JAの防除暦はなぜ違うのか|10点を比較して分かった構成差と記帳票を兼ねる仕組み

【PR】本記事には、先端農業マガジンの運営元である株式会社トクイテンが提供する無料テンプレート『ミノリス テンプレート』の案内が含まれます。

JA(農協)や部会に出荷している農業者、これから出荷を始める農業者に向けた記事です。JAから防除暦や栽培暦を渡されたものの、冊子ごとに並びが違うと感じた人もいると思います。稲作の暦と野菜の暦で、見た目がまったく違うことにも気づくはずです。

この記事では、全国のJA、部会、県が公開している暦のうち、PDFの中身を実際に確認できた10点を比べています。あわせて、JAやまがた、JAえひめ未来、JA雲南などの注意書きと、JA中野市、JAよこすか葉山などの記帳欄の作りを使いました。暦の構成の違いと、暦が記帳票を兼ねる仕組みを説明します。暦を自分の防除計画に作り直す手順は、別の記事に送ります。

目次

栽培暦と防除暦は、JA・部会・県が毎年作って配るものです

発行者はJAの営農部、部会、県の機関、連名とさまざまです

確認できた10点の発行者は、一つにそろっていません。JAやまがたのトマトの防除暦は、JA本体が冊子にまとめています。JA中野市の西洋なしの防除暦は、JA中野市の園芸課とナシ部会の名前で出ています。JAえひめ未来の枝豆の栽培管理日誌は、ときめき水都市・あかがね市部会の資料です。

島根県のJA雲南の稲作暦は、さらに多くの組織の連名です。表紙には、JA島根の雲南地区本部、県東部農林水産振興センター雲南事務所の農業部、全農、雲南農業振興協議会、雲南稲作推進協議会が並んでいます。埼玉県の水稲「えみほころ」の栽培暦のように、県の農業技術研究センターが発行する例もあります。

誰が出すかは、品目と地域の事情で決まっているようです。統一されたルールがあるかどうかは、今回調べた範囲では確認できませんでした。

暦は毎年改訂され、農薬の登録内容の日付が書かれています

10点とも、年次の改訂版でした。「令和7年産」「2025年用」「2026年版」「令和8年3月版」のように、紙面に年が入っています。毎年もらい直す前提で作られた資料です。

防除暦には、農薬登録の基準日も載っています。JAやまがたのトマトは2024年11月1日現在、JA庄内たがわの醸造用ぶどうは令和6年12月1日現在、JAえひめ未来の枝豆は2026年3月現在の登録内容です。農薬の登録は変わるので、前年の暦をそのまま使うと、使えなくなった薬剤を載せてしまうおそれがあります。

農家が暦を自分で作る必要は、基本的にありません

一次調査で確認できた運用は、JAや部会が毎年作る暦を受け取る形でした。農家はその暦に沿って栽培し、暦の中の空欄や印刷済みの記帳票に、日付や資材を書き込みます。資料から読み取れる農家の義務は、登録内容に合った農薬の使用と、履歴簿の記帳、出荷前の提出です。

暦を作る側に回るのは、JAの暦が無い品目を作るとき、直売所に出荷するとき、特別栽培などの独自の栽培をするときです。この場面は、後半の章で扱います。

稲作の暦と野菜・果樹の暦は、構成が違います

10点を並べると、品目で2つの型に分かれます

次の表は、確認した10点の概要です。JAなんとのキャベツは、確認できた範囲で防除の薬剤名の表が見つかっていません。JAてんどう(山形)の防除暦は文字化けで中身を読めなかったため、表には入れていません。

品目(県) 発行者 種別 表の軸 主な記載要素
水稲えみほころ(埼玉) 県農業技術研究センター 栽培暦 横が月・旬 窒素量、葉色基準、収穫適期。農薬は「登録のある薬剤を使用する」と書くのみ
水稲(島根・雲南) JA雲南、県、全農、協議会の連名 稲作暦の冊子 病害虫の対象別の体系表 薬剤名、希釈倍数、使用時期、散布量
水稲コシヒカリ(福井) JA福井県のサイトに掲載 栽培暦 横が月・旬 肥料の成分と施用量、基幹防除2回の薬剤名と散布量
水稲ひとめぼれ(大分) おおいた中部営農経済センター 栽培暦 横が月・旬 工程ごとの資材選択
トマト(山形) JAやまがた 防除暦の冊子 時期×病害虫×薬剤 倍数、収穫前日数、使用回数、防除実績1〜6回目の空欄
枝豆(愛媛) JAえひめ未来の部会 栽培管理日誌 使用農薬表 農薬名、対象病害虫、使用時期、使用月日1〜3回目
キャベツ(JAなんと) JAなんと 栽培暦 横が月 播種・定植の時期を記号で表示。施肥例あり
西洋なし(長野) JA中野市の園芸課とナシ部会 病害虫防除暦 第n回×時期 散布日の欄、薬剤名、使用量、収穫前使用時期、年間使用回数
醸造用ぶどう(山形) JA庄内たがわ 病害虫防除暦 回数×防除時期 薬剤名、倍率、収穫前日数、回数
みかん(福井) 福井県 防除指針 薬剤×適用病害虫 使用時期、使用回数、使用量、病害虫別の倍率

