集落で営農組合をつくるとき、最初に決めるのが規約です。規約には、誰が構成員になり、何を総会で決め、お金をどう扱うかを書きます。経営所得安定対策の交付金を集落営農として申請する場合は、規約に書くべき事項も要綱で決まっています。
この記事では、農林水産省の「経営所得安定対策等実施要綱」と集落営農のQ&Aをもとに、規約の各条の書き方と、要綱の要件を確かめる方法を解説します。要件の細かい運用は年度ごとに変わることがあります。申請の前に、地方農政局・地域農業再生協議会・市町村へ確認してください。税務の扱いは、税理士や税務署への確認が必要です。
集落営農組織の規約の無料テンプレート(Word・PDF/記入例・要件チェック表・構成員名簿つき)
集落営農組織の規約とは/なぜ必要か
集落営農は、集落などのまとまりで、農業機械を共同で使ったり、農作業をまとめて行ったりする組織です。任意組織の営農組合も、これに含まれます。規約は、その組織の約束事を文字にしたものです。
規約があると、役員が替わっても運営の方法を保ちやすくなります。農地や機械の使い方、利益の分け方で構成員の意見が分かれたときも、規約を読み返して判断の手がかりにできます。次のような場面で、規約が必要になります。
- 集落で話し合って、営農組合を新しくつくるとき
- 経営所得安定対策(ゲタ・ナラシ)や水田活用の直接支払交付金を、集落営農として申請するとき
- 役員の交代や法人化に向けて、今の規約を見直すとき
集落営農の全体像や、法人化の進み具合は、集落営農の数と法人化率を地域別にまとめた記事で見られます。令和8年2月1日現在の調査では、全国の集落営農は1万3,622で、法人でない集落営農が7,826でした。
経営所得安定対策で求められる要件
経営所得安定対策の交付金を受けられる「集落営農」(法人を除く)は、要綱で次の3つをすべて満たす組織とされています。
1つ目は、定款または規約が定められていることです。規約には、目的、構成員たる資格、構成員の加入及び脱退、代表者、総会の議決事項、総会の議決方法、農用地の利用及び管理、農業用機械及び農業用施設の利用及び管理の8項目をすべて書きます。
8項目の内容にも基準があります。加入と脱退に不当な制約がないこと、代表者の選任手続が明らかなこと、規約の変更その他の重要事項が総会の議決事項になっていること、総会の議決方法が構成員の参加を不当に差別していないことです。
2つ目は、共同販売経理を行っていることです。組織の代表者名義の口座を設け、農産物を組織の名義で販売し、販売収入をその口座に入れます。利益の全部または一部は、全ての構成員に配分します。耕作の費用は、全ての構成員が共同して負担する決まりです。
3つ目は、地域の農地利用の集積と法人化を確実に行うと、市町村から判断を受けていることです。この判断は市町村との手続で、規約には書きません。
交付申請のときに出すのは、規約の写し、構成員名簿の写し、代表者名義の預金通帳の写し、総会資料などです。前年度までに出した書類から変わりがなければ、提出を省略できます。
水田活用の直接支払交付金では、集落営農を「組織の規約と代表者を定め、対象作物の生産・販売について共同販売経理を行っている、複数の販売農家からなる農作業受託組織」としています。交付金の種類によって言い方が異なるので、申請する交付金の要件を確かめてください。
このテンプレートの構成
テンプレートは3つのページでできています。1つ目は第1条から第17条までと附則の規約本文、2つ目は要綱の要件を条ごとに確かめる「集落営農の要件チェック表」、3つ目は構成員と提供する農用地の面積を管理する「構成員名簿」です。Word(入力用)と手書き用のPDFを、登録なしでダウンロードできます。
要件に当たる条は、記入例の末尾のチェック表で、規約のどの条が要綱のどの記載事項に当たるかを対応させています。規約を総会に諮る前と交付金の申請前に、1項目ずつ確認の印を付ける使い方です。
記入例
下の記入例は、水稲・大豆・麦をつくる架空の営農組合の規約です。組合長の自宅に事務所を置き、組合長・副組合長・会計・監事の4人が役員を務め、将来の法人化をめざす想定で書きました。

記入例は、第1条の名称と事務所から、第17条の解散までの条文形式です。最後に附則として、規約を施行する日を置きました。規約本文のあとには、要件チェック表と構成員名簿のページが続きます。
記入例の組合名、日数、時間単価、法人化の年度は「〇〇」と伏せ字にしています。施行日の2026年1月1日や、確認日の2025年12月10日は、記入例のために置いた架空の日付です。記入例の数字や名前は、すべて架空のものです。自分の組織の実情に合わせて書き換えてください。
書き方(項目ごと)
