国産農畜水産物のPFAS濃度と摂取量【令和7年度調査】摂取量はTDIの1%未満、水産物はPFOS定量が8割

農林水産省は2026年9月11日、国産の農畜水産物に含まれる有機フッ素化合物(PFAS)の実態調査(令和7年度)の結果を公表しました。令和6年度と合わせて調べた37品目から摂るPFOS・PFOAの量は、食品安全委員会が定めた耐容一日摂取量(TDI)の1%未満でした。一方で、水産物や鶏卵では検出される試料が多く、品目や試料によって濃度に大きな幅があることも分かっています。本記事では、何がどこまで分かったのか、どこから先はまだ分かっていないのかを、数字とグラフで整理します。

一次ソースは、農林水産省の報道発表と添付資料3点(含有実態調査の結果、野菜類への移行試験の結果、調査のポイント)、TDIの定義と値は食品安全委員会の評価書Q&Aです。グラフは公表値から smartagri.jp が描き直したもので、すべて CC BY 4.0(出典を書けば商用資料にも転載可)です。なお本調査は食品の調査で、水道水や地下水の水質調査とは別のものです(第6章で整理します)。

この記事の結論(コピペ用)
農林水産省の令和6・7年度調査で、国産農畜水産物37品目(食品消費量の約5割)から摂るPFOSは0.13 ng/kg体重/日(TDIの0.65%)、PFOAは0.09 ng/kg体重/日(同0.45%)と試算されました。各品目で最も濃度の高い試料だけを食べ続けると仮定してもPFOSでTDIの7.6%、PFOAで2.2%です。令和7年度の農産物13品目(390試料)ではPFOSが定量された試料はゼロでしたが、水産物11品目では約8割の試料でPFOSが定量され、アユの一部試料(最大86,000 ng/kg)など特異的に高い値も見つかっています。対象は4種類のPFASと37品目に限られ、国は品目を広げて調査を続けています。

キー数値

指標 数値 時点・備考
令和7年度の調査品目 29品目 農産物13・畜産物5・水産物11。各品目30点(畜産物・アユは令和6年度と合算で90点・75点)
摂取量試算の対象 37品目 令和6・7年度の合計。消費量910.8 g/日=食品全体(1,877.2 g/日)の約5割
TDI(耐容一日摂取量) PFOS・PFOAとも20 ng/kg体重/日 食品安全委員会、2024年6月の評価書
平均的な食生活での摂取量(PFOS) 0.13 ng/kg体重/日 TDIの0.65%。各品目の中央値から試算
平均的な食生活での摂取量(PFOA) 0.09 ng/kg体重/日 TDIの0.45%
最大濃度の試料だけを食べ続けた仮定 PFOS 1.5/PFOA 0.45 ng/kg体重/日。TDIの7.6%/2.2%
農産物13品目でPFOSが定量された試料 0/390 令和7年度。PFOAは22/390
水産物11品目でPFOSが定量された試料 298/375(約8割) 令和7年度(アユは2か年合算)
PFOSの最大値 アユ 86,000 ng/kg 特異的に高い3点を除くと最大2,200 ng/kg
汚染土壌での栽培試験(PFOS) 土壌13,000〜17,000 → 野菜 <2〜13 土壌はng/kg-乾燥重、野菜可食部はng/kg

単位について:ng/kgは食品1kgあたりのナノグラム(1ngは10億分の1グラム)です。ng/kg体重/日は「体重1kgあたり、1日に何ng摂るか」を表します。TDIの20 ng/kg体重/日は、体重50kgの人なら1日1,000 ng(=1マイクログラム)に相当します。

1. 調べたのは国産の流通品29品目と、4種類のPFAS

PFASは、炭素とフッ素が結合した有機フッ素化合物の総称で、1万種類以上あるとされます。水や油をはじき、熱や薬品に強いため、泡消火薬剤やめっき処理剤、フッ素樹脂の加工助剤などに使われてきました。自然界で分解されにくく環境に残りやすいため、代表的なPFOSとPFOAは国際条約で規制され、国内でも製造・輸入が規制されています。

今回の調査は、2024年6月に食品安全委員会がPFOS・PFOAのTDIを設定し、あわせて「飲料水や食品での濃度データの収集を急ぐべき」との見解を示したことを受けて、農林水産省が令和6年度から始めたものです。令和7年度はその2年目にあたります。

