給与明細書の書き方と記入例(農業)|深夜割増・控除の無料テンプレート(Excel・PDF)

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パートや季節の作業者に毎月の給与を払うとき、本人に渡すのが「給与明細書」です。何日・何時間働いて、何がいくら支給され、何がいくら差し引かれたかを、1枚の紙で本人に伝えます。給与を払う人は、所得税法第231条により、支払明細書を本人に交付しなければなりません。農業を営む個人でも法人でも、1人でも雇って給与を払えば対象です。

この記事では、所得税法と労働基準法の条文、厚生労働省と国税庁の資料をもとに、給与明細書の各欄の書き方、農業で割増賃金が変わる点、控除できるものの範囲を説明します。保険料率や源泉徴収税額表は年度や年分ごとに変わるので、実際に計算するときは最新の公表資料を確かめてください。

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給与明細書とは/なぜ必要か

給与明細書は交付が義務になっている

所得税法第231条第1項は、国内で給与を支払う人に、金額その他必要な事項を書いた支払明細書を本人へ交付するよう求めています。所得税法施行規則第100条は、書く事項として、支払う給与の金額と、源泉徴収した所得税の額を挙げています。交付のタイミングは「その支払の際」です。

本人の承諾を得れば、書面の代わりに電磁的な方法で提供してもかまいません(第231条第2項)。ただし、本人から書面を求められたときは、書面で交付します。メールやLINEなどで送る場合は、先に本人の同意を得ておきます。

保険料を引いたときは控除額も知らせる

厚生年金保険法第84条第3項と健康保険法第167条第3項は、保険料を給与から控除した事業主に、控除額を被保険者へ通知するよう求める規定です。労働保険徴収法第32条第1項も、雇用保険料を控除したときの控除額を、被保険者に知らせるよう定めています。給与明細書の控除欄に項目ごとの額を書いておくと、この通知も兼ねられます。

賃金台帳とは別の書類

賃金台帳は、労働基準法第108条にもとづいて事業主が作り、手元で保存する帳簿です。給与明細書は本人に渡す書類で、賃金台帳は事業主が持つ書類という違いがあります。書く数字はほぼ同じなので、毎月の給与を計算したら、明細書と台帳に同じ数字を写します。

記入例

下の記入例は、時給1,200円で1か月に20日、160時間働いた作業者に払う給与が題材です。このうち4時間は午後10時から午前5時までの深夜に働いた時間です。年次有給休暇を1日取得し、家族手当が5,000円ついています。氏名と住民税の額は架空です。

給与明細書(農業)の記入例
給与明細書(農業)の記入例(出典:ミノリス 無料テンプレート)

基本給は時給1,200円に160時間を掛けて192,000円です。深夜割増賃金は1,200円に0.25と4時間を掛けた1,200円で、年次有給休暇の賃金は1,200円に所定8時間と1日を掛けた9,600円になります。家族手当5,000円を加えた総支給額は207,800円です。

控除は、雇用保険料が207,800円の6/1,000で1,247円、所得税が4,550円、住民税が5,500円で、合計11,297円です。総支給額から控除額合計を引いた差引支給額は196,503円になります。記入例の「計算のしかた・メモ」欄は本人に渡す紙には不要なので、自分の明細書では消して使ってください。

書き方(項目ごと)

記入例の欄の順に、書き方を説明します。

事業場名・氏名・支給する月・支給日

事業場名は、農園や法人の名前です。氏名は雇っている本人の名前で、支給する月には賃金計算期間を入れます。たとえば「10月分(9月21日から10月20日)」のように、締め日がわかる書き方がよいでしょう。

支給日は、実際に給与を払った日です。労働基準法第24条第2項は、賃金を毎月1回以上、一定の期日を定めて払うよう求めています。毎月25日などと決めたら、その日に払います。

労働日数・労働時間数

出勤簿やタイムカードの、その月の合計を転記してください。労働日数は働いた日の数、労働時間数は「160:00」のように時間と分で書く形です。賃金台帳にも、同じ数字を書きます。

厚生労働省令(労働基準法施行規則第54条)は、賃金台帳に労働日数と労働時間数を書くよう定めています。農業に従事する人については、労働時間数の記載は不要という扱いです。それでも時給や日給で払うなら、時間の記録は賃金計算の根拠になるので、明細書には書いておきます。

深夜労働時間数

午後10時から午前5時までに働いた時間の合計を書きます。記入例は4時間です。農業でもこの時間帯に働いてもらうと割増賃金が発生するので、時間を別に集計しておきます。

深夜の時間帯は、厚生労働大臣が必要と認めた地域や期間に限り、午後11時から午前6時になることがあります(労働基準法第37条第4項)。該当するかどうかは、労働基準監督署に確かめてください。

時間外・休日労働時間数

農業に従事する人は、労働基準法第41条により、労働時間・休憩・休日の規定が適用されません。時間外・休日の割増賃金を定める第37条第1項も同様に適用されないので、記入例では「−」としています。

