資金繰り表(農業用)の書き方と記入例|月別に作れる無料テンプレート(Excel・PDF)

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農家の資金繰り表は、月ごとに「月初めの残高、入ってくるお金、出ていくお金、月末の残高」を並べる表です。資材や燃料の支払いは作付け前の冬から春に集まり、売上の入金は収穫が始まってからで、出荷の翌月以降になることも珍しくありません。年間では黒字でも、春から初夏に手元の現金が足りなくなる月が出ます。その月と不足額を前もって見つけるのが、この表の役目です。

資金繰り表の作成は、法律で義務づけられていません。ただし日本政策金融公庫は資金繰り表の書式と記入例を公開していて、融資の相談では資金繰りの資料を求められることがあります。この記事では、公庫の記入例の行立てと農林水産省の資金・収入保険の案内にそって、月別の記入例、項目ごとの書き方、よくある間違いを説明します。提出先から指定の様式があれば、そちらを優先してください。

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目次

資金繰り表とは/なぜ必要か

法律上の義務はないが、融資の相談で使われる

資金繰り表は、税法や農業関係の法令が作成を定めている書類ではありません。経営者が自分のために作る管理表です。一方で、日本政策金融公庫(国民生活事業)の記入例は、前月繰越金、売上と回収、仕入や経費の支払い、差引過不足、借入と返済、翌月繰越金を月ごとに並べる形になっています。公庫はこの書類を、お客さまの商売の状況を確認するために使うと案内しています。

農林水産事業の書式ダウンロードのページには、借入申込希望書兼経営改善資金計画書や、記入内容を整理するお役立ちシートとして「既往借入金の状況及び償還計画」が載っています。借入を考える農家は、資金繰り表とあわせて、すでにある借入の返済予定も手元に用意しておくと、窓口での話が早く進みやすくなります。

損益と資金繰りは別の数字

帳簿や収支内訳書は、1年の所得を計算するための記録です。売上は代金が入る前でも売った年に入れ、ハウスや機械の代金は、国税庁の説明どおり、使える期間にわたって減価償却費として少しずつ必要経費にします。

資金繰り表は、お金が実際に動く月で書きます。ハウスを3,000千円で建てたなら、建てた月に3,000千円が出る形です。逆に減価償却費は、現金が出ないので資金繰り表には入りません。借入金の元金の返済は経費になりませんが、口座からは出ていくので資金繰り表に入ります。この違いを知らないと、所得は出ているのに支払いに困る、という事態を見逃します。

足りない月が分かれば、借りる時期を選べる

足りなくなる月が半年前に分かれば、出荷先に入金日を相談する、資材の支払いを分ける、短期の運転資金を申し込むといった手が打てる点が利点です。農林水産省の案内では、認定農業者は資金繰りの短期運転資金として、民間金融機関が融資する農業経営改善促進資金(スーパーS資金)も利用できます。借入れには融資機関の審査があるので、資金が必要な日より極力早い時期に融資機関へ相談するよう、同省は呼びかけています。

記入例

下の記入例は、3月に借入金3,000千円でハウスを建て、6月から収穫が始まる架空の野菜農家の1年分です。年初の残高は2,400千円で、毎月200千円を家計へ移す想定にしています。単位は千円です。

資金繰り表(農業用)の記入例
資金繰り表(農業用)の記入例(出典:ミノリス 無料テンプレート)

1月から6月まで、差引(収入から支出を引いた額)は毎月マイナスです。3月はハウスの代金3,000千円を借入金3,000千円で払うので、残高は915千円に下がります。4月末には425千円まで減り、5月に短期の運転資金500千円を借りなければ、5月末の残高は80千円、6月末はマイナス15千円です。記入例では5月に500千円を借りて、6月末の残高を485千円に保っています。この500千円は10月に返す計画です。

7月以降は、販売代金の入金が支出を上回ります。10月と12月に借入金の返済を505千円と545千円入れても、12月末には1,785千円が残ります。年計の差引は65千円のマイナスですが、年間を通して見ると、足りなくなるのは春から初夏の数か月です。1年の合計だけを見ていたら、この谷には気づけません。

