栽培記録(栽培日誌)の書き方と記入例|無料テンプレート(Excel・PDF)

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「去年のこの時期、もっと草丈があった気がする」「葉かびが出始めたのはいつだったか」。こうした疑問に答えてくれるのが栽培記録(栽培日誌)です。作業の記録ではなく、作物そのものがどう育っているかを決まった間隔で観察し、数字と写真で残しておく記録を指します。

結論から言うと、栽培記録は「同じ株を・同じ測り方で・週1回程度」測って、草丈などの数字を1つ以上と写真の番号を1行に書くだけで十分に役立ちます。出荷先に出す書類ではないぶん、自由に項目を決められますが、そのぶん書き方が自己流になりやすく、翌年読み返したときに比べられない記録になりがちです。この記事では、施設でも露地でも使える書き方と、よくある失敗を記入例つきで整理します。

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栽培記録とは/なぜ必要か

作業日誌・栽培履歴との違い

農家がつける記録はいくつもあり、名前も地域によってまちまちです。役割で分けると次の3つになります。

  • 農作業日誌:その日に何の作業をしたか(作業名・時間・人・資材)を残すもの。書き方は農作業日誌の書き方とテンプレートで解説しています
  • 栽培履歴(生産履歴):作付け1件ごとに、農薬・肥料・作業・収穫を出荷先に説明するためにまとめたもの。栽培履歴(生産履歴)の書き方と提出方法を参照してください
  • 栽培記録(栽培日誌):作物がどう育ったか(草丈・葉数・開花・着果・病害の出始めなど)を観察して残すもの。この記事で扱うのはこれです

たとえば特別栽培農産物の表示ガイドラインでは、栽培責任者が「栽培管理記録」として作業実績や使用資材の名称・使用量・使用時期、収穫量などを記録し、確認責任者はそれを受領後3年間保管するとされています。提出や確認の対象になるのは、あくまで「何をしたか」の記録です。栽培記録は提出義務のある書類ではなく、自分の栽培を良くするための記録と位置づけるとわかりやすいと思います。

つけておくと何が変わるか

作業の記録だけでは、「なぜその作業をしたのか」「その結果どうなったのか」が残りません。生育の数字があると、次のような判断に使えます。

  • 追肥や潅水のタイミングを、草丈の伸びや葉色の変化から決める
  • 品種や作型、定植日を変えた年に、前年と同じ日数で生育を比べる
  • 病害虫や生理障害が出始めた時期と、そのときの天気・管理を振り返る
  • 家族や従業員に「この時期にこのくらい伸びていれば順調」という目安を共有する

農林水産省の国際水準GAPガイドラインでも、GAPを「農業生産の各工程の実施、記録、点検及び評価を行うことによる持続的な改善活動」と説明しています。記録は付けること自体より、見返して次の作に生かすことに意味があります。

記入例

ミニトマト(4月10日定植)を、第3列の5株に決めて週1回観察した場合の記入例です。

栽培記録(栽培日誌)の記入例
栽培記録(栽培日誌)の記入例(出典:ミノリス 無料テンプレート)

1行目(4月24日)は定植後14日で、活着して第1花房のつぼみが見えた段階、草丈38cm・葉数8枚です。2行目(5月1日)は定植後21日で第2花房が開花し、草丈62cm、前回から24cm伸びています。「昨年より草丈やや低い」という気づきが書いてあるので、翌週の行で追肥をしたことと、その後に葉色が戻ったことがつながって読めます。

テンプレートのExcel版は、観察日と定植日から「定植後日数」、1つ上の行の草丈から「前回からの伸び」を自動で計算します。前回の行との間に空行をあけると伸びが計算されないので、行は詰めて書いてください。

書き方(項目ごと)

表の上には、作物・品種、圃場、観察する株(例:3列目の5株、ハウス東側の畝の端から10株目〜14株目)を書きます。ここを最初に決めることが、栽培記録の出来を左右します。

観察日と定植日(播種日)

観察日は実際に見た日を書きます。定植日は毎行同じ日付を書き、そこから何日目かを出します。前年と比べるときは「5月1日同士」ではなく「定植後21日同士」で比べるほうが、定植日がずれた年でも公平に比べられます。

生育段階

目で見た段階を短い言葉で書きます。果菜類なら「第2花房開花」「第1果房着色」、葉菜類なら「本葉6枚」「結球始め」、水稲なら「分げつ盛期」「出穂」のように、作物ごとに言い方をそろえておくと検索しやすくなります。

草丈(cm)と前回からの伸び

観察株を測った平均値を数字だけで書きます(「約60」ではなく「62」)。どこからどこまでを測るかは毎回同じにします。水稲の場合、兵庫県の生育・収量調査法では草丈を「最長茎の地際から最長葉の先端までの長さ」としています。果菜類は草丈より「1週間あたりの茎の伸び」を見るほうが実用的で、熊本県の研究成果では、1週間あたりの茎伸長量と茎径は測る人による差が小さく、生産者どうしで数字を共有しやすいとされています。

葉数

展開した葉を数えた平均です。どの程度開いた葉から数えるか(例:葉身が半分以上開いたもの)を決めておきます。

開花・着果

「第1花房 4果着果」「第3花房 開花中」のように、花房の段と果数で書きます。果樹なら「満開」「落花」、葉菜類なら不要なので欄を消してかまいません。

病害虫・生理障害

見つけた症状と程度を短く書きます(例:下葉に葉かび病・少、尻腐れ果1個)。発生の数を数えて防除するかを判断する場合は、別に防除日誌や見回り記録をつけ、ここには「出始めた」「広がった」の変化だけを書いておくと、表が重くなりません。