10点のうち1点は県の防除指針です。JAの暦と見比べるために入れました。

稲作は月・旬のカレンダー型です

埼玉県、JA福井県のサイト掲載分、大分県の水稲の3点は、横軸に月と旬を取っています。縦には、生育ステージ、水管理、作業、施肥、病害虫防除が積まれます。種をまく日から収穫までの流れを、1枚で見渡せる作りです。

この型では、農薬の扱いが小さくなります。埼玉県の暦は、農薬について「登録のある薬剤を使用する」と書くだけで、薬剤名や倍数の表はありません。福井県のコシヒカリの暦は、基幹防除の1回目と2回目の薬剤名と散布量を載せています。JA雲南の稲作暦は例外で、冊子の約60頁のうち、病害虫防除体系が38頁、除草剤散布適期が40頁にあります。箱施用剤と、液剤・粉剤・粒剤の体系を、対象病害虫別の表で示す構成です。

野菜と果樹は、第n回×時期×薬剤の防除表型です

トマト、西洋なし、醸造用ぶどうの3点は、防除の回数と時期を縦に並べています。JAやまがたのトマトは、播種後、定植前、定植時、栽培期間中の順です。JA中野市の西洋なしは、第1回から第6回まで進み、第2回は開花期の4月下旬というように時期が付きます。

横には、薬剤ごとの使用基準が並びます。倍数、収穫前日数、使用回数、注意事項です。JA庄内たがわのぶどうには、ベンレート水和剤が休眠期に1回、テーク水和剤が45日前までに2回以内という行があります。薬剤の数だけ行が増える作りなので、防除表型の暦は薬剤名を軸に読む資料になります。

県の防除指針は、薬剤を縦に並べる表です

福井県のみかんの防除指針は、縦に薬剤、横に使用時期、使用回数、使用量、適用病害虫別の希釈倍率を取る表です。前半には、病害虫名と防除時期ごとの注意事項があります。ベンレート水和剤の行には、収穫前日まで、4回以内と書かれています。

この項目は、JAの防除暦に出てくる倍数、収穫前日数、使用回数と同じです。JA側の暦が県側の資料と同じ項目を使っていることは、後の章でもう一度触れます。

暦に無い農薬を使うと、出荷できないのでしょうか

登録外の農薬の使用は、出荷停止の対象と明記されています

JAやまがたの防除暦の表紙には、次の趣旨の注意書きがあります。登録のない農薬の使用は厳禁で、適用外使用や無登録農薬の使用は罰則や出荷停止の事態にもなる、という内容です。農薬の飛散による残留でも出荷できなくなることがある、とも書かれています。

JAえひめ未来の枝豆の栽培管理日誌には、「出荷する商品は、栽培管理日誌の提出が必ず必要です」と「農薬を登録外使用した場合、出荷できません」という二つの注意書きがあります。尾張中央のJAも、登録外使用は農薬取締法違反となり、産直施設へ出荷できないと説明していますが、これは要約で確認した記述です。

暦に載っていない資材は、事前にJAへ相談する運用もあります

JA雲南の稲作暦は、栽培暦が米栽培の基準であると位置づけています。守る事項として、種子更新、農薬の適正使用、生産基準に基づく生産履歴簿の記帳の3つを挙げています。使う資材は原則として資材申込書に書かれたものとし、書かれていない資材を使うときは、事前にJAへ相談するよう求めています。

宮城県の資料には、ある農協の記帳様式に「記載外農薬使用日誌」があるという記述がありますが、検索結果の要約だけで、本文は確認できていません。暦の外の農薬を別の帳票に書かせる運用が、一部にあるのかもしれません。

「暦のとおりでないと出荷できない」という明文は確認できませんでした

出荷停止の根拠として確認できたのは、登録内容に合った使用と、履歴簿の提出です。暦に載っていない登録農薬を使うと直ちに出荷不可になる、という趣旨の明文は、今回の調査で見つかっていません。部会の規約や出荷基準書は非公開のことが多く、そこに何が書かれているかは分かりません。

