賃金台帳(農業)の書き方と記入例|無料テンプレート(Excel・PDF)

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人を雇って賃金を払うと、払うたびに記録を残す帳簿が要ります。それが賃金台帳です。労働基準法第108条は、使用者に対して、事業場ごとに賃金台帳を作り、賃金を支払うたびに遅れずに記入するよう定めています。雇う人が1人でも、農業でもこの義務は変わりません。

この記事では、e-Gov法令検索の条文と厚生労働省の資料をもとに、賃金台帳の記載事項、農業に従事する人の扱い、各欄の書き方、保存期間を説明します。使う前に、社会保険労務士や労働基準監督署にも確認してください。

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賃金台帳(農業)とは/なぜ必要か

記載事項は法令で決まっている

賃金台帳に書く事項は、労働基準法施行規則第54条が、労働者ごとに定めています。使用者は、次の8つを賃金台帳に記入します。

  1. 氏名
  2. 性別
  3. 賃金計算期間
  4. 労働日数
  5. 労働時間数
  6. 時間外労働・休日労働・深夜労働をさせた場合の、その時間数
  7. 基本給・手当その他賃金の種類ごとの額
  8. 賃金の一部を控除した場合は、その額

つまり賃金台帳は、いつの分の賃金を、何日・何時間の労働に対して、いくら払い、いくら引いたかを残す帳簿です。計算の基礎になった日数や時間まで書く点で、金額だけを並べた帳簿とは異なります。

給与明細書との違い

給与明細書は、賃金を払うときに労働者へ渡す書類です。賃金台帳は、事業場に備えて保存し、労働者ごとに支払いの記録を残していく帳簿です。

同じ数字を使う場面が多いので、給与明細書を作るときに賃金台帳へも写せば、転記は1回で済みます。給与明細書の書き方は、給与明細書の書き方と記入例の記事で説明しています。

どんなときに使うか

賃金台帳は、次のような場面で参照します。

  • 毎月の給料を計算して支払ったとき
  • 年末調整や源泉徴収票を作るときに、1年分の支給額と控除額を確かめるとき
  • 労働基準監督署の調査や、助成金の申請で、賃金の記録を求められたとき

年末調整の計算方法や税額は、この記事では扱いません。税理士や税務署に確認してください。

農業に従事する人の場合

労働基準法第41条により、労働時間・休憩・休日の規定が適用されない人がいます。農業・畜産・養蚕・水産の事業に従事する人などです。この人たちについては、施行規則第54条第5項で、上の5番の労働時間数と、6番の時間外・休日・深夜の労働時間数は、記入を要しないとされています。

ただし、深夜に働かせた場合の割増賃金は、農業でも必要です。割増賃金を正しく計算したことを後から確かめられるよう、このテンプレートでは深夜労働時間数を書く欄を残しています。厚生労働省の「農業者・農業法人 労務管理のポイント」も、農林水産省のサイトに掲載されています。

農産物の販売や加工を主な業務とする事業場と、外国人技能実習生は、扱いが異なる点に注意してください。該当する場合は、労働時間数や時間外労働の時間数も記入する前提で、提出先や労働基準監督署に確認してください。

記入例

下の記入例は、佐藤花子さんの6月分と7月分、12月1日に払う賞与を記入した想定です。6月は、労働日数が22日、労働時間数が165時間で、深夜に6時間働いています。

賃金台帳(農業)の記入例
賃金台帳(農業)の記入例(出典:ミノリス 無料テンプレート)

6月の基本給は181,500円、通勤手当は5,000円、深夜の割増賃金は1,650円で、総支給額は188,150円です。ここから雇用保険料1,129円と所得税2,500円を引いて、差引支給額は184,521円になります。7月と賞与も、同じ並びで記入しています。

記入例の基本給は、時給1,100円で計算した額です。深夜の割増は、時給の25%にあたる275円に深夜労働時間数をかけて出しています。6月は6時間なので1,650円、7月は8時間なので2,200円です。

最下行の合計は、1年分を縦に足した値です。記入例では、総支給額の合計が415,100円、控除額合計が8,991円で、差引支給額の合計は406,109円となっています。記入例の氏名・金額は架空の数字です。

