多品目を作っていると、「この品種の種はいつまでに注文すればいいか」「6月の出荷量はどれくらいになるか」を毎年頭の中で組み立て直すことになりがちです。栽培計画表は、作物・品種・作期ごとに播種・定植・収穫の予定日、面積、株数、予定収量を1行ずつ書き出す表で、これを作っておくと種苗の手配と出荷量の見込みが一度に立ちます。
結論から言うと、栽培計画表は「収穫したい時期から逆算して日付を決め、面積から株数と予定収量を計算する」だけの表です。この記事では、作り方の手順、各欄の書き方と単位、記入例、よくある書き間違いを、種苗法の表示や統計データなどの一次情報とあわせて解説します。
栽培計画表の無料テンプレート(Excel・PDF/記入例つき)
栽培計画表とは/なぜ必要か
栽培計画表は、1年間に作る作付けを「作物・品種・作期」の単位で一覧にした計画表です。似た名前の表がいくつかあるので、役割の違いを先に整理しておきます。
- 作付け計画表:どの圃場で、何月から何月まで何を作るかを示す全体図(圃場×12か月の表)
- 栽培計画表:それぞれの作付けの日付と数量(播種日・定植日・株数・予定収量)を決める表
- 栽培暦:1つの作物について、旬ごとの作業(施肥・防除・整枝など)の段取りを書いたもの
作付け計画表で「東1号にはミニトマトを4月から9月まで」と決めたら、栽培計画表で「品種〇〇を2月5日に播種、4月15日に定植、2,000株、予定収量5,000kg」と具体的な数字に落とし込む、という順番になります。
栽培計画表でわかること
- 種や苗を、いつまでに・どれだけ用意すればよいか
- 月ごとの出荷量の見込み(取引先や直売所に伝える数量の目安)
- 定植と収穫が重なるなど、作業が集中する時期
- 前年の実績と比べて、面積や品種をどう変えるか
栽培計画表そのものに法律上の作成義務はありません。ただ、JAや部会によっては作付けの計画や出荷の見込みの提出を求められることがありますし、営農計画書や補助事業の計画で作物ごとの面積・生産量を書くときの元データにもなります。提出先に指定の様式があるときは、そちらを使ってください。
記入例
ミニトマト・ほうれんそう・キャベツ・たまねぎの4品目を、3つの圃場で作る場合の記入例です。

1行目のミニトマトは、東1号の10aに2月5日播種、4月15日定植、6月10日〜9月30日収穫の予定で、2,000株を植え、単収5,000kg/10aから予定収量5,000kgとしています。2行目のほうれんそうは、同じ東1号でミニトマトの後作として11月5日に直播するため、定植予定日は空欄、株数の欄には播種量(種子3袋)を書いています。
たまねぎは南3号の15aに9月15日播種、11月10日定植、翌年5月20日〜6月20日収穫で、42,000株です。年をまたぐ作型は「翌5/20」のように書いておくと、年度の区切りで迷いません。記入例の品種・日付・株数・単収は架空のものなので、自分の地域と作型の数字に置き換えてください。
書き方(項目ごと)
作り方の手順
- 作る作物と品種、作期(春作・秋作など)を書き出す。同じ作物でも作期が違えば別の行にする
- 使う圃場と、実際に作付けする面積を決める
- 収穫したい時期から逆算して、定植予定日と播種予定日を入れる
- 面積と栽植密度(10aあたりの株数)から株数を出す
- 単収(10aあたりの収量)の見込みに面積を掛けて、予定収量を出す
各欄の書き方
| 欄 | 書くこと・単位 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 作物 | 作物名 | ミニトマト |
| 品種 | 品種名。種袋や苗の表示どおりに書く | 〇〇 |
| 圃場 | 圃場の名前や番号。毎年同じ呼び名を使う | 東1号 |
| 面積(a) | 作付けする面積(数字だけ) | 10 |
| 播種予定日 | 種をまく日。苗を買う場合は空欄 | 2/5 |
| 定植予定日 | 苗を畑に植える日。直播は空欄 | 4/15 |