実際の取り決めは、出荷先のJAや部会で違うと考えるのが安全です。暦と違う薬剤を使いたいときは、散布する前に営農指導員や部会の担当者へ相談してください。

暦が記帳票を兼ねる仕組みを、6つの例で見ます

暦の表の中に、散布日を書く欄がある例

JAやまがたのトマトの防除暦(冊子78頁のうち31頁)は、薬剤の行に「防除実績(農薬散布 月/日)」の欄があります。1回目から6回目までの空欄が付いています。薬剤名、倍数、回数の上限と同じ行に日付を書くので、別の帳面へ転記する手間がありません。

JA中野市の西洋なしでは、第1回から第6回の行に「散布日 月 日」の欄があります。回数の行に日付を書く形で、使用薬剤名や年間使用回数も同じ行にあります。どちらの例も、暦に実績欄が付いているため、防除の予定と記録が1枚に収まります。

記帳用紙に薬剤が印刷済みで、日付だけ書く例

JAよこすか葉山のはくさい(2016年版)の記帳用紙は、防除暦の薬剤を印刷してあります。1番にアクタラ粒剤5、2番にアクタラ顆粒水溶剤、3番にアドマイヤーフロアブルというように、連番、適用病害虫、薬量と倍率、使用時期、使用回数が並びます。農家が「散布実施月/日」の①から④に書くのは日付だけです。

回数の上限を超える枠は、「**/**」で消してあります。最後の6番は空欄の手書き行です。連番は行の識別に使われており、農家が番号を記入する方式ではありません。防除暦の番号を履歴簿に書き写す方式は、今回の調査では確認できませんでした。

JA庄内みどり(山形)のみずなの薬剤防除実績と、さがみ農協(神奈川)の生産履歴記帳用紙も、同じ考え方です。庄内みどりの様式は、農薬登録番号や農薬名をJAが事前に印刷し、防除実施日を1回目から6回目まで書く形です。さがみ農協の用紙は、適正使用基準として使用時期(〜日前)と回数を事前に記載しています。農家は散布実施月日を①から⑤に書きます。

使用農薬表と日誌が一体の例

JAえひめ未来の枝豆の栽培管理日誌は、作業と施肥の記入欄に加えて、作物別に印刷した使用農薬表を持っています。農薬名(希釈倍数・使用量)、対象病害虫、使用時期、使用月日の1回目から3回目までが並びます。登録内容は2026年3月現在です。農薬を散布したかどうかを、先に「はい」「いいえ」で答える作りもあります。

有効成分の使用回数を、暦の中で確認する例

JA雲南の稲作暦は、巻末近くの46頁に除草剤使用履歴の表を持っています。使用した農薬の成分数を、この表で確認できるという趣旨の説明が付いています。有効成分ごとの回数を数えるチェック表が、暦の冊子の中に入っている例です。

全農福島などが公開している特別栽培向けの栽培管理日誌も、成分使用回数の集計欄を持っています。圃場番号ごとの列に日付を書く連記式で、防除を目的とする作業も記入し、使用量は10aあたりで書く、という決まりです。

印刷済みの履歴票に見直した例

北海道のJAふらのは、全農系の雑誌の特集記事で、履歴票の見直しを紹介しています。肥料と農薬は、コードや品名を記入する手間を省くため、作物や栽培方法ごとに主要な肥料や農薬名を印刷した、という内容です。履歴データを管理するシステムも導入しています。記事は平成17年度実績の時期のものです。

ここまでの6例に共通するのは、暦に載る薬剤のリストと、記帳票の薬剤欄が、同じ元データを使っているように見えることです。ただし、JAが同じデータから作っているとの明言は確認していません。記帳票の様式を読んだ結果に基づく見方です。

暦の元になる県の防除基準と施肥基準

福井県のみかんでは、県の指針とJA暦の項目が一致します

前の章で見たとおり、福井県のみかんの防除指針は、薬剤、使用時期、使用回数、使用量、適用病害虫別の倍率を載せる表です。JAやまがた、JA中野市、JA庄内たがわの暦も、倍数、収穫前日数、使用回数を載せています。県の資料と、JAの暦で、薬剤について載せる項目がそろっています。

静岡県の「農薬安全使用指針・農作物病害虫防除基準」令和8年度版は、静岡県の主要作物を対象に、防除基準に採用された農薬のみを掲載する、と説明しています。登録情報は、JPP-NETの令和7年12月末のデータです。県が薬剤を選んで基準にまとめる仕事が、公開資料から読み取れます。

三重県の施肥の手引きは、栽培暦の見直しの基礎資料とされています

三重県の「適正施肥の手引き」(令和4年3月)は、水稲の施肥基準として、品種、目標収量、基肥と追肥1回目から3回目の窒素・リン酸・カリの量を載せています。同じ頁の並びに、○播種、◎移植、□収穫、▽基肥、▼追肥といった記号の栽培暦も掲載しています。