  • 品目:農産物13品目(小麦、大豆、ダイコン、ニンジン、サトイモ、ホウレンソウ、ハクサイ、ブロッコリー、タマネギ、キュウリ、ナス、リンゴ、ミカン)、畜産物5品目(牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵、牛乳)、水産物11品目(マサバ、マダイ、ギンザケ、クロマグロ、ブリ、ニジマス、マゴイ、アユ、ホタテガイ、マガキ、ワカメ加工品)。すべて国産品です。
  • 物質:PFOS、PFOA、PFHxS、PFNAの4種類(いずれも直鎖体のみ)。
  • 試料:主産地を含め特定の産地に偏らないよう、店頭や通信販売で流通品を購入(1点あたり可食部1kg以上)。分析は民間分析機関に委託しました。
  • 分析法:食品中のPFASには国際的に標準化された分析法も国内の公定法もまだないため、米国食品医薬品局(FDA)の方法を参考に改良し、妥当性を確認した方法が使われています。

2. 摂取量はTDIの1%未満、最大濃度だけ食べ続けても8%未満

農林水産省は、令和6年度に調べた14品目と合わせた37品目について、「品目ごとの濃度 × 1日の平均消費量 ÷ 平均体重(56.2kg)」で、PFOSとPFOAの1日摂取量を試算しました。

国産農畜水産物37品目から摂るPFOS・PFOAの1日摂取量はTDIの0.65%・0.45%、最大濃度だけを食べ続けた仮定でも7.6%・2.2%
国産農畜水産物37品目から摂るPFOS・PFOAの1日摂取量はTDIの0.65%・0.45%、最大濃度だけを食べ続けた仮定でも7.6%・2.2%
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  • 平均的な食生活(各品目の濃度の中央値を使用)では、PFOSが0.13 ng/kg体重/日(TDIの0.65%)、PFOAが0.09 ng/kg体重/日(同0.45%)でした。
  • 最大ケースとして、37品目すべてで最も濃度が高かった試料だけを毎日食べ続けると仮定しても、PFOSが1.5 ng/kg体重/日(7.6%)、PFOAが0.45 ng/kg体重/日(2.2%)です。通常の食生活では想定されない、かなり極端な仮定です。
  • 37品目で食品全体の消費量の約5割をカバーしています。残り5割の食品と、飲料水(資料では最大でTDIの10%と推定)を加えて考えても、TDIと比べて十分に少ない水準にある、というのが農林水産省の判断です。

参考までに、食品安全委員会がTDIを評価した際に使った2012〜14年の推計(当時の分析技術によるトータルダイエットスタディ)では、日本人の平均的なPFOS摂取量は0.60〜1.1 ng/kg体重/日、PFOAは0.066〜0.75 ng/kg体重/日とされていました。当時は定量下限が高く推計の幅が大きかったため、今回の品目別データはこの不確かさを狭めるための調査と位置づけられます。

3. 農産物はほぼ定量下限未満、水産物と鶏卵は検出が多い

次のグラフは、令和7年度の調査で「定量下限以上の濃度が出た試料」の割合を、品目群と物質ごとに数えたものです。定量下限とは、その分析法で正確に濃度を測れる最小の濃度のことで、今回は品目・物質によって10〜40 ng/kg程度です(それより低い「検出下限」未満のものは「<5.0」などと表示されています)。

令和7年度調査で定量下限以上の濃度が出た試料の割合。農産物はPFOS 0%、水産物はPFOS約8割
令和7年度調査で定量下限以上の濃度が出た試料の割合。農産物はPFOS 0%、水産物はPFOS約8割
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  • 農産物13品目(390試料):PFOSとPFHxSはすべての試料が定量下限未満でした。PFOAはホウレンソウ(7点)やミカン(10点)などで計22試料、PFNAは2試料が定量されましたが、最大でもホウレンソウのPFOA 110 ng/kgで、濃度の幅は大きくありませんでした。
  • 畜産物5品目(450試料):牛肉・豚肉・鶏肉・牛乳はほとんどが定量下限未満か低い濃度でした。鶏卵は約半数の試料でPFOSが定量され、一部にやや高い試料(最大1,300 ng/kg)がありました。
  • 水産物11品目(375試料):PFOSは約8割、PFNAは約6割の試料で定量されました。ただしマダイとホタテガイは、4種類とも定量下限未満か低い濃度でした。

