なしの受粉マニュアル|人工受粉の時期・花粉の採り方・S遺伝子型・花粉不足の対策

なし(日本なし)は、ごく一部の品種を除いて自家不和合性で、同じ品種や遺伝子型の花粉では実がつきません。そのため、ほとんどの園で、別品種の花粉を使った人工受粉をします。時期は開花とほぼ同じで、九州の3月下旬から、東北南部の4月下旬までです。年によって開花が1週間近く動くので、日付ではなく花の状態と天気で決めます。

いちばん大事な点は4つです。1つ目は、雌しべが受精できるのは開花から3日以内で、福井は「開花から約3日」(福井2)、熊本は「開花3日目まで」(熊本12)としています。2つ目は、気温が15℃以下の日は受精能力が落ちるので受粉を控えること(佐賀3)です。3つ目は、花粉は10aあたり粗花粉60〜90g(純花粉20g程度)を、2〜3回に分けて使う想定であること(茨城1)です。4つ目は、同じS遺伝子型の品種どうしは受精しないので、花粉をとる木の品種を先に決めておくことです(茨城1)。

中国での火傷病の発生で中国産花粉の輸入が止まり(茨城1・山口1・千葉2)、花粉を自分たちで確保する必要が出てきました。この記事は18都道府県の公的資料36本から、人工受粉の時期とやり方、花粉の採取と保存、受粉樹とS遺伝子型、ミツバチと受粉機、花粉不足への対策、自家和合性品種を、作業前に読める形でまとめたものです。

時期の目安

受粉は開花に合わせて行うので、各県の開花期が目安になります。次の表は、資料にある開花の日付と受粉作業の時期を、南から北へ並べたものです。開花日は年と園地で動くため、必ず自分の園の花を見て決めてください。

地域 県・品種 時期 区分 出典
九州 熊本・新高 開花は通常3月下旬〜4月上旬 開花 熊本17
九州 熊本・凜夏、幸水 開花盛期は凜夏3月31日、幸水4月2日 開花(果樹研究所内の2023・2024年平均、試験の値) 熊本3
九州 長崎・豊水、あきづき、新高(幸水は4月上旬) 3月下旬〜4月上旬に、3〜4分咲と8分咲の2回 受粉作業 長崎1
九州 佐賀・幸水 満開は平年4月8日。2021年は3月29日で最も早かった 開花(果樹試験場内) 佐賀7
中国 山口・二十世紀 4月中旬の開花期に、3分咲と8分咲の2回(4〜5番果を中心に) 受粉作業 山口1
中国 山口・幸水、豊水 4月中旬の5〜6分咲に、3〜5番果を狙って1回 受粉作業 山口1
中国 鳥取・豊水、新甘泉、おさゴールド、幸水 満開は豊水4月14日、新甘泉4月17日頃、おさゴールド4月17日、幸水4月19日 開花(育成地の2008〜12年平均、試験の値) 鳥取33
北陸・東海 富山・幸水、豊水、新高 開花期の平年は幸水4月13〜22日、豊水4月11〜19日、新高4月8〜16日 開花(平年値) 富山1
北陸・東海 新潟 4月中・下旬に人工受粉 受粉作業 新潟2
関東 茨城・幸水 開花始は平年4月14日、開花盛は4月17日(笠間市)。満開時に2〜3回 開花(平年値)と受粉作業 茨城2・茨城1
関東 栃木・幸水、豊水、にっこり 2026年の予測(3月26日現在)で開花始は幸水4月12日、豊水4月9日、にっこり4月5日 開花(予測) 栃木2
東北 福島・幸水 開花始は平年4月19日、満開は4月24日(福島市) 開花(平年値) 福島6
東北 宮城・幸水、豊水 幸水4月28日〜5月10日、豊水4月24日〜5月6日 開花(1991年の試験) 宮城1

九州の3月下旬から宮城の5月上旬まで、約1か月の幅があります。1つの園の中でも、品種で開花は前後します。茨城の資料では、にっこり、松島、新興、新高、豊水、あきづき、幸水、恵水の順に咲くとされています(茨城1)。花粉をとる品種は、受粉する品種より先に咲くものを選びます。

やり方(標準の手順)

