なしの収穫マニュアル|適期の判定・熟期予測・収穫遅れの障害・貯蔵

なしの収穫は、1回の判断が出荷価格と日持ちを決める作業です。早すぎれば糖度と食味が足りず、遅すぎればみつ症や果肉の軟化が出ます。全国の収穫期は、熊本の露地の幸水が7月下旬、福島の幸水が8月下旬、富山の王秋が10月上旬から始まり、早い産地と遅い産地で始まりに約11週間の差があります(熊本3、富山1)。

要点は3つです。第1に、熟度は地色のカラーチャートだけで決めず、満開後日数、糖度、食味を組み合わせて判断します。幸水は満開後125日ごろ、豊水は145日ごろから熟期に入り、糖度12度が収穫開始の目安です(宮城1)。第2に、近年の高温では日数も地色も従来の目安からずれるため、毎年の試食が欠かせません(茨城11、福島7)。第3に、新高や豊水ではみつ症が収穫遅れで増えるので、成熟予想の20日前から1週間おきに果実を確認します(熊本10)。

この記事は20都道府県の公的資料36本から、収穫期の目安、熟度の判定、収穫の方法、熟期の予測、収穫遅れで出る障害、貯蔵・予冷をまとめたものです。収穫期の月旬は資料の図から読んだ値が多く、そう書いたものは「図から読み取り」と添えています。

時期の目安

収穫期は暖地ほど早く、同じ品種でも県と年で10日以上ずれます。次の表は、資料に数字や旬が書かれているものを南から北へ並べたものです。熊本・福島・富山の日付は試験場や調査地点の値で、産地全体の平均ではありません。

幸水・早生品種の収穫期

県 品種 収穫期 値の種類 出典
熊本 幸水(露地) 7月22日〜8月3日、盛期7月30日 果樹研究所2023・2024年の平均 熊本3
熊本 凜夏(露地) 8月2日〜13日、盛期8月7日 同上 熊本3
福岡 幸水・玉水 7月下旬〜8月上旬 資料の記載 福岡1
長崎 幸水 8月上旬〜中旬 資料の記載 長崎1
山口 愛甘水・早優利・なつしずく・幸水・凜夏 7月下旬、8月上旬、8月上旬、8月中旬、8月下旬 品種特性表。表の崩れのため並び順から読み取り 山口1
山梨 品種の記載なし 7月下旬〜8月上旬 図から読み取り 山梨1
鳥取 夏さやか・早優利 8月上旬 品種ページの記載 鳥取2、鳥取9
兵庫 但馬1号(なしおとめ) 8月中旬〜下旬。例年8月20日前後に集中 育成機関の記載 兵庫3、兵庫5
静岡 幸水 8月中旬〜下旬 販売時期の表記 静岡1
富山 幸水 8月11日〜9月3日、盛8月23日 平年 富山1
栃木 幸水(露地) 8月中旬〜9月上旬 図から読み取り 栃木1
宮城 幸水 8月下旬〜9月中旬 1993年の指針 宮城1
福島 幸水 始8月24日、盛8月29日、終9月4日 果樹研究所の平年 福島7

豊水・中晩生・晩生品種の収穫期

県 品種 収穫期 値の種類 出典
福岡 豊水・二十世紀・あきづき/新高・新興・王秋 8月中旬〜9月中旬/9月中旬〜10月中旬 資料の記載 福岡1
長崎 豊水/新高 8月下旬〜9月中旬/9月下旬〜10月上旬 資料の記載 長崎1
高知 豊水/新高 9月/10月 作業暦 高知2
山口 豊水/二十世紀/あきづき/新高/甘太/王秋 9月上旬/9月上〜中旬/9月中旬/9月下旬〜10月中旬/10月上〜中旬/10月下旬〜11月上旬 品種特性表。並び順から読み取り 山口1
富山 豊水/あきづき/新高/甘太/王秋 9月3〜22日/9月11〜29日/9月24日〜10月11日/9月24日〜10月7日/10月7〜20日 平年 富山1
茨城 新高/甘太 9月18日〜10月4日/9月19日〜10月10日 園芸研究所の直近10年(2015〜2024年)の平均 茨城10
福島 豊水 始9月12日、盛9月17日、終9月27日 果樹研究所の平年 福島7
秋田 あきづき 9月下旬〜10月上旬 資料の記載 秋田1
栃木 にっこり 10月下旬〜11月上旬 図から読み取り 栃木1
新潟 新高/新興 10月/11月 出荷の目安 新潟2

