農業・農村の多面的機能、認知度はわずか42.5%|白書データで読む

農業には、私たちが食べるお米や野菜を生産する以外にも、国土の保全や水源の涵養、美しい景観や生物多様性の維持といった「多面的機能」があります。ところが農林水産省の令和7年度 食料・農業・農村白書によると、こうした食料生産以外の役割があると知っている人の割合は42.5%にとどまり、半数を超える57.5%は「知らない」と答えています。地域の田畑を守る担い手にとって、この認知度の低さは制度の支えや消費者理解に直結する重要な数字です。

農業・農村の多面的機能の認知度(2024年調査)
出典: 農林水産省 令和7年度 食料・農業・農村白書

過半数が「知らない」という現実

2024年調査で多面的機能を「知っている」と回答した人は42.5%、「知らない」と回答した人は57.5%でした。つまり、田畑がもたらす洪水防止や水資源の保全、農村の景観といった価値は、国民の過半数にまだ十分に伝わっていません。

この差は、現場で農地を維持している農家にとって他人事ではありません。多面的機能は、農業者が日々の草刈りや水路の管理、農道の補修を続けることで初めて維持されるものです。にもかかわらずその価値が社会に共有されていなければ、地域ぐるみの保全活動への参加者は集まりにくく、農村以外の住民の理解も得にくくなります。荒廃農地の増加や担い手の減少が進む地域では、この「見えにくい価値」をどう可視化するかが、活動継続の鍵を握ります。

制度はどこまで農地をカバーしているか

多面的機能を金銭面で支える代表的な仕組みが、多面的機能支払交付金です。2024年度の認定農用地面積は233万haに達し、対象となる農用地に対するカバー率は56.8%となっています。一方で、活動組織を市町村単位などで束ねる広域化組織の割合は49.3%で、ようやく半数に届く水準です。

多面的機能支払制度の到達度(2024年度)
出典: 農林水産省 多面的機能支払交付金/令和7年度 食料・農業・農村白書

カバー率が56.8%ということは、裏を返せば対象農地の4割超がまだこの仕組みの外にあるということでもあります。小規模な活動組織では、事務や会計の負担が一人の役員に集中しがちで、高齢化が進むと活動そのものの継続が難しくなります。広域化組織は、こうした事務負担を共同で担い、複数集落をまとめて効率的に運営するための受け皿です。その割合が49.3%という数字は、制度を「広げる」段階から「持続させる」段階へと課題が移りつつあることを示しています。

農家・農業法人にとっての含意

中規模以上の経営体や農業法人にとって、多面的機能の認知度と制度カバー率は、地域の農地をどう束ねるかという経営判断に関わります。耕地面積や荒廃農地の動向(耕地面積と荒廃農地)、そして農業従事者数の減少(日本の農業従事者数)を併せて見ると、限られた人手で広い農地を守る局面が今後さらに強まることがわかります。

担い手が減るなかで地域の水路や農道を維持していくには、交付金を活用した共同活動と、その担い手を広域でまとめる組織づくりが欠かせません。認知度42.5%という数字は、消費者や地域住民に向けて「自分たちの農業が国土や水を守っている」と発信する余地が大きく残っていることも意味します。直売所での掲示やSNSでの情報発信、見学会など、農業者自身が多面的機能の担い手であることを伝える取り組みが、制度の支持基盤と地域の協力を厚くしていきます。

データの引用について

本記事で用いた数値は農林水産省が公表する白書・統計に基づくもので、出典を明記すれば自由に引用いただけます。本記事のグラフおよび解説はクリエイティブ・コモンズ表示4.0国際(CC BY 4.0)の下で、出典を明記のうえご利用いただけます。

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