これから農業を始める人が市町村に出す「青年等就農計画」は、認定されると認定新規就農者として経営開始資金や無利子の青年等就農資金などの支援を受ける入口になる計画です。書く中身は、就農地と経営開始日、目指す営農類型、そして年間農業所得・年間労働時間・作付面積・生産量の「現状」と「目標」です。
申請書は数ページありますが、埋まらずに止まりやすいのは数字の欄です。面積を増やせば生産量と売上がどう変わるのか、所得はいくらになるのか、それを何時間の労働でまかなうのか。この記事では、農林水産省の申請様式と記入イメージをもとに、欄ごとの書き方と単位、数字の組み立て方を説明します。要件の確認があるので、書き始める前に都道府県の普及指導センターか市町村の窓口に必ず相談してください。
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青年等就農計画とは/なぜ必要か
認定新規就農者制度の申請書類
青年等就農計画は、農業経営基盤強化促進法にもとづく認定新規就農者制度の計画です。平成26年度から、認定農業者と同じように市町村が計画を認定する仕組みになりました。新たに農業を始める人が「青年等就農計画認定申請書」を作って市町村に出し、市町村が審査・認定し、認定後は市町村や都道府県などが計画の達成をフォローアップします。
対象になる人
農林水産省の説明では、対象は新たに農業経営を営もうとする青年等で、次のいずれかに当てはまる人です。
- 青年(原則18歳以上45歳未満)
- 特定の知識・技能を有する中高年齢者(65歳未満)
- 上記の人が役員の過半数を占める法人
年齢は農業経営を始めたときの年齢で判断し、国の基本要綱では、地域に担い手がいないなどやむを得ない事情があると市町村長が認める場合は青年の範囲を50歳未満とするとされています。農業経営を始めてから5年を経過していない人も含まれます。すでに認定農業者になっている人は対象外です。農業法人の従業員として農業に従事している人や、親の経営とは別に新しい部門を始める人、親の経営を継承する人も対象になり得ますが、親の経営とは別に部門を始める場合や親の経営を継承する場合は、自分の経営の収支を明らかにする帳簿の記載と、自分名義の預貯金口座の開設が必要とされているので、窓口で確認してください。
認定の要件と有効期間
市町村は、計画が市町村の基本構想に照らして適切であること、計画が達成される見込みが確実であることなどを確認して認定します。基本構想には、青年等が目標とすべき農業経営の指標(所得や労働時間の水準など)が示されていて、その中身は市町村によって違います。
有効期間は認定の日から5年です。すでに経営を始めている人は、経営開始日から5年を経過する日までとされています。認定後は毎年、計画の達成状況や経営の課題を市町村に報告します。目標の営農部門や就農地を変える場合や、所得目標・年間農業従事日数を2割以上増減させる場合などは、計画の変更について市町村の認定を受ける必要があります。
認定を受けると使える支援
- 経営開始資金:就農直後(3年以内)の所得を確保する資金(年間最大165万円)
- 青年等就農資金:機械・施設の取得などのための無利子の貸付け
- 経営発展支援事業、新規就農者チャレンジ事業などの機械・施設導入への支援
- 経営所得安定対策(畑作物の直接支払交付金、収入減少影響緩和交付金)
- 農業者年金の保険料の国庫補助(青色申告者に限る)
事業ごとに別の要件や募集時期があるので、利用したい支援がある場合は、計画の相談と同時に窓口で確認しておくと二度手間になりません。
記入例
下の記入例は、ミニトマト10aとキャベツ20aで始めた架空の新規就農者が、5年後にミニトマト20a・キャベツ30a・たまねぎ20aに広げる想定で、申請書に書く前の数字を整理したものです。面積はa、生産量はkg、売上は千円でそろえています。

ミニトマトは面積を2倍(10a→20a)にしたうえで、生産量を5,000kgから11,000kgに増やしています。面積の伸び(2倍)より生産量の伸び(2.2倍)が大きいので、右端の「手段・根拠」欄に「ハウス1棟増設、単収を研修先並みに」と、単収を上げる理由を書いています。合計すると作付面積は30aから70aに、売上は330万円から790万円になります。ここから経費を引いたものが、申請書に書く「年間農業所得」です。
書き方(項目ごと)
農林水産省の「青年等就農計画認定申請書」と「記入イメージ」の欄の順に説明します。単位は記入イメージに合わせていますが、市町村が独自の様式を使っている場合はその単位に合わせてください。
