栽培暦(さいばいごよみ)は、1つの作物について播種・定植・施肥・防除・収穫などの作業を、月と旬(上旬・中旬・下旬)の順に並べた予定表です。県やJA、部会が品目ごとに配っているものを見たことがある方も多いと思います。
結論を先に言うと、栽培暦は「地域の暦をもらって終わり」ではなく、自分の作型と圃場に合わせて1作物1枚に書き直し、1年作ったら実績の日付で直すと、ぐっと使える道具になります。この記事では、公的な栽培暦の読み方を実例で確認したうえで、自分用の栽培暦の作り方、各欄の書き方、よくある間違いを記入例つきで解説します。
栽培暦の無料テンプレート(Excel・PDF/記入例つき)
栽培暦とは/なぜ必要か
作付け計画・防除暦との違い
計画に関わる書類は似た名前が多いので、先に役割を整理しておきます。
- 作付け計画(作付け計画表):どの圃場に・どの作物を・いつからいつまで作るかを、圃場×12か月の表で決めるもの。作付け計画の作り方で解説しています
- 栽培暦:1つの作物の中で、いつ・どんな作業をするかを時期の順に並べたもの。この記事のテーマです
- 防除暦:栽培暦のうち、病害虫防除の時期と薬剤だけを取り出して詳しくしたもの。防除暦の作り方と読み方を参照してください
作付け計画で「東1号にミニトマト、4月中旬定植〜10月まで」と決めたら、その中身の段取りを書くのが栽培暦、という関係です。
公的な栽培暦はどう書かれているか
都道府県は品目ごとに栽培指導要領や施肥基準を出しており、その中に栽培暦が載っていることがよくあります。農林水産省の「都道府県施肥基準等」のページには、各都道府県の施肥基準や栽培指導の資料がまとめて掲載されています。
たとえば、同ページに掲載されている岐阜県「主要園芸作物標準技術体系2005(野菜編)」のうち「じねんじょ(露地栽培)」の資料では、1〜12月を上・中・下旬に分けた表に「定植」「収穫」「貯蔵」の時期を示し、その下に対象地域、気象・圃場の条件、10aあたりの栽植株数(2,000〜2,400本)、目標収量(10aあたり1.5〜2t)、施肥基準量が続きます。千葉県の水稲品種「粒すけ」の栽培暦も、3〜9月を旬に分けた表に作業を並べ、栽植密度(55〜60株/坪)や幼穂形成期の生育目標、基肥・穂肥の施し方といった「栽培のポイント」を添えた構成です。
つまり公的な栽培暦は、作業の時期+そのときの生育の目安+前提条件(地域・作型・栽植密度・目標収量)のセットになっています。自分で作るときも、この3つを押さえれば迷いません。
自分用の栽培暦があると何が楽になるか
- 施肥や防除の時期を忘れず、資材を前もって準備できる
- 家族やパートさんに「今週は何をする週か」を説明しやすい
- 年ごとの実績と比べて、翌年の作り方を直せる
- 特別栽培などで「栽培計画」(作業計画や使用予定資材の名称・使用量・使用時期)を求められたときの下書きになる
最後の点について、特別栽培農産物に係る表示ガイドラインでは、栽培責任者が栽培開始前に、作業計画や使用目的別の使用予定資材の名称・使用量・使用時期を内容とする栽培計画を作成し、確認責任者に提出するとされています。栽培暦があれば、ここはほぼ書き写すだけになります。
記入例
ミニトマトの夏秋雨よけ栽培を想定した記入例です(時期・内容は説明用の架空のものです)。

2月上旬にセルトレイへ播種し、4月上旬に堆肥と元肥を入れてうね立て・マルチ張り、4月中旬に株間45cmの1条植えで定植します。5月下旬には追肥(液肥)と灰色かび病の予防散布、6月中旬に第1花房の着色を見て収穫開始、という流れです。「生育の目安」欄に「本葉8枚・第1花房開花始め」「第3花房開花」のように書いてあるのがポイントで、暦の日付より生育の段階を見て作業を決められるようにしています。