前書きには、今後の栽培暦の見直しや、土づくりと適正施肥の推進の基礎資料にする、と目的が書かれています。県の施肥基準と、栽培暦が、同じ資料の中でつながっている例です。

JAが県の基準から暦を作ると明記した文書は、確認できませんでした

項目の一致や、静岡県の採用方針からは、県の基準を元にJAや部会が暦を作ると推測できます。ただし、JAまたは県が「JAの防除暦は県の防除基準から選んで作る」と明記した一次文書は、今回見つかっていません。長野県の防除基準のページにも、JAや防除暦の語は出てきません。

和歌山県の紹介ページには、防除は栽培指針をもとに行われ、必要に応じて生産者と営農指導員が相談して農薬を変える、という趣旨の記述があります。これもWebFetchで得た要約の確認にとどまります。

暦が無い品目、直売所、特別栽培のときは、記録を自分で用意します

JAの暦が届かない場面では、記録は農家の側で用意します

JAの暦が無い品目を作る場合は、暦の欄に日付を書く運用が使えません。直売所に出荷する場合も、JAの暦が使えないことがあります。特別栽培や有機のように、農薬や肥料の使用実績を自分で説明する栽培でも、暦の欄では足りません。

こうした場面では、全農が特別栽培向けに公開している栽培管理日誌や、GAPの帳票を使うのが現実的です。全農の日誌は、圃場番号ごとの列に日付を書き、成分使用回数を集計する様式です。GAPの帳票は、別の記事で扱います。

ミノリスの「防除日誌」は、散布日と薬剤を1行で残す日誌です

ミノリスの無料テンプレート「防除日誌」は、散布日、薬剤名、希釈倍数、使用回数、収穫前日数を1行で記録する日誌です。JAの防除暦に記帳欄が無い品目の代わりに使えます。暦の薬剤欄を、自分の作物に合わせて書き写し、日付を記入していく使い方です。

できないことも書いておきます。JAや部会が指定する様式がある場合は、その様式で提出してください。このテンプレートは自分の記録を残すための日誌です。JAの暦や履歴簿の代わりに提出する書類としては使えません。出荷先の指定があれば、そちらを優先します。

無料テンプレート:防除日誌

散布日、薬剤名、希釈倍数、使用回数、収穫前日数を1行で記録する日誌です。JAの防除暦に記帳欄が無い品目の代わりに使えます。Excel、PDFがあり、登録は不要です。

防除日誌をダウンロード(登録不要)

自分の防除計画に作り直す手順は、別の記事にあります

暦を読み解いて、自分の圃場向けの防除計画を作る手順は、防除暦の作り方と読み方の記事で説明しています。品目ごとの栽培暦を探すときは、栽培暦・年間作業表の全国まとめが使えます。

まとめ

JA(農協)や部会、県が配る暦は、稲作では月・旬のカレンダー型、野菜と果樹では回数×時期×薬剤の防除表型に分かれ、発行者も項目も統一されていません。出荷停止の根拠として確認できたのは、登録外の農薬の使用と履歴簿の提出で、暦に無い資材は事前に相談するJAもあります。暦に散布日の欄があったり、薬剤が印刷済みの記帳票が配られたりするので、暦が無い品目や直売所のときだけ、自分で記録を用意すれば足ります。

よくある質問

防除暦と栽培暦はどう違いますか

確認できた10点では、栽培暦は施肥、水管理、作業を月・旬で示す資料でした。防除暦は、回数と時期ごとの薬剤、倍数、収穫前日数、使用回数を示す資料です。稲作の暦のように、1枚に両方が入っている例もあります。

防除暦に載っていない農薬を使ってもいいですか

登録外の使用は、JAやまがたとJAえひめ未来が出荷停止の対象と明記しています。JA雲南は、申込書に無い資材を使うときは事前にJAへ相談するよう求めています。使う前に、営農指導員か部会に確認してください。

防除暦の収穫前日数や使用回数はどこから来ていますか

JAの暦には、薬剤ごとの倍数、収穫前日数、使用回数が載っています。県の防除指針にも同じ項目があり、暦はこの項目を使っています。JAが県の基準から作ると明記した文書は、確認できていません。

防除暦に散布日を書く欄があれば防除日誌は不要ですか

JAやまがたのトマトのように実績欄が付いた暦なら、その欄に書けば足ります。暦に欄が無い品目や、JAを通さない直売所への出荷では、自分で記録を残す必要があります。JA指定の様式がある場合は、その様式を優先してください。

防除暦は毎年もらい直す必要がありますか

確認した10点は、すべて年次の改訂版でした。農薬の登録内容は変わるため、暦には「〇年〇月現在」の登録基準日が書かれています。毎年、その年の版を受け取って使ってください。

関連記事

参考URL