日本の営農型太陽光発電の統計|累計6,137件・1,362ha、R5年度は791件で伸び緩やか化

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)は、農地に支柱を立てて上部空間に太陽光発電設備を設置し、農業と発電を両立する仕組みです。平成25年3月の農水省通知以降、全国で累計 6,137件・下部農地1,362ha まで拡大しました(令和5年度末時点)。

本記事は、農林水産省が令和7年12月に公表した「営農型太陽光発電設備設置状況等について(令和5年度末現在)」を一次ソースに、最新の統計を整理したものです。チャートはすべて CC BY 4.0 で、商用資料にも自由に転載できます(出典表記のみ必要)。

この記事の結論(コピペ用1行)
H25〜R5の累計で農地転用許可 6,137件・下部農地1,362ha まで拡大。R5年度は791件(前年-22%)と伸びが緩やか化。発電事業者主導(73%)の構造が続く一方、下部農地の24%で営農に支障が発生、うち71%は営農者起因の単収減少・生育不良。最大作物は さかき・しきみで32%、作物変更を伴う導入が全体の60%。

累計6,137件・1,362ha。発電事業者主導73%、担い手営農42%、さかき・しきみ32%のポートフォリオ
累計6,137件・1,362ha。発電事業者主導73%、担い手営農42%、さかき・しきみ32%のポートフォリオ
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キー数値(令和5年度末・最新)

指標 数値 備考
累計新規許可件数(H25〜R5) 6,137件 農地転用一時転用許可ベース
R5年度新規許可件数 791件 R4年度1,020件から -22%
累計下部農地面積 1,361.6ha
累計再許可件数 4,238件
農用地区域内農地シェア(累計) 73.9% 4,536件
荒廃農地を活用した件数 628件(10.2%) 累計ベース
発電事業者による設置 73%(4,323件) 県内43%・県外30%
農業者・農地所有者による設置 27%(1,630件) 農地所有者15%・所有者以外12%
下部農地の担い手営農(累計) 42%(2,483件)
下部農地の担い手営農(R5単年) 63%(497件) H30.5通知の10年化効果
下部農地で営農に支障あり 24%(1,221件) R4末22%から+2pt悪化
└ 営農者起因の単収減少・生育不良 71%(872件)
最大栽培作物(さかき・しきみ) 32%(1,901件)
観賞用植物全体 36%(2,147件)
野菜等 28%(1,654件)
作物変更を伴う導入 60%(3,415件) パネル下前提で作物選定

1. 新規許可件数・下部農地面積の推移

年度別新規許可件数と再許可件数の推移。R5年度は791件(前年-22%)と伸び緩やか化
年度別新規許可件数と再許可件数の推移。R5年度は791件(前年-22%)と伸び緩やか化
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R5年度で初めて新規許可件数が前年比マイナスとなり、一方で再許可件数は952件とR5で初めて新規を上回りました(952 > 791)。

2. 農地区分 — 農用地区域内農地が74%、荒廃農地活用は累計10.2%

農地区分別の累計許可件数。農用地区域内農地が74%、荒廃農地再生利用は累計628件(10.2%)
農地区分別の累計許可件数。農用地区域内農地が74%、荒廃農地再生利用は累計628件(10.2%)
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農地区分 累計件数(割合) うち荒廃農地活用
農用地区域内農地 4,536 (73.9%) 465 (10.3%)
甲種農地 13 (0.2%) 0 (0.0%)
第1種農地 1,116 (18.2%) 102 (9.1%)
第2種農地 383 (6.2%) 50 (13.1%)
第3種農地 89 (1.5%) 11 (12.4%)
合計 6,137 (100.0%) 628 (10.2%)

3. 設置者構造 — 発電事業者が73%を占める

R5年度末時点で存続している設備N=5,953の設置者区分。発電事業者73%、農業者・農地所有者27%
R5年度末時点で存続している設備N=5,953の設置者区分。発電事業者73%、農業者・農地所有者27%
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発電事業者が設置している場合でも、売電収入の一部が営農維持費・賃借料として農地所有者・農業者に還元されるケースが存在します。

設置者×営農者マトリクス

設置者と実際に営農する主体の関係。発電事業者(県外)は96%が別人営農、農地所有者設置は85%が自前営農
設置者と実際に営農する主体の関係。発電事業者(県外)は96%が別人営農、農地所有者設置は85%が自前営農
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発電事業者(県外)が設置した1,802件のうち 96%(1,732件)が別人による営農 であり、実質的に発電目的の土地活用として導入されています。一方、農地所有者が設置した909件は85%が自前営農で、本来の「営農+発電の両立」型に近い構造です。

4. 下部農地の営農者 — 担い手の比率が上昇

累計では担い手42%、R5年度単年では63%まで上昇(H30.5通知の許可期間10年延長の効果)
累計では担い手42%、R5年度単年では63%まで上昇(H30.5通知の許可期間10年延長の効果)
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平成30年5月の通知改正で、担い手が下部農地を営農する場合は一時転用許可期間が3年→10年に延長されました。この効果で、担い手営農比率は累計42%だがR5年度許可分では63%まで上昇しています。