記入例の条の順に、書き方を説明します。条の見出しの後ろに「要件」と付けたものは、要綱で規約に書くよう求められている事項に当たります。
第1条 名称と事務所
組織の名称と、事務所の場所を書きます。記入例は「〇〇営農組合」とし、事務所は代表者の自宅に置きました。事務所の場所が変わる可能性があるときは、住所までは書かず「代表者の自宅」「組合長が指定する場所」のように書くと、規約を直さずに済む場合があります。
第2条 目的(要件)
組織が何をめざすかを書きます。要綱が求める8項目の1つです。記入例は、集落の農用地を守ること、機械の共同利用と農作業の共同化で生産コストを下げること、農業経営の法人化をめざすことの3つです。
目的は、あとの条の内容とつながるように書きます。法人化を目的に入れるなら、第16条に法人化の条を置きます。目的に書いたことと、規約全体の中身がずれないようにしてください。
第3条 事業
組織が行う事業を並べます。記入例は、水稲・大豆・麦の生産と販売、農作業の受託、農業機械・施設の共同利用、生産資材の共同購入、その他の5つです。
実際に行わない事業は書きません。事業を増やすときは、総会で規約を変更します。最後の「その他、組合の目的を達成するために必要な事業」を入れておくと、小さな追加のたびに変更する手間を減らせることがあります。
第4条 構成員の資格(要件)
誰が構成員になれるかを書きます。記入例は、〇〇集落に住所または農用地の権利をもち、組合の事業に農用地を提供する者としました。
要綱は、加入や脱退に不当な制約がないことを求めています。資格を狭くしすぎると、集落内の農家が入れなくなります。集落に住所がなくても農地をもつ人を含めるかどうかは、話し合って決めてください。
第5条 加入、第6条 脱退(要件)
入る手続と、やめる手続を書きます。記入例の加入は、提供する農用地の面積を書いた加入申込書を組合長に出し、総会の承認を受ける形です。脱退は、〇日前までに書面で予告し、事業年度の終わりにやめられる形にしました。
記入例では、死亡したとき、資格を失ったとき、除名されたときも脱退としました。脱退するときの精算は、総会で定めた方法で行う形です。予告の日数は、記入例では伏せ字です。農作業の計画に支障が出ないよう、作付けの前に決められる日数を話し合ってください。
第7条 役員(要件)
役職と、選び方と任期を書きます。要綱は、代表者の選任手続が明らかであることを求めています。記入例は、組合長1名、副組合長1名、会計1名、監事1名を総会で構成員の中から選び、組合長が組合を代表する形です。任期は2年です。
選び方は、記入例では「総会で選ぶ」と書きました。再任を認めるかどうかは、組織で話し合い、規約に書くか総会で決めておくか、市町村や県にも確認してください。
第8条 総会の議決事項(要件)
総会で決める事項を並べます。要綱は、規約の変更その他の重要事項が総会の議決事項になっていることを求めています。記入例は、規約の変更、事業計画と収支予算、事業報告と収支決算、役員の選任、利益の配分の基準、作業料金と出役の単価、構成員の加入・脱退・除名、借入れと財産の処分、法人化、解散の10項目です。
お金に関わること、構成員の資格に関わること、組織のあり方に関わることを入れておくと、役員会だけで決めてしまう事態を防ぎやすくなります。
第9条 総会の議決方法(要件)
総会を開く回数、成立の条件、議決の方法を書きます。記入例の総会は、毎年1回開く形です。成立は構成員の過半数の出席で、書面か代理人で議決権を行使した人は出席者に数えます。議決権は1人1票で、議事は出席者の過半数で決めます。規約の変更と解散だけは、構成員の3分の2以上の賛成を条件にしました。
要綱は、議決方法が構成員の参加を不当に差別していないことを求めています。1人1票とし、書面や代理人での参加を認めると、農作業で出席できない人も議決に加われます。農地の面積や出資額に応じて議決権に差をつける場合は、差別にならないか、あらかじめ地域農業再生協議会や市町村に確認してください。
第10条 農用地の利用と管理(要件)
構成員が提供した農用地を、どう耕作し、どう管理するかを書きます。記入例は、組合で作付計画を立てて耕作し、畦畔の草刈りと水管理は、農用地を提供した構成員に委託して作業料金を支払う形です。
作付計画を誰がいつ立てるか、畦畔管理を誰が担うかを書いておくと、農地の荒れを防ぎやすくなります。農地ごとの作付けや作業を残す記録は、圃場台帳の作り方の記事も参考にしてください。
第11条 機械・施設の利用と管理(要件)
機械や施設を、どう使い、どう管理するかを書きます。記入例は、トラクター・田植機・コンバイン・乾燥施設を組合で所有するか借り受け、利用計画を立てて使う形です。オペレーターは総会で決め、点検整備の記録を残します。
