家族経営協定書のひな形と書き方|記入例つき無料テンプレート

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家族経営協定は、家族で営む農業について、経営の方針、役割分担、労働報酬、休日などを家族で話し合って決め、文書にしたものです。夫婦で就農するとき、後継者が親元に就農するとき、認定農業者の共同申請や就農支援の資金を使うときに、協定書の作成を求められることがあります。

先に結論を書くと、協定書の様式や書く項目に法律上の決まりはありません。大事なのは、「誰が何を担当し、いくら受け取り、いつ休み、大事なことを誰がどう決めるか」を、家族全員が読んで同じ意味にとれる言葉で書くことです。ただし、使いたい制度がある場合は、その制度が求める内容を必ず入れる必要があります。この記事では、農林水産省の資料をもとに、項目ごとの書き方と記入例、協定が関わる制度、よくある失敗を整理します。

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家族経営協定書の無料テンプレート(Excel・PDF/記入例つき)

経営方針の決め方・役割分担・労働報酬・休日・経営の継承など、多くの協定で取り決められている項目を並べたひな形です。夫婦と後継者の3人で結ぶ記入例と、見直しの記録シートが入っています。

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家族経営協定とは/なぜ必要か

家族経営の「あいまいさ」を話し合って文書にする

農林水産省は、家族経営協定を「家族農業経営にたずさわる各世帯員が、意欲とやり甲斐を持って経営に参画できる魅力的な農業経営を目指し、経営方針や役割分担、家族みんなが働きやすい就業環境などについて、家族間の十分な話し合いに基づき取り決めるもの」と説明しています。家族経営は経営と生活の境目がはっきりせず、役割や労働時間、報酬があいまいになりやすく、そこから不満やストレスが生まれがちだ、というのが協定を勧める理由です。

全国で約6万戸が結んでいる

農林水産省の調査では、令和7年3月31日時点で家族経営協定を文書で結んでいる農家は全国で59,731戸です。令和6年度に結ばれた協定で多かった取り決めは次のとおりです(複数回答)。

取り決めの内容 割合
労働時間・休日 95.4%
農業経営の方針決定 93.3%
農業面の役割分担(作業分担、簿記記帳等) 88.1%
労働報酬(日給・月給) 74.1%
収益の配分(日給・月給以外の利益の分配) 67.4%
経営移譲(継承を含む) 54.3%
労働衛生・健康管理 50.0%
生活面の役割分担(家事、育児、介護) 46.8%

締結の理由で多かったのは「認定農業者制度などの共同申請のため」(23.7%)、「親世代からの経営継承のため」(20.9%)、「新規就農(結婚就農、前職退職等を含む)」(16.3%)でした。締結時の主な支援先は「市役所職員」(70.0%)、「普及指導員等」(30.0%)、「農業委員」(23.6%)の順です。

記入例

下の記入例は、経営主の父、母、後継者の長男の3人で結ぶ架空の協定です。右の列に、項目ごとの書き方のポイントを書いています。

家族経営協定書の記入例
家族経営協定書の記入例(出典:ミノリス 無料テンプレート)

この記入例のポイントは3つです。

  • 「経営方針の決め方」で、作付け・設備投資・借入れ・法人化などの大事なことは協定者全員で話し合い、全員の合意で決めると書いている(認定農業者の共同申請を意識した書き方)
  • 「労働報酬」で、母は月12万円、長男は月15万円、毎月25日に本人名義の口座へ振り込むと、金額・支払日・支払方法まで書いている
  • 「見直し・有効期間」で、有効期間1年・自動更新とし、家族の状況が大きく変わったときは見直すと決めている

書き方(項目ごと)

