植物工場とは?植物工場の種類や良い点について解説

「植物工場って何?」「植物工場は儲かるのかな?」と気になったことはありませんか?この記事では植物工場の概要、種類導入コストについて解説します。この記事を読めば植物工場について詳しくなりますよ。ぜひ最後までお読みください。

植物工場とは


植物工場とは、自然環境から切り離された閉鎖系の栽培環境を作り、その中で作物を連続生産する施設です。土を使わず水耕栽培のみで育て、水は上水道から引き、気温は空調設備で微調整します。ハウス栽培や施設園芸よりも自然環境(河川水、気温、日照時間、土壌微生物など)への依存度合いが低く、作ろうと思えば市街地の中心部にも建設できます。

植物工場の研究は1950年代に始まり、日本では2000年代初頭に実用化が加速しました。株式会社村上農園の豆苗や機能性スプラウトなど、植物工場で生産された野菜は今や日常的に食卓へ上るものになっています。近年は小ぶりな野菜・清潔な野菜への嗜好が高まっているため、植物工場で作られた野菜は今後も一定の需要を獲得してゆくでしょう。

植物工場で生産できる品目

現状では、植物工場で生産できる野菜の品目は葉物野菜と一部の果菜類に限られています。スーパーで見られるのはスプラウト 、レタス、パクチー、ケール、ミニトマトなどです。地下部を食べる根菜や芋類を植物工場で生産する技術は、現状では実用化できていません。

植物工場の基本構造と分類

植物工場は、光源の種類によって人工光型と太陽光型の2種類に分類されます。また、太陽光と人工光源のどちらも使う太陽光人工光併用型もあります。

  • 人工光型:LEDの光のみで栽培します。
  • 太陽光型:天窓から太陽光を取り入れて栽培します。

それぞれについて、以下で説明します。

人工光型

太陽光は一切使わず、人工光源のみを使う植物工場です。太陽光も遮蔽するので、完全閉鎖系とも呼ばれます。人工光源の下で栽培ラックを何段にも積んで栽培するため、狭い敷地で多くの作物ができます。

ただし、人工光源のみを使ぶんの消費電力がかさむため、電気コストが太陽光型の約3倍かかります。また、栽培棚を積み重ねる仕様上、背の高い作物の栽培には適しておらず、品目はリーフレタスやサラダ菜、小松菜、サンチュなどの小型な葉菜類が主流です。

太陽光型

人工光源ではなく太陽光をメインで使います。人工光源のみを使う場合に比べ、消費電力を大幅に削減できます。よって人工光源のみではコスト的に見合わなかった、トマトやイチゴなどの果菜類の栽培が可能になります。

しかし太陽光を使うので、完璧な安定供給ができません。また太陽光を全ての株に当てるため、平らで広大な敷地が必要です。

植物工場の利点

農作物の計画的・安定的生産

植物工場の中は外部環境に影響されにくく、作物に適した栽培条件を設定できます。そのため季節や天候に関係なく、農作物を計画的に生産できるのが利点です。

異常気象や災害の多発、獣害の深刻化など、農村の栽培環境は様々なリスクに取り巻かれていますが、植物工場ならばこれらのリスクの大半を回避できます。よって、作物の安定的な生産を実現するうえで植物工場が一定の役割を果たすと思われます。

都市での栽培

非農地であっても、植物工場を建設することで作物の栽培が可能になります。さらに人工光型であれば、栽培ラックを何段にも積むことによって面積あたりの生産効率が高まるため、市街地やビル街すらも作物の生産地になるでしょう。

都市での栽培が可能になれば、生産地から消費地までの輸送距離を大幅に短縮することができます。このため輸送コストが低減し、鮮度も維持されやすくなるでしょう。

病害虫や汚染の遮断

衛生管理された閉鎖系で栽培されるため、害虫の侵入や土壌経由での伝染病のリスクが露地栽培よりも大幅に下がります。そのため病害虫による枯死が少なく、農薬の使用も抑えることができます。

さらに2011年の東日本大震災とそれに伴う原子力発電所の事故を受けて、放射性物質の汚染を回避する手段として植物工場が着目されました。原子力発電所の事故により、放射性物質(特に放射性Cs)が土壌に吸着され、多くの農地で表土の剥ぎ取りや泥水強制排水による除染が必要となりました。しかし植物工場ならば、そもそも土を使わず、水も品質管理されたもののみを投入できるため、栽培を続けられたかもしれません。

植物工場を導入するには

高額な初期投資

植物工場は高額な初期費用がかかるため、明確な経営計画が必要です。栽培に費用がかかると作物の価格も高くなり、売れなくなってしまいます。

栽培面積4000㎡の植物工場を建設する場合、初期投資額の目安は以下の通りです。

  • 人工光型(建屋を新築する場合):2.94億円
  • 人工光型(既存の建物を流用する場合):1.44億円
  • 太陽光型:1.80億円

いずれも1〜数億円の初期投資がかかるため、参入に興味があっても融資が受けられず断念する事例もあります。そのため植物工場に参入するのは企業が中心であり、個人や家族経営規模では現実的ではありません。

高度な分業化が必要な場合も

課題はハード面だけではありません。高額なコストに見合うだけの生産量・品質を確保するためには、設備稼働の効率化、衛生管理、作物の品質管理などが必要となります。そのためには機械設備の操作、栽培管理、販売管理、経理など、高度な分業化が必要となり、農業というより工場を経営するような感覚になります。

何をどこに売るかが最重要

植物工場で採算が得られるかどうかは、「何をどこに売るか」にかかっていると言っても過言ではありません。植物工場で作った野菜は、重量当たりの価格が露地野菜より割高になりやすいのが現状です。そこで、清潔な栽培環境で作ったことが評価される売り先へ出したり、高付加価値な品目に絞ったりする必要があります。

以下に例を紹介します。

  • カット野菜用:日本で消費される野菜の6割はカット野菜や加工用であり、大きな市場規模を持ちます。清浄さや歩留まりが重視されるため、植物工場で作られた清潔な野菜はマッチすると思われます。また、カット・加工用野菜の3割は輸入が占めており、国産化を進めたい食品メーカーが植物工場との生産契約に関心をもつ可能性もあります。
  • レストランとの直接取引:レストランで使われる野菜も、見た目の清潔さや歩留まりが意識されます。年間通して葉物野菜を安定供給できる、植物工場のメリットが生かされるでしょう。
  • 機能性野菜:野菜の機能性表示が解禁されたことで着目されています。たとえば、含有成分のスルフォラファンに抗酸化力があるという理由で、ブロッコリースプラウトに機能性表示が認められました。

植物工場の現状と今後

現在の植物工場の普及率は低く、日本の植物工場は赤字のところが約半数です。

しかし近年大企業が日産数万株といった規模の工場を続々とオープンしています。今後は植物工場は未来の農業を助けるかもしれません。たとえば現在の農業では人手不足や後継者不足が問題となっています。もし現在稼働が始まりそうな自動の植物工場が普及すれば、水やりや収穫に必要な人手を減らせるでしょう。

やはり最大の参入障壁は初期導入費用です。しかし設備の共有や部品の規格化が進み、企業的農業経営が広がれば、急速に普及してゆくのではないでしょうか。

参考サイト