書き方(項目ごと)

テンプレートの行の順に説明します。Excelの「記入用」シートに入力し、「記入例」シートの数字と見比べながら進めてください。

年・氏名・単位

何年の表か、誰の表かを書き、単位を千円か円のどちらかに決めます。先の見通しを立てる表なので、千円単位で足ります。日本政策金融公庫の記入例も千円単位です。途中で円と千円が混ざると、合計が合わなくなります。

前月からの繰越(A)

1月だけは、年初の預金と現金の残高を書きます。通帳の残高に、手元の現金を足した額です。農業用の口座と家計の口座を分けている場合は、農業用の口座だけを数えます。2月以降は、前の月の「翌月へ繰越」をそのまま写します。

販売代金の入金

JA、市場、直売所、取引先から入金される月に、その額を書いてください。出荷した月ではありません。出荷先ごとに締め日と入金日が違うので、先に取引先ごとの日程をメモしておくと、どの月に書くか迷いません。テンプレートには、そのための「入金・支払の予定」シートが付いています。

直売所や庭先の現金売上は、売った月に入るお金として書きます。予定の金額は、前の年の同じ月の実績を目安にして、作付面積や単価の変化を見ながら調整してください。日本政策金融公庫の記入例も、前年の同じ月の売上と比べて予測を書く手順です。

交付金・共済金などの入金

交付金、共済金、補助金など、販売代金以外で入ってくるお金をここに書きます。入金の時期は、交付決定の通知や支払の案内で確かめてください。時期が決まっていないものは、見込みで書かずに空欄にしておき、決まった月に書き足します。入ると期待して書いた金額が遅れると、その月の残高が実際より多く見えてしまうからです。

種苗・肥料・農薬・資材と、燃料・電気・水道

代金が口座から引き落とされる月に、その額を書きます。購入した月と引落しの月がずれる仕入れ先もあるので、仕入れ先ごとの締め日と引落し日を確認して、月を決めてください。

肥料や農薬は、作付け前にまとめて買う農家が多く、冬から春に支出が集まります。前の年の領収書や通帳の出金を月別に並べると、予定が立てやすくなります。電気代はハウスの暖房や冷房で季節差が大きいので、前の年の請求額を月ごとに写してください。

雇用の賃金

パートや常雇いに払う賃金は、支払う月に書きます。給与を翌月払いにしている場合は、働いた月の次の月に入れてください。収穫期に人を増やす農家では、賃金の支出が増える月が、販売代金の入る月より先に来ます。この時差が資金不足の原因になることがあります。

出荷経費(箱・運賃・手数料)

出荷用の箱、袋、運賃、市場やJAの手数料が対象です。手数料を売上から差し引いて精算される出荷先では、通帳に入る額は手数料を引いた後の金額です。この場合は、販売代金の入金を差引後の額で書くか、販売代金を満額で書いて出荷経費に手数料を入れるかを決めて、毎月同じ方法で続けます。

地代・修繕・その他

農地の借賃、機械や施設の修繕費、通信費、事務用品など、ほかの行に入らない支出を書きます。借賃を年1回払いにしている場合は、その月だけ数字が大きくなる形です。記入例では12月に150千円が入っています。年に1回だけ出る支出は抜け落ちやすいので、前の年の通帳で確かめてください。

税金・保険・共済掛金

所得税、住民税、国民健康保険料、固定資産税、農業共済や収入保険の掛金などを、納める月に書きます。納期は納付書や通知書に書かれているので、その月を転記してください。

収入保険に入る場合は、保険料、積立金、付加保険料(事務費)の3つを支払います。農林水産省は、保険料と積立金は分割して支払える(最大9回)と案内しています。税務上は、保険料と付加保険料が必要経費、積立金は預け金です。性質は違っても、どちらも口座から出るお金なので、支払う月に書きます。

