塩害と pH 不良は、日本国内でも見えにくいかたちで広がっている土壌ストレスです。施設栽培の長年使用ハウスでは化学肥料の塩基が累積して EC が上昇し、海岸沿いや干拓地では潮風と塩水侵入で塩類集積が進みます。一方で、化学肥料の長期使用で酸性化した茶園・果樹園や、石灰質母材のアルカリ土壌では、pH のズレが微量要素の可給性を奪い、収量を年々削っていきます。
FAO は世界の灌漑農地の約 20% が塩害の影響を受けており、毎年 150 万 ha が深刻な塩害で生産から脱落していると推計しています。日本でも津波被災地の復旧、施設栽培の連作障害、化成肥料偏重の影響で同じ問題が顕在化しています。
排塩・客土・石灰投入・有機物投入といった土壌改良の王道は今後も必要ですが、それだけでは追いつかない速度で土壌は劣化します。バイオスティミュラントは「ストレスを受けても収量を守る」緩衝装置として、排塩工事と並行して効かせるべき第二の柱です。
本記事は H16 バイオスティミュラント 20 本シリーズの C-15、ストレス対策軸の第 2 弾です。塩害と pH 不良の作用機序を整理し、5 カテゴリ(タンパク質加水分解物・海藻抽出物・微生物・腐植酸/フルボ酸・ケイ酸/オスモライト)の科学的エビデンスと、圃場タイプ別・生育ステージ別の処方マトリクスを設計します。
塩害ストレスのメカニズム — 浸透ストレスとイオン毒性の二段構え
塩害(NaCl 主体)が作物にダメージを与える経路は、大きく 2 段階に分かれます。
第 1 段階:浸透ストレス(即時的)
土壌溶液の塩濃度が上がると土壌水ポテンシャルが低下し、作物は水を吸えなくなります。これは乾燥ストレスと同じメカニズムで、塩害圃場の作物が「水はあるのにしおれる」現象の正体です。気孔が閉じて光合成が止まり、葉温が上がり、ROS(活性酸素種)が蓄積し始めます。
第 2 段階:イオン毒性(蓄積的)
Na+ と Cl- が細胞内に蓄積すると、K+ との競合で K+/Na+ 比が崩れ、酵素反応・タンパク質合成・気孔開閉が阻害されます。葉の縁から枯れ込む「葉縁壊死」や、生殖成長期の花芽形成不全・落花落果は、このイオン毒性の典型症状です。Mullany 2024(SSRN)のグローバルメタアナリシスでも、塩ストレスは中度で平均 -25%、重度で -50% 以上の減収を引き起こします。
さらに二次的影響として、Ca2+/Na+ 比の崩壊によるカルシウム欠乏(果実の尻腐れ・葉先のチップバーン)、ホルモンバランスの乱れ(ABA 過剰・サイトカイニン減少)、土壌微生物相の単純化が進みます。塩害は「単なる塩濃度の問題」ではなく、作物の生理・土壌の生物多様性・水分管理が連鎖的に崩れる複合ストレスです。
pH 不良ストレスのメカニズム — 酸性化とアルカリ化の双方が微量要素を奪う
pH の偏りは、それ自体が直接ストレスというより「他のストレスを誘発する基盤要因」です。
強酸性土壌(pH < 5.5)
- アルミニウム(Al)・マンガン(Mn)毒性:可溶化した Al3+ が根の伸長を止め、Mn 過剰が葉緑体を傷害する
- カルシウム・マグネシウム・リン欠乏:陽イオンが流亡しやすく、リンは Al と結合して固定される
- 窒素固定菌・菌根菌の活性低下:pH 5.5 を下回ると共生効率が急落する
火山灰土・茶園・長年化成肥料偏重の畑作圃場で頻発する型です。
アルカリ土壌(pH > 8.0)
- 鉄・マンガン・亜鉛・銅欠乏:高 pH で水酸化物として沈殿し可給化されず、典型的にはクロロシス(葉脈間黄化)として現れる
- リン固定:Ca と結合してリン酸カルシウムとして固定される
- HCO3- 過剰:根の鉄吸収を阻害する
石灰質母材の畑、灌漑水の重炭酸塩濃度が高い圃場、温室で石灰過剰投入された土壌で起きやすい型です。
塩アルカリ土壌(塩 + 高 pH の二重ストレス)
世界の塩害農地の多くは、Na+ 集積と高 pH(炭酸塩集積)が同時に進む「塩アルカリ土壌」です。日本でも干拓地や石灰過剰の施設栽培でこのパターンが見られます。浸透ストレス・イオン毒性・微量要素欠乏が同時に作用するため、最も介入難度が高い土壌タイプです。
5 カテゴリの作用機序とエビデンス
① タンパク質加水分解物(PH)— 浸透調整と Cl- 蓄積抑制
動物性または植物性タンパク質を酵素加水分解で短鎖ペプチド・アミノ酸に分解した液剤です。塩ストレス下でのエビデンスは特に充実しています。
- MDPI Horticulturae 2025(11/9/1108)「Protein Hydrolysates Modulate Quality Traits of Tomato Fruit Under Salt Stress」:PH が果実の糖代謝関連遺伝子(インベルターゼ・スクロース合成酵素)の発現を調節し、塩ストレス下でも糖度と硬度を維持
