「日本の食料自給率は38%」という総合カロリーベースの数字はよく知られていますが、これはあくまで国全体を一本に束ねた平均値です。実際に何をどれだけ国内で賄えているかは、品目によって大きく異なります。農林水産省「食料需給表」令和6年度概算値の品目別自給率(重量ベース)を見ると、最も高い米の97%から最も低い大豆の7%まで、その差は最大で約14倍に開いています。自分が扱う作目が自給構造のどこに位置するかを知ることは、価格交渉力や需要の伸びしろを読むうえで欠かせません。
この記事では総合カロリーベース38%とは別軸で、品目ごとの重量ベース自給率をランキング形式で読み解きます。総合自給率そのものについては食料自給率(総合)の解説記事を併せてご覧ください。

米と鶏卵が97%、大豆は7% 自給率の二極化
品目別自給率(重量ベース)を高い順に並べると、次のようになります。
- 米 97%
- 鶏卵 97%
- 野菜 78%
- 牛乳・乳製品 63%
- 肉類 53%
- 果実 36%
- 小麦 16%
- 大豆 7%
上位の米と鶏卵はいずれも97%で、ほぼ国内生産で需要を満たしています。一方で下位の小麦16%、大豆7%は、その大半を輸入に依存している構図です。同じ「食料」でも、国内で完結している品目と海外の供給に組み込まれている品目とで、自給の実態がはっきり二極化していることが読み取れます。
注意したいのは、自給率が高いことが必ずしも需要の強さや収益性を意味するわけではない点です。米の97%は高い国内生産力の裏返しであると同時に、需要そのものが頭打ちになっている品目でもあります。逆に自給率の低い小麦や大豆は、国内生産を増やせば置き換えられる輸入需要がそれだけ大きいとも言えます。
穀物全体は29%、主食用穀物は61%
品目をまとめた集計値で見ると、穀物全体の自給率は29%にとどまります。これは飼料用を含む穀物全体で見た数字で、小麦16%や大豆7%といった輸入依存の高い品目が平均を押し下げています。
一方、米を中心とする主食用穀物に限ると自給率は61%まで上がります。同じ「穀物」というくくりでも、人が主食として食べる部分と、家畜の飼料などを含めた全体とでは、自給の景色がまったく異なることがわかります。

この差は、飼料の多くを輸入に頼っている日本の畜産構造とも結びついています。肉類の自給率は重量ベースで53%ですが、その家畜を育てる飼料穀物まで遡ると、国内で完結している割合はさらに小さくなります。畜産に関わる農家・農業法人にとっては、飼料価格が国際相場に左右されやすい構造的なリスクとして意識しておきたいところです。
農家・農業法人にとっての読み解き
品目別自給率は、自分の作目がどの程度「国産でなければ成り立たない領域」にあるかを示す指標として使えます。野菜78%のように自給率が比較的高い品目では、国産であること自体は差別化になりにくく、品質や供給の安定性、産地ブランドでの勝負が中心になります。
反対に、小麦16%や大豆7%のように輸入依存度が高い品目では、「国産」という属性そのものが希少価値を持ちます。実需者や食品メーカーが国産原料を求める動きと噛み合えば、契約栽培や用途を絞った高付加価値生産の余地が生まれます。自給率の低さは、裏を返せば国内で開拓できる需要の大きさでもあります。
こうした品目ごとの構造を、誰がどれだけ作っているかという生産基盤の動向と重ねて見ると、より立体的に読めます。担い手の規模感については日本の農業従事者数の解説も参考になります。自給率という需要側の指標と、従事者数という供給側の指標を合わせて見ることで、自分の品目が置かれた位置をより正確に捉えられます。
データの引用について
本記事で用いた数値は農林水産省が公表する公的統計です。出典を明記すれば、本記事のグラフ・数値はCC BY 4.0のもとで自由に引用・転載いただけます。引用の際は「先端農業マガジン smartagri.jp」および農林水産省「食料需給表」の出典表記をお願いします。