書き方(項目ごと)
ヘッダー(作物・品種・作型・圃場・面積)
表の上に、作物、品種、作型、圃場と面積を書きます。作型とは、ハウスか露地か、いつ播いて(植えて)いつ収穫するかという栽培の型のことです(例:夏秋雨よけ、促成、抑制、春まき露地)。同じ作物でも作型が違えば作業の時期はまったく変わるので、栽培暦は作型ごとに1枚作ります。
月・旬
作業をする月と、上旬(1〜10日)・中旬(11〜20日)・下旬(21日〜月末)を書きます。最初から日付で書くと、天候で1週間ずれただけで暦全体が合わなくなるので、旬で書くのがおすすめです。実際に作業した日付は日誌に残し、翌年に暦を直すときに使います。
作業
播種、育苗、元肥・うね立て、定植、誘引、摘芽、追肥、防除、潅水、収穫開始、片付けなど、作業名を短く書きます。1行1作業にすると、あとで並べ替えやすくなります。
内容・資材
作業の中身と使う資材、量を書きます(例:株間45cm・1条植え、堆肥2t/10a)。施肥の量は施肥計画、防除の薬剤は防除計画(防除暦)に分けて書き、ここには「施用量は施肥計画を参照」「灰色かび病の予防散布」のように対象だけを書くと、暦がすっきりします。
生育の目安
その作業をする生育の段階を書きます。「本葉8枚」「第1花房開花始め」「結球始め」「幼穂形成期」など、畑で見て判断できる言葉を使います。栽培暦でいちばん大事な欄で、ここがあると天候で生育が早まったり遅れたりした年でも、暦を使い続けられます。
注意点
天気や病害虫、作業上の注意を書きます(例:活着まで水切れに注意、梅雨入り前に予防散布、高温期は朝のうちに収穫)。去年失敗したことを書いておくのが一番役に立ちます。
作り方の手順
- 作物と作型を決め、ヘッダーに書く
- 地域の栽培暦(県・JA・部会)があれば入手し、作型が自分と合っているか確かめる
- 収穫したい時期を先に置き、そこから逆算して定植・播種・育苗開始の時期を入れる
- 元肥・追肥と防除の時期を入れる(量や薬剤は施肥計画・防除計画に分ける)
- 各作業に「生育の目安」を書き添える
- 1作終わったら、実際の作業日と比べて暦を直す
記入用と記入例のシートが入ったExcel版と手書き用PDFは、ミノリスの栽培暦テンプレートのページからダウンロードできます。
気をつけること・よくある間違い
作型の違う暦をそのまま使う
県やJAの暦は、その地域の標準的な作型を前提に作られています。自分のハウスが無加温なのに加温作型の暦を使ったり、標高の高い圃場で平地の暦を使ったりすると、時期が合いません。まず前提条件(地域・作型)を確かめます。
暦の日付どおりに作業する
その年の気温や日照で、生育は1〜2週間前後することがあります。日付はあくまで目安として、「生育の目安」を見て作業を決めます。
農薬名を暦に固定で書いてしまう
農薬の登録内容(適用作物、使用回数、収穫前日数)は変わることがあり、登録が失効する剤もあります。栽培暦の防除の欄には対象の病害虫を書き、使う農薬は散布前にラベルと農薬登録情報提供システムで確かめます。回数の数え方は農薬の使用回数に上限がある理由と正しい数え方も参考にしてください。
施肥量を暦に書き込みすぎる
元肥・追肥の量を暦に全部書くと、肥料を変えたときに暦ごと書き直すことになります。量は施肥計画で成分量(窒素・りん酸・加里)として管理し、暦には時期だけを書くほうが長く使えます。
1作物に作型を詰め込みすぎる
春作と秋作を1枚に書くと、同じ月に別の作業が並んで読みにくくなります。作型ごとに1枚に分けてください。
