「望ましい営農型太陽光発電」の新基準とは|遮光率30%未満・2027年4月新制度と作物別の単収データ【2026年版】

農林水産省は、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の「あるべき姿」を国として初めて明文化し、2027年(令和9年)4月から新制度へ移行する予定です。新基準では遮光率30%未満・最低地上高おおむね3m以上・支柱間隔おおむね4m以上などが「望ましい営農型太陽光発電」の条件になり、農地法だけで判断していた許可の仕組みに、農山漁村再生可能エネルギー法に基づく市町村の認定が加わります。

本記事は、2026年9月7日のシンポジウムで農林水産省 大臣官房 環境バイオマス政策課が行った基調講演「望ましい営農型太陽光発電について」の資料と、同じデータを収めた「望ましい営農型太陽光発電に関する検討会」の公表資料を一次ソースに、新基準の中身と、その根拠になった作物別の単収データをグラフで描き直して整理したものです。グラフはすべて CC BY 4.0 で、出典を書けば商用資料にも転載できます。

この記事の結論(コピペ用)
営農型太陽光発電は令和5年度末で累計6,137件・1,362ha。一方、パネル下の営農に支障がある設備は24%(1,221件)で、面積が最も大きい「さかき」は単収が地域平均の80%以上を確保できている面積がわずか9%。対して米86%・大豆84%は遮光下でも単収を確保しやすい。これを受け国は「望ましい営農型太陽光発電」として遮光率30%未満・地上高3m・支柱間隔4m・50万円以上の販売実績・適正な利益還元などを定め、2027年4月から市町村認定を一時転用許可の条件にする新制度へ移行する。

キー数値

指標 数値 時点・備考
累計の一時転用許可件数 6,137件 平成25〜令和5年度
累計の下部農地面積 1,361.6ha 同上
令和5年度の新規許可 791件・142ha 令和4年度は1,020件・232ha
営農に支障がある設備 24%(1,221件) 令和5年度末。前年度22%(927件)
└ うち営農者に起因する単収減少・生育不良 71%(872件) 同上
パネル下の面積1位の作物 さかき 205.0ha 令和5年度
単収80%以上を確保できた面積の割合(米/大豆) 86%/84% 令和2〜4年度・面積ベース
単収80%以上を確保できた面積の割合(さかき) 9% 同上(育成中を含む)
新基準の遮光率 30%未満 判定が難しい設備は日射量の減少20%未満
新制度への移行 2027年(令和9年)4月 改正農地法施行規則の施行予定

1. 営農型太陽光発電は10年で6,137件に

営農型太陽光発電は、農地の一時転用許可を受けて支柱を立て、上部に太陽光パネルを置き、下の農地で営農を続けながら発電する仕組みです。平成25年度に制度上の扱いが明確になってから件数は毎年増え、令和5年度末で累計6,137件、パネル下の農地は1,361.6haになりました。

営農型太陽光発電の一時転用許可件数と下部農地面積の推移(平成25〜令和5年度)
営農型太陽光発電の一時転用許可件数と下部農地面積の推移(平成25〜令和5年度)
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ただし単年度の新規許可は令和4年度の1,020件をピークに、令和5年度は791件に減っています。面積も232haから142haに減りました。件数・面積の内訳(農地区分・設置者・営農者の構成)は日本の営農型太陽光発電の統計で詳しくまとめています。

2. パネル下で何が作られているか — 面積1位は「さかき」

パネル下の農地で栽培されている作物を面積で並べると、1位は神棚などに供えるさかき(205.0ha)で、2位のブルーベリー(61.4ha)の3倍以上あります。件数で見ても、さかき・しきみだけで全体の32%(1,901件)を占めます。日陰に強く、パネルで遮光されることを前提に選ばれた作物が多いのが特徴です。

パネル下の栽培作物の面積(令和5年度)。さかき205haが突出
パネル下の栽培作物の面積(令和5年度)。さかき205haが突出
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一方、新基準で「遮光下でも規定の単収を確保できる」とされた米・麦・大豆は、合計で約68ha(米34.3ha・麦22.1ha・大豆11.4ha)にとどまります。

