中干しの記録の書き方と記入例|J-クレジット対応の無料テンプレート

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中干しの記録は、水稲の中干しをいつ始めて、いつ終えて、何日やったかを圃場ごとに残す記録です。これまでは水管理の覚え書き程度だったものが、J-クレジット制度の「水稲栽培における中干し期間の延長」や、多面的機能支払交付金の「長期中干し」に取り組むうえで、提出や確認に使う大事な書類になりました。

結論から言うと、J-クレジットに取り組むには取り組む前の直近2年以上の中干し日数の記録が必要で、記録がなければまず2年間、延長せずに記録を付けるところから始めることになります。開始日・終了日は「田面が乾き始めた日」ではなく、取水口と排水口を操作した日で書くのが決まりです。この記事では、農林水産省の資料で確認した記録のルールと、各欄の書き方、記入例、よくある間違いを整理します。

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中干しの記録とは/なぜ必要か

中干しとメタンの関係

農林水産省の解説資料では、中干しは水稲の栽培期間中、出穂前に一度水田の水を抜いて田面を乾かし、過剰な分げつを防いで生育を制御する作業とされています。水田から出るメタンは、土の中の有機物が酸素の少ない状態で分解されるときにメタン生成菌の働きで作られるため、落水期間を長くすると発生を減らせます。これが「中干し期間の延長」の考え方です。

J-クレジット「中干し期間の延長」(AG-005)で求められる記録

J-クレジット制度の方法論「AG-005 水稲栽培における中干し期間の延長」は、中干しの期間を、その水田の直近2か年以上の実施日数の平均より7日間以上延長することを適用条件にしています。農林水産省の資料(令和7年5月)では、必要な記録が次のように整理されています。

  • 取り組む前:直近2か年以上の中干しの実施日数が記録された生産管理記録等
  • 取り組んだ年:出穂日、中干しの開始日・終了日・実施日数が記録された生産管理記録等
  • 開始日・終了日の記録が実態と相違ないことを客観的に確認できる証跡(写真等)。同じ管理の水田ごとに少なくとも1点必要で、写真の場合は開始日と終了日の写真がセットで1点
  • 排出削減量の計算用:水稲作付面積、水田の所在地域、前作の稲わらの持ち出し量、堆肥の施用量
  • 任意:水田の排水性(日減水深の測定記録と証跡)。測定しない場合は3条件のうち一番少ない削減量で計算

生産管理記録は、農協に出した書類、水管理システムや営農支援アプリ・オンライン作業日誌の記録、農林水産省の作成例に沿った書類など、記録事項が体系的に書かれていればよいとされています。

中干しの開始日・終了日の定義

制度上の中干しは、出穂前に取水口「閉」・排水口「開」の状態が続いている期間のうち最も長い期間と定義されています。

  • 開始日:取水口を「閉」、排水口を「開」にした日
  • 終了日:取水口を「開」、排水口を「閉」にした日
  • 中干しの途中で取水口を開けて差し水をした場合は、その時点で中干しは終了したとみなす
  • 延長は連続7日間以上が必要。一時的に取水口を操作したり、7日を複数回に分けたりすることは認められない

多面的機能支払交付金の「長期中干し」

多面的機能支払交付金(資源向上支払)の「長期中干し」は、農林水産省の参考様式(第1ーa号)で、中干しを生育中期に14日以上実施することと溝切りを10aあたり1本以上実施することが示されています。あわせて、化学肥料と化学合成農薬を原則5割以上低減する取組が要件です。令和7年5月の農林水産省資料では、この取組に800円/10aが交付されると説明されています。参考様式の生産記録には、ほ場名、実施面積(法面や畦畔を除いた値)、実施時期、溝切りの実施日と本数、使用した肥料と農薬を書く欄があります。

J-クレジットは「自分の過去2年の平均より7日以上長く」、長期中干しは「14日以上」と、基準の考え方が違う点に注意してください。

記入例

J-クレジットに取り組んだ水田(北田1〜3)と、取り組んでいない水田(南田)を同じ表に書いた例です。地名・日付・日数は架空のものです。

中干しの記録の記入例
中干しの記録の記入例(出典:ミノリス 無料テンプレート)