5. 営農支障の実態 — 24%で支障発生、営農者起因が71%

下部農地での営農支障率24%、前年比+2pt悪化。支障の71%が営農者起因の単収減少・生育不良
下部農地での営農支障率24%、前年比+2pt悪化。支障の71%が営農者起因の単収減少・生育不良
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「支障あり」の定義は、同年同作物の単収と比較して2割以上減少しているもの、または生育状況が不良であるもの。この「2割基準」は一時転用許可の継続要件でもあります。

支障の内容 件数 割合
単収減少・生育不良(営農者起因) 872 71%
設備工事等の遅延 144 12%
その他 118 10%
単収減少・生育不良(災害等) 87 7%
合計 1,221 100%

農地転用許可権者は改善措置を講ずるよう指導。著しい支障があれば 設備を撤去して農地に復元 する規定(令和3年3月31日改正)になっています。

6. 栽培作物ランキング — さかき・しきみが32%

主な作物別の設置件数。神事・仏事で需要のあるさかき・しきみが32%で独走、野菜・果樹・土地利用作物にも広く展開
主な作物別の設置件数。神事・仏事で需要のあるさかき・しきみが32%で独走、野菜・果樹・土地利用作物にも広く展開
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作物分類別シェア

分類 件数 割合 主な作物
観賞用植物 2,147 36% さかき・しきみ・せんりょう・たまりゅう
野菜等 1,654 28% 小松菜・白菜・ねぎ・かぼちゃ・みょうが等
果樹 791 13% 柑橘・ブルーベリー・柿・ぶどう
その他 802 13% きのこ類・牧草・茶
土地利用作物 541 9% 米・麦・大豆・そば
花き 18 0.3% ユリ・パンジー

主な作物Top7

順位 作物 件数 割合
1 さかき・しきみ 1,901 32%
2 小松菜・白菜・ねぎ・かぼちゃ等 961 16%
3 柑橘・ブルーベリー・柿・ぶどう 791 13%
4 米・麦・大豆・そば 541 9%
5 みょうが 374 6%
6 しいたけ・きくらげ 340 6%
7 ふき・うど・あしたば・わらび等 319 5%

7. 作物変更率 — 全体の60%がパネル下前提で作物を変えている

営農型太陽光発電の導入に伴い作物を変更した割合。全体60%、観賞用植物は67%が新規投入
営農型太陽光発電の導入に伴い作物を変更した割合。全体60%、観賞用植物は67%が新規投入
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既存の作付体系を維持した導入は少数派で、太陽光パネル下の遮光条件で育つ作物(半陰性植物)への転換が選択されやすい実態が見えます。観賞用植物(さかき・しきみ・センリョウ等)は67%が新規投入で、パネル下前提の作物設計が行われています。

8. 制度のしくみ(令和6年3月までの枠組み)

一時転用許可の要件

許可期間:

  • 原則: 3年以内
  • 以下のいずれかに該当する場合は 10年以内(平成30年5月15日通知で延長):
    • 認定農業者等の担い手が下部の農地で営農を行う場合
    • 荒廃農地を活用する場合
    • 第2種農地又は第3種農地を活用する場合
  • 再許可: 可能(従前の営農状況を十分勘案し総合的に判断)

下部農地の営農継続要件:

  • 営農が行われていること
  • 生産された農作物の品質に著しい劣化が生じていないこと
  • 活用状況が次の基準を満たすこと:
区分 右以外の場合 荒廃農地を再生利用した場合
基準 同年の地域の平均的な単収と比較しておおむね2割以上減収しないこと 適正かつ効率的に利用されていること(農地の遊休化・捨作りをしない)

設計要件:

  • 農作物の生育に適した日照量を保つための設計
  • 効率的な農業機械等の利用が可能な高さ(最低地上高2m以上
  • 周辺農地の効率的利用等に支障がない位置

モニタリング:

  • 年1回の報告で農作物の生産等に支障が生じていないかチェック
  • 著しい支障がある場合は 設備を撤去して農地に復元(令和3年3月31日改正)

ライセンスと引用方法

要素 ライセンス 条件
本記事の分析・考察・執筆 CC BY 4.0 出典表記で商用利用可
自作チャート(PNG) CC BY 4.0 出典表記で商用利用可
元データ(農林水産省の公表値) PDL1.0 出典表記・加工表記が必要

推奨クレジット表記:

出典: smartagri.jp「日本の営農型太陽光発電の統計」
https://smartagri.jp/stats/jp-solar-sharing/
元データ: 「営農型太陽光発電設備設置状況等について(令和5年度末現在)」令和7年12月(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/attach/pdf/einogata-64.pdf
(2026年4月24日に利用)を加工して作成

※本ページは農林水産省の公表値を加工して作成しています。国(農林水産省)が本ページの編集・加工内容を承認・作成したものではありません。


出典

  • 農林水産省「営農型太陽光発電設備設置状況等について(令和5年度末現在)」令和7年12月公表(農村振興局)
    https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/attach/pdf/einogata-64.pdf(2026年4月24日に利用)
  • 農地法第4条・第5条に基づく一時転用許可制度
  • 平成25年3月31日付「農地法第4条第1項及び第5条第1項に規定する許可の取扱いについて(通知)」
  • 平成30年5月15日付 営農型太陽光発電設備の取扱いの見直し通知
  • 令和3年3月31日付 営農継続要件改正通知