牛の繁殖台帳の書き方と記入例|授精・分娩を記録する無料テンプレート(Excel・PDF)

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繁殖牛を飼っている農家にとって、授精日、妊娠鑑定の結果、分娩日をひとまとめに残す「繁殖台帳」は、次の種付けの時期や分娩間隔を考えるときに見返す帳票です。牛の耳標の番号、生年月日、母牛の番号は、牛トレーサビリティ法(牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法)で、出生や転出入の届出に必要な情報でもあります。同法は、牛が出生したら管理者が遅滞なく農林水産大臣に届け出ることを求めています(第8条)。

この記事では、授精から分娩までを1頭ずつ記録する繁殖台帳の書き方を、記入例にそって説明します。根拠にするのは、牛トレーサビリティ法、家畜改良増殖法、家畜伝染病予防法にもとづく飼養衛生管理基準、農林水産省の資料です。繁殖台帳そのものを法律で義務づけた規定は確認できなかったので、任意の記録であることも先に述べておきます。届出の方法や地域の指導は、家畜改良センターと、最寄りの家畜保健衛生所や都道府県の畜産担当課に確かめてください。

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目次

牛の繁殖台帳とは/なぜ必要か

繁殖台帳は任意の記録

繁殖台帳は、母牛ごとに授精の履歴を並べた記録です。牛を飼う農家に作成を義務づける法令は、確認できた範囲ではありません。法令が記録を求めているのは、授精を行う獣医師と家畜人工授精師、および種畜の飼養者です。獣医師と家畜人工授精師は、授精や受精卵移植を行ったら遅滞なく家畜人工授精簿に記載し、5年間保存しなければなりません(家畜改良増殖法第15条)。

飼養者は、授精を受けた牛について授精証明書の交付を求められます。獣医師と家畜人工授精師は、飼養者から交付を求められたら、正当な理由なく拒めません(同法第22条第2項)。農家が自分の台帳に授精日と証明書の有無を書いておくと、あとで人工授精簿や証明書と突き合わせやすくなります。

届出の義務がある情報を台帳に集められる

牛トレーサビリティ法は、牛の管理者に次の対応を求めています。

  • 牛が出生したら、遅滞なく出生の年月日、雌雄の別、母牛の個体識別番号などを届け出る(第8条)
  • 個体識別番号の通知を受けたら、牛の両耳に耳標を着ける。耳標が滅失したりき損したりしたときは、新しい耳標を着ける(第9条)
  • 牛を譲り渡したり譲り受けたりしたとき、牛が死亡したときも、それぞれ遅滞なく届け出る(第11条、第13条)

届出をしなかった場合や虚偽の届出をした場合は、30万円以下の罰金の対象になります(第23条)。また、両耳に耳標が着いていない牛は、耳の疾患などのやむを得ない事由がある場合を除き、譲渡しも譲受けもできません(第10条)。個体識別番号、生年月日、種別、母牛、導入や転出の日を牛1頭ごとにまとめておくと、届出の入力や、買い手から求められる確認に答えやすくなります。

分娩間隔の短縮は国の課題になっている

農林水産省の「家畜改良増殖をめぐる情勢」(令和2年6月)は、黒毛和種の雌牛について、初産月齢が早まってきた一方で近年は横ばいであり、分娩間隔の短縮が課題だと述べています。同資料の数値は、初産月齢が24.5か月、分娩間隔が13.2か月で、令和12年度の目標はそれぞれ23.5か月、12.5か月です。

自分の牛群の分娩間隔と空胎の日数は、授精日と分娩日が残っていれば計算できます。台帳がなければ、何回目の授精で受胎したのか、分娩から何日で授精できたのかを、あとから正確に振り返れません。

記入例

下の記入例は、3頭の母牛を飼う農家の想定です。「もも」は前回の分娩が2024年11月5日で、2025年1月28日に1回目の授精をして受胎し、2025年11月7日に分娩しました。「さくら」は1回目の授精が不受胎で、2回目の授精で受胎しています。「はな」は分娩の経験がない未経産牛で、初産に向けて受胎したところです。

牛の繁殖台帳の記入例
牛の繁殖台帳の記入例(出典:ミノリス 無料テンプレート)