項目 書くこと 書き方の例
目的 何のために協定を結ぶか 家族みんなが経営に参画し、やりがいのある農業とゆとりある暮らしを両立させる
協定者 協定を結ぶ全員の氏名と続柄 経営主 山田太郎(父)、山田花子(母)、後継者 山田一郎(長男)
経営方針の決め方 大事なことを誰がどう決めるか 作付け・設備投資・借入れ・新部門・法人化は全員で話し合い、全員の合意で決める
経営の役割分担 部門・作業ごとの主担当 水稲・機械作業は太郎、ミニトマトのハウスは一郎、直売所の出荷と簿記記帳は花子
労働報酬 金額・支払日・支払方法・見直し時期 月12万円・月15万円、毎月25日に本人名義の口座へ振込、毎年12月に見直す
収益の配分 給与以外の利益の分け方 年間の所得目標を超えた分は協定者で話し合って賞与として配分する
労働時間・休憩 始業・終業の目安、繁忙期の扱い 原則8時〜17時(休憩12時〜13時)、繁忙期は話し合って延長・短縮
休日・休暇 休みの日数と取り方 毎週1日(原則日曜)、通常期は月1回の連休、盆・正月は話し合って決める
簿記記帳・家族会議 記帳の担当、話し合いの時期 複式簿記で記帳し青色申告する(花子)、毎年12月に家族会議
生活面の役割分担 家事・育児・介護の分担 家事は3人で分担し、家事・育児の時間も大切な仕事として認め合う
健康管理・研修 健康診断、研修や視察 年1回全員が健康診断を受ける、研修・視察に年1回以上参加する
経営の継承 経営権と資産を移す時期と方法 経営主の経営権と農業に必要な資産は10年後をめどに一郎へ移す
見直し・有効期間 期間と見直しのきっかけ 有効期間1年、申し出がなければ自動更新、家族の状況が大きく変わったら見直す

結び方の流れ

  1. 家族で話し合う:経営の現状と課題、これからの方針、働き方や暮らしの希望を出し合う
  2. 取り決める項目を決める:全部を一度に決める必要はなく、いま困っていることから書く
  3. 案を作り、相談先に見てもらう:市町村、農業委員会、JA、普及指導センターが相談窓口です
  4. 協定を結ぶ:協定者全員が署名し、それぞれ1部ずつ保管する
  5. 実行して見直す:年に1回は家族会議で振り返り、家族の状況が変わったら書き直す

協定が関わる制度

家族経営協定そのものは法律で義務づけられたものではありません。ただし、次のように協定を要件の一つにしている制度があります。要件は制度ごとに違い、改正もあるので、使う前に必ず窓口で確かめてください。

認定農業者の共同申請

農林水産省の「認定農業者制度について」によると、家族経営協定を結んだ夫婦や親子などは、共同で農業経営改善計画の認定を申請できます。条件は次の3つです。

  • 申請者が全員同じ世帯に属している、またはかつて同じ世帯に属していた者(その配偶者を含む)であること
  • 協定の中で、その農業経営から生じる収益が申請者全員に帰属すること、経営に関する基本的な事項を申請者全員の合意で決めることが明確になっていること
  • その協定が守られていること

記入例の「経営方針の決め方」と「収益の配分」は、この2点を意識して書いています。

農業者年金の保険料の国庫補助

農業者年金基金の案内では、保険料の国庫補助の対象に、認定農業者(または認定新規就農者)で青色申告者である人に加えて、その人と家族経営協定を結んで経営に参画している配偶者や直系卑属(子や孫)が含まれています。ほかに、39歳までに加入すること、農業所得(配偶者・後継者は経営主から受け取る給与など)が900万円以下であることなどの要件があります。

就農準備資金・経営開始資金

令和8年度の就農準備資金・経営開始資金の要綱では、研修後に親元就農する人について、家族経営協定などで責任と役割(農業に専従すること、経営主から専従者給与が支払われることなど)を明確にすることが求められています。また、夫婦で経営を始める場合に夫婦合わせて1.5倍の額を交付する特例は、家族経営協定で夫婦が共同経営者であると定めていること、主要な経営資産を夫婦で所有または借りていることなどが要件です。

気をつけること・よくある間違い

役割分担だけ決めて、報酬や休日を書かない

「誰が何をするか」だけでは、働き方の不満は解消しません。報酬の金額と支払日、休日の日数まで書くと、協定が実際に守られるものになります。

「話し合って決める」ばかりで中身がない

全部の項目を「その都度話し合う」にすると、結局は経営主が決める状態と変わりません。数字で書けるところ(金額、日数、時刻、年数)は数字で書きます。

使いたい制度の要件を確かめずに書く

共同申請では収益の帰属と全員の合意による意思決定、経営開始資金の夫婦特例では夫婦が共同経営者であることなど、制度ごとに協定に書くべき内容があります。使う制度が決まっていれば、窓口に確かめてから書いてください。

