FBN(Farmers Business Network)とは【2026年最新】11.7万農場が集う農業資材EC・金融・AIプラットフォーム

FBN(Farmers Business Network)は、アメリカ・カリフォルニア州発の農業テクノロジー企業です。農家同士がデータを共有するネットワークとして2014年に創業し、現在は農業資材EC「FBN Direct」、農業金融「FBN Finance」、AI・データ分析「ファームインテリジェンス」の3本柱で、11万戸を超える農場を支えるプラットフォームへと成長しました。本記事では、2025〜2026年の最新動向を踏まえてFBNの事業を紹介します。

会社基本情報

  • 会社名:Farmers Business Network, Inc.(FBN)
  • 本社所在地:アメリカ合衆国 カリフォルニア州サンカルロス
  • 設立:2014年(共同創業者:Amol Deshpande氏、Charles Baron氏)
  • CEO:Diego Casanello氏(元BASFエグゼクティブ、2024年就任)
  • 従業員数:約850名(2021年時点)
  • 売上高:非公開(未上場)
  • 累計資金調達額:約9億7,800万ドル(12ラウンド)。2021年の調達時の評価額は約40億ドル
  • ネットワーク規模:11万7,000以上の会員農場、約1億8,700万エーカー(約7,600万ヘクタール)※2025年7月時点
  • 事業展開国:アメリカ、カナダ

事業概要

FBNは「農家による、農家のための」独立系テクノロジープラットフォームを掲げる企業です。創業当初は、会員農家が持ち寄る種子の収量データや資材の購入価格データを匿名で共有し、農家がメーカーや小売店と対等に交渉できるようにする「データ共有ネットワーク」としてスタートしました。

その後、集まった価格データを武器に農業資材のオンライン販売へとピボットし、現在は農業資材EC、農業金融、AI・データ分析の3事業を展開しています。2025年7月時点で会員農場は11万7,000を超え、ネットワークがカバーする農地面積は約1億8,700万エーカーに達します。これは日本の全農地面積の約17倍に相当する規模です。

2024年には元BASFエグゼクティブのDiego Casanello氏がCEOに就任し、「純粋なテクノロジープラットフォーム企業」への転換を加速させています。

課題と解決策

農業資材市場の価格不透明性

アメリカの農業資材市場では、同じ農薬や種子でも販売店や地域、購入者によって価格が大きく異なり、農家側は自分が適正価格で購入できているかを知る術がありませんでした。また、資材の購入には販売店の営業時間に合わせた訪問や交渉が必要で、大規模化する農場経営者にとって時間的な負担も課題でした。

データとECによる解決

FBNはまず、会員農家から実際の購入価格データを収集・匿名化して共有することで、価格の透明性を実現しました。さらに農業資材EC「FBN Direct」を立ち上げ、透明な価格表示のもと24時間365日オンラインで資材を注文し、農場まで配送を受けられる仕組みを構築しました。従来の系列販売店に依存しない独立系のチャネルとして、農家の購買コスト削減に貢献しています。

ビジネスモデル

FBN Direct(農業資材EC)

種子、農薬、肥料、畜産資材、農場用品などを扱うオンラインマーケットプレイスで、取扱商品は7,000点を超えます。2025年にはサードパーティの販売者にマーケットプレイスを開放し、自社仕入れ・自社販売型のECから、多数の売り手が参加するオープンなデジタル商取引プラットフォームへと進化しました。

さらに2025年10月には、自社で展開してきたジェネリック農薬事業を「Global Crop Solutions(GCS)」として分社化すると発表しました。GCSは独立系の作物保護資材サプライヤーとして、FBN以外の農業小売チャネルにも製品を販売できるようになり、FBN本体はマーケットプレイス運営とテクノロジーに集中します。分社化後もGCSはFBNストアの優先サプライヤーとして「Willowood USA」などの独自ブランドを供給し続けます。

FBN Finance(農業金融)

運転資金融資、資材購入資金のファイナンス、農地ローンなどを提供する金融事業です。累計の融資組成額は約30億ドルに達しています。2025年1月にはWalton Family Foundationと連携し、リジェネラティブ農業(環境再生型農業)に取り組む農家向けの農地ローンプログラムの試験運用も開始しました。農家の営農データを持つ強みを生かし、従来の金融機関よりもスピーディーな審査を実現しています。

ファームインテリジェンス(AI・データ分析)

会員農家から集まる膨大な営農データを活用した分析・意思決定支援ツール群です。種子の品種選定支援や収益性分析に加え、AIアドバイザー「Norm」を展開しており、当初の栽培技術(アグロノミー)分野から穀物販売のマーケティング支援へと対応領域を拡大しています。2024年8月には穀物メジャーのADMと穀物取引プラットフォーム「Gradable」の合弁事業でも提携しました。

今後の計画

FBNは2025年7月、GV(Google Ventures)、Temasek、Arteqin、Colle Capital、T. Rowe Priceなどから5,000万ドルの資金調達を実施しました。調達資金はAI開発への戦略投資に充てられ、Casanello CEOは「AIによって会員農家一人ひとりに、よりパーソナライズされた洞察を提供できるようになる」と述べています。

地理的な拡大も進んでいます。カナダでは2026年の作付けシーズンに向けてマニトバ州ブランドンに新たな物流拠点を開設し、200種類以上の作物保護資材を在庫して周辺地域への迅速な配送体制を整えます。カナダ事業では小麦向け農薬ポートフォリオの拡充、バルク液体肥料や農機ファイナンスの追加も発表されており、2026年中にさらに2カ所の物流拠点を新設する計画です。

また、2026年2月24日から26日には、米ネブラスカ州オマハで農家向けカンファレンス「Farmer2Farmer VII」を開催し、全米とカナダから1,000人以上の農家が集まる予定です。

コメント

FBNの歩みは、農家のデータを起点に資材購買、金融、AI活用へと事業を広げてきた「農業版プラットフォーム戦略」の代表例です。特に2025年以降の動き(マーケットプレイスの第三者開放、ジェネリック農薬事業の分社化)は、自社で商品を抱えるモデルから身軽なテクノロジー企業へ舵を切る明確なシグナルといえます。

日本でも農業資材の価格不透明性はたびたび指摘されており、資材の共同購入やオンライン販売への関心は高まっています。ただしFBNの本質は安売りではなく、農家自身のデータを農家の交渉力に変えた点にあります。データを預ける先としての信頼をどう築くか。日本で同様のプラットフォームを目指すプレイヤーにとって、FBNの10年は格好の教材になるはずです。

参考URL

  • FBN公式サイト https://www.fbn.com/
  • FBN会社概要ページ https://www.fbn.com/about
  • FBN Expands AI-Powered Platform for Ag Commerce, Financing, and Farm Intelligence(Business Wire、2025年7月28日) リンク
  • FBN Announces Strategic Spin-Off of Global Crop Solutions (GCS)(Business Wire、2025年10月1日) リンク
  • Farmers Business Network the latest to announce spin off company(AgFunderNews) リンク
  • FBN Invests in Manitoba with New Brandon Distribution Centre(FBN公式ブログ) リンク
  • Farmers Business Network(Crunchbase) リンク