同じ品種でも、年による動きは大きくなっています。福島の2023年は3月から高温で、開花盛が平年より14日早く、幸水の収穫盛は9日、豊水は5日早まりました(福島7)。熊本では、新高の収穫期が温暖化で早まっていると普及組織が書いています(熊本10)。表の日付は目安にとどめ、その年の判定を優先してください。

収穫適期の判定

判定の道具は4つあります。地色のカラーチャート、満開後日数、糖度、食味です。県の資料も、どれか1つに頼らず組み合わせています。

品種別の判定基準

県 品種 判定の目安 出典
宮城 幸水 満開後125日ごろから熟期。収穫期間は10日前後。糖度12度で収穫開始 宮城1 p.130
宮城 豊水 満開後145日ごろから熟期。収穫期間は2週間以内。糖度12度で収穫開始 宮城1 p.130
宮城 二十世紀 満開後150日ごろから熟期。糖度10度以上 宮城1 p.130
青森 幸水・多摩 日本なし地色用カラーチャートでていあ部が、多摩で4、幸水で3〜4 青森2
長崎 幸水・豊水 カラーチャート値で2.5〜3程度 長崎1 p.551、p.553
長崎 新高 緑が残る果実は硬く酸味が強い。完全に黄褐色から赤褐色に着色した果実から収穫 長崎1 p.557
大分 あきづき 着色程度は、収穫開始期で3〜4、盛期〜終期で2〜3のとき適熟 大分5
茨城 あきづき 満開から収穫始期まで平均147日(過去27年・直近10年とも)。直近5年の適熟果は地色4.1、糖度12.3 茨城11
佐賀 あきづき 開花期からの平均気温の積算で3650℃が成熟の目安 佐賀11
熊本 新高 満開から180日、または積算温度4000℃ 熊本10
熊本 甘太 果皮色2.5が収穫適期。3.0を超えると果肉が柔らかくなりすぎる 熊本14
栃木 にっこり ていあ部の地色が、満開後190日以前は4.5〜5.0、以降は4.0〜4.5。みつ・す入りが出る年は、190日以前は4.0、以降は3.5 栃木5
兵庫 但馬1号(なしおとめ) 開花後125日前後、糖度11%以上。5段階のカラーチャートで判定 兵庫6
鳥取 なつひめ 出荷の基準糖度は11.5度 鳥取32

カラーチャートの値は、使うチャートの種類で意味が変わります。青森は日本なし地色用(1が緑、6が黄)と明記していますが、長崎の「幸水カラーチャート値」や兵庫の5段階チャートがどの種類かは資料からわかりません。県どうしで数字を直接比べず、自分の産地の県が指定するチャートで読んでください。

近年は地色だけで判断できない

茨城の園芸研究所は、あきづきの直近5年の収穫期前半で、食味を基準に収穫した適熟果の地色が下がる傾向にあると報告しています。内部の成熟がていあ部の地色の変化以上に進みやすくなっており、従来の果皮色にとらわれない熟度判断が必要です(茨城11)。福島の2023年の幸水は、収穫時の地色指数が2.2と平年の2.7より低く、果実硬度は6.8ポンドと平年の5.5ポンドをかなり上回りました(福島7)。年によって地色と中身の関係が違うことを示す例です。

青森は、日本なしの収穫適期は食味で判定するのが最も簡便かつ正確と書いています(青森2)。茨城も、実際の収穫の前に試食をして食味に問題がないことを確認してから収穫を始めるとしています(茨城11)。長野県の南信農業試験場は、幸水・豊水などの糖度、硬度、デンプン指数、果皮色を調査日ごとに公表しています(長野7)。身近に公開データがあれば、自園の値と見比べると判断の根拠が増えます。

やり方(標準の手順)