生活費(家計へ)

個人の農家は、農業の口座から家計へお金を移します。その額を毎月書いてください。記入例は毎月200千円です。生活費を入れ忘れると、足りなくなる月を見落とします。家計の口座に給与や年金の収入がある場合も、農業の口座から出す額を基準にすると、表がつながります。

借入金の入金と返済

借りたお金が口座に入る月に、入金額を書いてください。返済は、元金と利息の合計額を、引き落とされる月に書いてください。借入が複数ある場合は、返済予定表から月ごとに合計して写します。返済予定表が手元にないときは、借入先の金融機関に問い合わせると、償還表を出してもらえます。

新しく借りる予定の分も、返済の開始月を決めて書いてください。融資の実行日や返済の開始日は、借入先との相談で決まるので、見込みの月で書き、決まったら直します。

機械・施設の購入

トラクター、ハウス、選果機など、大きな設備の代金を、支払う月に全額書きます。減価償却費として何年かに分けて経費にする設備でも、資金繰り表では支払う月に1回だけ入れてください。リース契約にしている場合は、毎月のリース料を「地代・修繕・その他」に入れてください。

翌月へ繰越(A+D+E−F−G)

前月からの繰越に、差引、借入金の入金を足し、借入金の返済と機械・施設の購入を引いた額です。この数字がマイナスの月が、資金が足りなくなる月です。Excelでは自動で計算されます。手書きのPDFを使う場合は、毎月、電卓で確かめて、次の月の繰越に写してください。

気をつけること・よくある間違い

出荷した月に売上を書く

資金繰り表は、お金が入る月で書きます。出荷が7月でも、入金が8月末なら8月に書きます。出荷先の精算の日程は、取引先に確認してください。出荷から精算までの期間は出荷先ごとに違います。

生活費を入れない

個人の農家にとって、生活費は毎月かならず出るお金です。入れないと、農業の口座の残高が実際より多く見えます。記入例のように、毎月同じ額を入れておきます。

返済を利息だけで考える

経費になるのは利息だけです。口座からは元金も出ていきます。資金繰り表では、元金と利息の合計を書きます。返済計画表がある場合は、月ごとの額を写してください。年間の合計額は使えません。

1年の合計だけを見る

年計が黒字でも、途中の月でマイナスになれば、その月の支払いができません。月ごとの「翌月へ繰越」の列を見て、いちばん低い月と、その金額を確認します。記入例では、年計の差引は65千円のマイナスですが、見るべきは4月末の425千円と、借入がない場合の6月末のマイナス15千円です。

予定を一度作ったきり直さない

天候で収量が変わり、出荷先の入金日も動きます。月が終わったら、予定の数字を通帳と照らして実績に書き直し、先の月も見直してください。実績に置き換える作業を毎月続けると、予定と実際のずれの大きい行が分かってきます。

交付金や補助金を早めに入れてしまう

入金が決まっていないお金は、残高に入れない方が安全です。補助金には、事業が終わって実績報告を出した後に支払われるものがあります。その場合は、先に設備代を払う月と、補助金が入る月を分けて書き、間の期間の残高の低下を表に反映させます。

借入をしてから表を作る

足りなくなる月が決まってから急いで借りるより、半年から1年先まで表を作って、借りる月と額を決めておくと、融資機関と相談しやすくなります。農林水産省も、資金が必要な日より極力早く融資機関に相談するよう案内しています。

収入が減ったときの備えと資金繰り

災害や価格の下落で収入が減ったときの備えに、収入保険があります。農林水産省によると、加入できるのは青色申告をしている農業者です。保険期間の収入が基準収入の9割(5年分の青色申告実績がある場合の補償限度額の上限)を下回ると、下回った額の9割を上限に補てんされます。補てん金が支払われるのは、保険期間が終わった後です。