花粉の準備から受粉まで

  1. 花粉をとる枝または蕾を、開花の少し前に集めます。茨城は開花4〜5日前に採枝するのが標準で、花弁が風船状になった蕾が適期です(茨城1)。山口は、蕾が白みを帯びる開花7〜5日前に枝を切るとしています(山口1)。蕾の時期が早すぎると花粉が充実しないので、良い花粉がとれる期間は短くなります(茨城1)。
  2. 花を葯だけにします。蕾や花を採葯機にかけて花弁と花糸を除き、ふるいで葯だけにします。機械がなければ、5mm目ほどのふるいに花をこすりつけて葯を落とします(長野5)。花粉は生きているので、採花したらすぐに作業します(長野5)。
  3. 葯を開かせて、粗花粉にします。温度は20〜25℃で、30℃以上にすると花粉の発芽能力が落ちます(長野5)。湿度は茨城が30〜50%で10〜12時間(茨城1)、熊本は25℃で15〜18時間(熊本11)、山口は25℃・湿度50〜60%で15〜24時間(山口1)としています。葯を厚く広げるとむれるので、二重になる程度に薄く広げます(長野5)。
  4. 保存する花粉は、乾燥剤を入れた容器で密閉します。長野は、1〜2日なら10℃以下の冷暗所、数日なら5℃以下、約1年なら−20℃以下としています(長野5)。熊本も、−20℃以下で1年以上保存できるとしています(熊本11)。乾燥剤を入れるのは、花粉を乾いた状態に保つためです。
  5. 使う前に、必ず発芽率を調べます。長期貯蔵した花粉は常温と湿度に慣らしてから検定します。発芽率が30%以下の花粉は使えず、60%以上あれば良い花粉です(長野5)。山口は、寒天の培地に花粉をまいて25℃で2時間置き、150倍ほどの顕微鏡で100個以上を数える方法を示しています(山口1)。発芽率がわからないと、増量の倍率を決められません。
  6. 増量剤(石松子)で薄めます。倍率は花粉の発芽率で決め、佐賀は表のように示しています(佐賀3)。薄めすぎると受粉量が足りず、濃すぎると花粉の無駄になります。
  7. 当日、天気と時刻を選んで、梵天や受粉機で雌しべに花粉をつけます。くわしい条件は次の節に書きました。
花粉の発芽率 増量剤で薄める倍率
80%以上 15倍
70%程度 10倍
60%程度 7〜8倍
50%程度 5倍
50%以下 増量剤として使う(花粉のかさを増やす用途)

この倍率は佐賀のものです(佐賀3)。福井は純花粉と石松子を1対5とし(福井2)、長崎は純花粉8gを石松子80gで10倍にしています(長崎1)。熊本は粗花粉を倍量程度に増量するとしています(熊本11)。

受粉当日の条件

  • 天気と気温は、気温20〜25℃で風がなく暖かい日が好適です(熊本12)。気温が15℃以下になりそうな日は、花の受精能力が落ちるので控えます。低温時に受粉すると結実が悪く、実がついても肥大が悪くなり、翌日に同じ花へ受粉し直しても、いったん受精した花には効果がありません(佐賀3)。福井は、花粉の発芽に最低10℃、理想は15℃以上が必要としています(福井2)。
  • 時刻は午前10時〜午後3時が好適です(熊本12)。佐賀は、午後に強風になる日が多いので午前中に集中して行うとしています(佐賀3)。福井は、花粉がついてから花粉管が伸びるのに3時間ほどかかるので、夕方3時ごろまでに終えるとしています(福井2)。
  • 花の状態は、雌しべの先端がぬれていることを確かめます。乾いていると受粉しません。開花直後は受粉しにくいので、葯が赤いうちは避け、赤から黒に変わった花に行います(福井2)。
  • 回数は、長崎・山口が3〜4分咲と8分咲の2回、茨城が満開時の2〜3回(短果枝と長果枝の満開時)です。山口の幸水・豊水は5〜6分咲に1回です(長崎1・山口1・茨城1)。
  • 1果そうあたりの花数は、福井が1花だけ(摘果が楽になるため)とし、受粉する花は軸が太くて長く、横向きの花(3〜4番果に相当)です(福井2)。佐賀は、1果そうで2花に受粉しても最終的に5分の1ほどに摘果するので、花数を増やすより1花にたっぷり丁寧に受粉するよう勧めています(佐賀3)。
  • 受粉直後の雨は、熊本が受粉後1〜2時間以内なら再受粉するとしています。福井は、作業の2〜3時間後の降雨なら再受粉は不要としています(熊本12・福井2)。