- Frontiers Plant Science 2023(fpls.2023.1077140)「Different vegetal protein hydrolysates distinctively alleviate salinity stress in vegetable crops」:トマト・レタスで PH 処理が葉の Cl- 蓄積を低減し、抗酸化活性と総フェノール量を増加
- MDPI Agronomy 2022(12/4/809)「Enhancing Irrigation Salinity Stress Tolerance」:Precision Engineered PH と A. nodosum 抽出物の併用で灌漑塩ストレストマトの収量と品質を改善
- Frontiers Plant Science 2024(fpls.2024.1357316):PH 処理トマトで乾燥回復が +62〜75%、ジペプチド Leu-Phe が 14.8 倍蓄積、ストレス記憶を残す代謝リモデリングが起きる
PH のキー作用は、外因性アミノ酸が浸透調整物質の前駆体として働き、内因性のプロリン・グリシンベタイン合成を促進する点にあります。葉面散布で「予防」と「ストレス中の即効補修」の両方に使えます。
② 海藻抽出物(Ascophyllum nodosum 中心)— K+/Na+ 比改善と窒素代謝リモデリング
褐藻 Ascophyllum nodosum や Ecklonia maxima、Sargassum 等から抽出したバイオスティミュラント。塩ストレス下の作用はアルギン酸・マンニトール・植物ホルモン様物質・ベタイン類が複合的に働きます。
- MDPI Plants 2021(10/6/1044)「Ascophyllum nodosum Based Extracts Counteract Salinity Stress in Tomato by Remodeling Leaf Nitrogen Metabolism」:A. nodosum 処理が塩ストレストマトの葉でグルタミン酸合成酵素・グルタミンシンセターゼ・硝酸還元酵素の発現を再配分し、アミノ酸代謝が浸透調整・イオン恒常性・ROS スカベンジングを協調制御
- Taylor & Francis 2023「Ascophyllum nodosum-based biostimulant enhances salt stress tolerance in rice」:水稲の塩耐性が生理・生化学・代謝レベルで改善、K+/Na+ 比と Ca2+/Na+ 比が有意に向上
- PHYTON 2024(94/4)「Enhancing Salt Stress Tolerance in Portulaca oleracea Using Ascophyllum nodosum Biostimulant」:イオン輸送調節で Na+ 毒性を緩和、EC レベルから推定される細胞内 K+/Na+ バランスが改善
- Frontiers Marine Science 2024(fmars.2024.1457500)「Seaweed extracts: enhancing plant resilience to biotic and abiotic stresses」総説:ラズベリーで +42%、イチゴで +33%、トマトで +70% の収量改善事例
海藻抽出物のキー作用は、Na+ 排出ポンプ(SOS1)と K+ 取込チャネル(AKT1・HKT1)の発現調節を通じた K+/Na+ 比の維持です。葉面散布と土壌灌注の両方で効きますが、塩ストレス対策では「予防的に隔週散布」が主流です。
③ 微生物(halotolerant PGPR + AMF)— Na+ 吸収抑制と根圏改善
塩耐性を持つ植物成長促進細菌(PGPR)とアーバスキュラー菌根菌(AMF)は、塩害圃場で特に伸びるカテゴリです。両者は補完的に働きます。
- Wiley J. Integrative Plant Biology 2024「Halotolerant Bacillus sp. strain RA coordinates myo-inositol metabolism to confer salt tolerance to tomato」:halotolerant Bacillus が myo-イノシトール代謝を介してトマトの塩耐性を獲得
- ScienceDirect 2024(S0304423824007787)「Novel halotolerant PGPR strains alleviate salt stress」:トマトで抗酸化酵素活性(CAT・SOD)と関連遺伝子発現を増強
