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直売所に初めて出荷する農業者や、産直を始めて値札を自分で作ることになった農業者に向けた記事です。値札やPOPに何を書くかは、直売所の規則だけでなく、食品表示基準や消費税法などの法令でも決まっています。法令で必要な表示と、直売所や出荷先が求める表示を分けて整理しました。
この記事では、消費者庁の食品表示基準Q&A、農林水産省の特別栽培農産物表示ガイドラインと有機JASの説明ページ、国税庁の総額表示の説明、日本政策金融公庫の消費者調査を使っています。書き方の例文と、使ってはいけない表現、無料テンプレートの欄構成も載せています。
直売所の値札に法令で必ず書くことは何か
生鮮食品の値札には、名称と原産地を書きます
野菜や果物を消費者に売るときは、食品表示基準で名称と原産地の表示が必要です。消費者庁の食品表示基準Q&Aは、生産農家であっても消費者向けに直接出荷するなど「業として」販売する場合には表示が義務付けられている、と説明しています。直売所に出荷する場合も、この「業として」の販売に当たります。
同じQ&Aでは、生産者が自分の生産した生鮮食品をその場で消費者に売る場合を「生産した場所で販売する場合」と定めています。農場の庭先で自分が売る場面が当たります。直売所に並べる場合は、出荷者の代わりに店頭で売る人がいるため、値札に名称と原産地を書いておくと安全です。
ばら売りでも、立札やPOPで表示できます
容器や袋に入れず、ばら売りする農産物にも名称と原産地の表示が必要です。Q&Aは、容器包装の見やすい箇所に書くか、商品に近接した見やすい場所に立札などで掲示する、と説明しています。つまり、値札やPOPを商品のすぐそばに置けば表示になります。
書く場所については、名称と原産地を同じ面に書くのが望ましいとされています。ただし、消費者に分かりやすければ、名称は容器包装に、原産地は立札に書いてもかまいません。壁やボードに全商品の原産地をまとめて掲示する方法も、分かりやすければ認められています。
原産地は都道府県名か、一般に知られている地名で書きます
国産の農産物の原産地には、都道府県名か、市町村名その他一般に知られている地名を使います。Q&Aは「一般に知られている地名」の例として、郡名(秩父郡)、島名(屋久島)、旧国名(尾張、土佐)、旧国名の別称(信州、甲州)、地域名(房総)を挙げています。「国産」とだけ書く表示は、このQ&Aの説明からは外れます。
JAの名前を書く場合には注意が必要です。Q&Aは、JA名に含まれる名称が原産地と異なる場合や、一般に知られている地名ではない場合があるため、JA名とは別に「〇〇産」などの原産地を書く、としています。複数の産地の同じ種類の農産物を混ぜて売るときは、重量の割合が高い産地から順に書きます。
価格は税込の総額で書きます
事業者が消費者にあらかじめ価格を表示するときは、消費税額を含めた税込価格を書く総額表示の義務があります。国税庁のタックスアンサーNo.6902によると、店頭表示もチラシも対象で、口頭で伝える価格は対象外です。
同じページは、1万円の税抜価格の品物で、総額表示として認められる書き方を例示しています。「11,000円」「11,000円(税込)」「11,000円(税抜価格10,000円)」「10,000円(税込価格11,000円)」などです。税抜価格だけを大きく書き、税込価格を書かない値札は、この例には含まれません。
国税庁の同じページには、令和9年4月1日から2年間、飲食料品の譲渡について消費税率が引き下げられ、総額表示の特例が設けられるとの案内があります。値札を作り直す時期に関わるため、国税庁の消費税率引下げ特設サイトで最新の扱いを確認してください。
法令の義務ではないが、直売所が求める項目
生産者名、内容量、収穫日などは、直売所ごとに書く項目やシールの様式が決まっていることがあります。農林水産省のQ&Aや国税庁のページで確認できたのは、名称、原産地、税込価格の3つです。これ以外の項目は、出荷先の直売所の規則に合わせてください。内容量を量って袋詰めして売る場合は、計量に関する規則が関わることがあります。今回は公的資料を確認できなかったため、直売所の担当者か、都道府県の計量担当窓口に確認してください。
値札の書き方の例を、項目ごとに見る
書き方の例は、次の表のとおりです
下の表は、トマトを例にした値札の記入例です。品目名と産地名は説明用の例なので、自分の品目に置き換えて使ってください。
| 項目 | 書き方の例 | 注意する点 |
|---|---|---|
| 名称 | トマト | 一般的な名称で書きます。 |
| 原産地 | 熊本県産 | 都道府県名か一般に知られている地名で書きます。「国産」だけは避けます。 |
| 内容量 | 4個入り | 個数か重さを書きます。直売所の規則があれば従います。 |
| 価格 | 300円(税込) | 税込の総額が分かるように書きます。 |
| 品種・特徴 | 完熟で収穫。酸味ひかえめ | 事実だけを短く書きます。 |
| 食べ方・保存 | サラダに。冷やしすぎず常温で | 家庭でそのまま使える内容にします。 |
