野生鳥獣による農作物被害額の推移 2024年度は188億円に増加

野生鳥獣による農作物被害は、収量や品質を直接削る一方で、防護柵の設置や見回りといった見えにくいコストも農家に課しています。農林水産省によると、2024年度の被害額は188億円となり、前年度から24億円増加しました。減少傾向が続いてきた被害額が再び増加に転じたことは、中規模以上の経営ほど無視できないリスク要因です。

被害額は188億円、ピークから約2割減

野生鳥獣による農作物被害額は、2010年度の239億円をピークに長期的には縮小してきました。電気柵や金属柵の普及、捕獲の強化といった対策が一定の効果を上げ、ピーク時と比べると2割ほど低い水準まで下がっています。

しかし2024年度は188億円と、前年度比で24億円の増加に転じました。被害額の減少が一本調子では進まないことを示す数字であり、対策を緩めればすぐに反転しうるという現実を裏づけています。

野生鳥獣による農作物被害額の推移(億円)
出典: 農林水産省 鳥獣被害対策コーナー/令和7年度 食料・農業・農村白書

金額そのものは農業産出額全体から見れば一部にとどまりますが、被害は中山間地域や特定品目に集中する傾向があり、被害を受ける個々の経営にとっては経営判断を左右する規模になります。耕作をあきらめる動機にもなりうるため、耕地面積と荒廃農地の問題とも密接につながっています。

シカ・イノシシが大半、北海道ではシカ被害が増加

獣種別に見ると、被害額の大半をシカとイノシシが占めています。両者は行動範囲が広く、水稲・野菜・果樹・牧草など幅広い品目に被害を及ぼすため、被害対策の中心的な標的となってきました。

近年は地域差も鮮明です。とくに北海道を中心にシカによる被害が増加しており、生息数の拡大が背景にあるとみられます。広い農地を抱える大規模経営ほど、柵の延長距離が長くなり、防護コストの負担も大きくなります。

クマ被害の社会問題化と農家への含意

2024年度は、クマによる被害が社会問題として大きく取り上げられた年でもありました。農作物被害にとどまらず、人身被害や市街地への出没が相次ぎ、鳥獣被害が農業の枠を超えた地域全体の課題として認識されるようになっています。

こうした状況は、農家にとって次の3点を示唆します。

  • 被害の再増加に備えること。減少傾向が続いても油断はできず、柵の点検や捕獲体制の維持が引き続き必要です。
  • 地域単位での対策。個々の圃場だけでなく、集落・地域で取り組むことで侵入経路を効果的に断てます。
  • 担い手減少との相乗リスク。見回りや捕獲を担う人手は日本の農業従事者数の減少とともに細っており、対策の持続性そのものが課題になっています。

鳥獣被害は天候と同じく完全には制御できないリスクですが、推移を把握し対策を継続することで被害を抑えてきた実績があります。2024年度の増加は、その手綱を緩めない判断を経営者に求めています。

データの引用について

本記事で用いた数値は農林水産省の公表データに基づきます。同省の統計・白書はクレジット表示(CC BY 4.0)により出典を明記すれば自由に引用・利用できます。引用の際は出典名とURLの記載をお願いします。

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