化学肥料や化学農薬を減らす取組、温室効果ガスを減らす取組などを計画にまとめ、都道府県の認定を受けるのが「みどり認定」です。申請書類の正式な名前は「環境負荷低減事業活動実施計画」で、認定を受けると、みどり投資促進税制(特別償却)や日本政策金融公庫の農業改良資金、国の補助事業の採択での優遇といった支援の対象になります。
農林水産省の手引きでは、申請書は実質3〜4枚程度とされています。ただ、「現状」の数値をどこから出すか、目標をどこまで下げるか、税制を使う機械をどう書くかで迷う人が多い書類です。この記事では、農林水産省の「(農業)みどり認定の手引き(簡略版)」の記載例をもとに、各欄の書き方と、機械を買うタイミングなどの注意点を説明します。様式や対象となる取組の類型は都道府県によって違う場合があるので、提出前に必ずお住まいの都道府県の様式と窓口で確認してください。
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みどり認定とは/なぜ必要か
みどりの食料システム法にもとづく認定
みどり認定は、みどりの食料システム法(環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律、令和4年法律第37号)にもとづく制度です。農林漁業者が作る環境負荷低減事業活動実施計画を、都道府県知事が認定します。都道府県と市町村が作った「基本計画」にもとづいて認定が行われるので、計画書の最初にはその基本計画の名称を書きます。
令和5年度から都道府県による認定が本格的に始まり、令和8年7月末時点で全都道府県で39,000以上の経営体が認定を受けています。JAなどがまとめて申請するグループ申請も広がっています。
認定を受けるメリット
- みどり投資促進税制:認定計画に従って、化学肥料・化学農薬の使用低減に必要な設備を導入した場合、機械等は取得価額の32%、機械等と一体的に整備した建物等は16%の特別償却ができる(青色申告の農業者が対象)
- 国庫補助事業の採択で審査のポイントが加算される(みどりの食料システム戦略推進交付金、強い農業づくり総合支援交付金、農地利用効率化等支援交付金など)
- 日本政策金融公庫の農業改良資金などの貸付けを受けられる
みどり投資促進税制の対象期間は、令和4年7月1日から令和10年3月31日までとされています(農林水産省のパンフレットによる)。税制の内容は改正されることがあるので、使う場合は最新の資料と税務署で確認してください。
認定までの流れ
- 対象となる取組や手続きを確認し、今取り組んでいること・これから取り組むこと・設備投資の予定を整理する。不明点は都道府県の窓口に事前相談
- 実施計画を作成する(経営概況、取組内容、目標など)
- 都道府県に提出し、審査を受けて認定の通知を受ける
- 計画に従って取組や設備投資を行い、毎年1枚程度の簡単な様式で取組状況を報告する
記入例
下の記入例は、ミニトマトと水稲を作る架空の経営が、土づくり・化学肥料の低減・化学農薬の低減・温室効果ガスの削減に取り組む想定で、取組内容と目標を整理したものです。

たとえば化学肥料の低減では、実施内容を「土壌診断にもとづき元肥の一部を有機質肥料に置き換える」、現状を20、目標を14、単位を「kgN/10a・作」としています。減らす量は6、減少率は30.0%です。化学農薬では「防虫ネットと天敵を導入する」で、1作あたりの使用回数を12回から8回にしています。右端の「数値の根拠」に、施肥や農薬使用の記録、土壌診断結果と書いておくと、窓口で聞かれたときに説明できます。
書き方(項目ごと)
ここでは手引き(簡略版)の個人申請の記載例に沿って説明します。欄の番号や名前は都道府県の様式で異なることがあります。
1 実施内容に対応する同意基本計画の名称
都道府県と市町村が作っている基本計画の名前(例:○○県環境負荷低減事業活動の促進に関する基本的な計画)を書きます。都道府県ごとの基本計画は、農林水産省の「基本計画の作成状況」のページからたどれます。
2 申請者等の概要
氏名または名称、住所、電話番号・メールアドレス、業種(耕種農業、畜産業など)を書きます。共同申請者がいる場合は行を増やして全員分を書き、代表者1名を最初の欄に書きます。
3(1)農林漁業経営の概況
経営面積、品目ごとの面積、労働力(家族○名、臨時雇用○名など)を簡潔に書きます。記載例では「経営面積25ha、水稲20ha・大豆5ha、家族2名・臨時雇用3名」となっています。