  1. 満開日を毎年記録します。満開日は全体の80%が開花した日を指し、短果枝は100%、長果枝は50%が目安です(茨城11)。満開後日数と積算温度の計算がこの日を起点にするためです。
  2. 成熟予想日の約20日前から、1週間おきに樹冠外周部の早く熟す果実を取って確認します。新高ではみつ症の有無まで割って見ます(熊本10)。収穫適期は気象に左右されるので、日付だけでは決められないためです。
  3. 確認の項目は、地色をカラーチャートで比色、糖度、硬度、食味の4つです。収穫開始日は、糖度が目安に届き、試食で問題がない日にします(宮城1、茨城11)。
  4. 収穫は3〜4回に分けて、熟度を見ながらすぐりもぎします。熟期は樹冠の外側が内側より早く、短果枝の果実が長果枝より早いためです(宮城1)。あきづきは一樹内のばらつきが小さく、樹の周囲や短果枝の果実から収穫して2回程度で終える方法が示されています(佐賀11)。
  5. 収穫は朝夕の涼しい時間に行います。収穫時の果実温度は、その後の傷みやすさに大きく影響するためです(宮城1)。長崎は幸水を気温の低い早朝、豊水を午前中に収穫するとしています(長崎1)。
  6. 収穫した果実は日光に長く当てず、すぐに屋内か日陰へ運びます(宮城1)。高知は最盛期に日中も収穫するため、果実を屋内に並べて果実温を下げてから箱詰めするとしています(高知2)。山口の資料には、収穫した果実を直射日光下に放置すると芯腐れが出ると書かれています(山口1)。
  7. 収穫が終わったら、礼肥と土づくりに進みます。収穫後の施肥はなしの施肥マニュアルにまとめています。

袋掛けをした二十世紀は、袋の底を少し破って地色を確かめてから収穫すると色がそろいます(宮城1)。収穫前に使う植物生長調整剤や収穫前の防除は、使う前に最新の県の防除暦と農薬登録(FAMIC 農薬登録情報提供システム https://pesticide.maff.go.jp/ )を確認してください。

熟期の予測と調整

気温から収穫期を予測する

収穫の時期が読めると、労力の手配と出荷先との調整ができます。県の試験場が出している予測の考え方は次のとおりです。

  • 茨城の園芸研究所(笠間市)は、あきづきの収穫始期を、満開日から41日間の平均気温(x1)と満開後95〜110日間の平均気温(x2)から、満開から収穫始期までの日数=−3.81×x1+1.079×x2+180.84で求めます。過去の誤差は平均2.4日、最大5日です。満開後41日間の気温が高いほど早く、95〜110日間の気温が高いほど遅くなります(茨城11)。これは園芸研究所での試験の値です。
  • 熊本は、新高が満開から180日または積算温度4000℃で成熟の目安に届きます。満開から40日後までの平均気温が高く推移すると成熟が早まります(熊本10)。
  • 佐賀は、あきづきで開花期からの積算が3650℃を成熟の1つの指標としています(佐賀11)。

日数の目安は年で動きます。福島の果樹研究所では、幸水の開花盛から収穫盛までが平年126日のところ、開花が大きく前進した2023年は131日、豊水は平年148日が157日でした(福島7)。満開が大きく早まった年は、満開後の日数が平年より長くなりました。日数や積算温度は、判定を始める日を決める目安として使ってください。

収穫期を前進させる技術

収穫が一時期に集中する品種では、前進技術で出荷期間を広げています。兵庫の但馬1号は、満開40日後に果梗へ植物生長調整剤を塗ると、収穫盛期が約7日早まり、果実重は無処理の平均約380gより約60g大きくなりました。果実品質と日持ちに差はありません(兵庫5。試験の値)。青森は、日本なしで植物生長調整剤を使うと成熟が5〜7日早まるとしています(青森2)。山口の早優利は、摘果と植物生長調整剤の処理を組み合わせると、7月下旬からLサイズが収穫できます(山口1)。

鳥取のなつひめは、7月中旬に幅2.5cmで環状剥皮を行うと、糖度が無処理より約0.6度高く推移し、約1週間早く出荷基準の糖度に届きました。効果はその年かぎりで、毎年の処理が必要です。癒合が悪い樹や樹勢の弱い樹には向きません(鳥取32。試験の値)。熊本の凜夏は、2月23日にトンネルハウスで被覆すると、収穫盛期が露地より約10日早い7月下旬になりますが、1果重は450g程度と小玉になります(熊本3)。