天気・管理

観察日の前後の天気の傾向(晴天続き、曇雨続き、高温)と、したばかりの管理(潅水、換気、追肥、摘葉)を書きます。作業の詳細は作業日誌に任せ、ここには生育に影響しそうなことだけを拾います。

写真

撮った写真の番号やファイル名(例:0501-1〜3)を書きます。写真は毎回同じ場所・同じ向き・同じ高さから撮ると、並べたときに変化がはっきりします。ファイル名に日付を入れておけば、表と写真をすぐに照らし合わせられます。

気づき

前回・前年との違いと、次にすることを1行で書きます。「昨年より草丈やや低い→来週追肥」のように、判断と行動をセットで残すと、翌年に「なぜそうしたか」がわかります。

葉菜類なら葉数と株張り、果樹なら新梢の長さや果実の横径など、作物に合わせて見出しを書き換えて使ってください。テンプレートのExcel版は、「草丈」の欄を別の数値に書き換えても「前回からの伸び」がその数値の差として計算されます。様式はミノリスの栽培記録テンプレートのページから確認できます。

気をつけること・よくある間違い

毎回違う株を測る

同じ圃場でも株ごとの差は大きく、目についた株を測ると、伸びたのか株が違うのかがわからなくなります。観察する株には棒やテープで目印を付け、毎回同じ株を測ります。

生育のよい株だけを選ぶ

目立つ株を選ぶと、圃場全体より大きな数字になります。県の調査法では、生育が中くらいで欠株のない、連続した株を選ぶのが基本とされています。圃場の端や出入口の近くは避けます。

「元気」「普通」とだけ書く

感想だけでは翌年に比べられません。忙しい日でも草丈か葉数のどちらか1つは数字で残します。

測る位置や道具が回によって違う

茎径なら「生長点から15cmの位置」、葉色なら「上から2枚目の展開葉の中央」のように位置を決め、道具も同じものを使います。熊本県の研究成果では、茎径は測る位置を統一すればばらつきが小さいとされています。

写真と記録が結びつかない

スマホに写真だけが大量に残り、どの日のどの株かわからなくなる失敗はよくあります。撮ったらすぐ、番号かファイル名を表に書きます。

作業の記録と混ぜてしまう

1冊のノートに作業も生育も書くと、提出用の栽培履歴を作るときに作業だけを拾い出す手間がかかります。生育の記録と作業の記録は欄や表を分け、日付で行き来できるようにしておくのがおすすめです。

JAや普及センターの調査様式と測り方がずれる

部会で生育調査をしている場合、自己流の測り方だと数字を比べられません。指定の様式があるときはそちらに合わせ、このテンプレートは自分用の控えとして使います。

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紙・Excelで続かないときは

栽培記録が続かない理由は、たいてい「圃場で測った数字を、家に帰ってから書き写すのが面倒」「写真と表が別々になって探せない」のどちらかです。

当社の無料アプリミノリス日誌では、作付けごとに観察メモと写真を圃場からそのまま記録できます。同じ作付けの農薬・肥料・作業・収穫の記録と時系列で並ぶので、「追肥した3日後に葉色が戻った」「この散布の前に病斑が出始めていた」といった前後関係を1つの画面で追えます。予定・実績のカレンダー、圃場マップ、衛星画像での圃場の確認にも対応しています。記録は栽培履歴としてCSV・Excelで出力できるので、出荷先への提出用の書類づくりにもそのまま使えます。

一方で、草丈の伸びを自動で計算してグラフにする専用の生育調査機能はありません。数字の推移を細かく比べたい場合は、このテンプレートのExcelで数値を管理し、アプリには写真とメモを残す、という使い分けが現実的です。また、収支管理やGPSによる作業の自動記録には対応していません。ほかのアプリも比べたい方は圃場管理アプリ・農業アプリ比較を参考にしてください。

生育の様子と作業の記録を、作付けごとにひとつの画面で

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よくある質問

どのくらいの頻度で観察すればよいですか?

決まりはありません。果菜類は週1回、同じ曜日に見ると、1週間あたりの伸びで比べられます。生育の変化が早い時期(定植直後、開花期)は間隔を短くし、ゆっくりした時期は2週間に1回でもかまいません。

何株くらい測ればよいですか?

自分用の記録なら、中くらいの株を4〜5株でも傾向はつかめます。岩手県の研究成果(トマト)では、調査株は8株が望ましく、少なくとも中くらいの株を4株、定期的に調べることを優先するとしています。株数より、同じ株を続けて測ることを優先してください。

出荷先から栽培記録を出すよう言われました。

出荷先が「栽培記録」と呼んでいても、求めているのは農薬・肥料の使用や作業の記録(栽培履歴)であることがほとんどです。提出先に様式と記入項目を確認し、栽培履歴の形でまとめてください。

家庭菜園でも使えますか?

使えます。品種の比較や、種まき時期を変えたときの違いを残すのに向いています。項目は草丈・開花・収穫開始日の3つ程度に絞ると続けやすくなります。

数値をきちんと測る「生育調査」とはどう違いますか?

栽培記録は日記に近い観察記録で、生育調査は決まった株を決まった方法で測り、平均を出して比べるための調査です。水稲の茎数や葉色、トマトの茎径などをきちんと測るなら、生育調査表を別に用意したほうが整理しやすくなります。

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まとめ

栽培記録(栽培日誌)は、作業ではなく作物がどう育ったかを残す、自分の栽培を良くするための記録です。観察する株を最初に決め、同じ測り方で草丈などの数字を1つ以上、写真の番号、天気・管理、気づきを1行にまとめる。この形を週1回続けるだけで、翌年は「定植後何日でどこまで育っていれば順調か」という自分の物差しが手元に残ります。

提出用の記録(農薬・肥料・作業)とは表を分け、日付で行き来できるようにしておくと、どちらも無理なく続けられます。

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