環境制御システムとは?環境制御システムのできることやメーカーを紹介

「施設園芸の環境制御システムって実際どんなことをするのかな?」「私の施設でも使えるのかな?」と気になったことはありませんか?この記事では環境制御システムの概要とメリット、導入にかかるコストを解説します。この記事を読めば環境制御システムについて詳しくなりますよ。ぜひ最後までお読みください。

環境制御システムとは

環境制御システムとは、施設園芸でハウス内環境を制御するシステムのことです。ハウス内の環境(光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、灌漑水のEC値など)を監視し、必要に応じて調節します。従来は作業者が温度計や湿度計を見てハウス内の環境を確認し、換気や換気のタイミングを決めていました。しかし現在は各種センサーやプログラミング可能な設備が普及したことで、自動制御が可能になっています。特に「統合環境制御システム」と呼ばれるシステムは、コンピューターの演算機能が高く、複数の環境条件を一括で管理できます。

環境制御システムではオランダが先進国であり、多くの技術が日本も含めた各国へ輸出されてきました。オランダは国土面積が九州と同程度しかなく、広大な農地での粗放的農業は向いていません。さらに少子高齢化も進んでおり、多くの人手を要する労働集約的な農業も維持が難しいと考えられています。そこでオランダの農業は、環境制御システムや水耕栽培、植物工場への投資が大きい資本集約的な形態をとっています。

環境制御の流れ

環境制御システムでハウス内の環境を自動制御するプロセスは、①センサーによる感知、②データ取得と演算、③設備の動作制御に大別できます。

①センサーによる感知

ハウス内に取り付けたセンサーで、照度、気温、地温、湿度、二酸化炭素濃度などを計測します。センサーを単品で販売しているメーカーもあるため、必要なセンサーを追加することもできます。

②データ取得と演算

センサーで取得した情報はアナログデータなので、デジタルデータに変換してコンピューターに入力します。こうして得られたデータを用いてグラフを自動作成したり、管理範囲内に収まっているかどうかを判断したり、収量との相関関係を調べたりすることができます。

さらに圃場にインターネット回線を引いてデータをクラウド上に保存すれば、遠隔地からパソコンやスマートフォンで環境を確認でき利便性が増します。そのためデータ共有のためのアプリケーションも含めて開発・販売しているメーカーもあります。

③設備の動作制御

ハウス内の環境が理想的な条件からずれている場合、設備を自動制御して修正します。そのためには、空調や天窓、噴霧器などのON・OFFを切り替える条件をプログラミングしておく必要があります。よって環境制御システムの導入を検討する際は、プログラミングしやすいかどうかも評価すると良いでしょう。

観測データに応じて自動制御するだけでなく、遠隔地からコンピューターに指示を送って設備を操作できる製品もあります。圃場が複数あり距離が離れている場合は、遠隔操作できるアプリケーションがあると大幅な時間短縮になるでしょう。

環境制御システムが着目される理由

環境制御システムを使えば次のようなメリットが得られます。

生育・収穫量の均一化

環境条件を監視し、温度の調節・ミスト噴射などをおこなうことで、ハウス内を作物にとって最適な状態に保つことができます。そのため天候や作業者の習熟度に影響されにくくなり、作物の生育や収穫量のばらつきが抑えられます。同程度の収穫量を再現しやすくなるので、生産量の合理的な見積もりが可能になり、資材購買や販売計画の策定にも役立つでしょう。

水と肥料の効率的利用

生育環境を最適化することで、作物が水と肥料を効率よく利用することができます。たとえば根からの吸水は葉の蒸散によって駆動し、蒸散量は湿度の影響を受けるため、灌漑水を効率よく活用するのはハウス内の湿度制御が重要です。同じ量の灌漑水を与えても、湿度が低すぎると地表からの蒸発が大きいため植物に吸収されにくく、湿度が高すぎると蒸散が進まず根からの吸水効率が落ちます。

