植物性タンパク質は「豆臭い」「えぐみがある」といった不快な風味が普及の壁になってきました。スイス・チューリッヒ発のスタートアップ「SentiaNova(センティアノヴァ)」は、この問題を熱も蒸気も使わずに解決する前処理技術でステルス状態から姿を現しました。豆由来タンパク質の風味課題に正面から取り組む同社の概要を紹介します。
会社基本情報
SentiaNova AG はスイス・チューリッヒを拠点とするフードテックスタートアップです。植物性タンパク質から不快風味を取り除く特許技術を中核に据えています。
- 社名:SentiaNova AG
- 本社所在地:スイス・チューリッヒ
- 共同創業者 兼 CEO:Daria Reisch(ダリア・ライシュ)氏
- 共同創業者 兼 CTO:Roi Wurgaft(ロイ・ヴルガフト)氏。植物性タンパク質製造プラントの構築に26年の経験を持つ
- ステルス脱出:2026年4月23日に技術を公表
同社はチューリッヒのベンチャースタジオ「FOOD FOUNDERS Studio」の支援を受けて立ち上がり、公表前の約12か月間はアドバイザーや原料メーカーによる検証を重ねてきました。
事業概要
SentiaNova が掲げるのは「植物性タンパク質を、植物性タンパク質の味がしないものにする」というコンセプトです。豆類(pulse)タンパク質に含まれる不快風味の原因物質を選択的に取り除き、風味の中立なベース素材を提供します。
最初の製品はエンドウ豆(ピー)タンパク質の濃縮物(コンセントレート)で、現在サンプル提供を行っています。商業規模での供給は2026年第4四半期(年末)を予定し、その後にタンパク質含有率の高い分離物(アイソレート)の展開を計画しています。同社の前処理プロセスは、エンドウ豆のほか、ソラマメ、ひよこ豆、緑豆、レンズ豆といった豆類タンパク質への適用が想定されています。
課題と解決策
植物性タンパク質、とりわけ豆類由来のタンパク質には、苦味・渋味・青臭さといった不快なオフフレーバーがつきまといます。これは食品への配合率を制限する大きな技術的障壁であり、代替肉や植物性飲料が「美味しくない」と評される一因にもなってきました。
従来の対策は、香料やマスキング剤で不快風味を覆い隠す方法が中心でした。これに対して SentiaNova は、フラボノイドやサポニンといった自然由来の不快風味成分そのものを取り除くアプローチを採ります。CTO の Wurgaft 氏は、自社は風味を「マスキングしているのではなく、取り除いている」と説明しています。
技術上の最大の特徴は、熱も蒸気も使わない点です。加熱を伴わないためタンパク質の変性を避けられ、機能性を損なわずに済みます。同社によれば、この処理により以下のような利点が得られます。
- 分散性・乳化性・保水性といったタンパク質の機能性を維持・改善する
- 濃縮や分離の工程に入る前の「前処理ステップ」として既存設備に組み込める
- 処理は特許で保護されている
効果は第三者による検証でも裏付けられています。官能評価コンサルティングの Haystack Consulting が実施し、アプリケーション開発は Nursh が支援しました。訓練を受けた12名の評価者によるパネルでは、市場をリードする脱風味エンドウ豆濃縮物や上位のエンドウ豆分離物と比較したうえで、オフフレーバー全体の低減が99%の信頼水準で統計的に有意と確認され、苦味・渋味・青臭さのいずれも低減したとしています。
ビジネスモデル
SentiaNova は自社で最終製品を売るのではなく、豆類タンパク質の前処理という上流工程に価値を置きます。中立的な味のベース素材を供給することで、食品メーカー側はマスキング剤や香料の使用を減らせます。同社は、バニラプディングでの応用試験において、マスキング剤の排除とバニラ香料の配合量を1.0%から0.8%へ削減できたことで、配合全体のコストを15%削減できたとしています。
低い資本コスト・運用コストで既存インフラに統合でき、新たな大型設備投資を必要としない点も訴求点です。同社は確立されたエンドウ豆タンパク質メーカーとの提携を進めています。
今後の計画
SentiaNova は現在シードラウンドの投資家を募っています。立ち上げ資金は FOOD FOUNDERS Studio から得ており、これを足がかりに本格的な資金調達フェーズへ進む段階です。製品面では、2026年第4四半期のエンドウ豆濃縮物の商業供給開始を当面の目標とし、続いて分離物の展開を見据えています。
コメント
CEO の Reisch 氏は、味が植物性タンパク質普及の「最後の障壁」だったとしたうえで、第三者検証の結果について「我々は段階的に優れているのではなく、別のカテゴリーにいる」と自信を示しています。
植物性タンパク質の「豆臭さ」は、日本でも代替肉や植物性飲料を語るうえで繰り返し指摘される課題です。香料で覆い隠すのではなく原因物質を取り除く、しかも加熱を避けて機能性を守るというアプローチは、規制上のハードルも低く既存設備に組み込みやすいとされ、国内の食品メーカーや農業法人が原料調達を考えるうえでも注目に値する動きと言えそうです。
参考URL
- SentiaNova emerges from stealth to tackle plant protein’s taste problem(AgFunderNews) リンク
- Plant-Based Proteins Have A Taste Problem – This New Startup Has A Fix(Green Queen) リンク
- SentiaNova launches patented pea protein de-flavouring technology with independent taste validation(Food Engineering & Ingredients) リンク
- SentiaNova 公式サイト リンク