農作業死亡事故の統計【2024年】287人に急増・熱中症59人|就業者10万人当たり14.8人は建設業の約3倍

2024年(令和6年)に農作業中の事故で亡くなった方は287人で、前年より51人増えました。減少が続いていた流れが止まり、就業者10万人当たりの死亡者数は14.8人と、建設業(4.9人)の約3倍、全産業(1.1人)の10倍以上になっています。増加分の4割強は熱中症で、熱中症による死亡は前年の37人から59人に増えました。

本記事は、農林水産省が人口動態調査の死亡票をもとにまとめている「農作業死亡事故調査」の各年版と、2026年8月19日の第11回農作業安全検討会の資料を一次ソースに、死亡者数の長期推移、要因別・年齢別・月別の内訳、他産業との比較、国が進めている対策をグラフで整理したものです。グラフはすべて CC BY 4.0 で、出典を書けば研修資料や社内資料にも転載できます。

この記事の結論(コピペ用)
2024年の農作業死亡事故の死亡者数は287人で、前年から51人増加した。就業者10万人当たりでは14.8人で、建設業4.9人・全産業1.1人との差が広がっている。要因別では熱中症が59人(前年37人)で最も多く、乗用型トラクター53人が続く。亡くなった方の86.4%が65歳以上、約6割が75歳以上で、月別では7月(58人)が最多だった。

キー数値

指標 数値 時点・備考
農作業事故の死亡者数 287人 2024年。前年236人から51人増
就業者10万人当たり死亡者数(農業) 14.8人 2024年。前年11.6人
同(建設業/全産業) 4.9人/1.1人 2024年。厚生労働省・総務省の統計による
農業機械作業に係る事故 156人(54.4%) うち乗用型トラクター53人
農業用施設作業に係る事故 15人(5.2%) 前年6人
機械・施設以外の作業に係る事故 116人(40.4%) 前年83人
└ うち熱中症 59人 前年37人。2010年以降で最多
65歳以上の割合 86.4%(248人) 80歳以上は42.5%(122人)
75歳以上の割合 約6割(60.6%) 第11回農作業安全検討会資料
最も多い月 7月 58人 5〜9月の合計は184人(前年132人)

1. 死亡者数は2024年に287人、減少傾向から一転して増加

農作業事故による死亡者数は、2000年代後半には年間400人前後でしたが、その後は少しずつ減り、2023年には236人まで下がっていました。ところが2024年は287人と、前年から51人増えました。2019年(281人)や2018年(274人)を上回る水準です。

農作業事故による死亡者数の推移(2005〜2024年)。2024年は287人で前年から51人増加。
農作業事故による死亡者数の推移(2005〜2024年)。2024年は287人で前年から51人増加。
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減ってきた背景の一つは、農業に携わる人そのものが減っていることです。基幹的農業従事者(個人経営体)は2000年の240万人から2025年には103.6万人に減り、平均年齢は67.7歳です(農業従事者数の推移データ)。人数が減れば事故の件数も減りやすいため、実際の危険度を見るには、次の「就業者10万人当たり」の数字を合わせて確認する必要があります。

なお、2014年以前の調査結果は「件数」、2015年以降は「死亡者数」で表記されていますが、どちらも死亡事故1件を1人として数えています。

2. 就業者10万人当たりでは14.8人、建設業の約3倍

働く人の数で割った「就業者10万人当たりの死亡者数」で比べると、農業は2015年の9.9人から緩やかに上がり、2024年は14.8人になりました。同じ期間に建設業は6.5人から4.9人、全産業は1.5人から1.1人に下がっており、農林水産省は検討会資料で農業と「他産業との差が更に拡大」したとしています。

就業者10万人当たり死亡者数の推移。2024年は農業14.8人、建設業4.9人、全産業1.1人。
就業者10万人当たり死亡者数の推移。2024年は農業14.8人、建設業4.9人、全産業1.1人。
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読むときの注意点が2つあります。

  • 分母が途中で変わっている。農業の分母は2019年まで「農業就業人口」でしたが、この統計が終了したため、2020年から「農業従事者数」に切り替えています。2019年と2020年の間は厳密にはつながっていません。
  • 他産業とは死亡者数の集め方が違う。農業は人口動態調査の死亡票から農林水産省が集計した数(自営の農家を含む)、建設業・全産業は厚生労働省の「死亡災害報告」(労働災害として報告されたもの)です。農林水産省はこの比較を示していますが、同じ条件での比較ではない点は押さえておいてください。