- PMC 11085664(2024)「Halotolerant Endophytic Bacteria Regulate Growth and Field Performance of Two Durum Wheat Genotypes」:Pseudomonas jordanii G34 と Oceanobacillus jordanicus GSFE11 が durum wheat 圃場で塩耐性遺伝子型に有意な収量改善
- PMC 7755987(2021)「Plant Salinity Tolerance Conferred by AMF: A Meta-Analysis」:AMF 接種で Na+ 吸収が有意に減少、P・N・K 吸収が増加、SOD・CAT・POD・APX 活性が増強。地上部・地下部バイオマスとも有意増
- Springer Plant and Soil 2025「Leveraging microorganisms and biostimulants: mitigating salinity stress in crops」:PGPR + AMF + バイオスティミュラント複合戦略が単独より高い効果
halotolerant PGPR の特徴は「塩濃度 100〜200 mM NaCl 環境でも生存・コロニー形成する」点で、通常の Bacillus subtilis 系統よりも塩害圃場での定着率が高い。一方 AMF は宿主根に共生して Na+ を菌糸内に隔離する「フィルター」として働きます。両者の同時接種は移植時の根定着段階で最も効果的です。
④ 腐植酸・フルボ酸 — pH 緩衝と微量要素キレート可給化
腐植物質は pH 不良対策で最も効果が安定しているカテゴリです。pH を直接動かすのではなく、土壌の緩衝能を高めて pH 変動を吸収し、同時に Fe・Mn・Zn・Cu を有機キレート化して可給性を回復させます。
- MDPI Agronomy 2024(14/12/2763)「The Impact of Humic Acid Fertilizers on Crop Yield and NUE: A Meta-Analysis」:平均収量 +12%、NUE +27%、N 吸収 +17%。最適効果が出るのは pH 6〜8(つまり pH 不良圃場の改善後の維持に効く)
- PMC 12735171(2025)「Synergistic Application of Humic Acid and Microbial Fertilizers Improve Soil Quality… in Coastal Saline-Alkali Soils」:沿岸塩アルカリ土壌で小麦収量が腐植酸単独で +40.94〜55.64% 改善
- PMC 10941484(2024)「Applications of humic and fulvic acid under saline soil conditions to improve growth and yield in barley」:大麦でハミック・フルボ酸両方が塩条件下で生育・収量を有意改善、ハミック酸 > フルボ酸
キーポイントは「酸性土壌・アルカリ土壌のどちらにも効く」という pH 緩衝作用で、ハミック酸はアルカリ性条件で可溶化するため特に高 pH 土壌の改良に向いています。塩アルカリ土壌での実証データが豊富で、コスト対効果が高い選択肢です。
⑤ ケイ酸(Si)— 根アポプラスト障壁による Na+/Cl- 排除
ケイ酸は塩ストレス対策で「物理的・生化学的の両面で効く」希少なカテゴリです。
- ScienceDirect 2025(S2667064X25000909)「Silicon-driven approaches to salinity stress tolerance」総説:Si が根端でアポプラスト障壁を形成し、Na+ と Cl- の取込・移動を抑制。同時に細胞膜の H+-ATPase と液胞膜の H+-PPase 活性化で Na+ 毒性を緩和
- ScienceDirect 2025「Silicon-mediated drought stress tolerance in wheat」:Si の土壌施用・葉面散布双方が小麦の塩・乾燥耐性を改善
- Frontiers Microbiology 2022(fmicb.2022.1100232)「Synergic mitigation of saline-alkaline stress in wheat plant by silicon and Enterobacter sp. FN0603」:Si + PGPR の併用で塩アルカリ土壌の小麦の有意な改善、分げつ数が単独施用より増加