「この産次の授精回数」「分娩後日数」「分娩間隔」の3欄は、Excel版では自動で計算されます。ももの分娩後日数は、前回の分娩日から授精日までの84日です。受胎した行のこの数字は、分娩から受胎までにかかった日数の目安になります。分娩間隔は、前回の分娩日から今回の分娩日までを数えた367日で、約12.1か月に当たります。

さくらは前回の分娩日(2025年10月20日)が同じ行が2つあり、授精回数は1と2です。2回目の行の分娩後日数は104日で、受胎までに日数がかかったことが一目で分かります。はなは前回の分娩日が「未経産」なので、分娩後日数と分娩間隔の欄は空のままです。備考には「初産」と書きました。

書き方(項目ごと)

台帳は、1回の授精につき1行を使います。妊娠鑑定と分娩の結果は、その授精と同じ行に書き足していきます。記入用シートの左から順に見ていきましょう。

農場名・年度・記入者

表の上にある欄です。農場の名称、台帳をつける年度、記入する人の名前を書きます。複数の人が書く農場なら、行ごとに記入者を分けておくと、誰が書いたかをあとで確認できます。年度は、毎年新しい用紙にするか、続けて書くかを先に決めておくと迷いません。

母牛の名号・呼び名と個体識別番号

名号や呼び名は、現場で呼ぶ名前を書きます。個体識別番号は、耳標に印字された10桁の数字です。呼び名は同名が出ることがありますが、個体識別番号は牛1頭ごとに別の番号なので、牛を特定するときは番号が基準になります。耳標の番号は1桁の違いでも別の牛になるため、耳標を見ながら書き写し、桁数を確かめます。

前回の分娩日

その母牛が前回に分娩した日を、年月日で書く欄です。分娩の経験がない未経産牛は「未経産」です。Excel版は、同じ母牛で前回の分娩日が同じ行を、同じ産次の授精として数えます。同じ産次の行は、すべて同じ日付で統一してください。書式が行ごとに違うと、授精回数が正しく数えられなくなります。

授精日

人工授精や種付けを実際にした日を書きます。精液を注入した日か、種付けをした日です。発情を確認した日は、必要なら備考にメモを添えてください。同じ発情期に複数回授精した場合は、1回ずつ別の行に書いてください。

この産次の授精回数(自動)

その産次で何回目の授精かを示す欄です。Excel版は自動で入ります。手書き用のPDFを使うときは、同じ前回分娩日の行を数えて自分で書きます。1回目で受胎したのか、3回目まで要したのかを、牛ごとに比べるときの数字です。

分娩後日数(授精時・自動)

前回の分娩日から、その授精をした日までの日数です。Excel版は自動で入ります。分娩から授精までが短すぎたり長すぎたりしないかを見る数字で、牛群の中で極端に長い牛がいれば、獣医師に相談するきっかけになります。

種雄牛(精液の名号)

授精に使った精液の種雄牛の名号を書く欄です。精液のストローやメーカーの伝票を見て、実際の名号を書き写してください。記入例の「〇〇」「△△」は伏せ字です。同じ種雄牛を続けて使っていないかを見るときにも使えます。

授精した人と授精証明書

授精をした獣医師や家畜人工授精師の名前を書き、授精証明書をもらったかどうかも残します。記入例は「山田・証明書有」です。証明書は、飼養者が求めれば、獣医師と家畜人工授精師が交付する決まりです(家畜改良増殖法第22条第2項)。もらった日付と保管場所も控えておくと、探すときに手間がかかりません。

妊娠鑑定日と結果

妊娠鑑定をした日と、受胎か不受胎かを書きます。不受胎の場合も、必ずその授精の行に結果を書いてください。受胎した授精だけを残すと、何回で受胎したのかが分からなくなります。鑑定を獣医師に頼んだ場合は、診察の記録と日付を合わせます。

分娩予定日

授精をした獣医師や家畜人工授精師に確かめた予定日を入れる欄です。このテンプレートは予定日を自動計算しません。計算式を自分で入れる場合は、畜種や品種ごとの妊娠期間を、都道府県の資料や獣医師の説明で確かめてから入れます。

分娩日と分娩間隔(自動)

実際に分娩した日を書きます。分娩間隔は、前回の分娩日から今回の分娩日までの日数です。Excel版では自動計算になります。死産や流産のときも、分娩日(または終わった日)と備考を残しておくと、その産次の記録が途切れません。