| 栽培について | ハウス栽培 | 事実だけを書き、迷う言葉は書きません。 |
この表の項目と記入例は、後述するミノリスの無料テンプレートの記入例と同じ内容です。
生産者名と栽培の特徴は、直売所の方式に合わせて書きます
直売所によっては、出荷者名のシールやバーコードを貼る方式を採っています。その場合、生産者名は直売所のシステムが印字するため、自分の値札に重ねて書く必要はありません。自分でPOPを作る場合は、名前と一緒に、顔写真や畑のある地区名を添えると、誰が作ったかが伝わります。
栽培の特徴は、測った事実を書きます。たとえば次のような書き方です。「糖度を屈折計で測り、出荷基準を11度以上としています」「収穫は朝6時から8時に行います」。これは例文です。事実を書くと、買う人が自分で判断できます。
無料テンプレート:直売所の値札・POP
名称、原産地、内容量、税込価格、品種・特徴、食べ方・保存を1枚に書き込む原稿表です。Excel、手書き用PDF、記入例PDFがあり、登録は不要です。
値札やPOPで使ってはいけない表示はどれか
「無農薬」「減農薬」「無化学肥料」「減化学肥料」は表示できません
農林水産省の特別栽培農産物に係る表示ガイドラインは、表示禁止事項として「無農薬栽培農産物」「無化学肥料栽培農産物」「減農薬栽培農産物」「減化学肥料栽培農産物」などの表示を挙げています。同省のQ&Aは、この理由を次のように説明しています。「無農薬」という表示から、消費者は土壌や周辺の畑から飛んできた農薬も含めて、残留農薬が一切ない農産物と受け取っていたためです。
「農林水産省新ガイドラインによる表示」と書かない場合も、同じQ&Aは、「無農薬」「無化学肥料」のように誤認を与える表示や、基準や割合を示さない単なる「減農薬」などは適当ではない、としています。「うちは農薬を使っていないから」と気持ちを込めて書いた言葉も、この対象になります。
農薬や肥料の使い方を伝えたいときは、決まった書き方が定められています
特別栽培農産物として表示する場合、ガイドラインは「農薬:栽培期間中不使用」「節減対象農薬:栽培期間中不使用」「化学肥料(窒素成分):栽培期間中不使用」のような書き方を定めています。節減した場合は「節減対象農薬:当地比〇割減」のように、比べる基準と割合を示します。
特別栽培農産物は、節減対象農薬の使用回数と化学肥料の窒素成分量が、どちらも慣行レベルの5割以下の農産物です。表示する場合は、栽培責任者と確認責任者の氏名や連絡先なども、一括表示の枠内に書く必要があります。気持ちで書ける表示ではないため、基準を満たすか確かめてから、都道府県の担当窓口に相談してください。
「有機」「オーガニック」は、有機JASマークがあるものだけです
農林水産省の有機食品の検査認証制度のページは、有機JASマークがない農産物に、「有機」「オーガニック」などの名称の表示や、これと紛らわしい表示を付けることは、法律で禁止されていると説明しています。マークを貼れるのは、登録認証機関が検査して認証した事業者だけです。有機的な栽培をしているつもりでも、認証がなければ「有機」とは書けません。
そのほかの表現は、景品表示法や栄養強調表示の規則に関わります
消費者庁のQ&Aによると、生鮮食品の表示禁止事項は、名称や原産地に関連するものに限られます。それ以外の「実際より著しく優良であると誤認させる表示」は、景品表示法などの別の法令で扱われます。「日本一」「どこよりも」のような根拠のない最上級の表現は、書く前に根拠を確認してください。
栄養の表現にも規則があります。Q&Aは、「みかんにはビタミンCがたくさん含まれます」のように一般に知られていることを書く場合も、栄養強調表示をするなら、食品表示基準の栄養強調表示の規定を満たす必要がある、と回答しています。「ビタミンたっぷり」とPOPに書く前に、この規定を確かめてください。
| 書きたい言葉 | 扱い | 言い換えの例 |
|---|---|---|
| 無農薬、減農薬 | 特別栽培農産物のガイドラインで表示禁止 | 農薬の使い方を、決まった書き方か、事実の説明に置き換えます |
| 無化学肥料、減化学肥料 | 同上 | 使った肥料の名前を事実として書きます |
| 有機、オーガニック | 有機JASマークがなければ表示できない | 堆肥の種類や施用量など、事実を書きます |
| 国産 | 原産地は都道府県名などで書く | 「熊本県産」など |
| 栄養が豊富などの強調 | 栄養強調表示の規定を満たす必要がある | 食べ方や旬の時期を書きます |
POPに何を書くと、買う人に伝わるのか
料理方法と収穫日の記載を求める人が、特に多くいます
日本政策金融公庫が平成23年11月に実施した調査では、直売所の商品説明やシールに書いてほしい内容を複数回答で聞いています。調査はインターネットで行い、1,025人が回答しました。最も多かったのは「料理方法」の30.1%、次が収穫日や出荷日などの「鮮度に関する情報」の28.2%、3番目が「農薬や肥料の使用量」の22.6%でした。