保険期間中でも、補てん金の受け取りが見込まれるときは、NOSAI全国連から無利子のつなぎ融資を受けられる仕組みがあります。農林水産省の資料の例では、基準収入が1,000万円の人が、保険期間中の販売収入が500万円まで減ると見込まれる場合、280万円程度が限度額です。受けたつなぎ融資は、補てん金と相殺して返します。資金繰り表には、融資が入る月に「借入金の入金」、相殺して返す月に返済として書いてください。限度額の計算は補償の割合などで変わるので、詳しい条件は加入申請をした農業共済組合に確認してください。

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紙・Excelで続かないときは

資金繰り表の数字は、毎月の入金と支払いが記録されていないと予定が立ちません。作業や資材の記録が手帳や領収書に散らばっていると、冬の入力作業が重くなります。

当社が提供しているミノリス日誌は、圃場ごとの作業、肥料、農薬、収穫の記録を付けるための無料アプリです。

  • 圃場を地図上に登録し、作付けごとに作業・肥料・農薬・収穫を記録できる
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  • 衛星画像で圃場の様子を確認できる
  • 栽培履歴をCSV・Excelで出力できる

資金繰り表を作る機能や、お金の収支を管理する機能はありません。月別の入金・支払いの予定は、このテンプレートや帳簿で管理してください。出荷の記録から資材の使用量や収穫量をたどる場面で、日誌の記録が役に立ちます。

出荷先への請求書と入金の管理には、同じ当社のミノリス受注があります。出荷した受注を請求先ごとの請求書にまとめ、発行日、支払期限、入金日を記録し、未入金分は一覧で確認する使い方です。入金の見込みを立てる材料になりますが、資金繰り表そのものを作る機能はありません。

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よくある質問

単位は円と千円のどちらがよいですか?

先の見通しを立てる表なので、千円単位で足ります。日本政策金融公庫の記入例も千円単位です。端数まで追いたい場合は円で書いても構いません。ただし、1枚の表の中で単位をそろえてください。

月次と週次のどちらで作るのがよいですか?

最初は月次で十分です。支払いが月末に集中する、入金が数日遅れると口座が空になる、といった場合は、足りなくなりそうな月だけ週ごとに分けて書き足します。

実績と予定はどう書き分けますか?

終わった月は通帳と照らして実際の金額に書き直し、これからの月は予定のまま残します。毎月、実績に置き換えながら先の月を見直すと、予定とのずれに早く気づけます。

帳簿や収支内訳書とは何が違いますか?

帳簿や収支内訳書は1年の所得を計算する記録で、未入金の売上も売った年の収入に入れます。資金繰り表はお金が動く月で書く表です。減価償却費のように現金が出ない経費は入れず、借入金の元金や機械の購入代金は入れます。

収入保険の保険料や積立金も資金繰り表に入れますか?

入れます。農林水産省によると、保険料は掛捨てで必要経費になり、積立金は自分のお金で税務上は預け金です。性質は違っても、どちらも口座から出ていくお金なので、支払う月に書きます。分割払い(最大9回)にした場合は、その回数ぶんに分けて書きます。

資金繰り表を銀行や公庫に出す必要がありますか?

法律上の提出義務はありません。融資の相談では、金融機関から資金繰りの資料を求められることがあります。様式の指定があれば、その様式を優先してください。借入を考えているなら、お金が必要になる日より前に、取引のある金融機関やJA、公庫の窓口へ相談します。

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まとめ

農業用の資金繰り表は、前月からの繰越、販売代金などの入金、種苗・肥料から生活費までの支出、借入金の入金と返済、機械・施設の購入を月ごとに並べ、翌月への繰越を計算する表です。お金が動く月で書き、生活費と元金の返済を入れ、いちばん残高が低い月を確かめます。法律上の義務はありませんが、融資の相談では資金繰りの資料を求められることがあります。

最初は前の年の通帳と領収書から、12か月の予定を一度作ってみてください。翌月からは実績に置き換えて、先の月を見直します。借入や収入保険のつなぎ融資を考えるときは、お金が必要になる日より前に、取引のある金融機関、JA、日本政策金融公庫、農業共済組合へ相談してください。

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