技能実習日誌は、外国人技能実習生を受け入れている実習実施者(農家・農業法人)が、実習生にどの日にどんな業務をさせ、誰がどんな指導をしたかを記録する帳簿です。監理団体の監査や外国人技能実習機構の実地検査で確認される、基本の書類のひとつです。
結論を先に書くと、技能実習日誌は技能実習法第20条と同法施行規則第22条で作成と事業所への備え付けが義務づけられた帳簿で、技能実習が終わった日から1年間備えておく必要があります。書く中身は「日付」「従事させた業務(計画の番号つき)」「指導の内容」「指導者氏名」の4つが柱です。また、2027年(令和9年)4月1日からは育成就労制度が始まり、技能実習制度は発展的に解消されます。この記事では、法令と外国人技能実習機構の参考様式を確認したうえで、書き方と記入例、よくある間違い、育成就労への移行で変わる点を整理します。
技能実習日誌とは/なぜ必要か
法律で作成と備え付けが義務づけられている
技能実習法(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)第20条は、実習実施者は技能実習に関して主務省令で定める帳簿書類を作成し、技能実習を行わせる事業所に備えて置かなければならない、と定めています。そして同法施行規則第22条第1項で、その帳簿書類は次のとおりとされています。
- 技能実習生の管理簿
- 認定計画の履行状況に係る管理簿
- 技能実習生に従事させた業務及び技能実習生に対する指導の内容を記録した日誌
- 企業単独型の場合は、入国前講習・入国後講習の実施状況を記録した書類
- このほか、特定の職種・作業について告示で定める書類
3つ目が技能実習日誌です。同条第2項で、これらを事業所に備えて置く期間は技能実習生が技能実習を終了した日から1年間とされています。
なお、同法第112条では、第20条に違反して帳簿書類を作成せず、事業所に備えて置かず、または虚偽の帳簿書類を作成した者は30万円以下の罰金に処するとされています。
外国人技能実習機構の参考様式(第4-2号)
外国人技能実習機構(OTIT)は、帳簿関係の参考様式として「技能実習日誌」(参考様式第4-2号)と、その別紙「技能実習生一覧表」を公表しています。参考様式の欄は、日付、技能実習生に従事させた業務、技能実習生に対する指導の内容、指導者氏名の4つです。注意書きとして、次の2点が示されています。
- 技能実習の区分、期間、行わせる業務等が異なる場合は、分けて作成すること
- 従事させた業務の欄の右欄には、技能実習計画の実習実施予定表の「技能実習の内容」欄の番号を書くこと
別紙の技能実習生一覧表には、番号、氏名、技能実習区分、技能実習期間を書きます。この記事で紹介するテンプレートも、この参考様式の項目をもとにした独自の様式です。監理団体から指定の様式がある場合は、そちらを使ってください。
農業でも実習生の労働時間は労働基準法の基準に準拠
農業は労働基準法第41条で労働時間・休憩・休日の規定が適用除外になっています。ただし、厚生労働省の「農業者・農業法人 労務管理のポイント」では、外国人技能実習生は農業に従事する場合であっても労働基準法の基準に準拠することとされています。技能実習日誌は「何をさせ、どう教えたか」の記録で、労働時間の記録ではありません。日誌とは別に、出勤簿やタイムカードで労働時間を記録し、労働者名簿・賃金台帳も整備します。
記入例
耕種農業(畑作・野菜)の実習生3人を受け入れている農場の、1週間分の記入例です。氏名・業務の内容は架空のものです。

業務の欄は「土壌づくり:堆肥の散布と耕うん前の圃場の準備」のように、技能実習計画の業務名で始め、その日に実際にさせたことを続けています。計画の番号の欄には、実習実施予定表で付けた番号(1〜6)を書きます。指導の内容は「植え穴の深さと株間のそろえ方を実演し、通訳を介して要点を確認した」のように、何を・どうやって教え、理解をどう確かめたかまで書いています。
記入例の業務は、外国人技能実習機構が公表している移行対象職種の審査基準(耕種農業職種・畑作・野菜作業)にある、土壌づくり、施肥、種子の取扱い、栽培(定植)、安全衛生業務、周辺業務(運搬・梱包)から選んでいます。自分の技能実習計画の業務名と番号に合わせて書き換えてください。