開花前後に薬剤を使う作業があるときは、ミツバチなど訪花昆虫への影響を考えます。薬剤を使う前に、最新の県の防除暦と農薬登録(FAMIC 農薬登録情報提供システム https://pesticide.maff.go.jp/ )を確認してください。

花粉の必要量

10aあたりの花粉の量は、資料ごとに表し方が違います。茨城は粗花粉60〜90g(120〜200ml)、純花粉では20g程度で、授粉2〜3回の想定です(茨城1)。長野は葯付きの花粉が150ccで、必要な花数は5,000〜8,000花、1人が栽培ほ場で1時間に採花できるのは約1,200花です(長野5)。山口は生葯600ccをとっておくとしています(山口1)。千葉は、発芽率70%以上の純花粉6gを石松子で10倍に薄めた60gが必要で、「長十郎」の花重で3.6kg、切り枝で200本に当たります(千葉2)。長崎は純花粉8gに石松子80gです(長崎1)。

ミツバチと受粉機を使う場合

ミツバチは、茨城の資料で1群(約1万匹)あたり30〜40aの受粉能力があるとされています。使えるのは、S遺伝子型の違う品種を混植した園です。多目的防災網は一部を開けておく必要があります。低温・降雨・強風のときは虫が動かないので、人工受粉も行います(茨城1)。熊本も、雨が続くとミツバチの活動が鈍り、結実が不安定になるので人工受粉が確実な手段としています(熊本11)。

三重の1996〜1998年の試験では、幸水に鉄砲式の乾電池受粉機を使うと、慣行の梵天に比べて花粉の使用量が約6割節約され、受粉の時間は約3割短くなり、着果と果実品質には影響がありませんでした。10aあたりの作業時間は鉄砲式が6.6時間、梵天が9.6時間です(1996年)。花粉の噴射量は目盛りの中央に設定し、花粉量が梵天の4割以下になると着果率が下がる場合があります(三重3)。噴射した花粉は風に飛ばされやすいので、噴射口を花に近づけます。鳥取のおさゴールドの試験では、スピードスプレーヤによる送風で受粉する方法は効果が低く、満開後に葯が開いた状態で筆で受粉する方法や人工受粉の効果が高いという結果でした(鳥取27)。

品種による違い

S遺伝子型と受粉樹の選び方

なしは、雌しべと花粉が同じS遺伝子型のとき受精しません。次の表は、茨城の資料に出ている主な品種のS遺伝子型です(茨城1)。

S遺伝子型 品種
S1S3 凜夏
S1S4 はつまる、八雲、翠星
S2S3 長十郎
S2S4 二十世紀、菊水、早生長十郎
S2S5 愛宕、八里、早生幸蔵、きらり
S3S4 あきづき、甘太、筑水、なつしずく
S3S5 豊水、あけみず、涼豊、彩玉
S3S9 新高(花粉が少なく採取には適さない)
S4S5 幸水、恵水、新水、秀玉、愛甘水、王秋
S4S9 新興、新星、南水
S5S9 にっこり、かおり

同じ型の品種どうしは受精できません。たとえば、幸水(S4S5)に新水や王秋の花粉は使えず、豊水(S3S5)と岡山の晴香(S3S5)も組み合わせられません(茨城1・岡山2)。一方、型が1つだけ共通している組み合わせは使えます。茨城は、長十郎(S2S3)の花粉を幸水・恵水・王秋に、新興(S4S9)の花粉を幸水・恵水・王秋に、あきづきの花粉を新高・にっこり・豊水・幸水・恵水・王秋に、豊水の花粉を幸水・恵水・王秋などに使えるとしています(茨城1)。

品種ごとの注意は、次のとおりです。

  • 新高は、花粉が不完全で少ないので受粉樹には向きません(熊本11・茨城1)。長崎は、新高は花粉がないので、前年に他品種の花粉を冷凍貯蔵して発芽テストをして使うとしています(長崎1)。熊本は、前年の貯蔵花粉か、新興の樹にビニルを被せて開花を早めた花粉を使います(熊本11)。
  • あきづきと秋麗は、互いに受精しません(熊本11)。
  • 幸水と新水は、お互いに交配不親和です(山口1)。
  • 岡山の晴香(S3S5)は、同じ型の豊水の花粉が使えず、愛宕と新高は、型は違っても花粉が十分とれないので適しません。ヤーリーとツーリーは型が不明ですが、実際の栽培では結実率が下がっていません。晴香自身は花粉が少なく、他品種の受粉にも向きません(岡山2)。