品種による違い

品種で変わるのは、適期の幅と、遅れたときの出方です。

  • 幸水は収穫期間が10日前後と短く、日持ちが悪いので、過熟にならないよう注意します(宮城1、長崎1)。宮城は、幸水では地色の進みより果肉の熟度が進むのが早いので、収穫後半の果実に注意するとしています(宮城1)。高知は幸水・多摩の収穫遅れに注意するとしています(高知2)。
  • 豊水は満開後145日ごろから2週間以内で、着果位置による熟度のばらつきが大きく、過熟果にみつ症が多く出ます(宮城1)。
  • 二十世紀は熟度のばらつきが大きく、日のよく当たる果実から収穫します。ゴールド二十世紀は二十世紀より2〜3日遅れることがあります(宮城1)。
  • あきづきは成熟前から果皮の着色が良いため、収穫期の判断が難しい品種です。収穫が遅れるほど糖度は上がりますが、過熟になると果肉細胞の水分が奪われる「スポンジ果」が出やすくなります(佐賀11)。
  • 新高は、みつ症が出やすく、近年の高温で不安定です。茨城の園芸研究所では、2018年産以降、新高のみつ症果の発生率が50%前後の年が多く、2023年産は収穫果の46.5%が重症果でした(茨城10。園芸研究所の値)。
  • 甘太は、茨城の10年間の調査で、みつ症果が20%以上出る年があっても、重症果は新高より少なく推移しました(茨城10)。果皮色が2.5を超えたら収穫適期です(熊本14)。
  • 王秋は、果皮色の変化に基づく収穫適期の判断が難しく、早取りになると食味が劣ります。収穫前の落果が出るため落果防止の植物生長調整剤が有効とされます(山口1)。
  • 南水は、未熟果でも糖度が高いものの果肉が硬いので、早採りは慎むとされています(宮城1)。
  • 新水は過熟果の表面が黒変し、八里は過熟果に水浸状の症状が出ることがあります(宮城1)。

王秋は、収穫の順番にも工夫があります。鳥取の園芸試験場は、樹上の同じ果実の糖度が12月まで少しずつ上がること、高糖度果は樹冠周辺部に多く、低糖度果は主枝元部付近に多いことを確かめました。収穫は樹冠周辺部から始め、主枝元部付近は遅らせる区分収穫が勧められています。ただし11月下旬には果実硬度の低下が見られたので、11月中旬までに収穫を終える必要があります(鳥取16。試験の値)。

県によって違うところ

収穫の目安を何で決めるか

宮城は満開後日数と糖度、青森は食味と地色、長崎は地色、大分と熊本は地色と収穫の時期を組み合わせるなど、資料ごとに軸が違います(宮城1、青森2、長崎1、大分5、熊本14)。資料にこの違いの理由は書かれていません。この記事では、それぞれの県の方法を並べたまま示しました。自分の産地では、地元の普及組織が指定する基準を最優先にしてください。

みつ症の原因の見方

みつ症は果肉が水浸状になる障害で、資料によって主因の見方が異なります。熊本は、夏季8〜9月の高温と乾燥が主因で、収穫が遅れても増えるとします(熊本10)。佐賀は、幼果期の高温乾燥、7月の低温・低日照、8月以降の高温乾燥で最も多く出ると言われているとしています(佐賀11)。山口は、5〜6月の高温乾燥で養分吸収が阻害され、7〜8月の低温多雨で果肉が先に熟した年に多いとし、冷夏の年は豊水を早めに収穫するよう勧めています(山口1)。資料からは、高温の年にも冷夏の年にもみつ症が出ることが読み取れます。どの資料も、早めの確認と適期収穫を対策に挙げています。

対策の組み立て

熊本は、かん水(降雨が少なければ1週間間隔)、7月中下旬からの樹上散水、直射日光の強い場所への遮光ネット、品種更新を組み合わせます。遮光は遮光率40%のネットの試験で、重症化率が対照区より低くなりました(熊本10)。佐賀は、豊水で7月下旬から収穫期まで7日ごとにかん水し、6月から麦わらマルチを敷いて、みつ症の重症果率が下がることを示しました(佐賀11)。高知は、新高で夕方に園内へ散水して夜温を下げる方法を挙げています(高知2)。

失敗しやすい点・注意

収穫遅れで出る障害

  • みつ症は、豊水で収穫が9月中旬以降に遅れると出やすくなります(高知2)。豊水は過熟果に多く出ます(宮城1)。新高では、収穫が遅れるとみつ症が増えるため、成熟予想の20日前から1週間おきの確認が勧められています(熊本10)。
  • 水浸状褐変は、二十世紀に多く、9月に30℃以上の高温が続くと晩生品種にも出ます(山口1)。
  • スポンジ果は、あきづきで収穫が遅れ過熟になると出やすくなります(佐賀11)。
  • 芯腐れは、果実が高温にさらされることで果芯部が褐変する障害で、根の機能が落ちた樹や、収穫果を直射日光下に放置したときに出ます(山口1)。
  • 果肉の軟化は、甘太で果皮色が3.0を超えた場合に起きます(熊本14)。王秋では収穫を11月下旬まで遅らせると硬度が落ちます(鳥取16)。