書き方(項目ごと)
| 欄 | 書くこと | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 表の上(実施者・責任者・職種・対象月) | 実習実施者の氏名または名称、技能実習責任者、職種・作業、対象の年月 | 耕種農業(畑作・野菜)/2026年5月分 |
| 日付(曜日) | 実習を行った日 | 5/12(火) |
| 技能実習生に従事させた業務 | 計画の業務名+その日の具体的な作業 | 栽培:苗の定植 |
| 計画の番号 | 実習実施予定表の「技能実習の内容」欄の番号 | 4 |
| 技能実習生に対する指導の内容 | 何を・どうやって教えたか、理解の確かめ方 | 植え穴の深さと株間のそろえ方を実演し、通訳を介して要点を確認した |
| 指導者氏名 | その日に実際に指導した人の氏名 | 鈴木 次郎 |
| 備考 | 天候による変更、対象の実習生、理解度など | 雨天のため午後はハウス内 |
「指導の内容」を具体的に書くコツ
指導の内容は、日誌の中で一番書きにくく、一番見られる欄です。次の3つを1文に入れると具体的になります。
- 何を教えたか(例:肥料袋の表示の読み方、区画ごとの量の量り方)
- どうやって教えたか(例:実演、図、母国語の資料、通訳を介して)
- どう確かめたか(例:一緒に散布して確認、本人に説明させた、やり直しをさせた)
「一緒に作業した」「指導した」だけでは、実習として何をしたのかが伝わりません。毎日長文を書く必要はありませんが、上の3つのうち少なくとも「何を」と「どうやって」は入れるようにします。
安全衛生の教育も日誌に書く
審査基準では、安全衛生業務(雇入れ時等の安全衛生教育、作業開始前の機械の点検、保護具の着用など)も実習の業務に含まれています。記入例の5/13のように、管理機の始業点検の手順や回転部に手を近づけないことを教えた日は、その内容と教え方を日誌に残します。
気をつけること・よくある間違い
1. 業務の欄に「農作業」とだけ書く
計画の業務名と番号がわからないと、計画どおりに実習が進んでいるか確認できません。また、計画にない業務をさせていないかを示す記録にもならなくなります。
2. 指導の内容が空欄、または毎日同じ文面
毎日「作業指導」とだけ書かれた日誌は、実際に指導したことの記録として弱くなります。日によって教えた内容は違うはずなので、その日の要点を1文で書きます。
3. 区分や業務の違う実習生を1冊にまとめる
参考様式の注意書きどおり、技能実習の区分(1号・2号・3号)、期間、行わせる業務が違う実習生は、日誌を分けて作ります。別紙の技能実習生一覧表で、どの実習生がどの日誌の対象かを明確にしておきます。
4. 指導者の欄に責任者の名前を一律で書く
実際に指導したのが従業員なら、その人の名前を書きます。誰がどの業務を教えられるかの記録にもなり、指導員の配置を見直すときの材料になります。
5. 後からまとめて書く
月末に1か月分をまとめて書くと、日付と作業の対応があいまいになり、出勤簿やタイムカードの記録と食い違うことがあります。その日のうちに、少なくとも週に1回は書く習慣をつけます。
6. 労働時間の記録を日誌で代用する
日誌は業務と指導の記録で、労働時間の記録ではありません。実習生の労働時間は労働基準法の基準に準拠するので、出勤簿やタイムカードで始業・終業・休憩を別に記録します。
7. 実習が終わったらすぐ処分する
日誌は技能実習が終了した日から1年間、事業所に備えておく必要があります。帰国や移行のあとも、期間が過ぎるまで保管します。
2027年4月から育成就労制度へ
2024年(令和6年)6月21日に公布された改正法により、2027年(令和9年)4月1日から、技能移転による国際貢献を目的とする技能実習制度は発展的に解消され、人手不足分野における人材の育成・確保を目的とする育成就労制度が始まります。農業も育成就労の対象分野で、出入国在留管理庁は農業分野の上乗せ基準告示も公表しています。
移行にあたって、農家が押さえておきたい点は次のとおりです。
- 外国人技能実習機構は、第1号技能実習計画の認定申請は令和9年2月までに行うよう案内しています