3. 地域平均並みの単収が取れている作物・取れていない作物

今回の資料で新しく示されたのが、作物別に「地域の平均的な単収と比べてどれだけ取れているか」を面積ベースで集計したデータです。国が新基準の品目の考え方を決める材料の一つになりました。

作物別の単収確保割合(面積ベース)。米86%・大豆84%に対し、面積1位のさかきは9%
作物別の単収確保割合(面積ベース)。米86%・大豆84%に対し、面積1位のさかきは9%
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グラフから読み取れることは3つあります。

  • 米・大豆・そばは遮光下でも単収を確保しやすい。地域平均の80%以上を確保できた面積は、米86%・大豆84%・そば78%です。新基準で米・麦・大豆が「適切な栽培管理を前提に規定の単収を確保できる」とされたのは、このような実証の結果を踏まえています。麦は55%で、80〜90%未満の層が厚いのが特徴です。
  • 面積が大きい作物ほど単収が取れていない。面積1位のさかきは、単収0%(育成中を含む)が82%(84.5ha)、2位のブルーベリーも70%が0%です。柿は92%が0%でした。
  • ただし「0%」には育成中の木が含まれる。さかき・ブルーベリー・柿などの樹木類は、植えてから収穫まで年数がかかります。0%がすべて「失敗」ではない点に注意が必要です。新基準で「原則毎年収穫できる品目、やむを得ない場合も3年以内に計画収量を確保できる品目」と条件をつけたのは、この「育成中のまま収穫しない」状態を防ぐためと読めます。

なお農林水産省は、このデータについて「サンプル数やデータ検証等の課題があり、傾向の把握のみに利用するもの」と注記しています。個別の作物の可否を判断する根拠としては使わず、傾向として読んでください。

データ表:作物別の単収確保割合(面積ベース)
作物 90%以上 80〜90%未満 0%超〜80%未満 0%(育成中含む) 80%以上の計
米 39% 47% 14% 0% 86%
大豆 81% 3% 8% 8% 84%
そば 71% 7% 15% 7% 78%
イタリアンライグラス 36% 31% 10% 24% 67%
きくらげ 59% 0% 36% 5% 59%
しいたけ 52% 6% 33% 9% 58%
麦 16% 39% 44% 1% 55%
みかん 38% 4% 32% 27% 42%
タマリュウ 33% 8% 9% 49% 41%
ふき 13% 27% 35% 25% 40%
さつまいも 14% 26% 50% 11% 40%
みょうが 21% 16% 38% 24% 37%
茶 29% 3% 6% 62% 32%
かぼちゃ 12% 17% 61% 10% 29%
どくだみ 10% 4% 23% 64% 14%
しきみ 1% 13% 14% 73% 14%
ぶどう 6% 5% 29% 60% 11%
さかき 7% 2% 9% 82% 9%
ブルーベリー 6% 2% 21% 70% 8%
柿 1% 2% 5% 92% 3%

地域の平均的な単収と比較した割合。面積は令和2〜4年度の3か年平均。端数処理のため合計が100%にならない作物がある。

4. 4件に1件で営農に支障、7割は「営農者に起因」

令和5年度末に存続している設備のうち、パネル下の営農に支障があったのは24%(1,221件)で、前年度の22%(927件)から2ポイント上がりました。

営農に支障がある設備は24%、うち71%が営農者に起因
営農に支障がある設備は24%、うち71%が営農者に起因
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支障の内容で最も多いのは、栽培管理が適切でないことによる単収減少・生育不良(営農者に起因)で71%(872件)です。これは同じ年・同じ作物の単収と比べて2割以上減っているものなどを指します。台風などの災害による減収は7%(87件)、設備工事が作付けに間に合わなかったケースは12%(144件)でした。農地転用の許可権者は、支障がある案件に改善措置を取るよう指導しています。

「発電は続いているのに、下の農業が形だけになっている」案件が一定数あることが、今回の制度見直しの背景になっています。

5. 「望ましい営農型太陽光発電」の新基準

2025年12月23日、政府は大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージを関係閣僚会議で決定し、その中で農林水産省に「望ましい営農型太陽光の明確化」と「不適切な取組への厳格な対応」を求めました。これを受けて有識者の検討会が全6回開かれ、2026年4月に考え方がまとまりました。