花粉をとる受粉樹と専用樹

受粉樹として資料に出てくるのは、松島と新興です。茨城は、受粉樹の松島・新興を既存品種へ高接ぎするか、苗木を定植するよう勧めています(茨城1)。千葉は、花粉採取専用樹に向く品種の条件を、腋花芽または短果枝が多いこと、主要品種と交雑和合性があること、主要品種と比べて開花が早いか同じ程度であることとし、横山梨、ネパールA、鴨梨、新興、松島、新生、長十郎、ゴールド二十世紀を候補に挙げています(千葉2)。

千葉の専用樹の例では、「長十郎」を低樹高の2本主枝一文字整枝にして、列間3〜4m×樹間7m(10aあたり35.7〜47.6本)で植えると、定植7年目には10aあたり純花粉114〜152gがとれ、約1.9〜2.5haの受粉に足ります。10aの受粉に必要な専用樹は、4年生の樹で約6樹、7年生の樹で約2樹です(千葉2)。

自家和合性の品種

自家和合性の品種は、自分の花粉で実がつくので、人工受粉の手間を減らせます。資料には次の品種が出ています。

  • 鳥取は、秋甘泉は人工授粉が不要、夏さやか、なつひめ、涼月、優秋、瑞鳥、新甘泉は必要と品種ページに書いています(鳥取2〜8)。おさゴールドも自家和合性です(鳥取27)。
  • 新潟は、県育成の新美月と新王が自家和合性で、受粉作業の19時間(10aあたり)が不要になるとしています(新潟2)。
  • 兵庫は、秋栄とおさゴールドを、同じ品種の花粉で結実する品種としています(兵庫2)。

ただし、自家和合性でも結実が不安定な年があります。鳥取のおさゴールドの6年間の試験では、満開の前後が高温の年(2009年・2012年)は、自然受粉でも結実率が60%以上でした。満開の前後が低温・降雨の年(2008年・2010年・2013年)は、自然受粉で50%以下、人工受粉でも60%以下とかなり低くなりました。人工受粉か、満開後(葯が開いた状態)の筆受粉の効果が高く、悪い年でも自然受粉より果実肥大が良く、人工受粉と同程度の果重になっています(鳥取27、試験の値)。

もう1つの注意は、摘果の手間が増えることです。鳥取は、自家和合性の品種は受粉の手間が省ける一方で摘果労力が増えるとして、せん定時の除芽を試験しました。秋栄は1mあたり花芽8芽・着果8果にすると摘果時間が短縮し、4芽にするとミツ症が増えました。秋甘泉の長果枝は除芽しないほうが良いとされています(鳥取28、試験の値)。

県によって違うところ

花粉不足(輸入停止)への対策

中国での火傷病の発生で中国産花粉の輸入が止まり、全国で花粉が足りなくなりました。県の対応は、自分で採る、共同で採る、専用樹を植える、の3つに分かれます。

  • 茨城は、花粉の自家採取の強化、ミツバチなど訪花昆虫の活用、地域内での花粉の融通、集団での採取や商業化を挙げ、近県では栃木・千葉などで集団での取組事例があるとしています。受粉樹がない園では、前年に採った貯蔵花粉を融通します。前年のうちに花粉を採って冷凍保存し、とくにハウスの幸水と、開花が早いにっこり・新高に備えるよう勧めています(茨城1)。
  • 長野は、短期的にはせん定した枝や、開花期の早い品種から採取し、長期的には受粉樹を植えて採取量を増やし、産地内で花粉確保の体制をつくるとしています。県は受粉樹の植樹への緊急支援を検討中と、2023年11月の資料に書いています。加温ハウス、ぶどう・花木・育苗ハウスの利用、部会での共同採取、開葯センターも例に挙げています(長野6)。
  • 京都は、府内の産地で花粉の供給体制づくりを急ぐ方針です(京都2)。山口は、輸入花粉に頼らない自給体制を強化するとしています(山口1)。
  • 鳥取は、中国産花粉を持っている場合は密閉して厳重に保管し、使わないよう呼びかけています(鳥取39)。