- 育成就労計画の認定の施行日前申請は、外国人技能実習機構の案内で2026年9月1日から始まっています
- 育成就労制度にも「育成就労日誌」(第4-3号様式)があり、日付、育成就労外国人に従事させた業務、指導の内容、指導員の氏名という、技能実習日誌と同じ考え方の欄になっています
- 施行日より前に始まった技能実習の扱い(経過措置)は、外国人技能実習機構や監理団体に確認してください
つまり、日々「何をさせ、どう教えたか」を記録する習慣は、制度が変わってもそのまま生きます。今のうちに書き方を固めておけば、移行後の育成就労日誌にもスムーズに移れます。
紙・Excelで続かないときは
技能実習日誌が続かない一番の理由は、「その日に誰が何の作業をしたか」を夕方に思い出せないことです。日誌そのものは指導者が書く必要がありますが、元になる作業の事実はアプリで残せます。
当社のミノリスタイマーは、作業の開始・終了を打刻して作業時間を記録する無料アプリです。実習生も名前だけで作業者に登録でき、共用のタブレットから作業の種類を選んで開始・終了を打刻し、終了時にメモを残せます。レポートでは、日ごとの作業記録(時間・作業者・作業種別・圃場・メモ)を一覧で確認できるので、日誌の「従事させた業務」を書くときの確認に使えます。技能実習日誌そのものを作る機能はありません。
栽培記録の側では、ミノリス日誌が使えます。作付けごとに農薬・肥料・作業・収穫の記録を残せるので、「5/8に元肥を散布した」「5/12に定植した」という圃場側の記録と、日誌の業務の欄を突き合わせられます。登録農薬から選ぶだけで使用回数や収穫前日数も確認できるため、実習生に防除作業を教えるときの確認にも役立ちます。収支管理やGPSによる作業の自動記録には対応していません。
実習で行った作業を、圃場の記録として残すなら
ミノリス日誌は完全無料(初期費用・月額0円)。作付けごとの作業・農薬・肥料・収穫の記録を写真つきで残し、CSV・Excelで出力できます。
初期費用・月額0円/クレジットカード不要
よくある質問
日誌は技能実習生本人が書くものですか?
日誌を作って備えておく義務があるのは実習実施者です(技能実習法第20条)。実際に誰が記入するかは条文に書かれていないため、監理団体と相談して決めてください。実際に指導した人が書くと、指導の内容を具体的に残せます。
日誌は毎日書く必要がありますか?
参考様式は1日1行の形式で、月ごとに1枚にまとめる作りです。実習を行った日ごとに書き、月ごとにまとめておくと、監理団体の監査や実地検査のときに出しやすくなります。書き方の細かい指定は監理団体に確認してください。
Excelやパソコンで作ってもいいですか?
参考様式はPDFとWordで公表されており、パソコンで作ることを前提にした形式です。印刷して事業所に備えるか、電子データでの備え付けでよいかは、監理団体に確認してください。
特定技能の外国人にも技能実習日誌は必要ですか?
技能実習日誌は技能実習制度の帳簿です(育成就労制度では育成就労日誌)。特定技能の外国人を雇う場合に必要な書類は、出入国在留管理庁の案内で確認してください。労働者名簿や賃金台帳は、国籍や在留資格にかかわらず、雇った人について作ります。
雨で予定の実習ができなかった日はどう書きますか?
実際に行わせた業務を書きます。ハウス内の作業や座学に切り替えた場合は、その業務名と番号、指導の内容を書き、備考に「雨天のため予定を変更」のように理由を残しておきます。
まとめ
技能実習日誌は、技能実習法第20条と施行規則第22条で作成と事業所への備え付けが義務づけられた帳簿で、技能実習の終了日から1年間備えておく必要があります。日付、計画の番号つきの業務、何を・どうやって教え・どう確かめたかという指導の内容、指導者氏名を、実習を行った日ごとに書くのが基本です。
2027年4月からは育成就労制度が始まりますが、育成就労日誌も同じ考え方の様式です。技能実習日誌の無料テンプレートには、耕種農業の記入例と技能実習生一覧表のシートが入っています。監理団体の指定様式がある場合はそちらを優先してください。
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