ドローン防除の実施計画書・報告書の書き方|記入例と無料テンプレート

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ドローンで農薬を散布する前に、県から「実施計画書を出してください」と言われた、あるいは散布後に「実施報告書を」と求められた、という相談が増えています。先に結論を書くと、ドローン防除の散布計画を農林水産省に出す必要はありません。ただし、国のガイドラインは散布する側に計画書を「作る」ことを求めていて、都道府県によっては独自に実施計画書・実施報告書の提出を求めています。

この記事では、農林水産省の安全ガイドラインとQ&A、神奈川県・埼玉県・千葉県の例をもとに、ドローン防除の実施計画書に何を書くのか、いつまでに誰に出すのか、実施報告書で何を報告するのかを整理します。都道府県の様式に書き写す前の下書きに使えるテンプレートと記入例もあわせて紹介します。

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ドローン防除の実施計画書とは/なぜ必要か

国のガイドラインは「計画書を作る」ことを求めている

農林水産省の「無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン」第2の1は、散布の実施主体(作業を他者に委託する人を含む)に対して、周辺の地理的状況や耕作状況を十分に考えたうえで、実施区域と実施除外区域の設定、散布する農薬の種類と剤型の選定などを検討し、実施場所、実施予定月日、作物名、散布農薬名、10aあたりの使用量又は希釈倍数などを記載した計画書を作るとしています。

「周辺の状況」として挙げられているのは、住宅地、公共施設、水道水源、蜂・蚕・魚介類の養殖場などへの近さと、収穫時期の近い農作物や有機農業が行われている圃場が近くにあるかどうかです。作業を委託する場合は、防除委託者が防除実施者と十分に連携して計画を検討することとされています。

このガイドラインは法律ではなく、ドローンで農薬を散布する人が安全かつ適正に使うために参考にする目安として、消費・安全局長の通知で示されたものです。

農林水産省への提出は不要、都道府県が独自に求めることがある

農林水産省のQ&A(Q24)は、ドローンによる空中散布について、農林水産省に散布計画を提出する必要はないとしています。一方でQ26では、都道府県によっては養蜂家への情報提供やドローンの活用状況の把握のために、独自に散布計画の提出を求めている場合があり、これは地域の実情に応じた任意の取組だと説明しています。

実際の運用は都道府県ごとにかなり違います。

  • 神奈川県:実施計画書(別記様式1)を実施する14日前までに(必着)、実施報告書(別記様式2)を散布後すみやかに、県の農業振興課に提出するよう定めています
  • 埼玉県:翌年度の空中散布計画書を毎年度3月10日までに、計画の変更や詳細が決まった場合は実施する月の前月末までに、実績報告書は実施後1か月以内に提出するよう案内しています。ドローンについては、国のガイドラインに計画書・実績報告書の記述はないとしたうえで、情報提供への協力を求める形です
  • 千葉県:「千葉県における無人航空機を利用した空中散布の実施について」にもとづき、事業計画書(様式第1号)・事業報告書(様式第2号)・事故報告書(様式第3号)の様式を公開しています

自分の地域で提出が必要かどうか、様式と期限は、散布する圃場がある都道府県の農薬指導の担当部署で確認してください。

航空法の手続きは計画書とは別に必要

ドローンでの農薬散布は、航空法上の「危険物輸送」と「物件投下」に当たる特定飛行です。農林水産省のQ&A(Q1)によると、あらかじめ国土交通大臣の承認(空域によっては許可も)を受ける必要があり、申請は散布予定日の少なくとも10開庁日前までに行います。そのうえで、飛行計画の通報(航空法第132条の88)と飛行日誌の記載(同第132条の89)も義務です。都道府県への計画書は、これらの代わりにはなりません。

記入例

水稲2圃場と大豆1圃場、合計350aをドローンで防除する場合の実施計画書(下書き)の記入例です。

ドローン防除の実施計画書・実施報告書の記入例
ドローン防除の実施計画書・実施報告書の記入例(出典:ミノリス 無料テンプレート)

1行目は△△市東1号〜東3号の水稲120aで、7月20日(予備日7月21日)にいもち病を対象として〇〇フロアブルを8倍・0.8Lで散布する計画です。周辺の状況に「東側に住宅2戸」と書き、飛散対策として「住宅側の畦から5mは散布しない。早朝に散布」、事前の情報提供として「住民に7/13 回覧」と記入しています。