属人化の度合いの低下

データ取得から設備の動作制御までを自動でおこなえるようにすれば、人件費の削減になります。 さらに、それまで作業者の経験や勘などに依存していた作業を自動化することで、属人化の弊害である作業者によるばらつき、技術承継の断絶などが防げます。

環境制御システムの導入

オランダでは環境制御システムを駆使して高い生産性を実現しています。しかしオランダと日本では消費地までの距離や流通の仕組みなどの条件も異なるので、生産技術だけをそっくり日本に移植したからといって、生産者の所得が上がるわけではありません。特に環境制御システムは100〜500万円の導入費用がかかるので、過剰投資になって経営を圧迫しては元も子もありません。そこで環境制御システムを導入する際は、導入目的を明確にして機能を厳選する必要があると思われます。ICT農業導入への補助金が出る場合もあるので、うまく活用してください。

環境制御システムを導入するかどうかの意思決定では、以下のポイントを考慮する必要があります。

導入目的を明確化する

環境栽培システムを導入する目的は、環境の微調整が必要な高単価の作物(メロンなど)を栽培することでしょうか。それとも、施設栽培の管理に膨大な人件費がかかっており、自動化で削減したいのでしょうか。目的によって、必要なセンサーや制御機器の数量や性能が変わってきます。

導入コストと耐用年数を調査する

環境制御システムの初期導入コストは100〜500万円かかります。高性能なものを求めればどこまでも高額になってしまうため、目的にかなうよう機能を厳選する必要があります。設備の耐用年数も維持コストや経営計画に影響するため確認します。

環境制御システム導入による利益増加を見積もる

環境制御システム導入で利益が増加する場合、その要因は①栽培コストの減少、②収量・品質向上に大別できます。

栽培コストの減少量を見積もるには、まず現状でかかっている栽培コストを調査します。肥料や灌漑水の消費量を確認したり、作業の所要時間を計測して時給換算したりすることで見積もれます。現状の栽培コストよりも、環境栽培システムの年間コスト(水道光熱費、修繕費、減価償却費など)の方が低くなるのであれば、栽培コストが減少すると思われます。

収量・品質向上による利益増加を見積もるには、同一製品の導入事例を調べるのが近道です。メーカーや自治体、省庁、研究機関などが公開している場合があるので、本記事のメーカー紹介や参考サイトを参照してください。

実際に販売されている環境制御システム

では、実際に販売されている環境制御システムをいくつか紹介します。

細野ファーム:ポケットファーム

10a〜30aのハウスをターゲットにつくられた環境制御システム。開発者がトマト農家ということで農家目線でつくられており、スマホでの操作しやすさと、低価格をじつげんしている。

導入事例:藤井農園の導入事例

株式会社誠和:プロファインダーNext80

https://www.seiwa-ltd.jp/next80/

環境制御ができるだけでなく、グラフ付きの画面で直感的に栽培環境を見ることができます。スマホやタブレットでビニールハウス内の環境の遠隔操作も可能です。 

イノチオアグリ株式会社:isii(イージー)

https://www.ishiguro.co.jp/business/cat159/

雨や風などの屋外環境も踏まえて環境制御を行います。グラフ表示で設定画面での操作がしやすいです。 生産者の要望を取り入れて毎年機能が追加されています。

Panasonic:Smart菜園’sクラウド

https://agri.panasonic.com/smartsaienscloud/

カメラを設置することで葉脈までズームして見られます。最大10システムの一括管理が可能です。ビニールハウス内が異常な環境になった場合はメールで知らせしてくれます。 

株式会社セイコーステラ:Minori+(ミノリタス)

https://ecologia.100nen-kankyo.jp/agri/minoritasu.html

温湿度を三次元で立体的に見ることができます。また、肥料の情報を簡単に整理し、共有が簡単です。さらに、現在の環境と過去のデータを総合的に見て環境条件を調節します。 

株式会社エキサイト:たもつくん

https://www.excite-software.co.jp/news/press/472.html

中小企業向けの低価格な環境制御システムです。低価格ながらも監視と制御をクラウド対応で実現しています。現在は東北6県に販売されています。 

参考サイト