出荷伝票は、農産物を箱詰めして出荷するときに荷物と一緒に渡す書類です。「誰が(出荷者)」「いつ」「何を(品目・品種)」「どの規格で(等級・階級)」「何ケース」出したかを1枚にまとめ、控えを手元に残します。市場や仲卸、スーパー、飲食店、直売所などに直接出荷している農家が主な使い手です。
結論を先に書くと、出荷伝票の様式を決めた法令はなく、出荷先との取り決めで決まります。そのうえで、数量の食い違いを防ぐコツは「入数・単位」と「ケース数」を必ずセットで書くこと、そして等級・階級の組み合わせごとに行を分けることの2つです。米を出荷する場合は、米トレーサビリティ法で伝票の保存と産地の伝達が求められる点にも注意が必要です。
出荷伝票とは/なぜ必要か
様式は自由。ただし出荷先の指定があればそれに従う
出荷伝票そのものの様式や記載事項を定めた法令はありません。JAや卸売市場に出荷する場合は、指定の送り状や出荷伝票が用意されていることが多いので、そちらを使います。自分で用意した伝票を使うのは、主に次のような場面です。
- スーパー、仲卸、飲食店、加工業者などと直接取引しているとき
- 指定の伝票に書く前の下書きや、自分用の控えを残したいとき
- 同じ品目を等級やサイズ別に分けて出し、あとで精算と照らし合わせたいとき
出荷伝票があると、出荷先で荷受けした人が数量をすぐに確かめられ、「5kg箱20ケースのはずが18ケースしか届いていない」といった食い違いにその場で気づけます。控えが手元にあれば、精算書や入金との突き合わせにも使えます。
出荷伝票と納品書・請求書の違い
出荷伝票は、送り出す側が「何を何ケース出したか」を荷物に添えて伝える書類です。納品書は受け取る側に「何を納めたか」を知らせる書類で、単価や金額まで書くのが一般的です。請求書は代金を請求するための書類です。取引先によっては出荷伝票と納品書を1枚で兼ねることもあるので、相手が求める書類の名前と項目に合わせてください。
インボイス(適格請求書)として使う場合
消費税の適格請求書発行事業者が、取引先からインボイスを求められた場合、消費税法第57条の4で定められた事項(登録番号、取引年月日、取引内容と軽減税率の対象である旨、税率ごとの対価の額と適用税率、消費税額等、受け取る側の名称)をそろえた書類を交付する必要があります。出荷伝票は数量を伝える書類なので、インボイスとして使うなら、これらの記載事項を別途そろえなければなりません。
なお、消費税法施行令第70条の9では、卸売市場で卸売業者が出荷者から委託を受けて行う生鮮食料品等の販売や、農協等が組合員から条件を付けない販売委託を受け、所定の方法で精算する農林水産物の販売については、出荷者のインボイス交付義務が免除されています。自分の出荷がどれに当たるかは、出荷先や税務署に確認してください。
米を出荷するなら米トレーサビリティ法に注意
米や米加工品を取引する場合は、米トレーサビリティ法(米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律)が関わります。農林水産省の説明では、生産者を含む対象事業者は、取引のたびに品名・産地・数量・年月日・取引先名・搬出入した場所などを記録し、伝票等を3年間保存することとされています。実際に取り交わした伝票にこれらの事項が書かれていれば、それを保存することで記録・保存の義務を果たしたことになります。また、他の事業者に譲り渡すときは、伝票等または容器包装への記載で産地情報を伝える必要があります。
米を出荷する場合は、品目欄に「玄米」「精米」の別、備考欄に「〇〇県産」のように産地を書いておくと、この記録としても使えます。
記入例
きゅうり(秀L・優M)、ミニトマト、なすを1つの出荷先に出した日の記入例です。品種名・出荷先は架空のものです。

きゅうりは同じ品目でも「秀・L」と「優・M」で行を分けています。入数5・単位kg・ケース数20なので、数量合計は100kgです。単価が決まっている直接取引は単価と金額を書き、市場出荷で単価が決まっていない「なす」は単価と金額を空欄にして、備考に理由を書いています。最下行の合計は、ケース数44、金額71,200円です。
書き方(項目ごと)
表の上には、出荷日・出荷先・出荷者名・出荷者番号(出荷先から割り当てられた番号)・連絡先を書きます。明細の各欄は次のとおりです。
| 欄 | 書くこと | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 品目 | 出荷した作物。出荷先の呼び方にそろえる | きゅうり |
| 品種 | 出荷先が求める場合に書く | 〇〇節成 |
| 等級 | 品質の区分。出荷先や産地の規格表の呼び方で | 秀/優/A |
| 階級(サイズ) | 大きさの区分 | L/M/S |
| 入数(1ケース) | 1ケースあたりの重さ・本数・パック数(数字だけ) | 5 |
| 単位 | 入数の単位 | kg/本/パック(200g) |
| ケース数 | 出荷した箱の数 | 20 |
| 数量合計 | 入数×ケース数(Excel版は自動計算) | 100 |
| 単価(円/ケース) | 取り決めた1ケースあたりの単価。未定なら空欄 | 1,800 |
| 金額(円) | ケース数×単価(Excel版は自動計算) | 36,000 |
| 備考 | 荷姿、温度帯、納品先の店舗、産地など | 保冷/〇〇県産 |
単価を「ケースあたり」で書く理由