- 水稲メタアナリシス(ScienceDirect 2024):Si 投入で水稲収量が安定的に改善、塩害圃場では特に効果大
Si は水稲・コムギ・サトウキビ等のイネ科で特に集積能が高く、塩アルカリ土壌での効果が大きいことが分かっています。モノケイ酸(オルトケイ酸)として葉面散布する Plant Vitales 製品や、土壌施用のケイカル系資材、コロイダルシリカ系の Dune(Impello)等が利用されています。
補助:オスモライト系(グリシンベタイン・プロリン)— 浸透調節の即効補修
5 カテゴリの枠外ですが、塩ストレス対策では PH やケイ酸と組み合わせて使われるオスモライト系も重要です。
- PeerJ 2024(10.7717/peerj.18993)「Synergistic effects of foliar applied glycine betaine and proline in enhancing rice yield and stress resilience under salinity conditions」:水稲で 30 mM グリシンベタイン + 30 mM プロリン散布が単独より高い効果、粒重が 6.17〜6.64 t/ha に到達
- Pubmed 39291407(2024)「Glycine betaine: A multifaceted protectant against salt stress in Indian mustard」:GB が Na+ 吸収を制限し、K+/Na+ 比を維持、ROS スカベンジングと浸透調節を同時に提供
- ScienceDirect 2020(S0147651320305716)「Glycine betaine counters salinity stress… in common bean」:GB 25 mM 葉面散布で 50 mM・100 mM NaCl 条件下の莢収量が +29.8% と +59.4% 改善
オスモライト系は単独製品としても流通していますが、Megafol(Valagro / Syngenta Biologicals)や Hicure のような複合バイオスティミュラントに配合されているケースも多く、PH 系を選ぶと自動的にカバーできる場合があります。
圃場タイプ別の処方マトリクス
塩害・pH 不良圃場は単一タイプではないので、圃場の状態を見極めて処方を組み立てる必要があります。
施設栽培の塩類集積(EC 上昇型)
- 典型症状:EC 2.0 mS/cm 超、土壌表面の白い析出、葉縁壊死、果実の小型化
- 推奨処方:halotolerant PGPR(Serenade ASO・Taegro 2)を移植時に灌注 → PH(Megafol・Trainer・Hicure)を 7〜10 日おき葉面散布 → 海藻抽出物(Acadian・Kelpak)を週 1 回灌注 → 作付け間の客土・湛水排塩と並行
- 判断軸:EC を毎週計測。1.5 mS/cm を超えたら介入頻度を上げる
海岸沿い・干拓地(潮風塩害型)
- 典型症状:強風後の葉先枯れ、塩水侵入による作土の Na+ 蓄積
- 推奨処方:Si(Plant Vitales Ortho Silicic Acid・Dune)を葉面散布で物理障壁強化 → 海藻抽出物で K+/Na+ 比維持 → AMF(MycoApply・セラビッグα)を作付け初期に混和して根圏フィルター強化 → 防風林・防塩ネットと並行
- 判断軸:作土の EC・Na+ 濃度を年 2 回計測。台風シーズン前後で予防散布
連作障害圃場(化学肥料 EC 累積型)
- 典型症状:同じ作物を 3 年以上連作した畑で生育不良、根の発達不良、特定の微量要素欠乏
- 推奨処方:腐植酸・フルボ酸(PowHumus・Humega・Diamond Grow)を土壌施用で緩衝能回復 → トリコデルマ(Trianum-P・RootShield)と AMF を移植時混和 → PH と海藻抽出物を生育期に葉面散布 → クリーニングクロップ(ソルゴー等)の輪作と並行
- 判断軸:年 1 回の土壌診断で CEC・腐植含量・pH・EC・微量要素を確認
強酸性土壌(火山灰土・茶園型)
- 典型症状:pH 4.5〜5.5、Al 過剰、Ca・Mg 欠乏、根の伸長不良
- 推奨処方:石灰・苦土石灰で pH 5.8〜6.2 に矯正後、腐植酸・フルボ酸で緩衝能維持 → halotolerant PGPR とトリコデルマで微生物相再構築 → 海藻抽出物で K・Mg 吸収を補助 → カバークロップ(ヘアリーベッチ・クローバー)で根圏微生物を持続供給
