農産物の商品提案書・営業資料の作り方|記入例と無料テンプレート

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スーパーのバイヤーや飲食店のシェフに初めて会うとき、農産物の現物とあわせて渡す紙が商品提案書です。直売所や市場出荷から一歩進んで、小売や外食へ直接売り込みたい農業者の方に向けて、提案書に何を書き、どう書けばバイヤーに読んでもらえるかを説明します。

この記事では、提案書に入れる7つの見出しと記入例、相手別の書き分け、商品規格書や週替わりの価格表との使い分けを順に取り上げます。根拠は、農林水産省のFCP展示会・商談会シートや日本政策金融公庫の商談会レポートなど、公的機関の資料です。取引が始まったあとの契約書や見積書については、既存の記事へのリンクを案内します。

農産物の商品提案書とは何か

商品提案書は、どんな生産者が何をいつどれだけ、どんな条件で出せるかを、初対面の取引先に短時間で伝える資料です。営業資料や商品案内、産地紹介とも呼ばれ、法令で様式は決まっていません。

農林水産省のFCP展示会・商談会シートは、出展者の伝えたい情報とバイヤーの知りたい情報を1枚にまとめた統一シートです。農林水産省は、商談の最初の5〜10分に必要な商品情報と事業者情報を整理した様式だと説明しています。シートの作成のてびきには、空欄があればそこが自社のウイークポイントになると書かれています。

宇土市(熊本県)の商談マニュアルは、商談資料をA4で2〜3枚にまとめる構成を勧めています。順番は基本情報、商品概要、スペック、販売実績、取引条件の5つ。商談は20〜40分で進むことが多く、資料が長いと伝わりません。

農業経営体のどれくらいがスーパーや外食に直接出荷しているか

2020年農林業センサスでは、農産物の販売があった978,210経営体のうち、販売金額1位の出荷先が小売業者の経営体は51,405でした。食品製造業・外食産業は15,610経営体、消費者への直接販売は87,718経営体です。

構成比は、小売業者が5.3%、食品製造業・外食産業が1.6%、消費者への直接販売が9.0%でした。農協は64.3%を占め、今も販売先の中心にあります。農林水産省の概要によると、小売業者の割合は5年前から0.5ポイント上昇しました。小売や外食へ直接売る経営体は少数でも、増える方向にあります。

直接取引では、バイヤーが生産者の顔も畑も見ないまま、紙の情報で取引の可否を判断します。提案書の出来が商談の可否を左右するため、書く項目を先に決めておくと準備が早く済みます。販売先ごとの経営体数の詳しい読み方はhttps://smartagri.jp/p/10464/にまとめています。

バイヤーは提案書のどこを見るのか

日本政策金融公庫が開いた商談会「アグリフードEXPO東京2025」の来場者アンケートでは、取引先に求める条件の1位が安定生産・安定供給で、65%でした。続いて品質管理(トレーサビリティ等)が51%、柔軟な対応が48%です。複数回答の結果です。

商品を買うときに重視する点は、独自性・ストーリー性が60%、食味・食感・香りが57%、価格が51%でした。味やこだわりの説明に加えて、切らさず出せる時期と量、品質をどう管理しているかを書くと、バイヤーの関心に沿う提案書になります。佐賀県の商談会向け資料も、取引価格、出荷可能期間、出荷可能数量、出荷形態、最低発注ロット、日持ち、セールスポイントを事前に整理しておくよう勧めています。

提案書1枚に入れる項目と記入例

提案書に入れる項目は、ご提案の内容、生産者の紹介、商品、出荷できる時期と量、取引条件、品質管理と実績、今後の相談の7つです。ミノリスの商品提案書テンプレートもこの順に並べています。

無料テンプレート:商品提案書・営業資料(農産物)

宛名から連絡先まで7つの見出しと、品目と月の出荷カレンダー、記入例つきです。Word/PDF、登録不要。

商品提案書・営業資料(農産物)をダウンロード(登録不要)