農林水産省は、検出された濃度の範囲や中央値は、海外で報告されている類似品目と大きな差はないとしています(分析法が国際的に統一されていないため単純比較はできない、との注記付きです)。

データ表:品目群別の定量状況(令和7年度調査)
品目群 試料数 PFOS PFOA PFHxS PFNA
農産物13品目 390 0(0.0%) 22(5.6%) 0(0.0%) 2(0.5%)
畜産物5品目 450 85(18.9%) 63(14.0%) 5(1.1%) 62(13.8%)
水産物11品目 375 298(79.5%) 119(31.7%) 7(1.9%) 219(58.4%)

各セルは「定量下限以上の濃度が出た試料数(割合)」。点数から「定量下限未満の数」を差し引いて smartagri.jp が集計。畜産物5品目とアユは令和6年度調査と合算した点数(各90点・75点)。

4. 品目別の濃度 — 中央値は数十〜数百 ng/kg、アユと鶏卵に飛び抜けた試料

PFOSの中央値を定量できた13品目について、中央値と最大値を並べました(令和6年度調査の品目を含む)。横軸は対数目盛で、1目盛ごとに10倍になります。

PFOSの中央値を定量できた13品目の中央値と最大値。アユは特異的に高い試料で最大86,000 ng/kg
PFOSの中央値を定量できた13品目の中央値と最大値。アユは特異的に高い試料で最大86,000 ng/kg
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  • 中央値は、マガキや鶏卵の20 ng/kg台から、アユの580 ng/kgまでの範囲です。カツオ(350)、マサバ(320)、マゴイ(290)も比較的高めです。
  • 最大値は品目によるばらつきが大きく、中央値の2〜14倍程度に収まる品目が多い一方、アユは最大86,000 ng/kgと飛び抜けています。これは2か年75点のうち「特異的に高い値」を示した3点によるもので、この3点を除くと最大は2,200 ng/kgです。アユは内臓を含む魚体全体を分析しています。
  • 鶏卵は中央値24 ng/kgに対して最大1,300 ng/kgと、試料による差が大きいのが特徴です。
  • PFOAは多くの品目で中央値が定量下限未満ですが、アサリ(令和6年度調査)は中央値730 ng/kg・最大9,000 ng/kgと、PFOAとしては目立って高い品目です。

数字の大きさを感覚でつかむため、TDIと単純に比べてみます(smartagri.jpによる目安の計算です)。体重50kgの人のTDIは1日1,000 ngなので、中央値350 ng/kgのカツオだけでTDIに達するには毎日約2.9kgを食べ続ける必要があります。一方、86,000 ng/kgだったアユの試料なら、1日約12gで同じ量になります。TDIは一生涯毎日摂り続けた場合の目安なので、たまに食べただけで健康影響が出るという意味ではありませんが、「特異的に高い試料」が見過ごせない水準であることも確かです。農林水産省は、こうした試料について産地や生産方法も含めた蓄積要因の調査を進めるとしています。

5. 摂取量の内訳 — 効いているのは「よく食べる品目」

摂取量の試算は「濃度 × 消費量」なので、濃度が高くてもあまり食べない品目の寄与は小さく、濃度が低くても毎日たくさん食べる品目の寄与は大きくなります。公表された品目別の値を使って、内訳を並べました。

平均的な食生活でのPFOS・PFOA摂取量の品目別内訳。灰色は中央値が定量下限未満で下限値を代入した品目
平均的な食生活でのPFOS・PFOA摂取量の品目別内訳。灰色は中央値が定量下限未満で下限値を代入した品目
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PFOSでは鶏卵、カツオ、牛乳、玄米が上位で、PFOAでは玄米、マイワシ、豚肉、鶏卵が上位です。注目したいのは灰色の品目です。これらは中央値が定量下限未満だったため、試算では検出下限値または定量下限値を代入しています。実際の濃度はその値以下なので、この部分は高めに見積もる方向の仮定です。smartagri.jpが再計算したところ、平均摂取量のうち代入値に由来する部分は、PFOSで約55%、PFOAで約9割を占めました。つまり、平均ケースの数字(TDIの0.65%・0.45%)は、実態より大きめに出ている可能性があります。