| 収穫予定期間 | 収穫の始まりと終わり | 6/10〜9/30 |
| 株数(播種量) | 植える株数。直播は播種量(袋・mLなど) | 2,000株 |
| 単収の見込み(kg/10a) | 10aあたりの収量の見込み | 5,000 |
| 予定収量(kg) | 面積(a)÷10×単収(kg/10a) | 10÷10×5,000=5,000 |
| 出荷先・メモ | 出荷先、苗の手配先、注文数など | 直売所・市場 |
日付は「収穫したい日」から逆算する
播種から定植、定植から収穫開始までの日数は、品種と作型、地域で大きく変わります。種苗会社のカタログや、都道府県が出している栽培指針・栽培暦を参考にして、収穫を始めたい日から逆にたどって日付を入れます。記入例のミニトマトなら、播種から定植まで約70日、定植から収穫開始まで約55日という見込みで組んでいます。
株数は「植える数」と「注文する数」を分ける
株数は、面積×10aあたりの栽植密度で出します。たとえば10aあたり2,000株の密度で15a植えるなら3,000株です。苗を買う場合は、欠株の植え直し用に少し多めに注文するのが一般的なので、表の株数は「実際に植える数」、注文数はメモ欄に分けて書いておくと、注文ミスを防げます。
種から育てる場合は、必要な種子量を発芽率から見積もります。種苗法では、野菜などの指定種苗を販売するとき、種子については採種の年月(または有効期限)と発芽率を袋などに表示することが種苗業者に義務づけられています(農林水産省「指定種苗制度」)。前年の残り種を使うときは、この表示を見て発芽率を確認し、足りなければ多めにまく計画にします。
予定収量は面積×単収で出す
予定収量は「去年くらい」ではなく、面積(a)÷10×単収(kg/10a)で計算しておきます。こうしておくと、面積を5a増やしたときや品種を替えたときにも、すぐに見直せます。単収の見込みは、次の順で根拠を探すのが確実です。
- 自分の前年の収穫記録(圃場・品種ごとの10aあたり収量)
- 都道府県の農業経営指標や栽培指針
- 農林水産省の作物統計(作況調査)の10aあたり収量
たとえば長野県の作目別経営指標一覧表では、10aあたりの生産量をキャベツ5,600kg、レタス4,000kg、ほうれんそう(雨よけ)1,380kg、ミニトマト(雨よけ)6,000kgとしています。農林水産省の作況調査(野菜)では、主要な野菜(令和7年産は41品目)の作付面積・収穫量・出荷量が公表されていて、10aあたり収量も品目・産地別に調べられます。ただし、どちらも地域や経営の平均・モデルの数字なので、自分の圃場の実績が出てきたらそちらに置き換えていきます。
気をつけること・よくある間違い
1. 作期の違う作付けを1行にまとめる
春作と秋作では、日付も株数も単収も違います。同じ作物でも作期ごとに行を分けて書きます。1行にまとめると、苗の注文時期や出荷量の見込みがずれます。
2. 予定収量を面積から計算していない
数字を直接書き込むと、面積を変えたときに予定収量だけ古いまま残ります。Excel版のテンプレートは予定収量の欄に計算式が入っているので、面積と単収を入れれば自動で出ます。
3. 株数に植え直し分を見込んでいない
定植後の欠株や生育不良に備える分を注文に含めていないと、補植の苗が足りなくなります。反対に、注文数をそのまま「株数」に書くと予定収量が過大になるので、2つは分けて書きます。
4. 同じ圃場の前作と後作の日付が重なっている
記入例のほうれんそうのように同じ圃場で後作を組むときは、前作の収穫終わりと後作の播種・定植日の間に、片付けと土づくりの日数が確保できているかを見ます。作付け計画表と並べて確認すると重なりに気づきやすくなります。
5. 面積の基準が年ごとに違う
圃場全体の面積と、通路などを除いた作付面積が混ざると、単収を年ごとに比べられなくなります。どちらで書くかを決めて、毎年そろえます。
6. 購入苗の農薬使用履歴を確認していない