見出し 書くこと 記入例(サンプル)
宛名・件名 提案先、提案日、提案者、タイトル 冬の焼きいも用さつまいものご提案
1 ご提案の内容 ひとことで伝える売り、何をいつどれだけどの荷姿で、提案先にとっての利点 11月〜3月にMサイズ中心の10kg箱を週20箱
2 生産者のご紹介 所在地、栽培面積、人数、代表者のメッセージ 〇〇県〇〇市、〇ha、家族3人と通年雇用2人
3 商品について 品目・品種、栽培方法、味と食べ方、品質のデータ 温度管理した貯蔵庫で寝かせてから出荷
4 出荷できる時期と量 時期、量とぶれ幅、荷姿、出荷カレンダー 月に約2t、天候で前後3割ほど変わる
5 取引条件 価格(税抜)、最小ロット、発注の締切、納品方法、支払い 5箱から、3日前の正午まで
6 品質管理と実績 農薬・肥料の記録、保険、認証、取引実績 使用記録あり、PL保険加入
7 販売のお手伝いと今後のご相談 サンプル、産地見学、ほかの品目、署名と連絡先 サンプルは〇月からお送りできます

テンプレートの最後のページは、送る前に確かめる表示・広告の確認表です。このページは提案先に渡さず、自分の点検に使います。品目と月の出荷カレンダーは「4 出荷できる時期と量」の中に入っています。

ご提案の内容は冒頭で言い切る

冒頭の「ご提案の内容」には、何を、いつ、どれだけ、どの荷姿で引き取ってほしいかを1段落で書きます。バイヤーはこの段落だけで商談を続けるかどうかを決めることがあります。サンプルの記入例でいえば、11月から3月に、Mサイズ中心の10kg箱を週20箱という書き方です。

他産地との違いを栽培の事実で書く

FCPのてびきは、生椎茸のように広く知られた食材では、他産地や他社の同じ食材との違いを強調するよう助言しています。栽培や製造の違い、原材料のこだわりを書くと価値が上がるという内容です。「おいしい」とだけ書かず、貯蔵の温度や期間、収穫の時期など、実際にしていることを書きます。

数字には測り方を添える

糖度や日持ちの数字は、いつ、どの方法で、何個測った平均かを添えます。良かった1回の値は使いません。量も同じで、無理なく出せる量を書き、天候で何割変わるかを併記します。提案書に書いた量は、バイヤーから約束として受け取られるためです。

空欄は確認中と書いて商談までに埋める

すぐに書けない項目は「確認中」と書き、商談までに調べて埋めます。FCPのてびきは、空欄をバイヤーから見たウイークポイントとして扱っています。写真は、一番おいしそうに見える1枚、畑や作業の様子、大きさが分かる比較物つきの1枚をそろえてください。FCPのてびきも、スケールを一緒に写すと大きさが伝わると説明しています。

スーパー、飲食店、加工業者で書き分ける点は何か

組み立ては共通で、「提案先にとっての利点」と「荷姿」を相手に合わせて書き換えます。相手の使い方を先に聞いてから書くと、的外れな提案を避けられます。

相手 利点として書くこと 荷姿・条件で書くこと
スーパー 売場で映える大きさ、売り出し時期に合わせた出荷、産地や栽培のストーリー パック詰めかバラか、1ケースの入数、売り出し時期より前の提案
飲食店 メニューでの使い方、味や食感、少量でも届けられること 少量の配送、週ごとの出荷量、納品の曜日
加工業者 大きさのばらつきを許せる規格、年間を通じた供給量 コンテナ単位の納品、規格外品の扱い、価格の決め方

宇土市のマニュアルは、季節商品を売り出したい時期の6か月前、年末のギフトは6〜8月ごろに提案するのが一般的としています。スーパーには、出荷カレンダーを先に作って、相手の売り出し時期と重ねて見せると話が進みます。

米国の飲食店向けの例もあります。ペンシルベニア州立大学エクステンションの資料では、シェフを訪ねる時間帯は昼と夕方の間の2〜4時ごろが適するとされています。シェフが重視する点は鮮度、品質、価格、品質の安定、供給の確実さ、配送です。標準の荷姿を求める店が多く、第三者機関のGAP認証や生産物賠償責任保険を求める店もあるそうです。荷姿と安全の証明の事前準備は、日本の飲食店にも当てはまります。