反対に、この試算に入っていないものもあります。調査していない残り約5割の食品、輸入食品、PFHxS・PFNA(TDIが設定されていないため摂取量を試算していません)、分岐異性体(直鎖体のみを測定)です。品目によって国産と輸入の比率は大きく違う点にも注意が必要です(品目別の国産比率は品目別の食料自給率ランキングを参照)。

データ表:37品目の濃度と摂取量(PFOS・PFOA)
品目 区分 消費量(g/日) PFOS中央値 PFOS最大値 PFOS平均摂取量 PFOA中央値 PFOA最大値 PFOA平均摂取量
玄米 農産物 137.8 ≤5 5 0.012 ≤5 15 0.012
バレイショ 農産物 23.9 ≤5 5 0.002 ≤5 10 0.002
キャベツ 農産物 28.8 ≤5 5 0.003 ≤5 5 0.003
トマト 農産物 14.7 ≤5 5 0.001 ≤5 28 0.001
小麦 農産物 59.8 ≤5 5 0.005 ≤5 10 0.005
大豆 農産物 39.0 ≤5 5 0.003 ≤5 10 0.003
ダイコン 農産物 21.2 ≤10 10 0.004 ≤10 10 0.004
ニンジン 農産物 18.9 ≤10 20 0.003 ≤10 21 0.003
サトイモ 農産物 5.2 ≤5 5 0.000 ≤5 19 0.000
ホウレンソウ 農産物 7.7 ≤10 10 0.001 ≤10 110 0.001
ハクサイ 農産物 17.5 ≤5 5 0.002 ≤5 10 0.002
ブロッコリー 農産物 5.2 ≤10 10 0.001 ≤10 23 0.001
タマネギ 農産物 32.3 ≤10 10 0.006 ≤10 20 0.006
キュウリ 農産物 7.4 ≤5 5 0.001 ≤5 10 0.001
ナス 農産物 12.0 ≤5 5 0.001 ≤5 5 0.001
リンゴ 農産物 14.2 ≤5 5 0.001 ≤5 10 0.001
ミカン 農産物 19.0 ≤5 5 0.002 ≤10 28 0.003
牛肉 畜産物 13.7 ≤5 36 0.001 ≤5 5 0.001
豚肉 畜産物 43.3 ≤5 19 0.004 ≤10 200 0.008
鶏肉 畜産物 35.4 ≤5 69 0.003 ≤5 15 0.003
鶏卵 畜産物 41.4 24 1,300 0.018 ≤10 110 0.007
牛乳 畜産物 79.7 ≤10 10 0.014 ≤5 5 0.007
マイワシ 水産物 4.1 130 1,800 0.009 120 580 0.009
マダラ 水産物 0.7 36 230 0.000 ≤20 49 0.000
カツオ 水産物 2.3 350 1,800 0.014 ≤10 73 0.000
アユ 水産物 0.1 580 86,000 0.001 25 3,400 0.000
アサリ 水産物 0.05 73 570 0.000 730 9,000 0.001
マサバ 水産物 1.6 320 1,200 0.009 24 130 0.001
マダイ 水産物 1.1 ≤15 28 0.000 ≤10 10 0.000
ギンザケ 水産物 1.1 54 110 0.001 ≤10 21 0.000
クロマグロ 水産物 0.3 120 330 0.001 ≤10 10 0.000
ブリ 水産物 3.7 56 280 0.004 ≤10 10 0.001
ニジマス 水産物 0.4 96 620 0.001 ≤10 37 0.000
マゴイ 水産物 0.03 290 760 0.000 ≤10 20 0.000
ホタテガイ 水産物 1.2 ≤10 200 0.000 ≤20 67 0.000
マガキ 水産物 0.48 23 81 0.000 ≤20 85 0.000
ワカメ加工品 水産物 0.3 ≤20 280 0.000 39 210 0.000

濃度はng/kg、摂取量はng/kg体重/日。「≤」は中央値が検出下限または定量下限未満で、下限値を代入した値(実際の濃度はそれ以下)。最大値が定量下限未満の品目も、試算で使われた代入値を表示。農林水産省「令和7年度国産農畜水産物のPFAS含有実態調査の結果について」表5・表6(p.11〜12)。アユ・畜産物は2か年合算。

