堆肥の製造記録の書き方と記入例|温度・切り返しの無料テンプレート(Excel・PDF)

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稲わらや落ち葉、牛ふんなどを積んで自分で堆肥をつくる農家が、堆積中の温度や切り返し、水分、においを日ごとに書き残す帳票が「堆肥の製造記録」です。発酵の進み具合を数字で追えるので、いつ完成と見てよいか、次の仕込みで何を変えるかを自分で判断できます。

法令上、すべての人に作成が義務づけられているわけではありません。牛・馬10頭以上などの畜産農家には、家畜排せつ物法の管理基準で記録が求められます。有機JASの圃場で自家製堆肥を使う場合は、原材料と製造工程の根拠書類が必要です。この記事では、愛媛県の堆肥づくりの資料や農林水産省の資料をもとに、各欄の書き方、記入例の読み方、他の人に堆肥を渡すときの届出までを説明します。

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目次

堆肥の製造記録とは/なぜ必要か

温度と切り返しの記録で発酵の進みを確かめる

堆肥は、微生物が有機物を分解するときの発酵熱で温度が上がります。愛媛県の資料によると、水分を整えて仕込んだ家畜ふんは、数日で60〜70℃以上の高温になり、しばらく続くそうです。温度が下がっても分解できる有機物が残っていれば、切り返しで空気を入れたり水分を調整したりすると、再び高温になります。

この上下を繰り返し、切り返しても温度が上がらなくなった時点が目安です。分解しやすい有機物が使い尽くされ、完熟堆肥に近づいたと判断できます。温度計の数字と切り返しの日付が残っていれば、記録をもとに判断できます。

家畜排せつ物法と有機JASが求める記録

畜産農家には、家畜排せつ物法(平成11年法律第112号)第3条にもとづく管理基準があります。農林水産省令の管理基準には、家畜排せつ物の年間の発生量、処理の方法、処理の方法別の数量を記録することが入っています。ただし飼養頭羽数が牛・馬で10頭未満、豚で100頭未満、鶏で2,000羽未満の畜産業者には、この基準は適用されません。

有機JASの圃場では、農林水産省の「有機農産物のJAS 資材評価手順書」が、自家製堆肥にも根拠書類を求めています。資材の適合性を登録認証機関に示せるよう、原材料と製造工程が分かる書類が必要という内容です。仕込みごとの原材料と入手先を書いた製造記録が、その根拠書類の元資料になります。

自分の圃場だけで使う堆肥は任意の記録

自家用の堆肥の製造記録を義務づける規定は、確認できた範囲ではありません。畜産農家でも有機JASの農家でもなく、自分の圃場だけで使う場合は、品質を安定させ、使った先をたどるための任意の記録になります。

堆肥を他の人に渡す場合は事情が変わります。有償・無償を問わず届出が必要です。詳しくは後の「他の人に堆肥を渡すときの届出」で説明します。

記入例

下の記入例は、架空の堆肥の山について、仕込みの翌日から15日目までの温度を書いたものです。1日目は45℃、4日目は68℃まで上がりました。11日目に52℃へ下がったので、1回目の切り返しと少量の加水を行っています。15日目には65℃へ再び上がりました。

堆肥の製造記録の記入例
堆肥の製造記録の記入例(出典:ミノリス 無料テンプレート)

記入例の読み方を説明します。4日目の68℃は、愛媛県の資料が示す60℃以上の高温にあたります。11日目に52℃へ下がった時点で切り返しと加水を行うと、15日目に65℃に戻りました。残っていた有機物が再び分解されたと読み取れます。

測る場所は、毎回「中心・深さ50cm」にそろえています。場所が日によって変わると、温度の違いが発酵の進み具合なのか測る位置の違いなのか区別できません。温度が上がらない日は、水分とにおいの欄を手がかりに原因を探します。

書き方(項目ごと)

テンプレートは4枚のシートでできています。中心は、堆積中の温度と切り返しを日ごとに書く「記入用」シートです。ほかに原材料の記録、できた堆肥と使った先、家畜排せつ物の年間記録のシートがあります。記入用シートの欄から順に説明します。

堆肥の名前・ロット番号、堆積場所、仕込み日、記録者

表の上にある4つの欄です。堆肥の名前は「稲わら+牛ふん」のように原料が分かる呼び名にし、ロット番号は仕込みごとに「2026-03A」のような番号を付けます。同じ時期に複数の山をつくる場合は、番号で山を区別できるようにしておきます。