収穫前に決まる障害

コルク状の果肉障害は、収穫のタイミングでは避けられません。王秋では早い粗摘果(受粉22日後)と、やや多めの着果密度で発生が減りました(鳥取17)。あきづきでは摘蕾か満開15日以内の予備摘果で発生が軽減しました(熊本7)。福島の2023年は、高温と少雨のあとの土壌水分の極端な変動で、あきづきと王秋にコルク症状を伴う果肉障害が出ました(福島7)。摘果の時期はなしの摘蕾・摘果マニュアルを見てください。

裂果は、収穫前の水分の急変で起きます。福島では、2023年9月上旬の台風に伴う大雨(浜通りで200〜300mm、中通りで100〜150mm)で新高の裂果が多発しました(福島7)。熊本の秋麗は6月中下旬の降雨が裂果を助長し、裂果発生期前のかん水(10日ほど降雨がないとき、1回10mm程度)と樹冠下のシートマルチで軽減できました(熊本4)。佐賀は、幸水で曇天続きのあとの晴天で裂果が出やすいので、修正摘果は満開後100日近くまで遅らせるよう勧めています(佐賀5)。

そのほか

なつしずくは収穫前の落果が出ることがあり、収穫遅れに注意します(山口1)。八里と王秋も同様に落果が出ます(宮城1、山口1)。二十世紀など収穫前落果が起きる品種では、収穫予定日の7日前に落果防止の植物生長調整剤を1回使うとよいとされています(宮城1。1993年の指針)。使う前に最新の県の防除暦と農薬登録(FAMIC 農薬登録情報提供システム https://pesticide.maff.go.jp/ )を確認してください。福島では、2023年に豊水・あきづきでナシヒメシンクイの果実被害が8月下旬から確認されたため、被害が目立ちました(福島7)。害虫の時期はなしの病害虫防除マニュアルにあります。

貯蔵と予冷

日本なしの予冷と貯蔵について、今回集めた県資料に温度や日数の標準的な基準はほとんど載っていません。青森の資料に予冷の温度と日数が書かれているのは西洋なしだけで、日本なしの値ではないため、ここには転記していません(青森2)。県資料から言えるのは次の点です。

  • 茨城の園芸研究所は、ひたち2号と豊水を設定温度2℃、設定湿度90%の冷蔵庫に収穫用コンテナのまま入れて試験しました。ひたち2号は収穫後120日まで食味とシャリ感が収穫直後と同等でした。豊水は80日で食味が下がり、日数とともにシャリ感も低下しました。みつ症などの果肉障害果は貯蔵しない、とされています(茨城12。試験の値)。下妻市の産地では、豊水を冷蔵して11月から年末需要期に出荷しています(茨城12)。
  • 長野は、南水の貯蔵性を生かして、一定量を年末まで市場に供給する方針です。予冷・低温貯蔵施設の導入も進めます(長野4)。
  • 日持ちは品種で違い、山口の品種特性表には、あきづき10〜14日(常温)、王秋は25℃で28日以上、甘太は約1か月、凜夏は幸水以上と書かれています(山口1)。新高には貯蔵性があるとされます(山口1)。
  • 袋が日持ちに影響する例があります。熊本の甘太は、満開後60日以前に白一重袋をかけると糖度は上がりますが、収穫後の減量が大きく日持ちが短くなるため、収穫後は速やかに流通させる必要があります(熊本6)。有袋栽培の甘太の日持ちは新高より短く14日程度です(熊本14)。袋はなしの袋掛けマニュアルを見てください。
  • 但馬1号は、植物生長調整剤による早期出荷でも、果実品質と日持ち性に差が出ませんでした(兵庫5)。
  • 鳥取は、新甘泉の選果の集中を避けるため、収穫後にいったん冷蔵庫などで保管してから選果する技術を研究課題にしています(鳥取10。計画の記載で、結果は未確認)。

作業の前後とつながり

収穫の判定は、前の作業の結果をそのまま映します。着果量と摘果の時期は果実の大きさと糖度を、新梢の管理は果実への糖の分配を決めます。前の作業はなしの新梢管理マニュアルとなしの袋掛けマニュアル、収穫後の作業はなしの施肥マニュアルとなしの病害虫防除マニュアルです。マニュアル全体は目次ページ、全国の栽培暦はなしの栽培暦・年間作業表の全国まとめで確認できます。

参考URL(出典)

なしの栽培マニュアル(目次)に、ほかの作業のページをまとめています。