それでも、事故の総数が減っている期間にも10万人当たりの数字は下がらず、2024年に大きく跳ね上がったことは、農業の現場の危険度が相対的に下がっていないことを示しています。

3. 要因別では熱中症が最多、トラクターの転落・転倒も依然多い

2024年の死亡事故を要因別に見ると、農業機械作業が156人(54.4%)、農業用施設での作業が15人(5.2%)、それ以外の作業が116人(40.4%)で、3区分すべてが前年より増えました。

要因別の農作業死亡者数(2023年→2024年)。熱中症が37人から59人に増え最多に。
要因別の農作業死亡者数(2023年→2024年)。熱中症が37人から59人に増え最多に。
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  • 熱中症が59人で、要因として最も多くなりました。前年から22人増えており、全体の増加分(51人)の43.1%を占めます。
  • 乗用型トラクターは53人で前年から8人減ったものの、機種別では最多です。このうち38人(71.7%)が機械の転落・転倒によるものでした。農業機械の事故全体でも、転落・転倒が82人(52.6%)と半分を超えます。
  • 農用運搬車(軽トラックを含む)は12人から26人に倍増しました。自脱型コンバイン17人、動力防除機11人、草刈機7人も前年より増えています。
  • 機械・施設以外では、ほ場や道路からの転落が10人から19人、木などの高所からの転落が3人から8人に増えました。

男女別では男性241人(84.0%)、女性46人(16.0%)です。

4. 熱中症による死亡は59人、2010年以降で最多

農作業中の熱中症による死亡は、2010年代は年20人前後で推移していました。記録的な猛暑となった2018年に43人に増え、その後も20〜30人台が続いたあと、2024年に59人となりました。2018年の43人は、当時の調査結果で「調査開始(2004年)以降で最多」とされていた数字で、2024年はそれを大きく上回っています。

農作業中の熱中症による死亡者数の推移(2010〜2024年)。2024年は59人。
農作業中の熱中症による死亡者数の推移(2010〜2024年)。2024年は59人。
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この増加は農業に限った話ではありません。第11回検討会の資料では、国内全体の熱中症による死亡者数(厚生労働省の人口動態統計)が2024年に2,160人、熱中症警戒アラートの発表回数(環境省)が1,722回(前年1,232回)と、いずれも増えていることが示され、農作業中の熱中症死亡もおおむね同じ傾向で動いていると分析されています。同じ資料によると、2024年の日本の年平均気温は基準値比+1.48℃で、気象庁の統計開始以降で最も高い年でした(気候変動の日本の農業への影響)。

さらに農林水産省は、5〜9月の死亡者の増加(52人)が年間全体の増加(51人)を上回っていることから、夏の暑さが熱中症だけでなく、熱中症以外の事故にも影響している可能性を指摘しています。5〜9月の熱中症以外の事故は97人から128人に増えました。

5. 亡くなった方の86%が65歳以上、7月が最も多い

2024年に亡くなった287人のうち、80歳以上が122人(42.5%)、70〜79歳が103人(35.9%)で、70歳以上が約8割を占めます。65歳以上は248人(86.4%)で、この割合は過去10年ほど80%台で推移しています。検討会資料では、75歳以上の割合は約6割(60.6%)とされています。

2024年の農作業死亡者の年齢階層別内訳と月別推移。70歳以上が約8割、7月が最多の58人。
2024年の農作業死亡者の年齢階層別内訳と月別推移。70歳以上が約8割、7月が最多の58人。
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月別では7月が58人(20.2%)で最も多く、8月46人、9月30人と続きます。前年は7月・8月とも35人でしたので、夏場の増え方が際立っています。

74歳以下では、農業従事者当たりの死亡が増えている

検討会資料では、年齢階層別の農業従事者数で割った「10万人当たり死亡者数」を2019年と2024年で比べています。

  • 74歳以下:4.9人 → 8.1人。乗用型トラクター、自脱型コンバイン、草刈機、動力防除機など農業機械による事故が特に増えています。
  • 75歳以上:32.1人 → 31.8人とほぼ横ばい。内訳では乗用型トラクターが10.39人から5.67人に減った一方、熱中症が3.90人から8.41人に倍増しています。