堆積場所は、たい肥舎の名前や圃場の隅など、第三者が見て場所を特定できる書き方にしてください。仕込み日は、原料を積み終えた日です。後で書く「仕込み後の日数」はこの日を起点に数えます。

日付と仕込み後の日数

温度を測った日と、仕込みから何日目かを書きます。記入例の「2026/3/6・4日」は、3月3日に仕込んだ堆肥の4日目という意味です。日数を書いておくと、温度の上がり方を他の山や去年の記録と比べやすくなります。

測る頻度は、仕込み直後の数日は毎日、温度が安定してきたら数日おきと、山の様子に合わせて決めます。毎日書けない週があっても、空いた日付はそのままにして構いません。

堆肥の温度(℃)

温度計を堆肥に差し込み、数値が落ち着いてから読んだ温度を書きます。愛媛県の資料によると、病原菌や寄生虫、雑草の種子は60℃以上の高温が数日続くと死滅するため、60℃以上を数日間保つことが望ましいそうです。60℃を超えた日が何日あったかは、記録から数えられるようにしておいてください。

堆肥の中心部まで届く長い棒状の温度計が使いやすいです。表面近くは外気で冷えるので、表面の温度は発酵の目安になりません。

測った場所・深さと外気温

測った場所は「中心」「端から1m」のように位置を、深さはセンチメートルで書きます。毎回同じ場所と深さで測るのが原則です。山が大きいときは、2か所以上に決めて、それぞれの数値を別の行に書いてください。

外気温は、その日の気温を書く欄です。寒い時期は山の外側が冷え、内部との差が大きくなります。外気温を残しておくと、温度の上がりが悪い日に気温の影響を考えられます。

切り返し(回数)

切り返しをした日には、「1回目」「2回目」のように回数を書いてください。切り返しは、堆肥の外側と内側を入れ替えて空気を送り、発酵をムラなく進めるための作業です。愛媛県の資料には、稲わらの堆肥づくりの流れが載っています。発熱が1週間ほど続いて温度が下がってきた頃に切り返すと、1週間後に再び発熱するそうです。その後さらに1週間ほどで温度が下がって安定する、という流れです。

切り返しの回数は、完成度の判定にも使います。後で説明する「できた堆肥と使った先」シートが、切り返しの回数を点数に換算するからです。

水分(握った感じ)

堆肥を手で強く握り、手のひらにどのくらい水分がつくかを書く欄です。愛媛県の資料の腐熟度評価は、次の目安を示しています。強く握ると指の間から滴る状態が水分70%前後、手のひらにかなりつく状態が60%前後、あまりつかない状態が50%前後です。記入例の「手のひらにかなりつく」は、60%前後にあたります。

水分が多すぎると空気が通らなくなり、少なすぎると微生物の活動が落ちます。同じ資料には、水分が40%以下になると微生物の活動が低下するという記載もあります。握った感触は毎回同じ言葉で書くと、日ごとの変化を比べやすくなります。

加水・通気

水を足した日、通気の作業をした日を書きます。記入例の「少し加水」は、切り返しの日に水を少し足したという意味です。量が分かる場合は、バケツ何杯、何リットルと書き添えます。

強制通気の送風機を使っている場合は、送風の時間帯や設定もここに書きます。腐熟度の判定では、強制通気の有無も点数に入るためです。

におい・見た目、作業者

においと見た目は、湯気が上がる、ふん尿のにおいが強い、においが弱くなってきた、色が黒っぽくなった、のように短く書きます。愛媛県の腐熟度評価では、ふん尿のにおいが強い状態から、弱い状態、堆肥らしい土の香りへと変わるのが、発酵が進んだ目安とされています。

作業者の欄は、測った人の名前を書く欄です。複数の人が交代で測る場合は、測り方の違いで数値が揺れることがあるため、誰が測ったか分かるようにしておくと、数値を読むときの参考になります。

「原材料の記録」シート

仕込みごとに、原材料の名前、入手先、量、添加物の有無、確認した書類を書くシートです。稲わらなら自分の田で出たもの、牛ふんなら入手先の畜産農家の名前、といった具合に、由来が追える書き方にします。