備考

子牛の性別や産み方(安産、難産)、治療、淘汰の予定など、他の欄に書けないことを書きます。記入例は「雌1頭 安産」「初産」です。事故や治療の記録は、飼養衛生管理基準が求める異状や治療の記録(後述)としても使えるので、日付を添えて書きます。

個体台帳シートと分娩・子牛シート

テンプレートには、繁殖台帳のほかに2枚のシートが入っています。個体台帳シートの欄は、牛1頭ごとの個体識別番号、生年月日、種別、母牛、導入と転出の日、届出をした日です。出生の届出で使う生年月日、雌雄、母牛の個体識別番号、種別は、ここにまとめておけます。

分娩・子牛シートの欄は、分娩の様子、子牛の耳標の番号、雌雄、体重、耳標を着けた日、出生の届出をした日です。出生の届出では、子牛に着けた耳標の番号、生年月日、雌雄、母牛の個体識別番号、牛の種別を入力します。方法はパソコン、スマートフォン、電話のいずれかです。

気をつけること・よくある間違い

不受胎だった授精を書かない

受胎した授精だけを書くと、何回の授精で受胎したのかが分からなくなります。授精のたびに1行を使い、結果が出た時点で受胎か不受胎かを書き足してください。不受胎の結果も残っていれば、受胎率の計算に使えます。

同じ産次の前回分娩日がそろっていない

授精回数は、同じ母牛で前回の分娩日が同じ行を数えた数字です。ある行が「2025/10/20」、別の行が「2025.10.20」や「10月20日」だと、Excelは別の産次の授精とみなします。日付の書式は1つに決め、全員が同じ形で書くようにしてください。

個体識別番号を桁違いで書く

耳標の個体識別番号は10桁です。台帳に1桁でも間違って書くと、届出の入力や牛の検索で別の牛になってしまいます。台帳の番号は、耳標を見て確かめたものだけを書きます。耳標が外れたときは、家畜改良センターへ再発行を請求し、着け直してください。

届出をした日を残さない

農林水産省のパンフレットによると、出生や転出の届出が遅れた場合、牛の取引や耳標の配付に支障が出ます。個体台帳に届出をした日が入っていれば、届け漏れに気づけます。届出の内容を間違えたときは、家畜改良センターへの修正請求が可能です。

授精証明書をもらい忘れる

授精証明書は、飼養者が求めれば獣医師や家畜人工授精師が交付する書類です。授精のたびに、受け取ったかどうかを台帳の「証明書」欄に書いておきます。日がたつと、誰が授精したのか思い出せないこともあります。

書き写しを重ねて数字が合わなくなる

野帳に書いたメモをあとで台帳に写すやり方は、写し間違いが出やすい方法です。牛舎では日付と牛の番号だけを手早くメモし、事務所で台帳に書く場合も、その日のうちに写してください。Excelの記入用シートと記入例のシートは別なので、記入例のシートに実際の記録を書かないようにします。

保存期間と飼養衛生管理基準の記録

繁殖台帳の保存期間

飼養者が自分で作る繁殖台帳に、法令で決まった保存期間は確認できませんでした。法令上の5年は、獣医師と家畜人工授精師が保存する家畜人工授精簿(家畜改良増殖法第15条第2項)と、種畜の飼養者が備える種付台帳(同法第9条第2項、第3項)の期間です。自分が種付けや授精を受け持つ立場かどうかで、適用が変わります。

繁殖成績は、1年分では傾向が見えにくい数字です。分娩間隔や受胎までの授精回数を数年にわたって比べるために、少なくとも数年分は残しておくと使いやすくなります。年度ごとに用紙を綴じるか、Excelのファイルを年度ごとに保存します。

飼養衛生管理基準が求める記録と重なる部分

家畜伝染病予防法第12条の3は、飼養衛生管理基準が定められた家畜の所有者に、基準に従った衛生管理を求める規定です。牛の基準は、記録の作成と保管の項目で、次の事項の記録を作り、少なくとも1年間保存すると定めています。

  • 衛生管理区域に立ち入った人の記録(農場の従事者は除く)
  • 従事者の海外渡航の記録
  • 導入、出荷、移動した家畜の種類、頭数、健康状態などの記録
  • 家畜の頭数、月齢、異状、治療、投薬の記録
  • 家畜保健衛生所や獣医師からの農場指導の内容

