植物由来の保護物質で野菜の鮮度を維持。フードロスをなくすためのApeelの挑戦。

野菜を産地から小売店や消費者の元へ運ぶには、輸送中の劣化を抑える処理が必要です。そのためにポストハーベストを使用したりコールドチェーンを採用したりする企業も多くありますが、Apeelはより低コストで安全な手法を提供できます。植物の種子や果皮に由来する保護物質を使い、ポストハーベストや冷蔵設備に頼ることなく、野菜の鮮度を維持できるのです。

Apeel 基本情報

住所:71 S Los Carneros Rd, Goleta, California, 93117, US

CEO:Games Rogers

設立年:2012年

従業員数:201-500

野菜のロスは鮮度維持技術で減らせる

生鮮野菜の40%以上が捨てられている

FAOによると、生鮮野菜の40%以上もの量が廃棄されています。多くは輸送・保管中に鮮度が劣化したことが原因のロスであり、鮮度維持技術次第でこのロスは減らせるはずです。しかしそのために高額な冷蔵設備を導入したり、消費者に警戒されがちなポストハーベストを用いたりするのは、流通・小売業者にとって負担になるでしょう。

より安全で低コストな、Apeelの鮮度維持技術

そこでApeelが提供しているのが、植物が元々備えている保護物質を利用し、野菜の鮮度を保つ技術です。果実の皮や種子などには、乾燥や病原菌から身を守るための保護物質が存在します。Apeelはこれらの保護物質を抽出して独自の配合を開発し、野菜の表面に塗布できるように改良しました。これによって、室温で野菜の鮮度が維持できる期間を大幅に伸ばすことができます。

鮮度維持の効果の例

30日経過したアボカドの例。右側が処理済みのもの
りんごの例、81日経過しても処理後(右)はほとんど変化が見られません
  • 未処理のアボカドやライムは、一週間程度で皮が茶色くくすみます。しかしApeelの技術で処理すると、二週間程度は外見の劣化はありません。(動画:https://www.youtube.com/watch?v=c1GYpoBJd4A
  • Apeelの技術で処理した青リンゴは、約1か月たっても青々としたままです。

これらの他にもパイナップル 、アスパラガス、オレンジなどの保存にも効果があり、実用化されています。

Apeel導入のメリット

野菜の流通・小売・加工に関わる業者の場合、野菜の保存性が上がれば、それだけ廃棄による在庫や仕掛品のロスを減らせます。常温で運んだり店頭に置いたりできる期間が伸びるので、冷蔵設備にコストをかけられない小規模な農家や小売業者にとって、特に利便性が高いと言えるでしょう。

さらに、ポストハーベストや冷蔵設備に頼らない保存技術であるため、環境保全や食の安全への関心が高い層の興味をひけるかもしれません。SDGsへの取り組みのひとつとして有力なのではないでしょうか。

Apeelの最近の動向

食品ロスの減少や、貧しい農村地帯の収入増を目標に掲げ、Apeelは技術を普及しながら投資を募っています。2020年はじめまでに約380億円の出資が集まり、同年10月にはさらに31億円の増資を獲得しました。

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