中古トラクタの輸出は年5.4万台で新品の国内出荷の2倍|国別ランキングと11年の推移【2026年版】

中古トラクタを売る側の農業者にも、輸出の統計を調べたい人にも、日本の中古トラクタが年にどれだけ海外へ出ているのかは、意外と知られていません。この記事は、財務省通関統計を日本農業機械工業会(日農工)がまとめた2015〜2026年の国別輸出台数を使って、年別の推移と国別のランキングを図と表で示します。

日農工の統計に載っているのは台数だけで、金額はありません。金額の手がかりは、JETROが2019年に紹介した2017年の輸出額と、アジア経済研究所の報告書にとどまります。用途や評価の理由は、この2つの資料と、輸出業者の証言から拾いました。

図とCSVは出典を書けば自由に使えます(CC BY 4.0)。他の媒体や資料に引用するときは、末尾のダウンロードの節を参照してください。

中古トラクタの輸出は年5万〜6万台

2015年から2025年までの台数

日本から輸出された中古トラクタは、2015年が60,439台、2019年が51,315台、2022年が62,972台、2025年が53,926台でした。11年間で最も少ない2019年でも5万台を超え、最も多い2022年でも6.3万台に届いていません。

日本からの中古トラクタ輸出台数の推移(2015〜2025年)
図1 日本からの中古トラクタ輸出台数の推移(2015〜2025年)。2026年は1〜8月累計で34,131台。出典:財務省通関統計(日本農業機械工業会「中古トラクタ国別輸出実績」)を先端農業マガジンが加工して作成。CC BY 4.0

財務省通関統計に中古トラクタの区分ができたのは2015年です。そのため、この記事で追える最も古い年は2015年になります。

新品トラクタの国内出荷と比べる

日農工の統計では、2025年の新品トラクタの出荷は88,481台でした。内訳は国内向けが25,640台、輸出向けが62,841台です。

2025年の中古トラクタ輸出53,926台は、新品の国内出荷25,640台の約2.1倍にあたります。新品の輸出62,841台と比べると、中古の輸出は台数で約86%の規模です。日本の中古トラクタは、台数の上では海外向けが中心です。

ただし、輸出される中古トラクタの一部は、国内で買い取られた個人や法人の在庫とみられます。国内で離農や買い替えが進むと、その分が輸出の供給源になるという説明を、買取大手が公表しているほどです。

2026年の途中経過

2026年は1〜8月の累計が34,131台です。2025年の1〜8月は同じデータから38,963台と計算できるので、2026年は約12%少ない水準です。9月以降の台数は、日農工の統計に追記された時点で更新します。

年 輸出台数(台)
2015年 60,439
2016年 57,697
2017年 56,719
2018年 54,196
2019年 51,315
2020年 51,663
2021年 54,789
2022年 62,972
2023年 56,254
2024年 58,318
2025年 53,926
2026年(1〜8月累計) 34,131

輸出先ランキング 2025年

上位15か国の台数と比率

2025年の輸出先は、ベトナムが17,260台で首位でした。2位以下はポーランド、ブルガリア、オランダ、リトアニアと、欧州の国が続きます。上位15か国の合計は43,438台で、輸出全体の約81%を占めます。

2025年 中古トラクタ輸出台数 上位15か国
図2 2025年の中古トラクタ輸出台数 上位15か国。出典:財務省通関統計(日本農業機械工業会「中古トラクタ国別輸出実績」)を先端農業マガジンが加工して作成。CC BY 4.0
順位 仕向国 台数 全体に占める比率 地域
1 ベトナム 17,260 32.0% アジア
2 ポーランド 4,058 7.5% 欧州
3 ブルガリア 3,305 6.1% 欧州
4 オランダ 2,551 4.7% 欧州
5 リトアニア 2,270 4.2% 欧州
6 フランス 1,984 3.7% 欧州
7 ウクライナ 1,633 3.0% 欧州
8 ポルトガル 1,551 2.9% 欧州
9 ルーマニア 1,413 2.6% 欧州
10 エジプト 1,346 2.5% アフリカ
11 チリ 1,244 2.3% 中南米
12 マレーシア 1,232 2.3% アジア
13 ドイツ 1,220 2.3% 欧州
14 タイ 1,211 2.2% アジア
15 カンボジア 1,160 2.2% アジア

