農産物の販売先の割合|農林業センサスで見る直接販売・ネット販売

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直売所への出荷や産直を始めた農業者、あるいは農協出荷だけに頼る体制を見直したい農業法人に向けた記事です。農産物をどこへ売っている経営体が多いのか、消費者への直接販売やインターネット販売をしている経営体はどれくらいいるのかを、公的統計の数字で確認できます。

数字は農林水産省の「2020年農林業センサス」を中心に、e-Statの統計表から自分で取得したものです。2015年の結果と並べて、5年間の変化も示します。比較には、経営規模別と品目(部門)別の集計も使いました。自分の経営に近い層の販売先を調べるときの目安にしてください。

農産物の販売先は何が多いのか

2020年農林業センサスでは、農産物を販売した農業経営体97万8,210のうち、農協に出荷した経営体が70万4,393で72.0%を占めました。消費者に直接販売した経営体は20万7,600で21.2%、農協以外の集出荷団体は14.7%、卸売市場は11.4%です。

この調査では、販売先を複数選べます。1つの経営体が農協と直売所の両方に出荷していれば、両方に数えられます。そのため、下表の割合は足しても100%になりません。割合の分母は、2020年が97万8,210、2015年が124万5,232の「販売のあった実経営体数」です。

出荷先 2020年の経営体数 2020年の割合 2015年の経営体数 2015年の割合
農協 704,393 72.0% 910,722 73.1%
農協以外の集出荷団体 143,875 14.7% 157,888 12.7%
卸売市場 111,845 11.4% 137,090 11.0%
小売業者 96,161 9.8% 104,684 8.4%
食品製造業・外食産業 40,242 4.1% 34,944 2.8%
消費者に直接販売 207,600 21.2% 236,655 19.0%
その他 76,646 7.8% 96,812 7.8%
販売のあった実経営体数 978,210 1,245,232

経営体数はほとんどの出荷先で減りました。農協は22.7%、卸売市場は18.4%、消費者への直接販売は12.3%の減少です。販売のあった経営体全体が21.4%減っているためです。割合で見ると、消費者への直接販売は19.0%から21.2%へ、食品製造業・外食産業は2.8%から4.1%へ上がりました。上の7区分で経営体数が増えたのは、食品製造業・外食産業の15.2%増だけです。

売上が最も多い出荷先は何か

農産物の売上が最も多い出荷先は、2020年は農協が64.3%で最多でした。次いで農協以外の集出荷団体が9.7%、消費者に直接販売が9.0%です。売上1位に絞ると、複数の出荷先を持つ経営体の主力がどこにあるかが分かります。

売上1位の出荷先 2010年 2015年 2020年 2020年の経営体数
農協 67.2% 66.2% 64.3% 628,783
農協以外の集出荷団体 9.2% 8.7% 9.7% 94,861
卸売市場 5.9% 6.3% 6.4% 62,175
小売業者 4.2% 4.8% 5.3% 51,405
食品製造業・外食産業 0.8% 1.5% 1.6% 15,610
消費者に直接販売 10.1% 8.8% 9.0% 87,718
その他 2.7% 3.8% 3.8% 37,658

農協の割合は2010年から2020年までに2.9ポイント下がりました。同じ期間に、小売業者は1.1ポイント、食品製造業・外食産業は0.8ポイント上がっています。消費者への直接販売は2010年の10.1%から2015年に8.8%へ下がり、2020年に9.0%へ戻りました。売上1位とする経営体は2015年の10万9,555から8万7,718へ減っています。割合が戻ったのは、分母の経営体が減ったためです。

消費者への直接販売をする経営体は何軒あるのか

2020年に消費者へ直接販売した農業経営体は20万7,600で、販売のあった経営体の21.2%です。2015年の23万6,655から約2万9,000減りましたが、割合は19.0%から上がりました。農産物を売る5軒に1軒が、消費者へ直接売っています。

センサスは、消費者への直接販売を4つの方法に分けて調べています。方法ごとの経営体数は次のとおりです。

消費者への直接販売の方法 2020年 2015年 増減
自営の農産物直売所 41,484 48,829 15.0%減
その他の農産物直売所 87,547 105,468 17.0%減
インターネット 10,526 9,132 15.3%増
その他の方法 92,939 97,938 5.1%減