直接取引では「1ケース1,800円」のように箱単位で値決めすることが多いため、テンプレートも円/ケースにしています。kg単価で取り決めている場合は、単価欄の見出しを「円/kg」に書き換え、金額は数量合計×単価で計算します。どちらの単価なのかを見出しで明確にしておくことが、精算のずれを防ぐ一番の方法です。
控えの残し方
手書きの場合は複写式の伝票用紙に書くか、書いたものをスマホで撮影してから荷物に添えます。Excelの場合は出荷日ごとにシートかファイルを分けて保存し、ファイル名を「20261003_〇〇青果」のように日付と出荷先にしておくと、あとで探しやすくなります。
気をつけること・よくある間違い
1. ケース数だけ書いて入数を書かない
「20ケース」だけでは、5kg箱なのか10kg箱なのかがわかりません。同じ品目でも、時期によって箱の規格を変えることもあります。入数と単位を必ず一緒に書きます。
2. 等級・階級を1行にまとめてしまう
秀Lと優Mを「きゅうり 28ケース」とまとめると、単価の違いが精算で反映されません。等級と階級の組み合わせごとに1行に分けます。
3. 等級・階級の呼び方が出荷先の規格と違う
「秀・優・良」「A・B」「2L・L・M」など、呼び方は産地や取引先ごとに違います。自分の呼び方で書くと、荷受けの人が読み替えなければならず、間違いのもとになります。出荷先の規格表の呼び方をそのまま使います。
4. 出荷日と納品日を混同する
夕方に出して翌朝着く場合、出荷日と納品日が1日ずれます。取引先が「納品日」で管理しているなら、備考に納品日も書いておくと照合がスムーズです。
5. 控えを残さない
出荷先から数量や等級について問い合わせがあったとき、控えがないと確かめようがありません。米の場合は、前述のとおり伝票等の3年保存が求められています。
6. 出荷伝票をそのままインボイスとして渡してしまう
適格請求書発行事業者の場合、インボイスには登録番号や税率ごとの消費税額などが必要です。出荷伝票に金額を書いただけでは記載事項が足りないことがあるので、請求書を別に作るか、記載事項をそろえた様式にします。
7. 単価未定の出荷で金額欄を埋めてしまう
市場出荷のように販売後に単価が決まる取引で、見込みの金額を書いてしまうと、あとで精算書と合わなくなります。未定のときは空欄にし、備考に「市場出荷のため単価未定」と書きます。
紙・Excelで続かないときは
出荷伝票は「取引の書類」なので、ミノリス日誌で伝票そのものを発行することはできません。売上や入金を管理する収支管理の機能もありません。ここは紙やExcelの出番です。
そのうえで、ミノリス日誌が役に立つのは伝票の手前、栽培・作業記録の側です。
- 作付けごとに収穫の記録を付けておけば、「今週どれだけ採れたか」から出荷できる量を見積もれる
- 取引先から栽培履歴(農薬や肥料の使用記録)を求められたときに、作付けごとの記録をCSV・Excelで出力して渡せる
- 登録農薬から選ぶだけで使用回数や収穫前日数を確認できるので、出荷直前の防除で収穫前日数を守れているかをその場で確かめられる
- 出荷前の荷姿や品質を写真で残しておける
出荷伝票はExcel、日々の栽培記録はアプリ、という分担にすると、どちらも無理なく続けやすくなります。
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よくある質問
JAや市場の指定の伝票があります。テンプレートは必要ですか?
出荷先に指定の伝票や送り状がある場合は、そちらを使ってください。テンプレートは、直接取引の相手に渡す伝票や、指定伝票に書く前の下書き、自分用の控えとして使えます。
出荷者番号がない場合はどうすればいいですか?
直接取引などで番号が割り当てられていなければ空欄でかまいません。そのかわり、出荷者名と連絡先(電話番号)を必ず書き、荷物の側にも同じ名前を書いておきます。
出荷伝票は何年保存すればいいですか?
出荷伝票そのものの保存期間を定めた一般的な法令はありません。米・米加工品は米トレーサビリティ法で伝票等の3年保存が求められています。帳簿や請求書などの税務関係の書類は別に保存期間が決まっているので、税理士や税務署に確認してください。
1枚の伝票に複数の出荷先を書いてもいいですか?
出荷先ごとに1枚に分けるのが基本です。荷物に添えて相手に渡す書類なので、ほかの取引先の数量や単価が載っていると困ります。
手書きとExcel、どちらがいいですか?
出荷量が少なく品目も限られるなら、複写式の手書きで十分です。品目や等級が多く、ケース数と金額の合計を毎回計算するならExcelが楽です。テンプレートのExcel版は、数量合計と金額、最下行の合計が自動で計算されます。
まとめ
出荷伝票は、様式を定めた法令がなく、出荷先との取り決めで使う書類です。品目・品種・等級・階級・入数と単位・ケース数を、等級と階級の組み合わせごとに1行ずつ書き、控えを残すことが数量の食い違いを防ぐ基本です。インボイスとして使う場合は記載事項を別にそろえる必要があり、米の出荷では米トレーサビリティ法による伝票等の3年保存と産地の伝達が求められます。
直接取引の伝票や控えを手早く作るなら、出荷伝票の無料テンプレートをそのまま使えます。Excel版は数量と金額の合計が自動で出ます。
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