相手方・数量・産地の伝達など)を付ける機能はありません。取引記録はこのテンプレートと伝票で管理してください。収支管理やGPSによる作業の自動記録にも対応していません。

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よくある質問

伝票を保存していれば、この表はいりませんか?

農協などの伝票に記録事項がそろっていれば、伝票の保存で記録の義務を果たせます。この表は、自分で書いた納品書や口頭の取引など、伝票がそろわない取引をまとめたいときや、伝票の置き場所を一覧にしたいときに使ってください。

親戚に配る縁故米や、自家消費の米も記録が必要ですか?

Q&Aでは、取引等の記録の作成義務がかかるのは米穀事業者との間で譲り受け・譲り渡しをした場合なので、相手が米穀事業者でなければ記録の作成義務はないとされています(問8)。また、生産した米の全量を飯米や縁故米などで自家消費する場合は事業に当たらないため、記録は不要とされています(生産者編 問4)。

産地は「〇〇県」まで書く必要がありますか?

国産であれば「国内産」「国産」でもよく、都道府県名・市町村名・一般に知られた地名でもかまいません。事実と違う産地は書けません。

精米を直売所やネットで消費者に売るときは?

一般消費者への販売では記録の作成は不要ですが、産地の伝達は必要です。玄米・精米を袋に入れて売る場合は、食品表示基準にもとづく表示で産地を伝えます(Q&A 生産者編 問8・問13)。表示の方法は消費者庁の食品表示のページで確認してください。

苗を売ったり買ったりしたときも記録しますか?

苗は法律の対象となる米穀等に当たらないため、記録も産地の伝達も不要とされています(生産者編 問10)。一方、種もみは米穀に当たるので、購入したときは記録が必要です。消毒された種もみは非食用の用途が確定しているため、産地の記録は不要とされています(生産者編 問9)。

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まとめ

米トレーサビリティ法では、生産者も米穀事業者として、事業者との取引ごとに名称・産地・数量・年月日・相手方・搬出入した場所(用途限定米穀は用途も)を記録し、原則3年間保存する義務があります。農協への出荷は伝票の保存で代えられますが、庭先集荷業者、飲食店、直売所の開設者との取引、乾燥調製の委託などは、自分で記録を残す必要があります。

無料の取引記録テンプレートには、どの場面で記録と産地の伝達が必要かをまとめた早見表も入っています。まずは今年産の出荷分から、伝票番号と一緒に1行ずつ書き始めてみてください。判断に迷う取引は、地方農政局などの窓口に確認すると確実です。

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