比率は各国の台数を、2025年の合計53,926台で割って算出しました。地域は当サイトの区分で、欧州は統計の国コードが2から始まる国です。

ベトナムが3分の1を占める

ベトナム単独で全体の32.0%です。2位のポーランドの4.3倍にあたり、1国だけが突出しています。

ベトナムの次にある欧州の国々は、1国あたり2,000〜4,000台の幅に収まっています。欧州の輸出先は分散しており、複数の国へ少しずつ送る構造です。

アジア・アフリカ・中南米の動き

上位15か国には、マレーシア1,232台、タイ1,211台、カンボジア1,160台も入っています。カンボジアは2024年の402台から2025年は1,160台に増え、2026年は1〜8月で1,545台に達しています。

エジプトは1,346台、チリは1,244台でした。上位15か国に米国は入っておらず、2025年の米国向けは7台です。

11年でベトナムが減り、欧州が増えた

仕向地の内訳の変化

2015年の中古トラクタ輸出では、ベトナムが27,392台で全体の45.3%を占めていました。2025年は17,260台で32.0%です。

反対に、欧州向けは2015年の22,328台(36.9%)から、2025年は27,122台(50.3%)に増えました。欧州には、統計の国コードがロシアやトルコ、ウクライナ、ベラルーシ、モルドバなどを含みます。

中古トラクタの仕向先の内訳(ベトナム・欧州・その他、2015〜2025年)
図3 中古トラクタの仕向先の内訳(ベトナム・欧州・その他、2015〜2025年)。出典:財務省通関統計(日本農業機械工業会「中古トラクタ国別輸出実績」)を先端農業マガジンが加工して作成。CC BY 4.0
年 合計(台) ベトナム(台) ベトナムの比率 欧州(台) 欧州の比率
2015年 60,439 27,392 45.3% 22,328 36.9%
2016年 57,697 26,246 45.5% 22,039 38.2%
2017年 56,719 25,420 44.8% 22,231 39.2%
2018年 54,196 20,371 37.6% 23,853 44.0%
2019年 51,315 18,375 35.8% 23,695 46.2%
2020年 51,663 16,416 31.8% 25,301 49.0%
2021年 54,789 17,774 32.4% 25,294 46.2%
2022年 62,972 25,009 39.7% 25,479 40.5%
2023年 56,254 14,498 25.8% 31,170 55.4%
2024年 58,318 20,116 34.5% 28,874 49.5%
2025年 53,926 17,260 32.0% 27,122 50.3%

ベトナム向けは年によって大きく動きます。2022年は25,009台まで戻り、2023年は14,498台に落ち、2024年は20,116台でした。ベトナム向けが減った年は、欧州の比率が上がっています。2023年は欧州が31,170台で、55.4%と11年間で最大でした。

国別の増減

国別に見ると、ポーランドは2015年の2,041台から2025年の4,058台に、約2倍になりました。ブルガリアは2,366台から3,305台、リトアニアは1,856台から2,270台、フランスは1,422台から1,984台に増えています。

ウクライナは594台から1,633台で、約2.7倍です。ロシアは2,320台から814台に減りました。フィリピンは2,283台から278台、米国は473台から7台に減っています。

仕向国 2015年(台) 2025年(台) 増減(台)
ベトナム 27,392 17,260 -10,132
ポーランド 2,041 4,058 +2,017
ブルガリア 2,366 3,305 +939
リトアニア 1,856 2,270 +414
ウクライナ 594 1,633 +1,039
フランス 1,422 1,984 +562
ロシア 2,320 814 -1,506
フィリピン 2,283 278 -2,005
米国 473 7 -466