機械の所有者が組合なのか構成員個人なのかによって、費用の負担や修理の扱いが変わります。どちらの場合も書いておけば、故障や更新の話し合いが短く済むことがあります。
第12条 共同販売経理
口座と、販売の名義を書きます。記入例は、組合長名義の口座を設け、農産物は組合の名義で販売します。販売代金と交付金はこの口座に入金し、組合の経費もこの口座から払う形です。
共同販売経理は、交付金の要件に当たります。口座の名義が個人の口座のままだったり、販売代金を構成員の個人口座に直接入れたりしていないか、要件チェック表で確かめてください。
第13条 費用の負担と利益の配分
費用を誰がどう負担し、利益をどう配分するかを書きます。記入例は、事業の費用を構成員が共同して負担し、利益は、出役時間に応じた作業料金と、提供した農用地の面積に応じた配分によって、すべての構成員に配分する形です。配分の基準は総会で決めます。
農林水産省のQ&Aは、出資の額を10aあたり、1人あたり、1戸あたりで決める例があるとしています。利益の配分は、出資額、農地面積、出役時間などで決める方法が考えられる、という説明です。自分の組織に合う組み合わせを、集落で十分に話し合って選んでください。
第14条 出役と作業料金
出役の記録の方法と、作業料金の決め方を書きます。記入例は、構成員の出役を作業日誌に記録し、時間単価により作業料金を支払います。時間単価はオペレーターと補助作業で分け、総会で決める形です。単価は記入例では伏せ字です。
出役の記録は、作業料金と利益の配分の根拠になります。誰が何時間、どの作業に出たかを、日ごとに残しておいてください。
第15条 会計と監査
会計年度と、監査の方法を書きます。記入例は、1月1日から12月31日までを会計年度とし、帳簿と通帳で収支を明らかにします。監事の監査を受けたうえで、総会に報告する流れです。
会計年度は、組織の作業の流れに合う期間にします。交付金の入金や決算の時期との関係もあるため、事務を担う会計の人と相談して決めてください。
第16条 法人化、第17条 解散、附則
法人化をめざす時期と、解散の決め方、規約の施行日を書きます。記入例は、〇年度までに法人になることをめざし、役員会で準備を進めて総会に諮る流れです。解散は、総会で構成員の3分の2以上が賛成して決まる形にしました。法人化するときの財産や負債の引き継ぎ方は、規約や定款で定めてください。市町村や県にも確認すると安心です。
附則には、この規約を施行する日を書きます。記入例は2026年1月1日です。総会で決めた日と施行日が異なる場合は、両方を記録に残しておくと確認しやすくなります。
要件チェック表と構成員名簿
要件チェック表は、要綱の記載事項と内容の基準を、規約のどの条が満たすかを1つずつ確かめる表です。記入例では、目的は第2条、構成員たる資格は第4条、加入及び脱退は第5条と第6条と対応させ、確認の印を付けています。確認した日と確認した人の名前も書きます。
構成員名簿には、番号、氏名、住所、提供する農用地の面積、出資や負担金、加入日、脱退日、役職や担当の欄を設けています。交付申請では名簿の写しを出すため、加入や脱退のたびに更新してください。
気をつけること・よくある間違い
集落営農の規約でよくある間違いは、次の4つです。
1つ目は、8項目のうち「農用地の利用及び管理」と「機械・施設の利用及び管理」が抜けていることです。目的や役員は書いてあっても、この2つが抜けている規約があります。要件チェック表で、8項目すべてに対応する条があるかを確かめてください。
2つ目は、販売の名義が構成員個人のままであることです。共同販売経理では、農産物を組織の名義で販売し、組織の口座に入金することが求められます。形だけ代表者名義の口座をつくり、販売収入を全部構成員に配っているような場合は、共同販売経理とは認められません。
3つ目は、利益の配分の基準を総会で決めていないことです。出役時間、面積、出資のどれでどう配るかを総会で決め、議事録に残しておくと、説明を求められたときに困りません。
4つ目は、出役を記録していないことです。作業料金や配分の根拠になるので、誰が何時間どの作業に出たかを、作業日誌に残します。
このほか、規約は作って終わりにしません。構成員が替わったときや、作る作物が変わったときは、総会で規約を変更します。要綱は改正されることがあるため、申請の前に最新の内容を確認してください。
保存と提出
規約は、総会で決めたあとに、代表者が原本を保管する形が考えられます。構成員への写しの配り方は、規約や総会で定めてください。規約を変更したときは、変更後の規約と、変更を決めた総会の議事録を一緒に残しておくと確認しやすくなります。