6. 水道水・地下水の問題とは別の調査。ただし汚染地域の農産物も調べた

PFASのニュースでよく目にするのは、河川水や地下水、水道水から高い濃度が見つかったという話です。今回の調査はそれとは別で、店頭などで流通している国産食品を対象にしたものです。基準の枠組みも異なります。

対象 基準・目安 所管
水道水 PFOS+PFOAの合計で50 ng/L以下(水質基準。2026年4月から検査・遵守が義務化) 環境省
ミネラルウォーター類(殺菌・除菌を行うもの) PFOS+PFOAの合計で50 ng/L以下(2026年4月から) 消費者庁
河川水・地下水など環境中の水 PFOS+PFOAの合計で50 ng/L以下(指針値) 環境省
一般の食品 基準値なし。TDI(体重1kgあたり1日20 ng)と摂取量を比べて対応を判断 食品安全委員会(評価)・農林水産省等(実態調査)

水の基準は「1リットルあたり」、食品の濃度は「1kgあたり」、TDIは「体重1kgあたり1日」と単位が異なるので、数字をそのまま比べないよう注意してください。

そのうえで、農林水産省は「水が汚染された地域の農産物はどうか」も2つの方法で調べています。

  • 個別事例調査:農業用に使っている河川水・地下水から指針値を超えるPFOS・PFOA(合計で最大100〜3,000 ng/L程度)が検出された5地域で、玄米、大豆、ダイコン、ニンジン、サトイモ、ホウレンソウ、ハクサイ、ブロッコリー、ナスを測定しました。結果は流通品と同様に、すべて定量下限未満か低い濃度でした。数値の大きいものでも、ダイコンのPFOA最大200 ng/kg、ホウレンソウのPFOA 14〜74 ng/kgです。地点は協力者との約束で非公表です。
  • 栽培試験:次の章で紹介します。

7. 汚染土壌で野菜を育てても、可食部への移行は限定的

指針値を超える河川水・地下水を農業用水に使っている(使っていた)農地のうち、土壌の性質が異なる2か所で、バレイショ、キャベツ、ダイコン、ニンジン、ホウレンソウを一般的な品種・慣行の方法で栽培しました。ほ場Aは近くの水からPFOS+PFOAが最大300 ng/L程度、ほ場Bは最大30,000 ng/L程度検出された地点の近くです。

PFOS・PFOAを多く含む2ほ場で育てた野菜5品目の土壌濃度と可食部濃度(令和7年度栽培試験)
PFOS・PFOAを多く含む2ほ場で育てた野菜5品目の土壌濃度と可食部濃度(令和7年度栽培試験)
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  • ほ場Aの土壌にはPFOSが13,000〜17,000 ng/kg(乾燥重)含まれていましたが、野菜の可食部のPFOSは定量下限未満(<2)〜最大13 ng/kg(ニンジン)でした。
  • ほ場BはPFOAが多い土壌(920〜2,100 ng/kg)で、可食部のPFOAは4〜最大60 ng/kg(ホウレンソウ)でした。
  • 土壌中のPFOS濃度は2つのほ場で100倍近く違いましたが、野菜のPFOS濃度に大きな差はありませんでした。いずれも流通品の実態調査と同程度の水準です。

令和6年度には、コメについても同様の研究が行われ、玄米中の濃度は水田土壌の濃度の1,000分の5以下(PFOS)・1,000分の4以下(PFOA)で、ほとんど移行しないことが報告されています。

この試験には限界もあります。栽培期間中の水やりは主に雨水で、必要に応じて貯めた雨水か水道水を使っており、汚染された水そのものを灌水した試験ではありません(土壌から作物への移行を見る試験です)。対象は5品目・2ほ場で、1区画だけの栽培もあります。資料も、移行の程度は品種・土壌・栽培方法で変わりうると注記しています。国は他の主要な農産物についても試験を続ける予定です。

8. 分かったこと・まだ分かっていないこと

農林水産省のリスク管理検討会では、「37品目からの摂取量はTDIを大幅に下回っており、直ちに対策を講じる必要はない」との意見が出た一方、品目を広げた調査と、特異的に高い値が出た品目の要因調査を求める意見が出ています。調査結果を読むときは、次の範囲と限界を押さえておくと誤解がありません。