有機JASの圃場では、この記録が根拠書類の下書きです。農林水産省の資料は、堆肥化の際に化学的に合成された肥料が添加されている場合があると指摘しています。例は尿素、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどです。窒素源として何を足したかも、添加物の欄に書いてください。

「できた堆肥と使った先」シート

完成の判定と、使った先を書くシートです。判定には、愛媛県の資料にある腐熟度評価基準の考え方を使っています。見るのは、形状、においの強さ、水分、堆積中の最高温度、切り返しの回数、強制通気の有無の6項目です。点数を合計し、30点以下を未熟、31〜80点を中熟、81点以上を完熟とします。

たとえば、形がかなり崩れていれば7点、ふん尿のにおいが弱ければ10点、水分が60%前後なら7点です。最高温度が65℃で15点、切り返しが3回で10点、強制通気なしで0点なら、合計は49点で中熟になります。この基準は家畜ふん堆肥を対象にした現場向けの目安なので、副資材が違う堆肥では参考値として扱います。

使った先の欄には、使った日、圃場、量を書いてください。どの圃場にどの山の堆肥を入れたかが分かれば、作物に不調が出たときに堆肥との関係を調べられます。

「家畜排せつ物の年間記録」シート

管理基準の記録が必要な畜産農家向けのシートです。畜種ごとに、年間の発生量、処理の方法、処理の方法別の数量を書きます。

埼玉県の案内では、発生量は1頭(羽)あたりの標準的な年間発生量に飼養頭羽数をかけて求めます。処理の方法別の数量欄には、発生量を10割としたときの大まかな割合を記入。計算に使う標準値や様式は、都道府県の畜産担当の窓口に確認してください。県によって様式例を公開しています。

気をつけること・よくある間違い

堆肥の表面で温度を測る

表面は外気で冷やされるので、発酵の様子が分かりません。中心部など決めた深さまで温度計を差し込み、毎回同じ場所で測ってください。

温度が下がったのを完成と思い込む

温度が下がる原因は、完成以外にもあります。空気や水分が足りずに、発酵が止まっていることもあるからです。切り返しと水分の調整をしても温度が上がらないことを確かめてから、完成と判断してください。

60℃に届いた日数を残さない

病原菌や雑草の種子への対策として、愛媛県の資料は60℃以上を数日間保つことを望ましいとしています。最高温度だけを書くと、高温が何日続いたか分かりません。毎回の温度を日付とともに残せば、60℃以上の日数を後から数えられます。

原材料の記録を残さない

においなどのトラブルが起きたときや、有機JASの確認を受けるときに、何を入れたか分からなくなります。仕込みごとに原材料と入手先を書いてください。有機JASの手順書は、発酵・乾燥・焼成していない生ふん尿を資材として圃場に施用することを不適合としています。生のふん尿を使っていないことを示す意味でも、製造の記録が役に立ちます。

水分を勘だけで決める

水分は、握った感触を毎回言葉で書いておくと、水を足す時期を判断しやすいです。堆肥化を始める前の水分調整について、愛媛県の資料は、家畜ふんでは55〜70%程度に調整して通気性を改善するとしています。

未熟な堆肥を畑に入れる

愛媛県の資料によると、炭素率(C/N比)の高い堆肥を施用すると、微生物が土の中の窒素を使って増えます。その結果、作物が使える窒素が不足する窒素飢餓が起きる恐れがあるという説明です。完熟した堆肥は炭素率が20以下で、窒素飢餓の危険はないとされています。使う前に、腐熟度の判定を記録に残してください。

仕込みの記録と使った先の記録を分けて管理しない

製造記録、施用した圃場、作付けの記録が別々の紙に分かれていると、どの山の堆肥をどこに入れたか追えなくなります。ロット番号を共通の呼び名にして、製造記録と施肥の記録をつなげておきます。

他の人に堆肥を渡すときの届出

肥料の品質の確保等に関する法律(昭和25年法律第127号)では、堆肥は特殊肥料に当たります(第2条第2項)。農林水産省は、自分でつくった堆肥を他の人に渡す場合、有償・無償を問わず、特殊肥料の生産業者としての届出が必要だと案内しています。

届出は、生産する事業場の所在地を管轄する都道府県知事に、事業を開始する1週間前までに行います(第22条第1項)。届け出る事項は、氏名と住所、肥料の種類と名称、生産する事業場の名称と所在地、保管する施設の所在地です。変更があったときは、その日から2週間以内に届け出ます(同条第2項)。