花粉の採取を分散させる方法として、長野は、受粉樹の周りをビニールで囲って開花を1〜2日早める方法を示しています(長野5)。茨城は、せん定枝を開花5日前に切ってハウスで促成するのが通常で、極端に早く切ると花粉が減り発芽率が悪くなる心配があるとしています(茨城1)。

輸入花粉を使う場合の扱いも、県の資料にあります。佐賀は、−30℃で冷凍貯蔵された花粉をそのまま使うと発芽率が低いので、受粉の前日に冷凍庫から出し、温度5℃・湿度80%ほどで運ぶとしています(佐賀3)。福井は、水分が極端に少なく保存されているので、受粉日の2日前から常温・常湿に慣らす必要があるとしています(福井2)。

資料どうしの数字の違い

花粉の量、受粉の回数、再受粉の目安は、県の資料で数字が違います。理由を資料から読み取れるものは、次のとおりです。

  • 10aあたりの花粉は、純花粉で千葉6g、長崎8g、茨城20g程度と開きます。千葉は発芽率70%以上を前提にして10倍に薄めた60g、長崎は2回の受粉に10倍の希釈、茨城は2〜3回の想定で、天候不順の年を含む幅としています(千葉2・長崎1・茨城1)。数字は、何回受粉するかと発芽率の前提に左右されます。
  • 受粉する花の位置は、福井が3〜4番果相当の横向きの花、山口の二十世紀が4〜5番果、幸水・豊水が3〜5番果と、範囲が少し違います。資料に理由の説明はありません(福井2・山口1)。
  • 再受粉の目安は、熊本が受粉後1〜2時間以内の雨、福井が作業の2〜3時間後の雨は不要です。福井は、花粉管の伸長に約3時間かかるとしています(熊本12・福井2)。どちらも、受粉直後の雨は再受粉を考えるという点は同じで、境目の時間が違います。

失敗しやすい点・注意

  • 開花期に低温・降雨が続く年は、結実が悪くなります。佐賀は、近年、受粉時期の低温や降雨で結実不良が目立つとしています(佐賀3)。福井も、開花期の低温や樹の高齢化で結実不良が頻発しているとしています(福井2)。
  • 開花後の日数が経つと、結実率が下がる品種があります。鳥取のゴールド二十世紀は、開花2日後の受粉でも結実率が下がるので、開花当日にできなかったときは丁寧に受粉します。新甘泉は、開花4日後まで結実能力の低下が少なく、受粉に適した天気になるのを待てます。開花直後の数mmの降雨は、結実に影響しませんでした(鳥取26、試験の値)。この試験は切り枝を20℃に保った条件で、園地ではこれより結果が悪くなることがあります。
  • 暖冬の年は、開花がそろいません。熊本の新高は、2020年産で、低温にあたる時間が足りず、花が小さく数も少なく、開花に差が出ました。熊本は、できるだけ大きな花を中心に丁寧に受粉するよう呼びかけています(熊本12)。
  • 小さな花や遅れて咲いた花も、受粉すれば着果率は正常花と差がありません。ただし、遅れ花の果実は極めて軽くなります。正常花だけでは着果量が足りないときに使います(熊本18、試験の値)。
  • 凍霜害は、受粉の前後に重なります。福島の資料では、幸水の安全限界温度は、開花直前でマイナス1.8℃、満開期でマイナス1.3℃(1時間遭遇)です(福島6)。
  • 受粉の後は、摘果が遅れないようにします。佐賀は受粉2週間後から判断し、開花後30日までに適正着果量にするとしています(佐賀3)。

作業の前後とつながり

受粉の前には、冬のせん定で花芽の数と配置を決め(なしのせん定マニュアル)、開花前に蕾を整理します。受粉の後は、結実を確かめてなしの摘蕾・摘果マニュアルに進みます。開花期は病害虫防除の重要な時期でもあるので、なしの病害虫防除マニュアルも確認してください。袋かけはなしの袋かけマニュアルにまとめています。

全体の目次はなしの栽培マニュアルです。45都道府県の年間作業表は、なし栽培暦・年間作業表の全国まとめで見られます。

出典(参考URL)

なしの栽培マニュアル(目次)に、ほかの作業のページをまとめています。