雇用保険料は、2026年度の農林水産の事業の労働者負担率(1,000分の6)で計算しました。所得税などは架空の数字です。控除額は、その年の料率や税額表で計算してください。

書き方(項目ごと)

各欄の書き方を、表にまとめます。労働日数・労働時間数・深夜労働時間数は、出勤簿・作業時間記録の月の合計から写します。

欄 書くこと 記入例
氏名・性別 労働者の氏名と性別(表の上に書く) 佐藤 花子・女
賃金計算期間 どの期間の賃金か 6/1〜6/30
労働日数 期間中に働いた日数 22
労働時間数 期間中に働いた時間の合計 165:00
時間外・休日労働時間数 法定の時間外・休日労働の時間(農業に従事する人は記入不要) −
深夜労働時間数 午後10時〜午前5時に働いた時間 6:00
基本給・手当 賃金の種類ごとの額(手当は種類と額を分けて書く) 181,500円・通勤 5,000円
割増賃金 深夜などの割増の額 1,650円
総支給額 基本給+手当+割増賃金(Excelは自動計算) 188,150円
控除額 社会保険料・雇用保険料・所得税・住民税などの種類ごとの額(控除額合計はExcelが自動計算) 雇用保険料 1,129円/所得税 2,500円
差引支給額 総支給額−控除額合計(Excelは自動計算) 184,521円

氏名・性別・賃金計算期間

氏名と性別は表の上に書き、賃金計算期間にはその行の賃金がどの期間の分かを書きます。月末締めの場合は、記入例のとおり6/1〜6/30と書けば十分です。

支払日も、あわせて書いておくと確かめやすくなります。記入例は、6月分を7月15日、7月分を8月15日に払う想定です。

労働日数と労働時間数

労働日数は、期間中に働いた日数です。労働時間数は、働いた時間の合計で、記入例は165:00のように時間と分で書いています。

農業に従事する人は、労働時間数の記入が法律上は不要です。それでも書いておくと、時給や日給で払う賃金の根拠が残ります。出勤簿や作業時間の記録から、月ごとに合計を写してください。

時間外・休日労働時間数と深夜労働時間数

時間外・休日労働時間数の欄は、農業に従事する人であれば記入を要しません。記入例も、この欄は「−」にしています。販売や加工の事業場のように、時間外・休日の規定が及ぶ人には、時間数を書きます。

深夜労働時間数は、午後10時から午前5時までに働いた時間です。早朝の収穫や夜間の出荷作業で、この時間帯に働いた人がいれば、その時間を書いてください。

基本給と手当

基本給と手当は、賃金の種類ごとに額を書きます。記入例は、基本給181,500円と通勤手当5,000円です。

手当が2種類以上あるときは、種類の欄に「通勤 5,000・家族 3,000」のように内訳を書き、額の欄には合計を書きます。手当をまとめて1行にすると、何の手当をいくら払ったかが後から分かりません。

割増賃金と総支給額

割増賃金の欄には、深夜などの割増の額を書きます。記入例の1,650円は、先に説明した計算で出した額です。深夜労働時間数を書いておけば、この額が正しいかを時間数から確かめられます。

総支給額は、基本給と手当と割増賃金を足した額です。Excelのテンプレートでは自動で計算されます。

控除額と差引支給額

控除額は、社会保険料、雇用保険料、所得税、住民税などを、種類ごとに書きます。合計だけを書くと、何をいくら引いたか分からなくなるためです。加入していない保険の欄は、空欄のままで構いません。

差引支給額は、総支給額から控除額合計を引いた額で、労働者に実際に払う額です。Excelのテンプレートでは、控除額合計と差引支給額が自動で計算されます。

月別列形式シートの使い方

Excelには、賃金台帳(月別列形式)のシートも入っています。項目を行に、月を列に並べた形式で、1年分の推移を横に見られます。

総支給額、控除額合計、差引支給額と右端の合計の列は、Excelの計算式が自動で出す仕組みです。行を足したり消したりすると計算の範囲がずれるので、行は増減せず、項目名を書き換えて使ってください。

気をつけること・よくある間違い

全員分を1枚の表にまとめる

賃金台帳は、労働者ごとに作ります。全員を1枚の表に並べると、1人分の記録を取り出して提出するときに困ります。1人につき1枚、Excelなら1人につき1シートに分けてください。