最も多いのは、自営以外の農産物直売所に出す経営体で、8万7,547です。自営の直売所を持つ経営体は4万1,484でした。この統計に「その他の方法」の内訳はなく、どのような販売がここに含まれるかは、取得した統計表からは分かりません。

直売所全体の販売額は、農林水産省の「6次産業化総合調査」で確認できます。農産物直売所の販売(売上)金額は、令和2年度が1兆535億円、令和6年度が1兆1,344億円でした。直売所に出す経営体は減っても、直売所の売上総額は増えています。直売所そのものの統計はhttps://smartagri.jp/p/10463/で詳しく扱っています。

インターネットで販売する経営体はどれくらいか

2020年にインターネットで農産物を販売した農業経営体は1万526で、販売のあった経営体の1.1%でした。2015年の9,132(0.7%)から15.3%増えています。全体が減る中で、増えた数少ない販売方法です。

ネット販売の割合は、経営規模によって大きく変わります。次の節で示すとおり、販売金額が50万円未満の経営体では0.3%、5億円以上では7.0%です。

地域では、山梨県が3.4%で最も高く、長野県が2.2%、山形県が1.8%、和歌山県が1.7%、北海道が1.6%と続きます(いずれも販売のあった経営体に対する割合)。東京都も1.6%でした。いずれの県も全国平均の1.1%を上回りますが、最も高い山梨県でも30軒に1軒です。

経営規模が大きいほど販売先は増えるのか

農産物販売金額が大きい経営体ほど、販売先の数が増えます。センサスの7区分(農協、農協以外の集出荷団体、卸売市場、小売業者、食品製造業・外食産業、消費者に直接販売、その他)を数えると、1経営体あたりの出荷先は、販売金額50万円未満で1.19、5億円以上で1.96でした。全体の平均は1.41です。

農産物の販売金額 経営体数 農協 卸売市場 消費者に直接販売 うちインターネット 売上1位が消費者への直接販売
50万円未満 287,122 65.3% 4.1% 18.9% 0.3% 12.2%
100~300万円 212,830 74.8% 11.6% 21.7% 0.8% 8.2%
500~1,000万円 91,764 76.6% 22.0% 25.7% 2.0% 7.3%
1,000~3,000万円 86,145 78.8% 22.4% 24.1% 2.8% 5.3%
5,000万~1億円 13,120 73.9% 20.1% 18.2% 4.8% 2.8%
1~2億円 4,269 62.9% 24.0% 18.6% 6.3% 3.1%
5億円以上 1,326 40.5% 33.6% 17.0% 7.0% 1.6%

消費者に直接販売する割合は、500~1,000万円の層で25.7%と最も高くなります。1億円を超える層では15.4%から21.1%の間で推移します。売上1位を直接販売とする経営体の割合は、50万円未満の12.2%から5億円以上の1.6%へ、規模が上がるほど下がりました。

反対に、卸売市場、小売業者、食品製造業・外食産業への出荷は、規模が大きいほど割合が上がります。5億円以上の層では、農協への出荷が40.5%まで下がり、卸売市場(33.6%)、小売業者(28.7%)、食品製造業・外食産業(30.1%)がそれぞれ3割前後を占めます。

規模が大きい経営体は、農協、市場、小売、外食と複数の出荷先に売り先を分けています。この表は販売先と規模の関係を示すもので、直接販売を増やすと販売金額が増えるかどうかまでは示していません。

品目によって販売先はどう違うのか

消費者への直接販売が多いのは、果樹類、露地野菜、養鶏、花き・花木、施設野菜です。次の表は、農産物販売金額1位の部門ごとに、出荷先の割合をまとめたものです。

売上1位の部門 経営体数 農協 卸売市場 消費者に直接販売 うちインターネット
稲作 542,860 75.3% 3.4% 17.9% 0.6%
露地野菜 104,183 65.1% 22.8% 30.4% 1.3%
施設野菜 60,971 76.0% 25.4% 25.5% 1.3%
果樹類 128,652 71.5% 22.1% 31.8% 2.5%
花き・花木 25,382 55.3% 41.3% 28.1% 1.8%
酪農 12,837 86.4% 6.0% 3.8% 0.6%
養鶏 3,329 27.2% 9.9% 35.0% 7.1%