基本理念

  • 適切な営農の継続を大前提に、特例として農地の一時転用を認めるもの(下の農地の単収が、同じ市町村・同じ年の平均からおおむね2割以上減るおそれがないこと。設備は簡易な構造で容易に撤去できること)
  • 将来にわたって農地の食料生産の機能が保たれ、食料安全保障に役立つこと
  • 農業者の所得向上や経営発展に役立つこと
  • 地域と共生し、地域の活性化に役立つこと

現行基準と新基準の比較

項目 現行(農地法の省令) 新基準(農山漁村再エネ法の基本方針・案)
営農者 営農の適切な継続が確実か 地域計画で「10年後の農業を担う者」に位置づけられている/栽培に必要な労働力が確保されている/栽培品目で50万円以上の生産・販売実績などがある
品目 (規定なし) 地域で一般的に栽培され、一般的な販売ルートがある品目(発電事業者などが市場価値のない作物を買い取る場合は該当しない)/原則毎年収穫でき、やむを得なくても3年以内に計画収量を確保できる
単収 地域平均より2割以上減らないか 同じ(同一市町村・同年産の平均的な単収から、おおむね2割以上減るおそれがない)
遮光 作物の生育に適した日照が保たれるか 遮光率30%未満(遮光率で判定が難しい設備は、生育期間を通じて圃場の全地点で日射量の減少が20%未満)
高さ・支柱 最低地上高2m以上 最低地上高おおむね3m以上、農業機械の進行方向に対して支柱間隔おおむね4m以上
地域との共生 (規定なし) 地域の協議会などで合意が得られている/発電事業者から営農者などへ適正な利益還元(減収額などを上回る水準で協議・合意)/第三者への損害の補償(保険加入など)/虫食い状の設置など土地改良や規模拡大の妨げにならない/撤去費用の確保
転用期間 — 市町村は一時転用期間が10年以内で適切かを確認して認定

また、公的機関の複数年の試験栽培などの科学的な根拠がある場合には、国・都道府県の助言を受けて、市町村が地域の事情に応じた特例を定められる仕組みも盛り込まれています。

6. 手続きはどう変わるか — 市町村の認定が許可の条件に

これまでは農地法の一時転用許可(都道府県・農業委員会の審査)だけで設置できました。新制度では、農山漁村再エネ法に基づいて市町村が「設備整備計画」を認定することが、一時転用許可の条件になります。農地法だけでは考慮しにくかった「地域との共生」や「利益還元」を、制度として審査に組み込むためです。

現行制度 新制度
根拠法 農地法 農地法+農山漁村再エネ法
国の役割 ガイドライン 基本方針で具体的な基準(遮光率30%未満など)を規定
市町村 — 基本計画を作成し、事業者の設備整備計画を認定
事業者の申請 一時転用許可の申請 設備整備計画の認定申請(認定で一時転用許可を含む)
毎年度の報告 収量・収支 収量・収支に加え利益還元の状況
農振農用地 一時転用として転用可 望ましい営農型太陽光発電に限り設備整備区域に設定できる

既存の事業者への対応も厳しくなる

法律は過去にさかのぼって適用しないのが原則のため、既存の設備には現行基準が適用されます。ただし次のように、できる限り厳しく対応するとされています。

  • 再許可(更新)の時に、労働力の確保・50万円以上の販売実績・販売ルート・毎年収穫できる品目などの基準を追加
  • 国が都道府県と一緒に審査・現地調査する対象を、下部農地4ha以上から2ha以上に引き下げ
  • 勧告・命令の判断基準を明確化(実績報告書を出さない、是正指導に従わない、2年以上続けて収量要件を大きく下回る など)
  • 国に報告された栽培実績データに加え衛星データも使って不適切な案件を見つけ、自治体に通知
  • 勧告後に改善が見られない事業者の再許可申請は不許可とする運用を明確化/一時転用許可の期間を短くしてチェックを強化