- 判断軸:pH と交換性塩基(Ca・Mg・K)バランス。BS 60% 以上を目標
アルカリ土壌(石灰質型)
- 典型症状:pH 8.0〜8.5、葉脈間黄化(クロロシス)、Fe・Mn・Zn・Cu 欠乏、リン固定
- 推奨処方:フルボ酸(特に低分子フルボ酸)で微量要素キレート化 → 海藻抽出物の葉面散布で即効的微量要素補給 → PH(特にアミノ酸キレート機能) → 硫黄資材で pH 微調整 → 鉄キレート(EDDHA-Fe)を補助投入
- 判断軸:SPAD 値で葉緑素濃度モニタリング、土壌の活性炭酸石灰含量
塩アルカリ土壌(最難関)
- 典型症状:Na+ 集積 + pH 8.5 超、ESP(交換性ナトリウム率)15% 以上、土壌物理性も劣化(分散・透水性低下)
- 推奨処方:石膏(CaSO4)投入で Na+ 置換 + 排塩 → 腐植酸(特にハミック酸)大量投入で緩衝能と物理性回復 → halotolerant PGPR + AMF で微生物相構築 → Si で Na+ 排除強化 → 海藻 + PH の葉面散布で植物側の耐性強化
- 判断軸:ESP・SAR(ナトリウム吸着比)・EC・pH の 4 指標を年 2 回モニタリング。3 年計画で改良
生育ステージ別処方
圃場タイプによらず、生育ステージごとに効きやすいカテゴリは異なります。塩害・pH 不良圃場では「予防 → 補修」の二段構えで使い分けます。
育苗・移植期
- halotolerant PGPR(Serenade ASO・Taegro 2・インプレッション)を育苗培土に混和 → 根定着段階で塩耐性を獲得
- AMF(MycoApply・ROOTGROW・セラビッグα)を移植穴に施用 → Na+ フィルター機能を初期に確立
- PH を葉面散布 → 移植ショック緩和とアミノ酸プール充実
栄養成長期
- 腐植酸・フルボ酸を土壌灌注 → pH 緩衝と微量要素可給化を継続
- 海藻抽出物を 2〜3 週間隔で散布 → K+/Na+ 比維持の予防
- Si を葉面散布(特にイネ科) → アポプラスト障壁強化
ストレスイベント前(予報・季節要因)
- 海藻抽出物 + Si の葉面散布 → 細胞壁と気孔の予備強化
- PH の予防散布 → アミノ酸プール充実で即応性確保
ストレスイベント中・直後
- PH の即効葉面散布(Megafol・Trainer・Hicure・Quantis) → 浸透調節物質前駆体を即時供給
- グリシンベタイン・プロリン系オスモライトの葉面散布 → 細胞内浸透調節の補修
- 海藻抽出物 → 抗酸化系の再活性化
開花登熟期
- 海藻 + AMF + Ca 系 PH → 花芽形成・受精・登熟期の品質維持
- 果実品質維持型 PH(Stoller YieldOn 等) → 糖度・硬度・色味の安定化
主要製品マップ
タンパク質加水分解物(PH)
- Megafol(Syngenta Biologicals / Valagro)— 動物性 PH の代表格、塩・乾燥両対応の汎用
- Trainer(Hello Nature / Italpollina 系)— 植物性 PH、有機栽培対応
- Hicure(Syngenta Biologicals / Valagro)— アミノ酸高濃度、即効性重視
- Quantis(Syngenta Biologicals)— 有機炭素・カリウム・カルシウム・糖・アミノ酸複合、塩・熱・乾燥の abiotic stress 全般対応、EU FPR 認証バイオスティミュラント
- YieldOn(Syngenta Biologicals)— 開花登熟期の品質維持型
- Atriva 500・Siapton(Hello Nature)— 葉面散布の補修用
海藻抽出物
- Acadian Soluble Extract Powder(Acadian Plant Health)— A. nodosum 粉末、灌注・葉面両対応
- Kelpak(Kelp Products SA)— Ecklonia maxima、ホルモン様物質豊富
- Stella Maris(Acadian)— 高濃度液剤
- Maxicrop(Maxicrop USA)— 一般栽培向け汎用
微生物(halotolerant PGPR + AMF)
- Serenade ASO(Bayer Crop Science)— Bacillus subtilis QST 713、海外で塩害圃場での実績
- Taegro 2(Syngenta / Novozymes)— Bacillus subtilis FZB24、土壌灌注で根定着
- Subtilex NG(BioWorks)— Bacillus subtilis MBI 600