農産物の販売や加工を主な業務にしている事業場で働く人は、商業や製造業にあたるため、適用除外になりません。外国人技能実習生も、農業であっても労働基準法の基準に準拠することとされています。この場合は、時間外や休日の時間数と割増賃金の欄に記入してください。就業規則や雇用契約で時間外の割増を払うと決めている場合も、その定めどおりに書いてください。

年次有給休暇

取得した日数と、残りの日数を書きます。記入例は「1日/残5日」です。年次有給休暇は労働基準法第39条の規定で、雇入れから6か月間継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤した人に10労働日が与えられます。この規定は、農業でも適用除外になりません。

厚生労働省のパンフレットは、年10日以上の年次有給休暇が与えられた人には、毎年5日、使用者が時季を指定して取得させる義務があると説明しています。年休を取った日の賃金は、支給欄に別の行で書きます。

基本給

時給なら時給に時間数を掛けた額、日給なら日給に日数を掛けた額、月給ならその月の額が基本給です。記入例は1,200円に160時間を掛けた192,000円です。計算式をメモ欄に残しておくと、あとで本人に聞かれたときに説明できます。

時給や日給に換算した額は、都道府県ごとに定められた最低賃金以上でなければなりません。厚生労働省のパンフレットによると、最低賃金は正社員だけでなく、パートや外国人技能実習生にも適用されます。

深夜割増賃金

通常の賃金に0.25以上の率と深夜の時間数を掛けた額です。記入例は1,200円に0.25と4時間を掛けた1,200円です。労働基準法第37条第4項は、深夜に働かせたときは通常の賃金の2割5分以上で計算した割増賃金を払うよう求めています。

基本給にすでに深夜の時間分が含まれている形で払っている場合も、深夜の割増分に相当する額が払われているかを確かめてください。基本給の欄と深夜割増の欄は分けて書く方が、払った額を本人も確かめやすくなるでしょう。

手当

手当は、名前と額を1行ずつ書きます。記入例は家族手当5,000円です。第37条第5項により、家族手当と通勤手当は、割増賃金の計算の基礎になる賃金に入れません。時給に換算するとき、これらの手当は除いて計算します。

電車やバスで通勤する人の通勤手当は、国税庁によると、月15万円まで所得税が非課税です。非課税の限度を超える部分は給与として課税されるので、課税される手当の欄に入れます。マイカーや自転車で通勤する人の限度額は、国税庁のタックスアンサーNo.2585で確かめられます。

総支給額

基本給、割増賃金、年休の賃金、手当を足した額です。記入例は207,800円です。Excelのテンプレートは自動で合計するので、手計算の手間が省けます。手書きの場合は、電卓で合計を2回確かめます。

雇用保険料

総支給額に、その年度の労働者負担の料率を掛けた額が雇用保険料です。厚生労働省によると、令和8年度(2026年4月から2027年3月)の労働者負担は、一般の事業が5/1,000、農林水産の事業が6/1,000です。記入例は農林水産の事業の6/1,000を使い、207,800円で1,247円としています。

園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖を営む事業には、一般の事業の率が適用されます。自分の経営がどちらにあたるかは、公共職業安定所に確かめてください。料率は年度ごとに変わるので、前年度の率のまま計算しないようにします。

健康保険料・厚生年金保険料

法人の事業所は、健康保険と厚生年金保険に加入する必要があります。個人経営の農業は、強制適用の事業に入っていません(健康保険法第3条第3項)。厚生労働省のパンフレットによると、個人経営の農林水産業でも、使用される人の2分の1以上の同意と厚生労働大臣の認可があれば、任意で加入できます。

加入していない事業所の記入例では、この2つの欄は空白です。加入している場合は、年金事務所や健康保険組合から通知された標準報酬月額にもとづく額を書きます。

所得税

国税庁の源泉徴収税額表で求めた額を書きます。月ごとに給与を払う場合は月額表を使い、総支給額から非課税の通勤手当と社会保険料の合計を引いた額を、税額表の「その月の社会保険料等控除後の給与等の金額」の欄に当てはめる形です。記入例は、207,800円から雇用保険料1,247円を引いた206,553円の欄を見て、4,550円としました。

その人から「扶養控除等申告書」を出してもらっている場合は甲欄、出してもらっていない場合は乙欄を使います。令和8年分の税額表は、国税庁が公表しています。令和7年以前の給与の計算には、令和8年分の税額表を使いません。

住民税・その他の控除・差引支給額

住民税は、市区町村から事業主へ通知された特別徴収の月額を書きます。記入例の5,500円は架空の額です。その他の控除には、寮費や食費などを書きます。

控除額合計は、社会保険料の計、所得税、住民税、その他の控除を足した額です。差引支給額は、総支給額から控除額合計を引いた額で、本人が受け取る額になります。記入例は207,800円から11,297円を引いた196,503円です。

気をつけること・よくある間違い

農業だから割増賃金は一切いらないと考える

時間外と休日の割増賃金は、農業に従事する人には適用されません。深夜の割増賃金は、厚生労働省のパンフレットも、農業従事者でも払うことが必要と説明しています。深夜に収穫や出荷の準備をしてもらう農家は、深夜の時間を別に集計します。