減った国と増えた国の見方

国ごとの増減の理由は、日農工の統計には書かれていません。そのため、為替、現地の規制、需要の変化などのどれが主因かは、この記事では断定しません。

確認できるのは、ベトナム向けが2015年から2025年にかけて約1万台減り、その間に欧州向けが約4,800台増えたことです。ベトナム向けの落ち込みを欧州向けが埋め、合計が5万台前後を保った形になっています。

なぜ日本の中古トラクタが海外で売れるのか

ベトナムでは小型が修理と改造を経て使われる

アジア経済研究所の坂田正三氏による2018年の報告書は、ベトナムに輸入される中古トラクターの大半が、日本からの小型(80馬力以下)だと述べています。2輪と4輪の乗用トラクターが両方入っています。

ベトナム向けの中古トラクタ輸出は、1980年代に元インドシナ難民が始めたビジネスだと同報告書は説明しています。日本の輸出企業の一部は、ベトナム出身者の経営です。

ベトナム側では、ホーチミン市やロンアン省の輸入業者が買い、農村の小規模な販売業者に売ります。販売業者は修理や、ロータリーなど作業機の改造も手がけます。

同報告書は、日系メーカーが現地生産を増やしても日本からの中古輸入が減らない理由として、いくつかの推定を挙げています。北部での普及、エンジンをポンプ代わりにするような別用途、補修用の部品取り、輸入した中古のエンジンとミッションにベトナム製のフレームを組んで新車として売る地場メーカーの増加です。いずれも統計では把握が難しい推定だと、同報告書は断っています。

欧州ではシンプルで丈夫な古い機種が選ばれる

欧州向けの用途は、JETROが2019年に掲載した、鳥取県の輸出業者の旺方トレーディングへの取材記事から分かります。以下は同社の発言として読む必要があります。

同社は、国内で買い取った中古トラクターのうち台数ベースで約70%を輸出し、残りは国内販売か中古農機オークションに出すと述べています。2018年は輸出全体の約83%がEU向けでした。

輸出しているのは30〜40年前に製造されたモデルが中心です。同社は「複雑な最新機能は装備されていないが、その分、作りがシンプルで丈夫、また修理や整備も簡単」だと説明しています。現地でのアフターサービスやメンテナンスは不要だという話です。

日本製は故障が少なく、欧米メーカーの製品より小さくて小回りが利きます。そのため、アタッチメントを雪かきや芝刈りに替えたり、自宅周りのDIYに使ったりと、農業以外の目的でも需要があると、同社は語っています。ただし、欧州の用途に関する公的な統計は見つかっていません。

なお、同社は2020年4月にMEトレーディングへ事業を譲渡しています。JETROの記事に、その旨の注記があります。

輸出額は小型が大半(2017年)

金額の公的な手がかりは、JETROの記事に載っている2017年の中古トラクター輸出額です。元データは財務省の貿易統計で、合計は127億4,800万円でした。

エンジン出力別では、18kW以下が78億7,400万円、18kW超37kW以下が40億3,900万円です。両方を合わせた37kW以下は119億1,300万円で、輸出額全体の約93%にあたります(当サイトの計算)。1kWを1.36馬力で換算すると、37kWはおよそ50馬力です。

地域別では、アジア向けが68億9,300万円で全体の54.1%、EU向けが41億4,800万円で32.5%でした。2017年の数字なので、現在の金額ではありません。

数字の読み方と限界

台数だけで金額は取れない

日農工の中古トラクタ国別輸出実績は、台数だけが載っており、金額はありません。財務省の貿易統計で中古を分離できるのは、履帯式の区分だけである可能性があり、金額を台数と同じ粒度で取るのは難しいとみられます。