- ボトキラー水和剤(出光興産)— Bacillus subtilis HAI-0404、日本登録品
- インプレッション水和剤(クミアイ化学)— Bacillus subtilis IK-1080、日本登録品
- MycoApply(Mycorrhizal Applications)— 4 種 AMF 混合、海岸沿い圃場の根圏フィルター
- セラビッグα(出光興産)— AMF + Bacillus、日本農家向け汎用
- ROOTGROW(PlantWorks UK)— AMF 粉末・顆粒
腐植酸・フルボ酸
- PowHumus(Humintech)— 高純度ハミック酸粉末、塩アルカリ土壌の改良
- Humega(Huma)— 液剤、灌注容易
- Diamond Grow(Humic Growth Solutions)— フルボ酸高濃度、葉面散布対応
- Pre-Empt OMRI(水耕用フルボ酸)— 養液栽培の pH 緩衝
- スーパーグリーン(関西キトサン)— 国内流通の腐植酸・キトサン複合
ケイ酸
- Dune(Impello Biosciences)— Stabilized Monosilicic Acid、水耕・葉面の両用
- Plant Vitales Ortho Silicic Acid(インド由来 / 国内流通)— 高吸収性モノケイ酸
- ケイカル系資材(ホーネンアグリ等)— 水稲・畑作の土壌施用
オスモライト系
- グリシンベタイン製剤(複数メーカー)— 単独製品としても流通
- プロリン強化型 PH(Megafol 等に内包)
経営判断軸 — 3 年単位の保険型投資として位置づける
塩害・pH 不良圃場へのバイオスティミュラント投資は、単年の収量目標で判断すると過小評価されやすい施策です。「ストレスを受けても収量を維持する」という性質上、ストレスが弱い年には効果が見えにくく、強い年に効果が大きく出るからです。
露地野菜編(B-13)で示した「順調な年に +5%、不順な年に -10% 減収を回避」の枠組みは、塩害・pH 不良圃場でも同じく適用できます。塩害圃場では、台風後・干ばつ後・施設の連作後といった「ストレスが累積するタイミング」で大きく効くため、3 年単位の保険として評価するのが妥当です。
具体的な経営判断の手順は以下のとおりです。
- 診断の標準化:年 1〜2 回の土壌診断で pH・EC・Na+・ESP・微量要素・腐植含量・CEC を測定し、改良の進捗を数値化する
- 圃場の優先順位付け:所有圃場の中で「最も悪い圃場」より「中程度に悪い圃場」を優先する方がコスト対効果が出やすい(最悪圃場は改良コストが過大で回収困難)
- 排塩工事との並行:客土・湛水排塩・石膏投入・暗渠排水といった物理的改良と、バイオスティミュラントを必ずセットで設計する
- 3 年計画:1 年目「指標の正常化」、2 年目「収量の回復」、3 年目「収益性の回復」と段階的目標を設定する
- 撤退基準の明示:投資コスト対比の収量改善が 2 年連続で 5% 未満ならその圃場は休耕・他用途転換を検討
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本記事は H16 バイオスティミュラント 20 本シリーズの C-15(ストレス対策軸、第 2 弾)です。シリーズ全体は バイオスティミュラント比較ガイド(ハブ) から辿れます。塩害・pH 不良対策で組み合わせて読みたい関連記事は以下のとおりです。
- バイオスティミュラント比較ガイド — シリーズハブ
- 菌根菌活用ガイド — AMF 詳細
- 乾燥ストレス対策バイオスティミュラント完全ガイド — C-14、塩害と作用機序が重なる
- 海藻抽出物バイオスティミュラント完全ガイド — A-1、K+/Na+ 比改善の詳細
- 腐植酸・フルボ酸バイオスティミュラント完全ガイド — A-2、pH 緩衝の詳細
- アミノ酸・タンパク質加水分解物バイオスティミュラント完全ガイド — A-3、PH の詳細
- バチルス(枯草菌)系バイオスティミュラント完全ガイド — A-5、halotolerant PGPR の基礎
- キトサン・珪酸バイオスティミュラント完全ガイド — A-6、Si の詳細
- イネ(水稲)向けバイオスティミュラント完全ガイド — B-7、Si と塩耐性
- 露地野菜向けバイオスティミュラント完全ガイド — B-13、3 年単位の経営判断軸
参考URL
- Syngenta Biologicals QUANTIS — 製品ページ
- Protein Hydrolysates Modulate Quality Traits of Tomato Fruit Under Salt Stress(MDPI Horticulturae 2025)
