ドイツ発ブドウ樹と雑草を見分け、自立走行で除草するロボット

今回は、ブドウ園における自動除草ロボットの開発事例を紹介します。(その他の当サイトでの除草ロボット紹介はこちら)除草は、農作物生産において、手間のかかる作業である一方、適切に行わないと、収量減少の原因になることに加え、病害虫の温床となってしまう場合もあります。このような除草作業を、自動で行うことが可能となれば、今後求められる省力化に大きく貢献できる技術になると考えられます。

農地における除草

雑草は、作物の生育と競合するとともに、場合によっては病害虫の温床となってしまいます。そのため、適切に雑草や病害虫管理を行わないと、作物の生育不良の原因となり、さらには減収・減益につながる可能性があります。

また、これらの防除に対し、化学農薬の開発もあり、省力化が進んでいるのは事実ですが(1)、いまだ時間がかかる作業の1つです。実際にブドウの場合、10a当たりの総作業時間454.89時間のうち、除草・防除に関わる時間が34.80時間と(2)、総作業時間の1割弱に及ぶのが現実です。

一方、昨今のオーガニック製品の人気の高まりにより、除草剤等を使用しない、無農薬栽培が求められる場合もありますが、除草対策なしでは、減収につながる恐れがあります。そこで、本研究では、農薬に代わる除草法として、自動除草ロボットに注目し開発が行われました。

ブドウ樹と雑草を見分け、除草するロボット

ドイツ・ホーヘンハイム大学等の研究グループは、ブドウ園で利用可能な除草ロボットを開発しました。この除草ロボットは、自律走行が可能であるとともに、ブドウ樹と雑草を見分けながら、除草を行うことができる点が特徴です。

(Fig1より除草ロボットの外観)

今回の除草ロボットは、フェニックスと呼ばれる自律走行型ロボットに、実際に除草を行う装置としてロータリーウィーダーを搭載しました。また、2Dレーザースキャナにより、自律走行時の障害物検知を行っています。なお、園内のブドウの幹を検知し、雑草のみを除草するために、フィーラー(接触器)とソナーセンサの2種類のセンサを用い、幹の検知を行う仕組みとなっています。 

まず、一定間隔でピン(ブドウの幹の代わり)が刺さった、屋内の実験室で試験を行いました。その結果、ピンを除けながらも、フィーラーをセンサとして用いた場合65%で、ソナーセンサでは82%の面積で、除草が可能であると判断されました。なお、屋内試験において、ソナーセンサがより高精度であったため、野外試験では、ソナーセンサを用い試験を行いました。 

実際の農地では、ブドウが必ず一定間隔に植栽されているとは限りません。実際の野外試験でも、この点が問題となり、植栽間隔が0.5m以下となってしまっている箇所には、直径0.3mのロータリーウィーダーが入り込むことができませんでした。しかしながら、耕地面積の57%~98%で、除草を行うことができたとともに、幹に傷をつけてしまうような事例は発生しませんでした。

(Fig4より:実際の除草の様子)

コメント

除草や病害虫防除等の栽培管理は、一般に重労働である一方、収穫物自体への管理でないことから、時に疎かになりやすいものです。しかしながら、雑草の繁茂や病害虫による、収量機会の減少への影響は大きく、安定的な収量を確保するためには、無くてはならない作業です。

また、農業従事者の不足や高齢化に従い、1人当たりの耕作面積が広がる傾向にあることから、除草や病害虫防除における、軽労化技術の開発は、喫緊の課題であると考えられます。

なお、園地の除草は、果樹園における整枝・剪定や、果実の摘果・収穫等の作業に比べると、農家の経験や勘に依存する部分が少ないことから、自動化と相性の良い作業であるように考えれます。

そのため、今回のような自動除草ロボットの導入が可能となれば、農家自身はより生産物自体の管理に注力できるようになると考えられることから、今後の普及に期待したい技術です。

今回紹介した論文

David Reiser, El-Sayed Sehsah, Oliver Bumann, Jörg Morhard and Hans W. Griepentrog. Development of an Autonomous Electric Robot Implement for Intra-Row Weeding in Vineyards. Agriculture 9(1): 18. 2019. CC-BY 4.0.

(今回記事内の“ブドウ樹と雑草を見分け、除草するロボット”およびその他紹介した図表は、上記論文のデータ等を一部抜粋・改変したものを記載しています。)

論文オープンアクセスURL:https://doi.org/10.3390/agriculture9010018

その他参考資料等