bahce.io|天候・作物・圃場データから「今やる作業」を示すトルコの営農支援スタートアップ

bahce.io(バフチェ・アイオー)はトルコの営農支援スタートアップです。同社は気象データ、作物の生育段階、圃場の情報を組み合わせ、生産者が「今日どの作業をするか」を決めるための情報を届けています。施設栽培と露地栽培の両方を対象にしています。

会社基本情報

bahce.ioはトルコを拠点とするアーリーステージのスタートアップで、創業者は農業技術者のMehmet Yiğit Erhan(メフメト・イイット・エルハン)氏です。事業領域は営農の意思決定支援、気象情報、病害虫リスク予測です。設立年、本社の所在都市、資金調達の状況は、2026年10月時点で公開情報から確認できませんでした。

事業概要

bahce.ioの中心サービスは、圃場ごとに気象ステーションを置かずに圃場単位の気象値を推定する「センサーレス気象サービス」です。同社は複数のデジタル気象ソース、位置情報に基づく気象データ、衛星レイヤー、計算モデルを組み合わせ、そこに農学的なルールを当てはめています。モデル構成や重み付けは自社の技術として非公開です。

Erhan氏は「センサーレスとは、データなしで動くという意味ではありません」と説明しています。各サービスの開発状況は次のとおりです。

  • センサーレス気象サービス:最も開発が進み、圃場での検証も多い
  • デジタル症例管理と画像による植物の健康診断:MVPとクローズドテストの段階
  • 散布適期の判定、病害虫リスク予測、IPMの記録、生育ステージの監視:開発中
  • 気象ステーション、生育観察カメラ、IPM監視機器、現地分析システム:ハードウェアとして計画中

同社は施設栽培と露地栽培で扱う変数を分けています。施設栽培では温度、湿度、VPD、かん水、排液、EC、pHといった短時間で変わる値を見ます。露地栽培では降雨、風、日射、土壌の状態、生育ステージ、リモートセンシングの情報をもとに、散布のタイミング、かん水の要否、病害リスクを出力する設計です。

課題と解決策

インタビュー記事のタイトルには「生産者はなぜ今も『今何をすればいいのか』と聞くのか」という問いが入っています。生産者は気象や圃場のデータを集められても、その数字から当日の作業を決める段階で迷っています。日本でも、環境制御機器やセンサーを入れた農家は、記録したデータを日々の作業判断にどう使うかで同じ課題を抱えています。

Erhan氏は「私たちの目標は、ダッシュボードをもう1つ作ることではありません」と話しています。bahce.ioのアラートには、判断の根拠となった生育段階、気温、湿度、降水確率、風、デルタT、葉面濡れ時間が表示されます。病害虫に関するアラートは、圃場での観察結果と照らし合わせる設計です。同社はこの仕組みを、自動で指示を出すシステムと区別して「説明可能な意思決定支援」と呼んでいます。

精度については、同社がバルケスィル県シャムルで自社の圃場検証を行いました。2026年7月29日から8月28日まで、農業森林省の早期警報ステーションの観測値と推定値を比べています。30日間で日平均気温と相対湿度が一致し、降水量、デルタT、VPD、ET0、風、日射、土壌の値も一致または同等の結果だったと同社は報告しています。検証期間中、同社はステーションの観測値をモデルの入力や補正に使っていません。

この検証は同社自身が実施したもので、他地域の精度はまだ公表されていません。同社はMAEやRMSEといった標準的な誤差指標を今後公表する予定です。Erhan氏は「根拠が示す範囲より広い主張をするより、その点は正確でありたい」と述べています。

ビジネスモデル

bahce.ioは期限のない無料パイロットを行っていません。同社は短期間で成果を測れる有償の検証プロジェクトから顧客との取引を始めます。収益源はソフトウェアのサブスクリプション、レポーティング、圃場用デバイス、導入支援、農業技術コンサルティングの5つです。

大口顧客の価格は、面積、利用モジュール、導入範囲、ユーザー数で決まります。小規模な生産者には、機能を絞った簡易なパッケージを用意する方針です。Erhan氏は「製品は、解決する農業上の課題によって経済的に正当化されなければなりません」と話しています。

現在の利用者は、生産者と、現場で働く農業技術者や技術スタッフです。施設園芸分野では、温室の設計施工を手がけるトルコのArgeline社、Agroteknik社と協業モデルを作っています。両社の施工にbahce.ioのソフトウェアを組み合わせる形です。ほかに協同組合、自治体、農業法人、大規模生産者とも協議を進めています。

今後の計画

同社は今後12か月で、エーゲ海地方と地中海地方を中心に有償検証と商用パイロットを増やす計画です。対象は施設栽培、露地栽培、ブドウ園、果樹園です。協同組合、公共部門、温室の各プロジェクトを導入実績として示せる形にまとめます。

トルコ国外ではウズベキスタンとカザフスタンへの展開を検討しています。進出の際は、現地企業との提携と現地での精度検証を先に行う方針です。

コメント

bahce.ioの特徴は、アラートに判断の根拠を表示する点と、精度の検証範囲を自社で限定して公表している点です。日本の施設園芸でも、環境データを集めた後に「では今日かん水するか、散布するか」を決める作業は生産者や指導員が担っています。根拠付きのアラートを使えば、生産者は推奨内容を自分の観察と照らし合わせて採否を決められます。

一方で、同社の精度データは1地点30日間の自社検証だけです。日本で同様の仕組みを使う場合、利用者は自分の地域の観測値と比べて推定値を確かめる必要があります。同社は誤差指標を公表すると説明しているため、その数値が出た時点で他地域での精度を判断できます。

参考URL

  • iGrow News「bahce.io’s Mehmet Yiğit Erhan on why growers still ask ‘What should I do now?’」 リンク
  • bahce.io 公式サイト リンク