控除額を合計だけで書く

施行規則第54条は、賃金の一部を控除した場合に、その額を書くよう求めています。社会保険料、雇用保険料、所得税などは、種類ごとの額が分かるように書いてください。

深夜割増の根拠が残っていない

農業では、労働時間数や時間外の時間数を書かなくても、法令には違反しません。ただし、深夜労働時間数まで空欄にすると、割増賃金を正しく払ったかどうかを後から確かめられません。調査や助成金の確認で説明を求められたときに困るので、深夜に働いた時間は書いておきます。

農業の特例を事業場全体に当てはめる

記入を要しないとされるのは、労働基準法第41条で労働時間などの規定が適用されない人です。農産物の販売や加工を主な業務とする事業場の人や、外国人技能実習生は扱いが異なります。同じ農園で働く人でも、担当する業務によって扱いが変わる場合があるため、迷ったら労働基準監督署に確認してください。

保存と提出

賃金台帳の保存期間は、労働基準法第109条で5年間と定められています。ただし、同法第143条の経過措置により、当分の間は3年間とされています。

起算日は、最後に記入した日です。賃金の支払期日のほうが遅い場合は、その支払期日から数えます(施行規則第56条)。台帳を年ごとに分けて保存するときも、この起算日を基準に、廃棄してよい時期を決めてください。

労働基準監督署の調査や助成金の申請で賃金の記録を求められたら、台帳を示します。提出先が指定の様式を求める場合は、その様式に従ってください。月別列形式のシートは、そのまま印刷して添えることもできます。

賃金台帳の原本は、紙でもExcelなどの電子データでも構いません。電子データで保存するときは、画面で確認できて、必要なときに印刷できる状態にしておくと安心です。

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よくある質問

厚生労働省の様式を使ってもよいですか?

はい。厚生労働省の主要様式ダウンロードコーナーに、賃金台帳(常用労働者用・日々雇い入れられる者用)の様式があります。このテンプレートの月別列形式シートも、項目を行に、月を列に並べた同じ考え方の形式です。JAや税理士・社会保険労務士から指定の様式がある場合は、そちらを使ってください。

給与計算ソフトの記録で代わりになりますか?

施行規則第54条の記載事項がそろっていれば、紙の台帳でなくても構いません。足りない項目がないか、特に労働日数や深夜労働時間数が記録されているかを確かめてください。

日雇いで数日だけ来てもらった人の分も要りますか?

はい。賃金台帳は、日々雇い入れる人についても作ります。日々雇い入れられる人は、1か月を超えて引き続き使用される人を除き、賃金計算期間の記入を要しないとされています(施行規則第54条第4項)。

賃金台帳は全員分を1枚にまとめてよいですか?

まとめません。賃金台帳は労働者ごとに作る帳簿です。1人につき1枚、Excelなら1人につき1シートに分けてください。

賃金台帳は何年間保存しますか?

労働基準法第109条は5年間と定めていますが、同法第143条の経過措置により、当分の間は3年間とされています。起算日は最後に記入した日で、賃金の支払期日のほうが遅いときは、その支払期日です(施行規則第56条)。

農業なのに深夜労働時間数を書く必要がありますか?

深夜に働かせた場合の割増賃金は、農業でも必要です。深夜労働時間数を書いていないと、割増賃金を正しく払ったかどうかを後から確かめられません。法律上の記入義務はなくても、このテンプレートでは欄を残しています。

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まとめ

賃金台帳には、労働者ごとに、氏名、性別、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、賃金の種類ごとの額、控除額などを書きます。給与明細書は労働者に渡す書類で、賃金台帳は事業場に備えて保存する帳簿です。

農業に従事する人は、労働時間数と時間外・休日・深夜の時間数の記入が法律上は不要です。ただし深夜の割増賃金は農業でも必要なので、深夜労働時間数を残しておくと後から確かめられます。保存期間は当分の間3年間で、起算日は最後に記入した日か、支払期日の遅いほうです。テンプレートで台帳を作ったら、提出先の様式や自分の事業場の扱いについて、社会保険労務士や労働基準監督署にも確認してください。

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参考URL