75歳以上は74歳以下の約4倍と依然として高い水準ですが、比較的若い世代の機械事故が増えている点も見逃せません。草刈機や動力防除機の事故は若い年代が多いと分析されています。

データ表:農作業死亡者数の推移(2005〜2024年)
年 死亡者数(人) うち熱中症(人) 10万人当たり 農業 建設業 全産業
2005(H17) 395 — — — —
2006(H18) 391 — — — —
2007(H19) 397 — — — —
2008(H20) 374 — — — —
2009(H21) 408 — — — —
2010(H22) 398 26 — — —
2011(H23) 366 21 — — —
2012(H24) 350 21 — — —
2013(H25) 350 24 — — —
2014(H26) 350 19 — — —
2015(H27) 338 27 9.9 6.5 1.5
2016(H28) 312 19 9.8 6.0 1.4
2017(H29) 304 22 10.1 6.5 1.5
2018(H30) 274 43 9.5 6.1 1.4
2019(R元) 281 29 10.2 5.4 1.3
2020(R2) 270 32 10.8 5.2 1.2
2021(R3) 242 23 10.5 6.0 1.3
2022(R4) 238 29 11.1 5.9 1.2
2023(R5) 236 37 11.6 4.6 1.1
2024(R6) 287 59 14.8 4.9 1.1

2014年以前は「件」表記。10万人当たりの農業の分母は2019年まで農業就業人口、2020年から農業従事者数。建設業・全産業は厚生労働省「死亡災害報告」と総務省「労働力調査」による。

データ表:要因別の死亡者数(2023年・2024年)
区分 要因 2023年 2024年 増減
農業機械作業 乗用型トラクター 61 53 −8
歩行型トラクター 9 11 +2
農用運搬車(軽トラックを含む) 12 26 +14
自脱型コンバイン 13 17 +4
動力防除機 7 11 +4
草刈機 1 7 +6
農用高所作業機 3 5 +2
その他の機械 41 26 −15
農業用施設作業 施設(高所からの墜落・転落など) 6 15 +9
機械・施設以外 熱中症 37 59 +22
ほ場・道路からの転落 10 19 +9
木等の高所からの転落 3 8 +5
稲わら焼却中等の火傷 17 12 −5
その他(家畜・溺水・熱中症以外の病気など) 16 18 +2
合計 236 287 +51

「その他」は「令和6年に発生した農作業死亡事故の概要」表4の合計から、熱中症・転落2種・火傷を差し引いて算出。

データ表:年齢階層別・月別の死亡者数
年齢階層 2019年 2024年
30歳未満 2 1
30〜39歳 1 6
40〜49歳 2 10
50〜59歳 14 15
60〜64歳 14 6
65〜69歳 41 23
70〜79歳 89 103
80歳以上 118 122
不明 0 1
合計 281 287
月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
2023年 9 11 17 21 13 20 35 35 29 28 11 7
2024年 7 8 16 21 23 27 58 46 30 24 15 12

単位:人。出典は「令和6年に発生した農作業死亡事故の概要」表5・表6。

6. 国が進めている対策 — トラクターの座席ベルト義務化、熱中症対策、個人事業者への安全衛生教育

農林水産省は2021年5月の「中間とりまとめ」に沿って対策を進めており、第11回検討会でその進み具合が報告されました。主なものを整理します。

農業機械:座席ベルトの義務化と安全性検査の見直し

  • 農耕トラクターへの座席ベルト装備の義務化。道路運送車両の保安基準が2025年6月に改正され、2027年1月1日以降に生産される新車から座席ベルトの装備が必要になります。対象車両を道路で運転するときは、座席ベルトの着用も必要です。
  • 新しい安全性検査制度(2025年4月開始)。農研機構の安全性検査に、シートベルトを締めていないと警報が出る「シートベルトリマインダー」や、停車中に運転者が席を離れると作業機への動力を7秒以内に切る「PTOインターロック」などが加わりました。2026年6月末時点で、乗用型トラクター43型式、自脱型コンバイン11型式などが合格しています。国の補助事業で導入する機械は、2025年度から合格機の中から選ぶ運用になりました。
  • 転倒時に運転者を守る安全フレーム(ROPS)。果樹園で使うスピードスプレヤーについては、固定式の安全フレームを標準装備とする方針が合意され、2028年4月から新しい基準での検査を始める予定です。