控除額を合計だけ書く

雇用保険料、所得税、住民税は、それぞれ別の額として書いてください。合計だけを書くと、本人が何をいくら引かれたのかを確かめられません。保険料の控除額を本人に通知する義務も、項目ごとに書くことで果たせます。

賃金から勝手に天引きする

労働基準法第24条第1項は、賃金を通貨で、直接労働者に、その全額を払うよう定めています。控除できるのは、法令に定めがあるもの(所得税、住民税、社会保険料、雇用保険料など)と、労働者の過半数代表者などとの書面による協定があるものだけです。寮費や食費を引きたいときは、協定を結んでから控除します。

去年の料率や税額表のまま計算する

雇用保険料率は年度ごと、源泉徴収税額表は年分ごとに変わることがあります。令和8年度の雇用保険料率は、前年度より労働者負担が0.5/1,000下がりました。年度が替わる4月と、年が替わる1月に、使っている率と税額表を見直します。

口座振込にするとき同意をとっていない

賃金は直接労働者に払うのが原則で、口座振込にするには労働者の同意が必要です。厚生労働省のパンフレットも、労働者の同意を得て、指定する口座へ振り込むことができると説明しています。同意はあとで確かめられるよう、書面に残します。

所得税を総支給額で税額表に当てはめる

月額表で見るのは、社会保険料等を控除した後の金額です。総支給額のまま当てはめると、所得税を多く引いてしまいます。非課税の通勤手当がある場合も、あらかじめ総支給額から引いておきます。

時給が最低賃金を下回っている

最低賃金は都道府県ごとに決まっていて、毎年改定されるものです。時給を毎年見直さないと、改定後に最低賃金を下回ることがあります。毎年の改定後に、自分の県の最低賃金と明細書の時給を見比べてください。

保存期間と交付の方法

給与明細書そのものの保存期間を直接定めた条文は、確認できた範囲ではありません。賃金台帳は、労働基準法第109条が保存の対象に挙げています。保存期間は5年ですが、同法附則第143条により、当分の間は3年とされています。

明細書の控えは手元に残しておくと、本人から問い合わせがあったときに照合できて便利です。紙で渡す場合はコピーかスキャンを、電磁的方法で渡す場合は送ったデータを保存します。

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紙・Excelで続かないときは

給与明細書の労働日数や労働時間数は、出勤簿やタイムカードの合計を写すのが基本です。作業者が増えると、誰がどの日に何時間働いたかを月末にまとめるだけでも手間がかかります。深夜の時間を別に集計するなら、なおさらです。

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  • 作業者ごとの月の入った日数と合計作業時間をレポートで確かめられる
  • 給与明細書の労働日数・労働時間数を確かめるのに使える
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給与計算や給与明細書の作成の機能はありません。雇用保険料や所得税の計算にも対応していないので、金額の計算はExcelのテンプレートや会計ソフトで行ってください。深夜の時間数も自動では区分されないため、明細書に書く前に確認が必要です。

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よくある質問

給与明細と賃金台帳は何が違いますか?

給与明細は、給与を払うたびに本人へ渡す書類で、根拠は所得税法第231条です。賃金台帳は、事業主が手元に作って保存する帳簿で、根拠は労働基準法第108条です。書く数字はほぼ同じなので、台帳の数字と見比べながら作ると間違いが減ります。

手書きの給与明細でもよいですか?

使えます。施行規則第100条が求めるのは、支払う給与の金額と、源泉徴収した所得税の額などの事項です。様式は決まっていないので、これらが書かれていれば手書きでも問題ありません。

パートに給与明細書を渡さなくてもよいですか?

雇用形態に関係なく、給与を払うすべての人が交付の対象です。パートやアルバイト、短期の作業者にも、給与を払うたびに渡します。

雇用保険は必ず入るのですか?

厚生労働省のパンフレットによると、個人事業所で労働者が常時5人未満の農林水産業は、雇用保険の適用が任意です。5人以上の個人事業所と法人は強制です。短時間の人は、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあれば加入します。

メールで給与明細を送ってもよいですか?

本人の承諾を得れば、書面の代わりに電磁的な方法で提供できます(所得税法第231条第2項)。本人が書面を求めたときは、書面で交付します。承諾を得た記録は残しておきます。

所得税の甲欄と乙欄はどちらを使えばよいですか?

その人から扶養控除等申告書を出してもらっていれば甲欄、出してもらっていなければ乙欄です。短期間だけ来てもらう人など、税額表の区分に迷う場合は、税務署に確かめてください。

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まとめ

給与明細書は、勤怠、支給、控除、差引支給額を1枚に書いて、給与を払うたびに本人へ渡す書類です。農業でも深夜の割増賃金は必要で、時間外と休日の割増賃金は、農業に従事する人には適用されません。雇用保険料率と源泉徴収税額表は毎年変わるので、最新のものを使います。

テンプレートで下書きしたら、賃金台帳と同じ数字になっているかを確かめてください。社会保険の加入や所得税の区分に迷う場合は、年金事務所、公共職業安定所、税務署、社会保険労務士などに確かめます。

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