3(2)環境負荷低減事業活動の類型
該当する取組にチェックを付けます。手引きには次の類型が並んでいます。
- a 有機質資材の施用による土づくりと化学肥料・化学農薬の使用減少
- b 温室効果ガスの排出量の削減
- c 土壌を使用しない栽培技術の実施と化学肥料・化学農薬の使用減少
- d・e 家畜のふん尿や餌料由来の窒素・りんなどの減少
- f 土壌炭素貯留に資する土壌改良資材の施用
- g 生分解性プラスチック資材の使用などによるプラスチックの排出・流出抑制
- h 化学肥料・化学農薬の使用減少と併せて行う生物多様性の保全
都道府県によっては対象となる類型が異なる場合があります。
3(3)推進方向と(4)実施期間
推進方向には、これまでの取組や感じている課題と、これから取り組むことを文章で書きます。「肥料コストを下げたい」「限られた労働力で除草を減らしたい」など、経営上の理由と環境負荷低減の取組を結びつけると書きやすくなります。実施期間は5年間を目途に定めます(例:令和8年10月〜令和13年9月)。
3(5)取組の内容と目標
品目ごとに、実施内容(導入する技術・設備・資材と、その開始時期)と、資材の使用量等の現状・目標を書きます。単位は、有機質資材と化学肥料が1作当たりの施用量(t/10a、kgN/10aなど)、化学農薬が1作当たりの使用回数(回)や散布量(L/10a、kg/10aなど)です。
「現状」には、申請者の直近の使用量か、地域の慣行基準など比較の対象になる数値を書きます。「目標」は実施期間の最終年度の数値です。記載例では、水稲で「ペースト側条施肥の導入により化学肥料8.0kgN/10a→5.5kgN/10a」「温湯種子消毒と深水管理で化学農薬18回→12回」、取組面積「0ha→20ha」が示されています。
土づくり、化学肥料・化学農薬の使用減少に取り組む場合は、直近に実施した土壌診断の結果を添付します。
3(6)経営の持続性の確保に関する事項
経営全体について、経営規模、売上高、経営費(生産コスト)、所得(売上高−経営費)の現状と5年後の目標を書きます。数値は概数でかまわないとされています。記載例では「売上高3,000万円・経営費2,000万円・所得1,000万円」を「3,000万円・1,900万円・1,100万円」にする目標になっています。資材を減らして経営費を下げ、所得を維持・向上させるという筋道が見えるように書くのがコツです。
3(7)実施体制
計画を実行する体制・人員と、実施責任者の氏名を書きます。
4 必要な資金の額と調達方法
(5)の取組や設備投資に必要な資金の使途・用途、調達方法(自己資金・融資・補助金等のいずれか)、金額(千円)を書きます。例:「ペースト施肥田植機購入費 融資 6,000千円」。
5 実施に当たっての配慮事項
適正な施肥、適正な防除、エネルギーの節減、悪臭・害虫の発生防止(畜産)、廃棄物の発生抑制と適正な処分、生産情報の記録及び保存、生物多様性への悪影響の防止などの項目に、原則として該当するものすべてにチェックします。該当がない、または実行できない項目がある場合は、その理由や改善予定を「その他記入欄」に書きます。「生産情報の記録及び保存」は、肥料・農薬の使用状況などの記録を保存する項目です。
別表:設備等の導入と特例措置
税制や融資の特例を使う場合は、別表1で使う特例にチェックし、別表2に導入時期、設備等の種類・名称/型式、単価、数量、金額、使う特例措置を書きます。みどり投資促進税制を使う機械は、農林水産省のホームページに掲載されている対象機械の一覧にある名称・型式で書きます。
気をつけること・よくある間違い
計画の認定前に機械を発注・取得してしまう
最も注意したい点です。みどり投資促進税制は、計画の認定を受けてから発注・取得した設備等が対象です。認定前に発注・取得(引渡し・納品)すると、税制の適用を受けられません。設備投資の予定があるなら、まず都道府県の窓口に相談し、スケジュールを逆算してください。
別表2に機械の名称・型式を書いていない
計画に記載のない機械等は税制の適用を受けられないとされています。対象機械の一覧は更新されるので、計画を作るときに最新のリストで名称・型式を確認します。取得価額の合計が100万円未満のもの、中古品、販売開始から一定期間を過ぎたモデルは対象外とされています。
「現状」の数値に根拠がない