商品規格書と商品提案書はどう使い分けるか

商品提案書は取引を始めるための売り込み資料で、商品規格書は取引で守る規格を書く資料です。提案書に等級や入数、箱の寸法まで詰め込むと読まれなくなるため、細かい規格は規格書に分けて渡します。

無料テンプレート:商品規格書(農産物)

規格、入数、荷姿、出荷時期、品質管理を1枚にまとめ、品目別の規格一覧もつけました。Excel/PDF、登録不要。

商品規格書(農産物)をダウンロード(登録不要)

ミノリスの商品規格書テンプレートは、FCPシートの考え方をもとに生鮮の農産物向けに組み直したものです。主な欄は次のとおりです。

  • 商品名(品目・品種)、産地
  • 規格(等級・階級)、内容量・入数、荷姿・ケースサイズ・重量
  • 保存温度帯・日持ちの目安、出荷できる時期と数量・最小ロット
  • 発注の締切、価格(税抜)・税率、認証・品質管理、賠償責任保険

Excelには記入用と記入例のシートがあり、2枚目は複数の品目をまとめて伝える品目別の規格一覧です。等級を「秀・L」のように名前だけで書くと、相手の産地の基準と同じとは限りません。1個の重さや長さなど、数字で基準を添えます。日持ちは自分で保存して確かめた日数だけを書き、未確認なら「確認中」とします。

商品規格書の作成は法令で義務づけられておらず、取引先が指定の様式を持つ場合はそちらを使います。規格書の内容は取引の約束として扱われるため、実際より良く見せる書き方は禁物です。価格の条件は見積書で示し、書き方は農産物の見積書の書き方にまとめています。

価格表やメニュー表を週替わりで出すにはどうするか

取引が始まったあとは、毎週同じ様式のメニュー表を取引先に送り、注文数を書き込んで返してもらうと、電話で1件ずつ聞く手間が減ります。提案書は最初に1回出す資料で、メニュー表は毎週送る資料です。

無料テンプレート:受注用のメニュー表(週替わり価格表)

今週の品目と単価を知らせ、取引先が注文数を書いて返せます。Excel/PDF、登録不要。

受注用のメニュー表(週替わり価格表)をダウンロード(登録不要)

ミノリスの受注用メニュー表テンプレートには3枚のシートがあります。1枚目の「今週のメニュー表・ご注文書」は毎週作って送る表で、取引先が注文数とお届け希望日を書いて返します。2枚目の「取引条件」は、締め切り、配達、送料、単価の単位、欠品のときの連絡を書く欄です。3枚目の「出荷カレンダー」は、出せる品目と規格、単価、出せる月を一覧にしたものです。毎週のメニュー表は、このカレンダーから写して作ります。

表の上には宛先、対象期間、注文の締め切り、お届け方法、発行者、登録番号、ご注文者の欄があります。品目の表は、品目・品種、規格・荷姿(入数)、産地、単位、単価(税抜)、税率、単価(税込)、最小ロット、今週の出荷、ご注文数・お届け希望日、小計、備考で構成されています。税込の単価と小計はExcelで自動計算されます。

週替わりの運用では、次の4点が行き違いを減らします

  • 袋の単価と箱の単価を混ぜず、単位と入数を必ず書く
  • 荷姿で単価が変わる品目は、行を分ける
  • 出せない品目は消さず、1〜2週は「×」で残す
  • 数量限定の「△」の品目は、備考に上限を書く

締め切りは曜日に加えて時刻まで書きます。「木曜締め」だけでは、朝か夜かで行き違いが起きるためです。単価を取引先ごとに変えている場合は、その取引先の単価に直した表を送ってください。直売所の値札や一般のお客様向けのチラシに使う場合は、税込の価格表示が必要になるため、事業者あてのメニュー表とは分けて作ります。値札の書き方はhttps://smartagri.jp/p/10468/で説明しています。