7. スケジュール — 2027年4月に新制度へ

「望ましい営農型太陽光発電」新制度への移行スケジュール
「望ましい営農型太陽光発電」新制度への移行スケジュール
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関係法令の改正案は2026年7月24日から8月22日までパブリックコメントにかけられました。農山漁村再エネ法の改正省令・告示は2026年9月末以降に改正され、改正農地法施行規則の施行を予定している2027年(令和9年)4月から新制度へ移行します。市町村が基本計画を作るまでは、改正前の農地法施行規則(不許可の基準)が効力を持つ移行期間があります。

8. 国が「今後期待される」とした取組

農林水産省は、営農型太陽光発電は「適切に取り組まれる限りにおいては農業経営の改善につながる手段の一つとして有用」としたうえで、次の2つの事例を紹介しています。

  • 市民エネルギーちば(千葉県匝瑳市):発電より農業を優先した設備設計で有機大豆・有機大麦を栽培。売電収入は地代や営農者への協力金(10aあたり8万円)のほか、基金として耕作放棄地の再生などに使っています。2019年の台風15号の停電時には無料の充電所として開放し、住民150人が利用しました。
  • 舞台ファーム(宮城県美里町):太陽光とLEDを併用した大型レタス栽培施設に隣接する水田に営農型太陽光発電設備を設置し、施設の使用電力の約78%をまかなっています(2026年3月稼働開始)。

国の支援としては、みどりの食料システム戦略推進交付金の「地域循環型エネルギーシステム構築」(令和8年度予算5億7,400万円の内数)で、地域の話し合いで営農型太陽光発電のモデルを作り導入を実証する取組を支援しています。導入の手順や採算の考え方は営農型太陽光発電の始め方・採算・事業者ガイドを参照してください。

9. 新基準への異論もある

新基準、とくに遮光率30%未満の一律の基準には、推進側から異論も出ています。たとえば自然エネルギー財団は、遮光率30%以上でも高品質の作物を生産している事例が全国にあるとして、「科学的な根拠のない遮光率の規定は削除すべき」と主張しています(2026年8月3日のコラム)。市町村が基本計画を作らないと認定が進まないため、地域によって導入のしやすさに差が出る可能性も指摘されています。

一方で、上のデータのとおり「遮光前提の作物を植え、実際にはほとんど収穫していない」案件が面積の大きな部分を占めているのも事実です。新基準は、発電のための農地利用ではなく、農業を続けるための発電に制度を戻すものといえます。

よくある質問

既に設置している営農型太陽光発電は、新基準に合わせる必要がありますか?

既存の設備には原則として現行の基準が適用されます。ただし一時転用許可の更新(再許可)の時に、販売実績や労働力などの基準が追加される予定で、国による現地調査の対象も2ha以上に広がります。

遮光率30%未満とは、どのくらいの設置密度ですか?

圃場の面積に対してパネルが影を落とす割合が30%未満という意味です。遮光率で判定しにくい設備は、生育期間を通じて圃場のすべての地点で日射量の減少が20%未満であることが条件になります。定義は今後さらに詳しく示される予定です。

さかきやブルーベリーは今後植えられなくなりますか?

品目そのものは禁止されていません。条件は「地域で一般的に栽培され、販売ルートがある」「原則毎年収穫でき、やむを得なくても3年以内に計画収量を確保できる」ことです。発電事業者などが市場価値のない作物を買い取るケースは、一般的な販売ルートに含まれません。


ライセンスと引用方法

要素 ライセンス 条件
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元データ(農林水産省の公表値) PDL1.0 出典表記・加工表記が必要

推奨クレジット表記:

出典: smartagri.jp「望ましい営農型太陽光発電の新基準とは」
https://smartagri.jp/p/8468/
元データ: 農林水産省「望ましい営農型太陽光発電に関する検討会」資料(令和8年4月)
https://www.maff.go.jp/j/study/250609.html
(2026年9月25日に利用)を加工して作成

※本ページは農林水産省の公表値を加工して作成しています。国(農林水産省)が本ページの編集・加工内容を承認・作成したものではありません。


出典・参考URL

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