乗用型トラクターの死亡事故の7割は転落・転倒です。転倒時は安全フレームとシートベルトを組み合わせてはじめて運転者を守れるため、既存の機械でもフレームを立て、ベルトを締めることが基本になります。

熱中症:研修の前倒しと「ホワイト生産方式」

  • 「農作業における熱中症等対策総合パッケージ」として、熱中症対策の研修強化期間を4〜6月に1か月前倒しし、7〜9月を新たに「夏の熱中症等対策声かけ期間」としました。2026年のキャッチフレーズは「いのちをうばう、夏のひとり作業」です。
  • 2026年4〜6月の熱中症対策研修の受講者は約11万2,000人(速報値)で、前年同期(6万52人)の約2倍になりました。
  • 注意喚起だけでなく、ドローンによる防除の委託、リモコン草刈機、自動水管理装置、遮光資材や細霧冷房などを組み合わせて暑い時間帯の作業そのものを減らす「ホワイト生産方式」への転換を、スマート農業や農業支援サービスの支援事業と合わせて進めるとしています(日本のスマート農業の普及状況)。

制度:改正労働安全衛生法で個人事業者にも義務

  • 2025年5月に成立した改正労働安全衛生法により、2027年4月から、労働者と同じ場所で作業する個人事業者等にも、構造規格を満たさない機械の使用禁止、特定の機械の定期自主検査、危険・有害な業務に就く際の安全衛生教育の受講などが義務付けられます。
  • 農林水産省は、集出荷施設でフォークリフトを借りて納品する小規模農家や、パート従業員がいる場所で小型の移動式クレーンを使う農家などが対象になり得る例として示しています。
  • 厚生労働省では2024年2月から「農業機械の安全対策に関する検討会」が開かれ、労働安全衛生法令で規制する農業機械の範囲などが検討されています。

このほか、2026年4月に土地改良事業の設計指針「ほ場整備」が新たに制定され、ほ場整備の段階から農作業の安全性を高める取組も始まっています。

よくある質問

農作業死亡事故の数字はどうやって集計されていますか?

農林水産省が、厚生労働省の人口動態調査の死亡票などを用いて、1月1日から12月31日までの1年間に農作業に伴って亡くなった方を集計しています。労働災害として届け出られたものに限らず、自営の農家の事故も含みます。都道府県が独自に行っている事故調査とは数字が異なる場合があります。

農業は本当に建設業より危ないのですか?

農林水産省の資料では、就業者10万人当たりの死亡者数は2024年に農業14.8人、建設業4.9人です。ただし農業は人口動態調査の死亡票、建設業は労働災害の報告をもとにしており、集計方法が異なります。厳密な同条件比較ではありませんが、農業の値が一貫して高く、差が広がっていることは確かです。

2025年の死亡事故の数字はいつ出ますか?

2024年分の調査結果は2026年2月26日に公表されました。2025年分の公表日は現時点で示されていません。農林水産省は、毎月の農作業事故の発生状況(速報)も農作業安全対策のページで公表しています。


ライセンスと引用方法

要素 ライセンス 条件
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推奨クレジット表記:

出典: smartagri.jp「農作業死亡事故の統計」
農作業死亡事故の統計【2024年】287人に急増・熱中症59人|就業者10万人当たり14.8人は建設業の約3倍
元データ: 農林水産省「令和6年に発生した農作業死亡事故の概要」(令和8年2月)、 第11回農作業安全検討会資料「『中間とりまとめ』の取組状況」(令和8年8月) https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_kikaika/anzen/sibo.html (2026年9月25日に利用)を加工して作成

※本ページは農林水産省の公表値を加工して作成しています。国(農林水産省)が本ページの編集・加工内容を承認・作成したものではありません。他産業の就業者10万人当たり死亡者数、国内の熱中症死亡者数、熱中症警戒アラート発表回数は、農林水産省資料に掲載された厚生労働省・総務省・環境省の数値です。


出典・参考URL

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