種苗法にもとづく表示事項には、農薬の使用履歴(使った農薬の有効成分の種類と使用回数)が含まれています。苗を買う予定の作付けは、メモ欄に購入先を書き、届いたときに使用履歴を控えておくと、その後の防除で農薬の使用回数を数えるときに役立ちます。
7. 計画を作って終わりにする
計画表は、実際の播種日・定植日・収穫量と見比べて初めて翌年の精度が上がります。予定と実績がずれた作付けには、メモ欄に理由(天候、苗の遅れなど)を残しておきます。
紙・Excelで続かないときは
栽培計画表は年に一度、冬の間に作れば済みますが、つらいのはその後です。計画どおりに進んだかどうかを確かめるには、実際の播種日、定植日、収穫量を作付けごとに記録しておく必要があり、ここで紙やExcelが続かなくなる人が少なくありません。
当社のミノリス日誌は、計画した作付けごとに実績を残すための無料の栽培記録アプリです。
- 作付けごとに、作業・農薬・肥料・収穫の記録をスマホで残せる
- 予定と実績をカレンダーで並べて見られる
- 収穫の記録が作付け単位でまとまるので、翌年の単収を実績から見積もれる
- 登録農薬から選ぶだけで、使用回数や収穫前日数を確認できる
- 栽培履歴をCSV・Excelで出力できる
なお、収支管理(売上・経費の集計)やGPSによる作業の自動記録には対応していません。計画表そのものはこのテンプレートで作り、日々の実績はアプリで残す、という組み合わせがいちばん手間がかかりません。
よくある質問
JAや部会の様式で栽培計画を出す必要があります。
提出先に指定の様式がある場合は、そちらを使ってください。この表は、指定様式に書き写す前の下書きや、自分用の管理表として使えます。品目ごとの日付と数量が決まっていれば、転記はすぐに終わります。
予定収量の目安はどこで調べられますか?
いちばん確実なのは自分の過去の収穫記録です。記録がない場合は、都道府県の農業経営指標や栽培指針、農林水産省の作況調査(野菜)の10aあたり収量を参考にします。統計は平均値なので、就農したてのうちは少し控えめに見込むほうが安全です。
栽培暦とは何が違いますか?
栽培計画表は「何を・いつ・どれだけ作るか」を全作物で一覧にする表です。栽培暦は1つの作物について、旬ごとの作業(施肥・防除など)の段取りを書いたものです。栽培計画表で日付を決めてから、作物ごとの栽培暦で作業を割り付ける、という使い分けになります。
何月ごろに作ればよいですか?
種や苗の注文に間に合うように作ります。春夏作の苗を予約注文する場合や、育苗を自分でする場合は、播種予定日の1〜2か月前には計画が固まっている必要があります。記入例のミニトマトのように2月に播種する作型なら、前年の秋から冬の間に作っておくと安心です。
直播の作物は株数をどう書けばよいですか?
株数の代わりに播種量を書きます。記入例のほうれんそうのように「種子3袋」や、mL・dLなどの単位で書いておけば、翌年の注文量の目安になります。
まとめ
栽培計画表は、作物・品種・作期ごとに1行で、播種・定植・収穫の予定日と面積・株数・予定収量を書く表です。日付は収穫したい時期から逆算し、株数は面積×栽植密度、予定収量は面積÷10×単収で出します。作期の違う作付けは行を分け、植える株数と注文する株数も分けて書いておくと、種苗の手配ミスと出荷量の読み違いが減ります。
最初の1年は統計や経営指標の単収を借りて構いません。実績を記録していけば、2年目からは自分の数字で計画が立てられます。まずは無料の栽培計画表テンプレートで、今年の作付けを1行ずつ書き出してみてください。
関連記事
- 圃場管理アプリ・農業アプリ無料おすすめ14選【2026年比較】
- 作付け計画の作り方|作付け計画表(エクセル)の書き方と輪作・記録の管理方法
- 防除暦の作り方と読み方|JA・県の防除暦を自分の圃場の防除計画にする手順
- 農作業日誌の書き方とテンプレート|エクセル・ノート・無料アプリの選び方と記入例
- 栽培履歴(生産履歴)の書き方と提出方法|記録すべき項目から提出先別の形式まで実務解説