- Different vegetal protein hydrolysates distinctively alleviate salinity stress in vegetable crops(Frontiers Plant Science 2023)
- Enhancing Irrigation Salinity Stress Tolerance and Increasing Yield in Tomato Using PH and A. nodosum(MDPI Agronomy 2022)
- Protein hydrolysates enhance recovery from drought stress in tomato plants(Frontiers Plant Science 2024)
- Ascophyllum nodosum Based Extracts Counteract Salinity Stress in Tomato by Remodeling Leaf Nitrogen Metabolism(MDPI Plants 2021)
- A. nodosum-based biostimulant enhances salt stress tolerance in rice(J. Plant Interactions 2023)
- Enhancing Salt Stress Tolerance in Portulaca oleracea Using Ascophyllum nodosum Biostimulant(PHYTON 2024)
- Seaweed extracts: enhancing plant resilience to biotic and abiotic stresses(Frontiers Marine Science 2024)
- Halotolerant Bacillus sp. strain RA coordinates myo-inositol metabolism to confer salt tolerance to tomato(J. Integrative Plant Biology 2024)
- Novel halotolerant PGPR strains alleviate salt stress(ScienceDirect 2024)
- Halotolerant Endophytic Bacteria Regulate Growth and Field Performance of Two Durum Wheat Genotypes(PMC 2024)
- Plant Salinity Tolerance Conferred by AMF: A Meta-Analysis(PMC 2021)
- Leveraging microorganisms and biostimulants: mitigating salinity stress in crops(Plant and Soil 2025)
- The Impact of Humic Acid Fertilizers on Crop Yield and NUE: A Meta-Analysis(MDPI Agronomy 2024)
- Synergistic Application of Humic Acid and Microbial Fertilizers in Coastal Saline-Alkali Soils(PMC 2025)
- Applications of humic and fulvic acid under saline soil conditions to improve growth and yield in barley(PMC 2024)
- Silicon-driven approaches to salinity stress tolerance(ScienceDirect 2025)
- Synergic mitigation of saline-alkaline stress in wheat by silicon and Enterobacter sp. FN0603(Frontiers Microbiology 2022)
- Synergistic effects of foliar applied glycine betaine and proline in rice yield under salinity(PeerJ 2024)
- Glycine betaine: A multifaceted protectant against salt stress in Indian mustard(2024)