北田1〜3は、中干し開始日6/18・終了日7/7で19日。前2年の平均が11日(R6:10日、R7:11日)なので、延長した日数は8日で、7日以上という条件を満たしています。3筆は中干しの日数・出穂日・稲わらと堆肥の扱いが同じなので、1行にまとめて地番を並べています。南田は前2年平均と同じ10日なので、延長日数は0日です。

書き方(項目ごと)

欄 書くこと 書き方の例
圃場番号・地番 同じ管理をした水田の呼び名と地番。まとめる場合は全部並べる 北田1〜3(123・124・125-1)
水稲作付面積(a) 畦畔を除いた作付面積。営農計画書や共済細目書と合わせる 55.0
田植え日(播種日) 移植なら田植え日、直播なら播種日 5/10
中干し開始日 取水口を閉め、排水口を開けた日 6/18
中干し終了日 取水口を開けた(または排水口を閉めた)日。差し水をした日も終了 7/7
中干し日数 開始日から終了日までの日数 19日
前2年の平均日数 その水田の直近2年以上の中干し日数の平均と内訳 11日(R6:10・R7:11)
延長した日数 今年の日数−前2年の平均 8日
溝切り日 溝切りをした日。長期中干しでは本数(本/10a)も 6/15
出穂日 圃場の茎のおおむね5割が出穂した時期 8/2頃
証跡 開始日・終了日の写真、水管理システムや水位センサーの記録 取水口と排水口の写真
記録日・記録者 記録を書いた日と人 7/8 山田

稲わら・堆肥・日減水深の記録

J-クレジットでは、削減量の計算に前作の稲わらと堆肥の情報を使います。農林水産省の資料では、前作(直前の稲作)の稲わらのすき込み割合が9割以上なら「稲わらすき込み」、今作の田植えまでの堆肥の施用量が1t/10a以上なら「堆肥施用」の区分になり、それより少ないと削減量も小さくなるとされています。すき込み割合は、平年収量×1.2を稲わら発生量とみなし、「1−持ち出し量÷稲わら発生量」で求めます。

記録としては、稲わらを全量すき込んだか、一部持ち出したか(持ち出し量kg/10a)、全量持ち出したかと、堆肥の施用日と施用量(kg/10a)を書いておきます。

日減水深(1日あたりの田面水の浸透・蒸発による水位の低下)を測る場合は、水張りから田植え1週間後までの時期に、降雨のない日に取水口と排水口を閉め、24時間後に低下した水位を読みます。記録には測定圃場、測定開始日時、24時間後の実測値(mm/日)を書き、測定開始時と終了時の定規の写真を証跡として残します。実測は1人の取組者が管理する水田ごとに1か所、プロジェクト開始年に1回でよく、毎年測る必要はないとされています。

記録はいつ書くか

農林水産省の生産管理記録の作成例では、各作業の完了日以降、速やかに(おおむね1か月以内に)記録することとされています。中干しの開始日と終了日は、水口を操作したその日のうちに書き、写真を撮るのが確実です。

気をつけること・よくある間違い

1. 開始日・終了日の定義があいまい

「田面にひびが入った日」「水が引いた日」では、制度上の開始日になりません。取水口と排水口を操作した日を書きます。

2. 途中の差し水を書いていない

土が乾きすぎて一時的に水を入れた場合、その時点で中干しは終わった扱いになります。差し水をした日を書かずに最初と最後の日だけ書くと、記録が実態と違うことになります。

3. 過去2年の記録がないまま延長する

過去の記録がないのに延長しても、延長した事実を示せず、クレジットの対象になりません。まずは延長せず、通常の中干しを2年間記録します。水稲を作らなかった年がある場合は、その年を飛ばして水稲を作った直近2年以上の記録を使います。

4. 7日の延長を分けてしまう

延長は連続7日間以上が必要です。前半に3日、後半に4日のように分けたり、途中で取水口を一時的に開けたりすると認められません。

5. 写真に日付と場所がわからない

証跡は、同じ管理の水田ごとに少なくとも1点(写真なら開始日と終了日のセット)が必要です。どの水田の、いつの写真かがあとから確認できるように、開始日には取水口を閉めた状態と排水口を開けた状態を、終了日には水口を戻した状態を撮っておくと安心です。撮り方の細かい指定は、プロジェクトの運営・管理者に確認してください。