協定で報酬を決めれば税金上も経費になると思い込む

個人経営で、生計を一にする家族に払う給与を必要経費にするには、税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を出す必要があります。期限は原則として経費にしたい年の3月15日までで、専従者はその年を通じて6か月を超える期間、事業に専ら従事していることなどが要件です。届け出た金額の範囲内で、労務の対価として相当な額に限られます(国税庁タックスアンサーNo.2075)。協定で決めた報酬額と届出書の金額をそろえておきましょう。

結んだまま見直さない

結婚、就農、子育て、介護、経営の継承など、家族の状況は変わります。見直しの時期(毎年12月の家族会議など)を協定に書いておくと、見直すきっかけを逃しません。

家族以外の従業員との取り決めに使う

家族経営協定は、家族で農業を営む人の間の取り決めです。家族以外の人を雇う場合は、労働基準法にもとづいて労働条件を書面で明示する必要があり、雇用契約書や労働条件通知書を使います。

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紙・Excelで続かないときは

協定は結んで終わりではなく、年に1回の見直しで「決めたとおりに働けているか」「役割分担に無理がないか」を確かめることで生きてきます。そのときに役立つのが、日々の作業の記録です。

当社のミノリス日誌は、作付けごとの農薬・肥料・作業・収穫をスマホで記録する無料アプリです。家族それぞれが担当する部門(たとえば水稲は父、ハウスは長男)の作業や防除の記録を同じ場所に残せるので、家族会議で「この1年、どの部門で何をしたか」を振り返る材料になります。予定・実績カレンダーで繁忙期の作業の偏りも見えます。登録農薬から選ぶだけで使用回数や収穫前日数を確認できるので、部門の担当が替わっても防除の管理を引き継ぎやすくなります。

ミノリス日誌には収支管理の機能はなく、協定書そのものを作る機能や、GPSによる作業の自動記録もありません。完全無料(初期費用・月額0円)で、登録は約1分、クレジットカードは不要です。

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よくある質問

協定書はどこかに提出するのですか?

協定そのものに決まった提出先はありません。協定者全員が署名し、それぞれ1部ずつ保管するのが一般的です。認定農業者の共同申請や就農支援の資金などで写しを求められたときに出します。立会人を置くかどうかなど、地域の進め方は相談先の市町村や普及指導センターに聞いてみてください。

夫婦2人だけでも結べますか?

結べます。夫婦だけ、親子だけ、夫婦と後継者の3人など、協定者の組み合わせに決まりはありません。経営に関わる家族全員が入るのが理想ですが、まずは話し合いが必要な人同士で結ぶところから始められます。

協定に印鑑は必要ですか?

法律上の様式の決まりはないので、署名(記名押印)の方法も家族で決められます。制度の申請に使う場合は、窓口で求められる形式を確かめてください。

協定を変えたいときはどうしますか?

家族会議で話し合い、変更した内容と日付を記録して、全員が署名し直します。テンプレートの「見直しの記録」シートのように、いつ何を変えたかの履歴を残しておくと、後で経緯がわかります。

相談できる窓口はどこですか?

農林水産省は、家族経営協定の相談先として、最寄りの市町村、農業委員会、農業協同組合(JA)、農業普及指導センターを挙げています。家族に給与を払う場合の税務は、税務署や税理士に確かめてください。

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まとめ

家族経営協定書に決まった様式はなく、家族で話し合って、役割分担・労働報酬・休日・経営方針の決め方・経営の継承などを文書にしたものです。全国で約6万戸が結んでおり、認定農業者の共同申請、農業者年金の保険料の国庫補助、就農準備資金・経営開始資金など、協定が要件の一つになる制度もあります。

報酬や休日は数字で書くこと、使う制度の要件を窓口で確かめてから書くこと、毎年見直すことの3点を押さえてください。家族経営協定書のひな形(記入例つき)を叩き台にして、家族で一行ずつ話し合うところから始めてみてください。

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