作りっぱなしで直さない
栽培暦は、作ってから1〜2作で自分の圃場に合った形になります。作が終わったら、日誌や作業記録の実際の日付と比べて、ずれた作業を書き直します。
地域の暦をコピーして配布する
JAや部会の栽培暦は、その組織が組合員向けに作った資料です。自分用に書き写して使うのは問題ありませんが、第三者への配布や公開は発行元に確認してください。
紙・Excelで続かないときは
栽培暦そのものは年に1回作れば済むので、紙やExcelで十分です。続かなくなりやすいのは、暦どおりに進んだかを確かめるための実績の記録のほうです。実績がないと、翌年に暦を直す手がかりがありません。
当社の無料アプリミノリス日誌では、作付けごとに作業・農薬・肥料・収穫の記録を付け、予定と実績をカレンダーで見返せます。「定植は予定より1旬遅れた」「追肥は生育の目安どおり第3花房開花で入れた」といったずれが日付で残るので、翌年の栽培暦を実績に合わせて直せます。農薬は登録農薬のデータ(農薬適用情報10万件以上)から選ぶだけで、使用回数と収穫前日数をその場で確認できるため、暦に農薬名を固定で書いておく必要もなくなります。記録は栽培履歴としてCSV・Excelで出力できます。
なお、ミノリス日誌は栽培暦の表を自動で作る機能は持っていません。暦はテンプレートで作り、実績はアプリで残す、という組み合わせを想定しています。収支管理やGPSによる作業の自動記録にも対応していません。
栽培暦どおりに進んだかを、実績の日付で残す
ミノリス日誌なら、作付けごとの作業・農薬・肥料・収穫を予定・実績カレンダーで見返せます。実際の作業日が残るので、翌年の栽培暦を実績に合わせて直せます。全機能0円です。
初期費用・月額0円/クレジットカード不要
よくある質問
県やJAの栽培暦と、自分で作る栽培暦のどちらを使えばよいですか?
地域の栽培暦や、JA・部会が指定する栽培暦・防除暦がある場合は、そちらを基本にしてください。自分用の栽培暦は、それを自分の圃場・作型・品種に合わせて書き直したり、実績を書き込んだりするために使います。
栽培暦はどこで手に入りますか?
JAの営農指導員、都道府県の普及指導センター、部会の資料が主な入手先です。都道府県の施肥基準や栽培指導要領の中に載っていることもあり、農林水産省の「都道府県施肥基準等」のページから各県の資料をたどれます。
多品目で、作物ごとに1枚ずつ作るのが大変です。
主力の2〜3品目だけ栽培暦を作り、ほかの作物は作付け計画表で播種・定植・収穫の時期だけ押さえる方法があります。すべてを同じ細かさで作る必要はありません。
旬ではなく日付で管理したいです。
「旬」の欄に日付を書いてもかまいません。ただ、作業日は年によって動くので、最初の1〜2年は旬で書き、実績の日付を日誌に残してから、決まりやすい作業だけ日付に直すのがおすすめです。
家庭菜園でも作る意味はありますか?
あります。種苗袋の裏に書かれた播種時期や収穫時期を旬ごとに書き写し、実際にまいた日と比べるだけでも、翌年の失敗が減ります。
まとめ
栽培暦は、1つの作物・1つの作型について、作業を月と旬の順に並べた予定表です。公的な栽培暦がそうであるように、作業の時期・生育の目安・前提条件の3つをそろえて書くと、天候がずれた年でも使える暦になります。施肥の量は施肥計画、防除の薬剤は防除計画に分け、暦には時期と対象だけを書く。そして1作終わったら実績の日付で直す。この繰り返しで、地域の暦が「自分の圃場の暦」に育っていきます。
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