堆肥を有償で渡す場合は、販売業者としての届出も必要で、販売業務を開始した後2週間以内に行います(第23条第1項)。届出をしないで事業を始めた場合は、1年以下の拘禁刑か50万円以下の罰金に処される規定があります(第37条)。実際の手続きは、都道府県の肥料担当の窓口に確認してください。

この製造記録は、届出の義務を果たすための書類ではありません。ただし、品質に疑問が出たときに、原材料と製造の経過を説明する材料になります。

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紙・Excelで続かないときは

温度の記録は、堆肥の山の前で手書きするのが確実です。一方で、できた堆肥をどの圃場のどの作付けに何キロ入れたかは、施肥の記録として別に管理する必要があります。山の数が増えるほど、紙の記録と圃場ごとの施肥の記録を突き合わせる手間が大きくなります。

当社が提供しているミノリス日誌は、栽培の記録を付けるための無料アプリです。堆肥の使い道を記録する側で、次のように使えます。

  • 自家製の堆肥を「自作肥料」として資材の台帳に登録できる
  • 作付けごとに投入量と施用方法(元肥など)を記録できる
  • 記録は栽培履歴の「元肥(土づくり)」に集計され、CSVで取り出せる

堆積中の温度や切り返しを日ごとに記録する機能は、ミノリス日誌にはありません。製造中の記録はこのテンプレートで取り、できた堆肥を使った記録をアプリに入れる、という分担になります。有機JASの根拠書類の作成や、届出書の作成にも対応していません。GPSによる作業の自動記録にも対応していません。

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よくある質問

温度計は何を使えばよいですか?

堆肥の中心部まで届く、長い棒状の温度計が使いやすいです。表面は外気で冷えるので、深さを決めて毎回同じ場所で測ってください。愛媛県の資料は、60℃以上の高温が数日続くことを望ましいとしているため、60℃を超える数値まで測れるものを選びます。

自分の圃場で使うだけでも、記録はつけたほうがよいですか?

法律上の義務は、確認できた範囲ではありません。それでも、仕込みごとの温度と切り返しを残しておくと、完成の時期を判断しやすくなり、次の仕込みの改善にもつながります。有機JASの認証を受けている場合は、原材料と製造工程の記録を残してください。

有機JASの認証を受けています。この記録だけで足りますか?

必要な書類は登録認証機関によって異なります。農林水産省の資料は、自家製堆肥についても原材料と製造工程が分かる根拠書類を求めています。このテンプレートの原材料シートを使う前に、どの書類が必要かを認証機関に確認してください。

家畜排せつ物の記録は、どの規模の農家に必要ですか?

省令の管理基準は、飼養頭羽数が牛・馬で10頭未満、豚で100頭未満、鶏で2,000羽未満の畜産業者には適用しないと定めています。つまり牛・馬10頭以上、豚100頭以上、鶏2,000羽以上が目安です。複数の畜種を飼っている場合の扱いは、都道府県の畜産担当の窓口に確認してください。

隣の農家に堆肥を分けるだけでも届出は要りますか?

農林水産省は、自分でつくった堆肥を他の人に渡す場合は、有償・無償を問わず生産業者としての届出が必要としています。事業を開始する1週間前までが期限です。少量の場合の扱いも含め、都道府県の肥料担当の窓口に確認してください。

完熟までどのくらいかかりますか?

原料と方法で変わります。愛媛県の資料は、家畜ふん堆肥について数か月程度の期間を確保すべきとしており、稲わらを牛ふんと積む方法では3〜4か月後に完熟堆肥ができあがると書いています。自分の山の目安は、記録を重ねてつかむしかありません。

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まとめ

堆肥の製造記録は、日ごとの温度と測った場所、外気温、切り返しの回数、水分、加水・通気、においと見た目を、堆肥の名前とロット番号つきで書く帳票です。60℃以上の高温が続いたか、切り返しで温度が戻ったか、いつ温度が上がらなくなったかを読み取れば、完成の時期を記録から判断できます。

畜産農家は家畜排せつ物の年間記録が必要で、有機JASの農家は自家製堆肥の根拠書類が必要です。他の人に堆肥を渡すときは、有償・無償を問わず特殊肥料の生産業者の届出が要ります。自分の圃場だけで使う場合は任意の記録ですが、仕込みごとに残しておくと次の堆肥づくりに活かせます。

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