果樹類は消費者への直接販売が31.8%、インターネットが2.5%で、耕種部門の中ではどちらも高い水準です。露地野菜は直接販売が30.4%で、そのうち自営以外の直売所が20.2%を占めます。稲作は農協が75.3%と高く、直接販売は17.9%ですが、経営体数が54万と多いため、直接販売する経営体は約9万7,000に上ります。

花き・花木は、卸売市場への出荷が41.3%と他の部門より高い水準です。酪農は農協が86.4%で、消費者への直接販売は3.8%にとどまります。

地域によって直接販売の割合は違うのか

都道府県別に見ると、消費者への直接販売の割合は大きく開きます。東京都が65.1%、神奈川県が51.4%、大阪府が42.9%、京都府が37.8%、奈良県が36.7%、埼玉県が35.2%です。反対に、秋田県は11.8%、青森県は9.3%、沖縄県は6.8%でした。

東京都、神奈川県、大阪府など大都市を含む都府県で割合が高く、秋田県、青森県、沖縄県では低い値でした。市区町村別の統計表も公表されているため、自分の地域の割合を調べると、周囲の経営体の動きが分かります。

自分の経営で販売先を組み合わせるには何を見ればよいか

統計から読み取れる範囲では、規模が大きくなるほど出荷先の種類が増えます。500万円を超える層では卸売市場への出荷が2割を超え、5億円以上の層では小売業者や食品製造業・外食産業も3割前後になります。直接販売の割合が最も高い層は、販売金額500~1,000万円の経営体でした。

出荷先を増やすと、出荷先ごとに数量、単価、納品日、請求の記録が必要になります。直売所、市場、小売店、飲食店では、納品先ごとに伝票の形式や締め日が異なります。出荷台帳を1冊用意して、どの出荷先へ何をいつ何箱出したかを1か所に記録すれば、出荷先別の売上を比べられます。

無料テンプレート:出荷台帳

出荷日、出荷先、品目、数量、単価を1行ずつ記録し、出荷先別の売上を集計できる出荷台帳です。Excel/PDF、登録不要です。

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新しい販路を開拓する手順は、農業の販路開拓にまとめています。直売所の統計はhttps://smartagri.jp/p/10463/、消費者が直売所で買う理由はhttps://smartagri.jp/p/10465/で確認できます。

よくある質問

農産物の販売先で最も多いのはどこですか。

農協です。2020年農林業センサスでは、販売のあった経営体の72.0%が農協に出荷しました。売上が最も多い出荷先に絞っても、農協が64.3%で最多です。

直接販売をしている農家はどれくらいいますか。

2020年は20万7,600の経営体が消費者に直接販売しており、販売のあった経営体の21.2%にあたります。ただし、売上1位が消費者への直接販売の経営体は9.0%です。直接販売をしていても、売上の中心を農協や市場に置いている経営体が多いと分かります。

農産物のネット販売をしている経営体は何%ですか。

1.1%です。2020年は1万526の経営体がインターネットで販売しました。2015年の9,132から15.3%増えており、販売金額5億円以上の層では7.0%が取り組んでいます。

消費者への直接販売には何が含まれますか。

センサスでは、自営の農産物直売所、その他の農産物直売所、インターネット、その他の方法の4つに分けて調べています。2020年は、その他の農産物直売所が8万7,547の経営体で最多でした。

まとめ

2020年農林業センサスでは、農産物を販売した経営体の72.0%が農協に出荷し、21.2%が消費者に直接販売していました。ネット販売は1.1%と少ないものの、2015年から15.3%増えています。販売金額が大きい経営体ほど出荷先の種類が多く、5億円以上の層では卸売市場や小売、外食が3割前後を占めます。自分の経営と近い規模や品目の層を表で探し、出荷先の組み合わせを見直す材料にしてください。

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