申請者と就農地・農業経営開始日
申請日、提出先の市町村長名、住所・氏名・生年月日を書きます。夫婦などで共同申請する場合は全員の氏名と生年月日を連記します。就農地には市町村名を、農業経営開始日には実際に開始した日(または開始予定日)を書きます。
就農形態
「新たに農業経営を開始」「親(三親等以内の親族を含む)の農業経営とは別に新たな部門を開始」「親の農業経営を継承(全体・一部)」のいずれかにレ印を付けます。継承の場合は、継承する経営での従事期間も書きます。
目標とする営農類型と将来の農業経営の構想
営農類型は、備考欄に示された類型(露地野菜、施設野菜、果樹など)から選びます。「将来の農業経営の構想」は文章で書く欄で、記入イメージでは「農業技術の向上、機械化、規模拡大等により複数の作目を組み合わせた経営で、地域の認定農業者の8割程度の所得水準を目指す」という書き方が例示されています。どの作目で、何を伸ばして、どの水準を目指すのかを2〜3行でまとめます。
年間農業所得と年間労働時間
現状と目標(目標年を記入)を書きます。記入イメージでは所得が千円、労働時間が時間の単位です。例として、現状「所得2,000千円・労働時間2,000時間」、目標「所得4,000千円・労働時間1,800時間」が示されています。所得は売上から経費を引いた額なので、売上の数字をそのまま書かないようにします。就農前で現状がない場合の書き方は、窓口に確認してください。
農業経営の規模に関する目標
- 作目・部門ごとの作付面積(a)と生産量(kg)、畜産は飼養頭数を、現状と目標で
- 経営面積合計
- 所有地・借入地:地目、所在地(市町村名)、面積の現状と目標
- 特定作業受託、作業受託、農畜産物の加工・販売その他の関連・附帯事業:該当があれば。なければ「-」
借入地を増やす目標なら、どこでどう借りるのかを後の「措置」欄とつなげて考えておきます。
生産方式に関する目標(機械・施設)
トラクターや管理機、ハウスなどの機械・施設名と、型式・性能・規模・台数を、現状と目標で書きます。記入イメージでは「トラクター 26馬力 1台」「管理機 1台→2台」のように書かれています。
経営管理・農業従事の態様に関する目標
経営管理は「青色申告の実施、PC活用による経理」、農業従事の態様は「月に○日程度を休日とする」が例示されています。短くてもよいので、実行したかどうかを後で確かめられる書き方にします。
目標を達成するために必要な措置
施設の設置や機械の購入などを、事業内容・規模・構造、実施時期(年月)、事業費(千円)、資金名等の欄に1行ずつ書きます。記入イメージでは「トラクター導入 26馬力 3,500千円 青年等就農資金」のような書き方です。資金名は、青年等就農資金、補助事業、自己資金など、実際に予定している調達方法を書きます。
農業経営の構成・雇用者
本人と、経営に携わる家族(法人は役員)の氏名、年齢、続柄、担当業務、年間農業従事日数を、現状と見通しで書きます。雇用者は常時雇・臨時雇の実人数と、臨時雇の延べ人数を書きます。面積を増やす目標なのに人数も従事日数も変わらない場合は、機械化などで説明できるかを見直します。
知識・技能、研修の状況
青年に当たらない65歳未満の人(商工業などの経営管理や農業関連の事業に3年以上従事した人など)は、経歴、資格、農業経営に活用できる知識・技能の内容を書く欄があります。研修を受けた人は、研修先の名称・所在地・専攻、研修期間、研修内容、活用した補助金等(就農準備資金など)を書き、研修カリキュラムを添付します。
気をつけること・よくある間違い
所得の欄に売上を書いてしまう
いちばん多い間違いです。所得は売上から経費(種苗・肥料・農薬・資材・燃料・減価償却費・地代など)を引いた額です。作物ごとの売上と経費は、先に収支の試算をしておくと書きやすくなります。
単位が様式どおりになっていない
記入イメージでは所得・事業費が千円、面積がa、生産量がkgです。一方、認定農業者の農業経営改善計画の様式は所得が万円です。国の様式でも書類によって単位が違うので、下書きの数字を書き写すときに桁がずれないよう確認します。
面積と生産量の伸びが合っていない
面積を2倍にするなら、生産量もおおむね2倍になるはずです。それより大きく伸ばすなら、単収を上げる理由(施設の導入、研修先の実績など)を説明できるようにしておきます。単収の根拠には、研修先の実績や都道府県が公表している経営指標など、説明できる数字を使います。