2行目の西1号(水稲80a)は、北200mに養蜂の巣箱、南隣に有機栽培の圃場があるため、飛散の少ない粒剤を選び、有機圃場側の1列は地上防除に切り替えています。情報提供は「養蜂家・有機農家に7/12 電話」です。記入例の農薬名や数値は架空のものなので、希釈倍数と使用量は必ずラベルで確認してください。

書き方(項目ごと)

実施計画書の各欄

欄 書くこと 書き方の例
実施者・防除委託者(冒頭) 散布する人(防除実施者)と、作業を頼んだ人(防除委託者)の氏名・連絡先。操縦者・補助者も 山田農園 山田 太郎
実施場所 市町村名と圃場。散布区域がわかる地図を添える △△市 東1号〜東3号
実施予定月日 散布する日と予備日 7/20(予備 7/21)
作物名 散布する作物 水稲
実施面積(a) 散布する面積 120
対象病害虫 防除の対象 いもち病
散布農薬名・剤型 ラベルどおりの名称と、粒剤・フロアブルなどの剤型 〇〇フロアブル/フロアブル
10aあたりの使用量又は希釈倍数 ラベルの範囲内の使用量・希釈倍数 8倍・0.8L
周辺の状況 学校・病院・家屋・巣箱・有機圃場・収穫の近い作物・水源など 北200mに養蜂の巣箱
実施除外区域・飛散対策 散布しない区域と、とる対策 有機圃場側の1列は地上防除
事前の情報提供 誰に、いつ、どの方法で知らせたか 養蜂家に7/12 電話

周辺への情報提供で伝える4点

ガイドライン第2の2は、実施区域やその周辺に学校・病院などの公共施設、家屋、蜜蜂の巣箱、有機農業の圃場などがある場合、施設の管理者や利用者、居住者、養蜂家、有機農業に取り組む農家に、次の4点を十分な時間的余裕をもって知らせ、必要に応じて日時を調整するよう求めています。

  • 農薬を散布しようとする日時
  • 農薬使用の目的
  • 使用する農薬の種類
  • 実施主体の連絡先

天候などで日時が変わったときは、変更も知らせます。人の往来が想定される場所では、作業中に区域内に人が入らないよう、告知や表示をすることも求められています。

実施報告書に書くこと

実施報告書では、計画書の各項目について「実際にどうだったか」を書きます。実施した月日、実際の散布面積、使った農薬と使用量・希釈倍数、事前の情報提供や立入防止の表示を行ったか、事故や苦情の有無などです。都道府県の様式で項目が違うため、テンプレートの報告書シートは共通する項目で作った下書きとして使ってください。

散布前の確認リスト

テンプレートには、航空法の手続き、農薬のラベル、周辺への連絡、現地の確認を散布前にチェックするシートも入れています。ガイドラインでは、架線などの危険個所、実施除外区域、飛行経路、操縦者・補助者の経路をあらかじめ実地確認すること、散布装置が所定の吐出量で適正に散布できるかを使用前に確認することが求められています。

気をつけること・よくある間違い

1. 周辺への連絡を計画書を出してから考える

巣箱や有機圃場が近いと、散布日や農薬、実施除外区域そのものを変える必要が出ることがあります。周辺の状況は計画の最初に確認し、連絡の結果を計画に反映させます。

2. ラベルの使用方法を確かめていない

農林水産省のQ&A(Q15)によると、農薬の使用方法・希釈倍数・使用量などを守れる範囲であればドローンで散布できますが、ドローンは高濃度・少量散布になることが多いため、その希釈倍数や使用量が認められているかの確認が必要です。「無人航空機による散布」などの使用方法がある農薬は、ドローン向けの高濃度少量散布が認められた農薬です。使用方法が「空中散布」となっているものは有人ヘリコプターでの散布を指し、ドローンでは使えません。

3. 現地を見ずに飛行経路を決める

Q&A(Q32)は、近年の空中散布の事故では、事前確認の不足による架線の見落としや、操縦者と補助者の連携不足による架線への接触事故が多く発生しているとしています。引込線や電柱の支線は地図では見えないので、操縦者と補助者で現地を歩いて確認します。

4. 飛散しやすい条件で散布を強行する

ガイドラインは、風下から散布を始める横風散布を基本に経路を決めることとしています。メーカーが散布方法を定めていない場合の目安として、飛行高度は作物上2m以下、散布時の風速は地上1.5mで3m/s以下が示されています。強風で作業が難しいときは、無理に続けず待機します。

