魚の細胞を培養することで魚肉を作る、バイオテクノロジー企業Finless Foods社について解説

事業概要

Finless Foods社は、魚の細胞を培養することで魚肉を作り、持続可能な魚介類の供給を目指すバイオテクノロジー企業です。2017年にアメリカのカリフォルニアを拠点に設立され、従業員数は10人程度と推定されます。創業者であるMike SeldenとBrian Wyrwasは、経験豊富なバイオ化学者かつ分子生物学者であり、持続可能で美味しく、倫理的な生産方法で魚介類を世界に届けることを使命としてFinless Foods社を立ち上げました

人口増加によって魚介類消費量は増加し続けると同時に、新鮮で水銀を含まない健康的な魚肉の需要が高まっており、天然魚の資源維持と養殖生産の高効率化が急務となっています。Finless Foods社はこれらの課題に対して、人間が消費する魚を細胞から培養することで、自然の生態系に影響を与えることなく持続的に魚介類を供給できる体制作りに取り組んでいます。

ビジネスモデル

Finless Foods社は主にクロマグロ、ウニ、ウナギ、フグと同等の魚肉の生産に取り組んでおり、2021年ごろから細胞から培養した魚肉の販売を開始する予定です。

クロマグロは寿司や刺身によく使われるものの養魚場には適さないため、培養シーフードとして生産するメリットがあると考えています。

テクノロジー:細胞の培養による魚肉生産技術

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Finless Foods社は、2017年9月に細胞の培養による魚肉の生産に成功しました、細胞生物学に基づき、実験室のような環境で、細胞培養から肉細胞や乳タンパク質などの食品を作り出すことが可能です。

養殖魚肉の生産には哺乳類や鳥よりも利点があり、魚は哺乳類や鳥よりも体温がはるかに低いため、細胞は24~26度で培養されます。また、魚の細胞は温度変化に対してより耐性があり、エネルギーコストの削減と生産の簡素化につながります

魚の薄いシート状の組織は、動物の筋肉の複雑な3D構造よりも培養によって簡単に再現することができるため、養殖魚肉の正確な食感を作り出することができます

また、Finless Foods社は、宇宙での細胞培養にも取り組んでおり、魚の筋肉細胞を国際宇宙ステーションに送りました。チームは細胞を特定の密度まで成長され、バイオプリンターを使用して小さな球体の細胞を形成することに成功しています。

今後の計画

2017年時点では、培養した魚の製造コストは1ポンド当たり19,000ドルでしたが、製造コストを50%以上削減し、クロマグロと同等の価格までコスト削減することを目指しています

最大のコストは栄養培地であり、塩、糖、タンパク質、炭水化物、水からなる培地は、細胞の増殖に必要不可欠です。栄養培地をリサイクルし、コストを下げることで、製品コストの低減に繋がると考えています。

2021年ごろから、細胞から培養した魚肉の販売を開始する予定です。

コメント

人口増加や、一人当たりの魚介類消費量の増加により、魚介類の需要は高まっていると同時に持続可能な供給が必要とされています。養殖ではなく培養という画期的な方法で魚肉を生産するFinless Foods社の取り組みは今後さらに注目されることが予想されます。

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