続いて「味など商品の魅力」が18.6%、「生産地」が17.0%、「農家のこだわり」が15.9%、「生産者の氏名・住所・連絡先等」が12.2%、「栽培方法」が10.8%でした。「特にない」は31.5%です。10年以上前の調査であり、回答者の約3割は記載を望んでいません。それでも、食べ方と収穫日を書く値札は、望まれる情報の上位2つを満たします。
直売所を選ぶ理由や、不満の内容については別の記事で整理しています。https://smartagri.jp/p/10465/
「おいしい」より、測った数字と食べ方を書きます
「おいしい」「甘い」だけでは、買う人が品物を選ぶ材料になりません。品種名、糖度を測った結果、収穫した日、おすすめの食べ方など、具体的な情報を書くと、同じ品目の中から自分の品物を選んでもらいやすくなります。
農薬や肥料の使用量は、書いてほしい人が22.6%いる一方、書き方に決まりがあります。無農薬などの言葉を使わず、栽培の記録を持っておき、聞かれたときに説明する方法が現実的です。栽培の記録のつけ方は、農作業日誌の書き方の記事で扱っています。
無料テンプレートには、どんな欄が入っているのか
ミノリスの「直売所の値札・POP」は、書く内容を決める原稿表です
ミノリスの無料テンプレート「直売所の値札・POP」は、直売所に並べる野菜や果物の値札とPOPに、何を書くかを品目ごとに決めておく原稿表です。書いた原稿を、直売所の値札やカード、手書きのPOPに写して使います。値札そのものを印刷する帳票ではありません。
欄の構成は、名称、原産地、内容量、価格(税込)、品種・特徴、食べ方・保存、栽培について書くこと、表示チェックの8つです。名称と原産地は食品表示基準で必要な項目で、価格欄は税込の総額表示を前提にしています。品種・特徴と食べ方・保存は、先の調査で記載が望まれていた内容に当たります。
2枚目の「表現チェック表」には、「無農薬」「有機」「日本一」など、使えない表現や注意が要る表現と、その言い換えの例が載っています。表示チェック欄には、このチェック表で確かめたかどうかを記録します。
Excel、手書き用PDF、記入例PDFの3種類です
ダウンロードできるのは、Excel(入力用)、PDF(手書き用)、記入例のPDFの3つです。Excelには「記入用」と「記入例」の2つのシートが入っています。登録は不要です。
テンプレートのページには、値札の用紙サイズや印刷サイズの指定は載っていません。値札の大きさや付ける位置は、直売所の規則に合わせて、自分で調整してください。テンプレートは自由に書き換えてかまいません。出荷先に指定の様式がある場合は、そちらを優先します。
使い方は、品目ごとに1枚、原稿を作ることです
- 品目ごとに名称、原産地、内容量、税込価格を書き込みます。
- 品種名、収穫日、食べ方を、事実だけで短く書きます。
- 栽培について書く言葉を、表現チェック表で確かめてください。
- 確認した原稿を、直売所の値札やカード、手書きのPOPに写します。
収穫日の専用欄はありません。収穫日を載せたい場合は、品種・特徴の欄に書き足すか、Excelを書き換えて欄を増やしてください。
よくある質問
値札に生産者名は必ず書く必要がありますか
Q&Aで義務として説明されているのは、名称と原産地です。生産者名の書き方は、出荷する直売所の規則に従ってください。出荷者名のシールを貼る方式を採る直売所もあります。
原産地は「国産」とだけ書いてもよいですか
国産の農産物は、都道府県名か、市町村名その他一般に知られている地名で書きます。「国産」だけでは、消費者庁のQ&Aの説明に合いません。JA名を書く場合も、JA名とは別に「〇〇産」を書きます。
税抜価格だけを書いた値札は、使えませんか
国税庁は、事業者が消費者にあらかじめ価格を表示するときは、税込価格を表示する義務がある、と説明しています。税抜価格を併記することはできますが、税込の総額が一目で分かるように書いてください。直売所のシステムの登録価格が税抜か税込かは、直売所の規則に合わせます。
農薬を使っていない場合、何と書けばよいですか
「無農薬」とは書けません。特別栽培農産物の基準を満たす場合は、「農薬:栽培期間中不使用」と、決められた様式で表示します。基準を満たすか分からない場合は、都道府県の担当窓口に相談してください。
米や漬物の値札にも使えますか
この原稿表は野菜と果物を対象にしています。玄米や精米、加工食品は表示の決まりが異なるため、ミノリスの生鮮食品の表示ラベルや加工食品の表示ラベルのテンプレートを使ってください。
無料テンプレート:直売所の値札・POP
表現チェック表と記入例つきの原稿表です。Excel、手書き用PDF、記入例PDFをまとめて使えます。登録は不要です。
まとめ
直売所の野菜や果物の値札には、名称、原産地、税込価格の3つを必ず書きます。原産地には都道府県名などを使い、価格は税込の総額が分かるようにします。「無農薬」「減農薬」「無化学肥料」「減化学肥料」は特別栽培農産物のガイドラインで表示できず、「有機」は有機JASマークがなければ書けません。そのうえで、料理方法や収穫日など、買う人が知りたい情報を事実で書くと、値札が品物の説明になります。
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