5. 提出期限を「散布日の直前」と思い込む

神奈川県は実施の14日前まで、埼玉県は翌年度分を3月10日までと、県によって期限の考え方が大きく違います。航空法の承認申請(10開庁日前まで)とも期限が別なので、両方を逆算してスケジュールを組みます。

6. 報告書と農薬の使用記録を兼ねてしまう

都道府県への報告書は、散布の実施状況の報告です。作物ごとの農薬の使用記録は、防除日誌(農薬使用記録簿)に別に残します。農薬を使う人は、使用した年月日・場所・作物・農薬の種類・使用量などを帳簿に記載するよう努めることが省令で定められています(Q&A Q24)。

7. 事故のときの報告先を決めていない

ドリフト(区域外への飛散)や流出などの農薬事故が起きた場合、実施主体はガイドライン別記様式の事故報告書を作り、都道府県の農薬指導部局に出します。第1報は事故発生後すぐに、最終報は1か月以内です。人の死傷や第三者の物件の損壊などは、航空法にもとづき国土交通省への報告が必要です。報告先の連絡先は、計画書と一緒に控えておきます。

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紙・Excelで続かないときは

実施報告書を書くときに困るのが、「どの圃場に、どの農薬を、何倍で、何L使ったか」を後から思い出す作業です。散布の多い時期は1日に何枚も圃場を回るため、記録が散らばりやすくなります。

当社のミノリス日誌は、散布したその場で農薬の記録を残すための無料の栽培記録アプリです。都道府県の計画書・報告書の様式を作る機能はありませんが、報告書に書き写す元の記録として使えます。

  • 散布した農薬を、圃場にいるままスマホで記録できる
  • 農薬適用情報10万件以上のデータから選ぶだけで、使用回数や収穫前日数を確認できる
  • 作付けごとに農薬・肥料・作業・収穫の記録がまとまる
  • 圃場マップで圃場を管理でき、散布前後の様子を写真で残せる
  • 栽培履歴をCSV・Excelで出力できる

収支管理やGPSによる作業の自動記録、飛行経路の記録には対応していません。飛行の記録は、飛行日誌や機体側のログで残してください。

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よくある質問

作業を業者に頼む場合、計画書は誰が作りますか?

ガイドラインでは、作業を頼む人(防除委託者)と散布する人(防除実施者)をあわせて「実施主体」とし、計画の検討や周辺への情報提供を両者が連携して行うとしています。都道府県に出す書類をどちらが提出するかは、都道府県の決まりを確認してください。

県から提出を求められていなければ、計画書は作らなくてよいですか?

提出の義務がなくても、ガイドラインは実施主体に計画書を作ることを求めています。周辺への連絡や実施除外区域の検討を形に残す意味でも、下書き程度でも作っておくことをおすすめします。

無人ヘリコプターで散布する場合も同じですか?

無人ヘリコプターには別の安全ガイドラインがあり、計画書や報告書の扱いも異なります。宮城県のように、無人ヘリコプターによる散布の実施計画書に提出期限(5〜7月の散布は4月10日までなど)を設けている県もあります。農林水産省と都道府県のページで確認してください。

周辺の人にはいつまでに知らせればよいですか?

ガイドラインは「十分な時間的余裕を持って」としており、日数は定めていません。日時の調整を求められる可能性を考えると、計画を固める前に知らせておくのが現実的です。天候で延期したときは、変更も連絡します。

散布が終わったあと、周辺に何か知らせる必要はありますか?

農林水産省のQ&A(Q25)では、事前に周知した実施区域の周辺には、空中散布が終了した旨のお知らせも行うよう心がけることとされています。

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まとめ

ドローン防除の散布計画を農林水産省に出す必要はありませんが、国の安全ガイドラインは、実施場所・実施予定月日・作物名・散布農薬名・10aあたりの使用量又は希釈倍数などを書いた計画書を作ることを求めています。都道府県によっては、実施計画書と実施報告書の提出を独自に求めていて、期限も様式もさまざまです。

計画の中心は、周辺の状況を確かめ、実施除外区域と飛散対策を決め、周辺に4点(日時・目的・農薬の種類・連絡先)を知らせることです。航空法の承認申請・飛行計画の通報・飛行日誌は、これとは別に必要です。無料の実施計画書・報告書テンプレートで下書きを作り、都道府県の様式に書き写してください。

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