項目 今回の調査の範囲
品目 国産37品目(食品消費量の約5割)。輸入食品、加工食品(ワカメ加工品を除く)、飲料水は対象外
物質 1万種類以上あるPFASのうち4種類。摂取量の試算はTDIのあるPFOS・PFOAのみ
測定 直鎖体のみ。分岐異性体は正確な定量法が確立していないため含まない
試料数 各品目30点(畜産物は90点、アユは75点)。流通品を産地が偏らないよう購入
地域 流通品は産地を特定しない全国調査。汚染地域の個別事例は5地域、栽培試験は2ほ場
摂取量 平均的な日本人(体重56.2kg)の平均消費量で試算。特定の食品を多く食べる人、子ども、特定地域の住民などの個別の状況は反映していない
分析法 国際的な標準法・国内の公定法がまだなく、海外データとの単純比較はできない

食品安全委員会は、通常の食生活から摂る程度のPFOS・PFOAで「著しい健康影響が生じる状況にはない」と考えられる一方、リスクを過剰に心配して食生活を変えると栄養の偏りという別のリスクが生じうる、としています。農林水産省も、さまざまな産地・品目をバランスよく食べることが重要だとしています。令和8年度は、生産量が多い未調査の品目に対象を広げて調査が続きます。

よくある質問

魚や卵は食べる量を控えたほうがよいですか?

国の評価では、通常の食生活で摂る量はTDIを大きく下回っており、控える必要があるとはされていません。水産物や鶏卵はPFOSが検出されやすい品目ですが、37品目の平均摂取量の試算はPFOSでTDIの0.65%です。むしろ特定の食品を避けることで栄養が偏るリスクが指摘されています。ただし、アユでは特異的に高い濃度の試料が、鶏卵でもやや高い試料が見つかっており、国が要因を調べている段階です。今後の公表に注目してください。

PFASが検出された地域でとれた野菜やお米は大丈夫ですか?

水の指針値を超えた5地域の農産物の個別調査でも、流通品と同様に定量下限未満か低い濃度でした。汚染土壌での栽培試験でも可食部への移行は限定的で、農林水産省のQ&Aでは「現時点では栽培を控えるなどの措置が必要との知見は得られていない」としています。ただし調べた地域・品目は限られており、地域ごとの状況は自治体の調査結果もあわせて確認してください。

食品にもPFASの基準値はあるのですか?

2026年9月時点で、日本では殺菌・除菌を行うミネラルウォーター類を除いて、食品中のPFASの基準値はありません。国はまず実態調査で濃度分布のデータを集め、TDIと摂取量を比べて対応を判断する段階にあります。残留農薬のように品目ごとの基準値で管理する仕組み(農薬の使用回数に上限がある理由で解説)とは、管理の考え方が異なります。


ライセンスと引用方法

要素 ライセンス 条件
本記事の分析・考察・執筆 CC BY 4.0 出典表記で商用利用可
自作グラフ(PNG) CC BY 4.0 出典表記で商用利用可
元データ(農林水産省の公表値) PDL1.0 出典表記・加工表記が必要
元データ(TDIの値・定義など食品安全委員会の公表情報) 内閣府ホームページ利用規約に準拠 出典表記が必要

推奨クレジット表記:

出典: smartagri.jp「国産農畜水産物のPFAS濃度と摂取量【令和7年度調査】」
国産農畜水産物のPFAS濃度と摂取量【令和7年度調査】摂取量はTDIの1%未満、水産物はPFOS定量が8割
元データ: 農林水産省「令和7年度国産農畜水産物に含まれる有機フッ素化合物(PFAS)の実態調査や試験研究の結果について」(令和8年9月11日) https://www.maff.go.jp/j/press/syouan/seisaku/260911.html (2026年9月25日に利用)を加工して作成

※本ページは農林水産省の公表値を加工して作成しています。国(農林水産省)が本ページの編集・加工内容を承認・作成したものではありません。摂取量内訳の割合(第5章)とTDIとの比較の目安(第4章)は smartagri.jp の計算です。


出典・参考URL

関連記事:品目別の食料自給率ランキング/農薬の使用回数に上限がある理由と正しい数え方