サブスクリプション型の農業サービスで、3つのスマート小型ロボットにより農作業を自動化するSmall Robot Companyについて解説

事業概要

Small Robot Companyは、農作物の栽培を小型ロボットによって自動化することをミッションとして2017年にイギリスを拠点に設立された農業ベンチャー企業です。従業員数は10〜50人と推定されています。

同社の3つの小型ロボット、トム、ディック、ハリーがそれぞれの機能で作物の栽培をサポートします。Small Robot Companyの小型ロボットは、作物を自律的に監視及び処理し、正確かつスピード感のある作業を可能にします。小型ロボットを利用することで、農業に必要とされるエネルギーを90%削減することができます

同社では、サービスとして小型ロボットを提供しています。このサービスは農家の作業量を減らすと同時に、土壌や作物の育成が改善されて収穫量が増え、燃料と化学薬品のコストが削減されるメリットがあります。

Youtube動画:https://youtu.be/YF_QrKTDV2M

ビジネスモデル:Farming as a Service(FaaS)

Small Robot Companyは、サービスとしてロボットを提供するビジネスモデル(FaaS)を展開しています。そのため、利用者は多額投資のリスクを負うことなく、ロボット農業を利用することができます。料金は1ヘクタールあたりのサブスクリプション料金を支払う形になっています。

同社のサービスは、ロボットをオペレーティングシステムとリンクさせ、作物に関する情報を収集し、農場をデジタル化することから始まります。次に、収集した情報を、世界をリードする農学者やAHDB(イギリス政府の農業および園芸開発委員会)からのデータとアドバイスを利用して自動的に分析します。分析によって、各作物に次に何が起こるかを把握し、ロボットが実行する作業について指示を出します。最終的には、作物を植える時期、作物の育成、収穫まで全ての時期を自動化することが可能です。

サービスでのロボットの使われ方として、まず農場にトムを配置し、作物や土壌、雑草の状況を自律的に監視します。その情報に合わせて、他のロボットであるディックとハリーが栄養を与えたり、種を撒いたり、除草を行ったりします。ロボットは必要な時に現れ、不要になれば担当者が持ち去ります。

テクノロジー:3つの小型ロボットで農作業を自動化する

Small Robot Companyでは現在まで使われてきた大型トラクターを、軽量かつ高性能な小型ロボットで置き換えることができる技術を開発しています。トム、ディック、ハリーと名付けられた3つの小型ロボットと、AIの頭脳であるウィルマによって農作物を自律的に植え、監視し、栽培・処理を行うことができます。

モニタンリングとマッピングのロボット「トム」

トムは、1日あたり20ヘクタールをカバーできる監視スキャンロボットです。現在トムの自律化に取り組んでおり、将来的にはバッテリー充電とAIアルゴリズムを備えた小屋に格納できるようになると予測しています。

除草ロボットの「ディック」

ディックは自律的な除草ロボットで、雑草ザッピング技術(電気での除草)を搭載した化学物質を使わない除草を実現します。ディックの活躍によって、作物の収穫量が増加すると同時に、化学物質の使用量も抑えることができます。現在は試験運転中で、2021年に商用化する予定です。

ディック(動画): https://vimeo.com/377589589

ハリーは種まきロボットで、小型ながら正確な深さにタネをまくことができます。

ウィルマはAIの頭脳であり、トムから送られた正確で最新の情報を基に、ディックの農作業への指示に変換します。現場から入ってくるデータを見て、農学、土壌学、市場の状況を考慮した意思決定を行うことができます。

ウィルマ(動画):https://vimeo.com/380729833

今後の計画

Small Robot Companyは、2020年2月にクラウドファンディングキャンペーンによって210万ポンドを調達しました。同社は小型ロボットの商業利用に向けて準備を行なっており、この資金を利用してディックの農場試験を開始し、トムの製造を行う予定です。

コメント

大型トラクターに代わる小型のスマートロボットをサービスとして提供するSmall Robot Companyの画期的な農業サービスは、今後さらに普及していくことが期待されます。

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