6. 管理の違う水田を1行にまとめる

まとめて書けるのは、中干しの日数(延長する年は開始日・終了日も)、出穂日、稲わら・堆肥の状況が同じ水田だけです。どれかが違えば行を分けます。なお、同じ品種なら圃場によって出穂日が多少違っても同じ管理として扱ってよいとされています。

7. 減収リスクやカドミウム対策を考えずに延長する

農林水産省の資料では、全国8県の試験で中干しの延長により平均3%程度減収したという報告が紹介されています(品質が向上したという報告もあります)。また、カドミウム濃度の高い地域では出穂期前後各3週間の湛水管理が重要で、中干しを7日から10日前後にとどめる必要があるため、延長は慎重に判断するよう求められています。

8. 記録を早く捨ててしまう

J-クレジット制度の実施規程では、認証に使ったデータは認証対象期間(8年間)の終了後2年経過するまで保存することになっていると、農林水産省の資料で説明されています。元の記録と転記した記録の両方を保管しておきます。

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紙・Excelで続かないときは

中干しの記録で一番抜けやすいのは、水口を操作した「その日」の記録と写真です。夕方に水口を閉めて、記録は週末にまとめて書こう、と思っているうちに日付があいまいになります。

当社のミノリス日誌は、圃場を選んで作業を日付つきで記録し、写真も添えられる無料の栽培記録アプリです。中干しの記録には次のように使えます。

  • 水口を操作したその場で、「中干し開始」「溝切り」「中干し終了」を作業として記録し、取水口・排水口の写真を添える
  • 作付けごとに田植え、施肥、防除、収穫の記録もまとめて残せるので、生産管理記録に必要な情報が1か所にそろう
  • 予定・実績カレンダーで、中干しの予定と実際の開始日・終了日を並べて確認する
  • 記録を栽培履歴としてCSV・Excelで出力し、プロジェクトの運営・管理者が指定する様式に転記する

水位センサーのような自動記録や、GPSによる作業の自動記録には対応していません。また、日数の計算やクレジットの申請書類を作る機能もないので、日数の集計は本テンプレートのExcelで行い、日々の記録と写真はアプリで残す、という使い分けがおすすめです。

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よくある質問

中干しの日数は、開始日と終了日を含めて数えますか?

農林水産省の資料では「開始日・終了日と実施日数を記録する」とされていますが、日数の数え方の細かい扱いは、参加するプロジェクトの様式や運営・管理者の指示に従ってください。記入例は、終了日から開始日を引いた日数で書いています。毎年同じ数え方にそろえておくことが大切です。

出穂日はどう決めますか?

圃場の茎のおおむね5割が出穂した時期を書きます。制度上は、中干しが出穂前に行われたことが確認できればよいとされています。

J-クレジットは個人でも取り組めますか?

1法人で取り組むことも可能とされていますが、多くの場合は、農協や協議会、企業などが会員を集めてプロジェクトを登録し、そこに参加する形で取り組みます。提出する様式や日数の数え方は、プロジェクトの運営・管理者の指示に従ってください。

すでに長めに中干しをしている場合でも対象になりますか?

農林水産省の資料では、過去の中干し期間がどうであっても、直近2年以上の平均より7日以上延長すれば制度を適用できるとされています。ただし延長しすぎると減収のリスクが高まるため、実施できるかどうかは個別に判断することになります。

長期中干しとJ-クレジットの両方に同じ記録を使えますか?

中干しの開始日・終了日・日数、溝切りの記録は共通して使えます。ただし求められる基準(14日以上か、過去平均より7日以上か)や添付書類、様式は異なるので、それぞれの提出先の指示を確認してください。

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まとめ

中干しの記録は、J-クレジット「中干し期間の延長」では直近2年以上の実施日数、取り組む年の開始日・終了日・日数・出穂日、そして写真などの証跡が必要になります。開始日は取水口を閉めて排水口を開けた日、終了日は取水口を開けた日で書き、差し水をしたらその日で終了です。多面的機能支払の長期中干しでは、14日以上の中干しと10aあたり1本以上の溝切りが示されています。

来年以降に取り組む可能性があるなら、延長しない今年から記録を付け始めておくことが一番の準備です。中干しの記録の無料テンプレートには、稲わら・堆肥・日減水深の記録シートも入っています。

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