毎年取組状況を報告するので、現状の数値は施肥や防除の記録、地域の慣行基準など、あとで説明できるところから出します。「なんとなくこのくらい」で書いた数値は、翌年以降の報告で比べようがなくなります。
単位が「1作当たり」になっていない
化学肥料は1作当たりの施用量、化学農薬は1作当たりの使用回数や散布量で書きます。年間の合計や、圃場全体の総量で書くと、目標との比較がずれてしまいます。
土壌診断結果の添付を忘れる
土づくり、化学肥料・化学農薬の使用減少に取り組む場合は、直近の土壌診断結果の添付が求められています。診断に時間がかかることもあるので、早めに依頼しておきます。
取組を広げすぎる
5年間、毎年報告しながら続ける計画です。いまできていることと、無理なく始められることを中心に書き、目標も達成できる範囲にします。
別の都道府県の様式や古い様式で書く
様式は都道府県によって異なる場合があります。申請は必ずお住まいの都道府県の様式で行い、提出先も都道府県に確認してください。JAや地域の協議会がとりまとめるグループ申請の場合は、とりまとめ役の指示に従います。
紙・Excelで続かないときは
みどり認定の計画でいちばん手間がかかるのは、実は申請書そのものより「現状」の数値を出す作業と、認定後の毎年の報告です。1作ごとの窒素施用量や農薬の使用回数を、紙の日誌からさかのぼって数えるのは大変です。
当社が提供しているミノリス日誌は、そのもとになる肥料・農薬の記録をスマホで付けるための無料アプリです。
- 作付けごとに肥料・農薬・作業・収穫を記録できる(肥料データ1.8万件以上、農薬適用情報10万件以上から選べる)
- 登録農薬を選ぶだけで、使用回数や収穫前日数をその場で確認できる
- 栽培履歴をCSV・Excelで出力し、1作当たりの施用量や使用回数の集計に使える
- 写真記録で、緑肥のすき込みや防虫ネットの設置など取組の様子を残せる
申請書を作成する機能はありません。また、収支管理には対応していないので、計画の売上高・経営費・所得は帳簿や決算書から出してください。GPSによる作業の自動記録にも対応していません。
「現状」と毎年の報告の元データを記録で
肥料・農薬を作付けごとに無料で記録できます。CSV・Excelで出力して、1作当たりの施用量や使用回数の集計に使えます。
初期費用・月額0円/クレジットカード不要
よくある質問
みどりチェックとは別のものですか?
別の制度です。みどりチェック(環境配慮のチェック)は、農林水産省の補助事業などを受けるときに求められる最低限の環境配慮の取組の確認です。みどり認定は、それより進んだ環境負荷低減の取組の計画を都道府県が認定するものです。
有機JASの認証を受けていると簡単になりますか?
手引き(簡略版)には、有機JASの認証申請書を添付して様式を簡略化する場合の記載例が載っています。扱いは都道府県によって異なる場合があるので、窓口に確認してください。
税制を使わなくても認定を受ける意味はありますか?
補助事業の採択でのポイント加算や、公庫の資金の貸付けなど、税制以外の支援もあります。設備投資の予定がなくても、使いたい補助事業の要件に関係するかどうかを確認しておくと判断しやすくなります。
JAや部会でまとめて申請できますか?
手引きにはグループ申請の記載例もあり、JAなどでまとめて申請する取組が広がっています。グループで申請する場合は、とりまとめ役から示される様式や提出期限に従ってください。
認定後に目標に届かなかったらどうなりますか?
毎年の報告で取組状況を都道府県に伝えます。報告の様式やスケジュール、計画を変更するときの手続きは都道府県によって違うので、目標の達成が難しくなりそうな時点で窓口に相談してください。
まとめ
みどり認定の実施計画は、経営の概況、取組の類型、品目ごとの実施内容と「現状→目標」の数値、経営の見通し、資金計画、配慮事項を書く書類です。現状の数値は記録や慣行基準など説明できるところから出し、単位は1作当たりにそろえましょう。税制を使うなら、機械の名称・型式を別表2に書き、計画の認定を受けてから発注・取得することが条件です。
様式や対象となる取組は都道府県によって違う場合があります。下書きで内容を整理したら、お住まいの都道府県の様式に書き写し、窓口で確認してから提出してください。
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