このため、台数に平均単価を掛けて市場規模を出すことは、この記事では行っていません。単価に根拠のある一次データが見つかっていないためです。

国内の中古流通を測る統計は見つかっていない

国内で取引された中古トラクタの台数や金額を継続して調べた公的統計は、現在確認できていません。農林水産省の中古農業機械流通実態調査は、平成5年から10年ごろの刊行が書誌で確認できるだけで、本文は確認できていません。

農林水産省の2016年の資料には、JAの70.9%が中古農機を扱い、農業者が機械費を減らす取組として「中古品を購入する」を挙げた割合が46.3%(回答1,074人)という調査があります。国内の中古需要の大きさをうかがう材料ですが、取引台数は分かりません。

国内の中古販売率として、日本農業機械化協会のトラクタ27.4%(2021年)という数字を、別の資料が引いています。ただし、この数字は孫引きで、定義も確認できていません。この記事の計算には使っていません。

欧州の区分は当サイトの集計

欧州の台数と比率は、日農工のPDFにある国コードが2から始まる国の合計を、当サイトが集計したものです。ロシア、トルコ、ウクライナなどを含むため、EU加盟国だけの値とは異なります。

日農工の中古トラクタ区分は、輸出時に中古として申告されたものです。新品と中古の境目は、申告に依存しています。

中古トラクタを実際に売る場合の登録や名義変更、税務の取扱いは、機種や契約によって異なります。個別の適用は、税理士、市町村、運輸支局に確認してください。

図表とデータのダウンロード(出典を書けば自由に使えます)

この記事の図3点と履歴データは、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0(CC BY 4.0)で提供します。ブログ、資料、授業、社内報告、SNSなどに、改変を含めて自由に使えます。条件は出典の記載だけです。

出典の書き方の例です。

出典:財務省通関統計(日本農業機械工業会「中古トラクタ国別輸出実績」)を先端農業マガジン(https://smartagri.jp/p/11089/)が加工して作成

ウェブページに貼るときは、次のHTMLをそのまま使えます。

<figure><img src="https://smartagri.jp/wp-content/uploads/2026/10/utra-top15-2025.png" alt="2025年 中古トラクタ輸出台数 上位15か国" width="800" style="max-width:100%;height:auto;"><figcaption>出典:財務省通関統計(日本農業機械工業会「中古トラクタ国別輸出実績」)を<a href="https://smartagri.jp/p/11089/">先端農業マガジン</a>が加工して作成</figcaption></figure>

まとめ

日本の中古トラクタの輸出は、2015年から2025年まで毎年5万台以上で、2025年は53,926台でした。新品の国内出荷25,640台の約2.1倍です。輸出先はベトナムが32.0%で首位ですが、2015年の45.3%からは下がり、欧州が36.9%から50.3%に増えました。ベトナムでは修理や改造を経て小型機が使われ、欧州ではシンプルで丈夫な古い機種が選ばれていると、公的報告書と輸出業者が述べています。金額や国内の流通量は、公的な統計から確認できていません。

よくある質問

日本の中古トラクタはどの国に一番多く輸出されていますか

2025年はベトナムが17,260台で最も多く、輸出全体の32.0%です。2位はポーランドの4,058台、3位はブルガリアの3,305台でした。

輸出台数の統計はどこで見られますか

日本農業機械工業会の統計ページで、財務省通関統計をもとにした「中古トラクタ国別輸出実績」のPDFが無料で公開されています。2015年分から年ごとに掲載されています。

国内の中古農機の流通量は分かりますか

国内の中古流通を測る公的な統計は、現在見つかっていません。農林水産省の中古農業機械流通実態調査は平成5年から10年ごろの刊行が確認できる程度で、本文は確認できていません。

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輸出される中古トラクタはどんな機種ですか

ベトナム向けの大半は80馬力以下の小型で、欧州向けは30〜40年前に作られたシンプルな機種が中心とされています。後者は輸出業者の証言で、公的な機種別統計は見つかっていません。

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