労働時間と人手が面積に見合っていない
面積が増えれば作業時間も増えます。所得を増やしながら労働時間を減らす目標なら、機械の導入や雇用で説明がつくかを確認します。家族の従事日数、雇用の延べ人数、機械の欄が互いに合っているかを見直してください。
措置と資金計画が抜けている
規模を広げるのに必要な機械・施設と、その資金をどう用意するかを措置の欄に書きます。ここが空欄だと、目標の実現性を説明しにくくなります。
市町村に相談せずに書き上げる
目標とする所得の水準は市町村の基本構想で違い、市町村やJAが独自の様式や添付書類を求める場合もあります。農林水産省も、申請様式を作る前に都道府県(普及指導センター)や市町村に必ず相談するよう案内しています。
計画を変えたのに変更の手続きをしていない
認定後に作目や就農地を変える、所得目標を大きく変えるといった場合は、変更の認定が必要になることがあります。経営開始資金などの支援を受けている場合は特に、変える前に市町村へ相談してください。
紙・Excelで続かないときは
計画を出したあとは、毎年の達成状況の報告と、5年後の見直し(認定農業者への移行など)が待っています。そのときに「計画の単収に届いたか」「作業は予定どおり進んだか」を答えられるかどうかは、日々の記録にかかっています。
当社が提供しているミノリス日誌は、そうした栽培・作業の記録をスマホで付けるための無料アプリです。
- 作付けごとに農薬・肥料・作業・収穫を記録でき、作目ごとの収穫量を後から集計できる
- 登録農薬から選ぶだけで、使用回数や収穫前日数も確認できる(農薬適用情報10万件以上)
- 予定・実績カレンダーで、計画した作業の進み具合を見返せる
- 栽培履歴をCSV・Excelで出力し、単収の計算や報告資料づくりに使える
ただし、ミノリス日誌には収支管理の機能はありません。計画の「年間農業所得」の実績は、帳簿や青色申告の決算書で確かめてください。GPSによる作業の自動記録にも対応していません。
毎年の報告と5年後の見直しに使える記録を
作付けごとの作業・肥料・農薬・収穫を無料で記録できます。単収や作業の実績を、あとから記録で確かめられます。
初期費用・月額0円/クレジットカード不要
よくある質問
様式はどこで手に入りますか?
農林水産省の「認定新規就農者制度について」のページに、申請書(Word)、記入イメージ、記載方法の参考資料が掲載されています。ただし市町村が独自の様式や添付書類を求めることがあるので、申請先の市町村で最新のものを確認してください。
農業経営改善計画(認定農業者)とどう違いますか?
青年等就農計画はこれから農業を始める人(経営開始から5年以内を含む)の計画で、認定されると認定新規就農者になります。農業経営改善計画はすでに経営している人の改善計画で、認定されると認定農業者になります。青年等就農計画の有効期間内に経営改善計画の認定を受けると、その日から青年等就農計画は効力を失います。認定期間の終わりが近づくと、市町村は経営改善計画の作成を促すこととされています。
目標の所得はいくらにすればよいですか?
市町村の基本構想に示された、青年等が目標とすべき農業経営の指標が目安です。国の記入イメージでは「地域の認定農業者の8割程度の所得水準を目指す」という書き方が例示されていますが、実際の水準は市町村によって違うので、窓口で確認してください。
研修を受けていないと認定されませんか?
研修の有無だけで決まるものではありませんが、計画が達成される見込みが確実かどうかは審査されます。技術や知識をどこで身につけたか(研修、雇用就農の経験など)を説明できるようにしておくと、審査で話がしやすくなります。
夫婦で申請できますか?
同じ世帯に属していること、家族経営協定などで収益が全員に帰属することと経営の基本的事項を全員の合意で決めることが明確になっていることなどが確認できれば、共同申請ができます。
まとめ
青年等就農計画は、就農地・経営開始日・営農類型と、所得・労働時間・面積・生産量の「現状と目標」、そして目標のための措置と資金を書く計画です。所得は売上ではなく売上から経費を引いた額で書くこと、単位を様式に合わせること、面積・生産量・労働時間・人手・機械の数字が互いに合っていることを確認しましょう。
目標とする所得の水準や様式は市町村によって違います。数字を下書きで整理したら、書き始める前に普及指導センターや市町村の窓口に相談してから清書してください。
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