交付金を申請するときは、規約の写しを出します。前年度までに出した書類から変わりがなければ、提出を省略できます。規約や名簿を変更したときは、省略できない場合があるので、申請先に確かめてください。
構成員名簿の写しや、代表者名義の預金通帳の写し、総会資料も、申請の書類に含まれます。総会の議事録は、出席者数、議案ごとの結果、署名を残す様式でまとめておくと、総会資料として使えます。保存の期間は、規約や定款で定めてください。必要な期間は、市町村や県、税務署に確認すると安心です。
紙・Excelで続かないときは
規約の第14条では、出役を作業日誌に記録し、時間単価で作業料金を払うことを決めました。出役の記録を紙の日誌だけで続けると、年度の終わりに構成員ごとの時間を足し算する作業が重くなります。
当社が提供しているミノリスタイマーは、作業時間を記録するための無料アプリです。
- ログインしない人も、名前だけで作業者に登録できる
- 作業記録に、作業者ごとの作業時間を残せる
- レポートで、作業時間を作業者別・月別に集計できる
- 集計結果をCSVで取り出せる(管理者・オーナーのみ)
ミノリスタイマーには、作業料金や利益の配分を計算する機能はありません。規約の作成、構成員名簿の管理、共同販売経理の口座の管理にも対応していません。料金の計算は、集計した時間をもとに、組織で決めた単価を使ってExcelなどで行ってください。詳しくはミノリスタイマーの解説記事をご覧ください。作業時間の記録の考え方は、農作業の時間を記録する方法の記事にまとめています。
提供された農用地ごとの栽培記録は、ミノリス日誌で残せます。圃場マップに圃場を登録し、作付けごとの作業・肥料・農薬・収穫を記録でき、栽培履歴はCSV・Excelで出力できます。ミノリス日誌にも、規約の作成や、構成員ごとの出役の管理、利益の配分の計算の機能はありません。
提供農用地の栽培記録をスマホで
圃場を地図に登録し、作付けごとの作業・肥料・農薬・収穫を無料で記録できます。
初期費用・月額0円/クレジットカード不要
よくある質問
法人化した集落営農でも、この規約は使えますか?
使えません。農事組合法人や株式会社になったら、定款で決める決まりに変わります。農事組合法人の定款に必要な記載事項は、農事組合法人の定款のチェック表を参考にしてください。経営所得安定対策の要件でも、法人の集落営農と法人でない集落営農は分けて扱われます。
機械の共同利用だけをしている組織でも、この規約でよいですか?
機械の共同利用だけで、農産物の販売を一緒にしていない組織なら、機械利用組合向けの規約のほうが合います。この規約は、販売と経理も組織で行う集落営農を想定しており、共同販売経理の条項を含みます。
共同販売経理とは何ですか?
組織の代表者名義の口座を設け、農産物を組織の名義で販売し、販売収入をその口座に入れる仕組みです。利益の全部または一部を全ての構成員に配分し、耕作の費用も全ての構成員が共同して負担します。形だけ口座をつくり、販売収入を全部構成員に配るような運用は、共同販売経理とは認められません。
規約は、いつ総会で決めればよいですか?
新しく組織をつくるときは、設立総会で決めます。交付金を申請する場合は、申請の前に総会へ諮り、議事録を残してください。申請の時期や提出書類は年度ごとに変わることがあるので、地域農業再生協議会や市町村に確かめるのが確実です。
交付申請のとき、規約のほかにどんな書類が必要ですか?
要綱では、規約の写し、構成員名簿の写し、代表者名義の預金通帳の写し、総会資料などを出すこととされています。前年度までに出した書類から変わりがなければ、提出を省略できます。実際の書類は地域によって指定があるため、申請先に確認してください。
利益の配分は、どの基準で決めればよいですか?
農林水産省の集落営農のQ&Aは、出資額、農地面積、出役時間などで決める方法が考えられるとしています。記入例は、出役時間に応じた作業料金と、農用地の面積に応じた配分を組み合わせました。基準は総会で決めて議事録に残しておくと、後で説明を求められても答えられます。
まとめ
集落営農の規約には、目的、構成員の資格、加入と脱退、代表者、総会の議決事項と議決方法、農用地の利用と管理、機械と施設の利用と管理の8項目を書きます。交付金の対象になるには、共同販売経理として、組織名義の口座、組織名義での販売、利益の配分、費用の共同負担も必要です。
テンプレートで規約の案をつくったら、要件チェック表で8項目と内容の基準を1つずつ確かめ、総会に諮ってください。年度ごとの運用は変わることがあるので、申請の前に地方農政局・地域農業再生協議会・市町村に確認することを勧めます。
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