農林水産省の遵守指導の手引き(令和7年12月9日一部変更)によると、導入、出荷、移動の記録は、個体識別番号を記録する方法で足ります。頭数、月齢、出生数は、少なくとも月に1度程度の頻度で記録するもので、その時点で飼養している全頭の頭数と月齢が分かる方法で行う記録です。繁殖台帳と個体台帳に生年月日と分娩日が入っていれば、出生数や月齢を数える元データとして使えます。繁殖台帳が基準の記録の代わりになるかは、家畜保健衛生所に確かめてください。

届出の窓口

牛の出生、転出入、死亡の届出は、家畜改良センターの届出の仕組みで行います。農林水産省のパンフレットは、パソコンのWebサイトと電話の音声応答システムを案内しています。入力に使う項目は、農家コード番号、耳標の番号、生年月日、雌雄、母牛の個体識別番号、牛の種別などです。牛個体識別台帳の記録、保存、公表は、農林水産大臣から事務を委任された家畜改良センターが行っています。

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紙・Excelで続かないときは

繁殖台帳は、牛舎でメモした日付を事務所で台帳に移す作業が続かず、数か月分がまとめ書きになりがちです。紙の用紙を牛舎に置いて、その場で書き込む方法もあります。記入例のとおり1授精1行で書き、Excel版には授精回数と分娩間隔を自動計算させておくと、集計の手間が減ります。

当社が提供しているミノリス日誌は、畑の作業を記録する無料アプリです。牛の個体や繁殖を管理する機能はありません。授精日や分娩予定日の記録、個体識別番号の管理、届出の機能もないため、繁殖台帳はこの記事のテンプレートや、専用の牛群管理ソフトで続けてください。

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よくある質問

授精の記録を台帳に残すのは法律上の義務ですか?

獣医師と家畜人工授精師には、授精を行ったら家畜人工授精簿に記載して5年間保存する義務があります(家畜改良増殖法第15条)。飼養者に繁殖台帳の作成を義務づける規定は、確認できた範囲ではありません。ただし、耳標の番号や分娩日は牛トレーサビリティ法の届出に使うので、台帳に残しておくと届出がしやすくなります。

自分で種付けや人工授精をした場合はどう記録しますか?

授精日、使った精液の種雄牛の名号、授精した人を同じ行に書きます。授精を依頼した獣医師や家畜人工授精師の名前を書き、授精証明書をもらったかどうかも残します。自家の種雄牛で本交させる場合は、種畜の飼養者に種付台帳の備え付けを求める規定(同法第9条)があるので、都道府県の畜産担当課に確認してください。

分娩予定日はどう決めますか?

このテンプレートでは自動計算していません。授精した獣医師や家畜人工授精師に確かめた予定日を書いてください。妊娠鑑定の結果とあわせて残しておくと、分娩前の準備をしやすくなります。

酪農の乳用牛にも使えますか?

使えます。個体台帳の種別欄には、ホルスタイン種、ジャージー種、交雑種なども書けます。乳量や乳成分など牛群検定の項目は入っていないので、必要なら備考欄か別の帳票で補ってください。

豚や馬の繁殖記録にも使えますか?

授精と分娩の記録としては使えます。ただし個体識別番号と届出の欄は牛トレーサビリティ法に合わせて作ってあり、豚や馬の届出の仕組みとは別です。

記録はどのくらいの期間保存すればよいですか?

繁殖台帳そのものに法定の保存期間は確認できませんでした。一方、飼養衛生管理基準では、家畜の導入・出荷・移動、頭数・月齢、異状や治療に関する記録を少なくとも1年間保存すると定めています。繁殖成績は何年分か並べて見るほど分かることが増えるので、数年分は残しておくと使いやすくなります。

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まとめ

牛の繁殖台帳は、母牛の名号と個体識別番号、前回の分娩日、授精日、種雄牛、授精した人、妊娠鑑定の結果、分娩予定日、分娩日を、1授精1行で書く帳票です。法令で義務づけられた様式ではありませんが、牛トレーサビリティ法の届出に必要な個体識別番号、生年月日、母牛の番号を、個体台帳にまとめておけます。不受胎の授精も1行ずつ残すと、受胎までの授精回数と分娩間隔を牛ごとに確認できる点も利点です。

届出の方法、飼養衛生管理基準の記録、授精証明書の扱いは、地域ごとに運用が分かれる場合があります。テンプレートで下書きしたら、家畜保健衛生所や都道府県の畜産担当課に不明点を確認してください。

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参考URL