除草作業は、農業の作業時間の多くを占めています。そこで近年、除草を自動化するロボットの研究開発が進み、既に製品化されているものもあります。本記事では除草ロボットの利点、草刈機との違い、製品例について紹介します。
除草ロボットの厳密な定義はありませんが、従来からある「草刈機」と区別するためにロボットと呼ばれています。「草刈機」は従来の人が手で操作する機器を指すのに対し、「除草ロボット」は自律的に農場を移動して除草する機器を指すのが一般的です。機種にもよりますが、除草ロボットは雑草だけを刈り、作物は刈らないように改良が進められています。
従来の草刈機の例
- ラジコン草刈機(遠隔操作)
- 乗用型草刈機
- 自走式草刈機(手で押しながら操作するタイプ)
- 刈払機(肩にかけて使用するもの)
自律式の除草ロボットの例
- 水田や畑の畝間を走行し、歯車形の中耕ローターを回転させて雑草の根を掘り起こすロボット。
- 芝生や果樹園を自動走行しながら、ディスク状の刃を回転させて雑草を切るロボット。
- 電極から放電し、雑草の根を焼き切る自律型重機。
- 画像認識機能を搭載し、畝を避けて雑草のみを刈り取る自律除草ロボット。
なぜ自律式除草ロボットが着目されているのか
除草の自動化
除草作業は農業の就労時間の中でも大きな割合を占めています。戦後の除草にかかる労働時間は、以下のように変遷してきました。
- 1945年:10aあたり年間250時間
- 2009年:10aあたり年間27時間
面積あたりの除草時間が大幅に短縮されてきたのは、除草剤が普及した功績です。とはいえ、今でも10aあたり27時間の除草時間が費やされており、人手による作業への依存が大きいのが実情です。自律式の除草ロボットを導入すれば、10aあたり27時間の除草をほぼ自動化することができ、人間の作業者はその間に別の業務を進めることができます。
労働災害の予防
農業の労働災害で多いのは農業機械による障害事故です。特に草刈機(肩に担いで操作しディスク形の刃物で雑草を刈る刈り払い機)による事故は、農業機械事故の19%を占めています。除草作業を自律式除草ロボットに置き換えることで、刈り払い機による労働災害は大幅に減らせるでしょう。除草ロボットに対人認識機能が搭載されれば、接触事故も予防できるかもしれません。
数字で見る自律式除草ロボットの利点
除草ロボットを導入することで得られる金銭的メリットを概算してみましょう。既に商品化されており、芝生や果樹園、ハウスなどの除草に使われている「Automower 315」を例にします。この製品は高さ2〜6cmの雑草を刈ることができ、1日で15aの面積を除草できます。
導入する農地は全国平均を参考にし、面積130a、10aあたり年間農業産出額18万円と仮定します。
まず、除草ロボットを導入しない場合の除草コストは以下の通りです。
- 10aあたり年間27時間(人による作業)
- 人件費¥900/時間と仮定
この場合、年間除草コストは¥315,900となり、年間農業産出額の13.5%を除草コストが占めてしまいます。
一方、Automower 315の導入と運用にかかるコストは以下の通りです。
- 本体+充電設備:¥245,000(耐用年数5年、定額法による減価償却、残存価値¥0と仮定)
- 消費電力:10kWh/月
- 電気代:¥250/kWhと仮定
- 稼働日数:4月〜12月(9か月)終日稼働と仮定
- 除草ロボットの管理コスト:年間¥50,000と仮定
この場合、年間除草コストは¥121,500(年間農業産出額の5.2%)となり、導入前の4割以下になります。あくまで概算ですが、除草のために時給¥900で人を雇うよりも、除草ロボットを常時稼働させる方が低コストと言えます。
除草ロボットの例
国内外で販売されているロボットを紹介します。
株式会社NTTドコモの栽培管理用AI除草ロボット
まだ開発中ですが自動で圃場を移動しホウレンソウを避けながら除草するロボットを開発しています
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/39_docom.pdf
ハスクバーナのオートモア
17万円程度から入手可能なロボット草刈機です
https://www.husqvarna.com/jp/products/automower/
WADO ロボット草刈り機
WADO ロボット草刈り機【KRONOS】 https://www.wadosng.jp/mr-300/
播種と除草の両方を行う全自動ロボットを開発・販売するデンマークの農業ロボット企業FARMDROID社
太陽光発電による自律型除草ロボットで、環境への悪影響とコストを低減する農業ロボットベンチャーECOROBOTIX
引用文献
- 中山間の急傾斜法面の草刈作業を楽にする小型除草ロボットの開発 農研機構 http://agri-renkei.jp/news/docs/20141205seminar_nagasaki.pdf