持ち込みから取引開始までの流れはどうなるか

提案書を渡してから取引が始まるまでの流れは、提案書とサンプルの送付、規格書の確認、見積書の提示、契約書の取り交わしの順です。商談会の場合も、商談後の対応が成約を左右します。

佐賀県の資料は、商談会で約束したサンプル提供、見積もり、資料送付を正確かつ速やかに行うよう求めています。同資料は、買い取りか委託販売か、支払い期日はいつか、宅配便なら届け先地域別の到着時間帯や送料、クール便か常温かを、事前に調べておくことも勧めています。

  1. 商談を申し込む。提案書から商品、会社概要、写真の3点を抜き出した1枚を添えると読まれやすくなります
  2. 商談で提案書を渡し、取引のしかたと希望の条件を聞く
  3. サンプルと商品規格書を送る
  4. 見積書で価格と条件を示す。書き方は農産物の見積書の書き方を参照してください
  5. 条件に合意したら、契約書を取り交わす。スーパーとの取引ではスーパーとの取引契約書の書き方が使えます
  6. 取引が始まったら、出荷伝票と納品書を付けて納品する。出荷伝票は出荷伝票の書き方、納品書は直売所の納品書テンプレートが参考になります
  7. 毎週の品目案内にメニュー表を使う

販路を広げる方法の全般は農業の販路開拓にまとめました。

テンプレートの使い方は

最初に商品提案書を記入し、そこから規格書とメニュー表へ必要な項目を移すと、同じ内容を3回調べ直さずに済みます。手順は次のとおりです。

  1. 品目と月の出荷カレンダーを先に作る。◎は多く出せる時期、○は出せる時期、△は少しだけ出せる時期、空欄は出せない時期にします
  2. 商品提案書の1から7を記入する。分からない欄は「確認中」にして、商談までに埋める
  3. 最後のページの表示・広告の確認表で、書いた言葉を点検する
  4. 取引が決まったら、品目ごとの規格を商品規格書にまとめる
  5. 毎週の案内は、メニュー表に出荷カレンダーから品目と単価を写して作る

表示の確認表では、「無農薬」「有機」「日本一」のような言葉や糖度などの数字を、送る前に確かめる項目として扱います。提案書の言葉は、提案先の売場のPOPや通販の説明文にそのまま使われることがあるためです。

ミノリスのテンプレートは自由に書き換えられます。取引先やJAに指定の様式があれば、そちらが優先です。

よくある質問

パワーポイントで作ったほうがよいですか?

どちらでも使えます。宇土市のマニュアルは、商談後もバイヤーの手元に残る資料を持参するよう勧めています。写真を多く入れたいなら、Wordの提案書を下書きにしてスライドを作るのも手です。

商談会でFCPシートの提出を求められたらどうしますか?

主催者から指定があれば、FCP展示会・商談会シートの様式で提出します。農林水産省はこのシートをExcel形式で配布しています。提案書の商品の特徴や利用シーンは、そのまま写せるはずです。

初対面の飲食店には、いきなり提案書を持ち込んでよいですか?

ペンシルベニア州立大学エクステンションの資料は、事前に電話で約束を取るか、サンプルを持って訪ね、シェフの5分を頼む方法を紹介しています。日本では、訪問前にメールで1枚版を送り、提案書は面会の場で渡す進め方もあります。

取引先ごとに単価が違うときは、提案書の価格欄をどうしますか?

提案書には価格の目安と条件の考え方を書き、取引先ごとの単価は見積書やメニュー表で渡す方法があります。メニュー表は取引先ごとに作り分け、標準単価との違いを控えておくと、請求のときに迷いません。

まとめ

農産物の商品提案書は、ご提案の内容、生産者、商品、出荷できる時期と量、取引条件、品質管理、今後の相談の7つを、A4で2〜3枚にまとめて作ります。バイヤーは安定供給と品質管理を重く見るため、出荷カレンダーと測り方つきの数字を入れます。細かい規格は商品規格書に、毎週の品目と単価はメニュー表に分けると、提案書は短く保てます。ミノリスの無料テンプレートを使うと、3つの書類を同じ項目で作れます。

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