SeeTree:1本1本の果樹をAIとIoTで個別管理する「ツリーインテリジェンス」プラットフォーム

会社基本情報

  • 会社名:SeeTree
  • 本社所在地:イスラエル テルアビブ(米国カリフォルニア、ブラジルにもオフィスを展開)
  • 設立:2017年9月
  • CEO:Israel Talpaz(イスラエル国防・情報機関で33年のキャリア。データ駆動型のソリューション設計を専門とする)
  • 共同創業者:Barak Hachamov(会長、連続起業家)、Guy Morgenstern(CTO、R&Dマネジメント18年以上)
  • 従業員数:約40名(2019年時点。AIスペシャリストとアグロノミストを含む)
  • 累計資金調達額:約6,520万ドル(シリーズC完了時点)
  • 公式サイト:https://www.seetree.ai/

事業概要

SeeTreeは、果樹園における樹木を1本1本個別に管理する「ツリーインテリジェンス」プラットフォームを提供するイスラエル発のアグリテック企業です。軍事グレードのドローン、衛星画像、IoT地上センサー、マルチスペクトル撮影などを組み合わせたデータ収集と、AI・機械学習・コンピュータビジョンによる解析を通じて、樹木単位の健康状態スコアリング、生産性分析、早期異常検出を実現しています。

現在、世界全体で約4億本の樹木約100万エーカーの果樹園・森林をカバーしており、柑橘類、パーム、ユーカリ、アボカド、アーモンドなど幅広い樹種に対応しています。展開地域はブラジル、米国、メキシコ、南アフリカ、アルゼンチンに加え、アジア太平洋やウクライナにも拡大中です。

プロダクト構成

SeeTreeのツリーインテリジェンスプラットフォームは、以下のコンポーネントで構成されています。

  • データ収集レイヤー:軍事グレードのドローン、衛星画像、IoT地上センサー、気象データ、マルチスペクトルイメージング、現地フィールドデータの統合
  • AI解析エンジン:機械学習とコンピュータビジョンで個々の樹木のバイオメトリクス(樹高、幅、樹冠体積、列間距離)を測定し、健康スコアを算出
  • アクションインサイト:低パフォーマンス樹木・枯死木・欠損木の特定、灌漑不具合による水ストレスの早期検出、農薬散布の最適化提案

どういう課題をどう解決しているか

なぜ従来の果樹園管理では不十分なのか

従来の果樹園管理は、果樹園全体もしくはブロック単位で均一に管理するアプローチが主流です。しかし、果樹は1本ごとに健康状態や生産性が大きく異なります。特に果樹は苗木を植えてから生産可能になるまで4〜5年かかるため、1本の病気や枯死が一般作物よりもはるかに大きな経済的損失につながります。ブロック単位の管理では、健康な樹木にも病気の樹木にも同量の水・農薬・肥料を投入するため、資源の無駄が発生し続けます。

CEO のIsrael Talpaz氏は「樹木レベルのデータがなければ、水や農薬などの貴重な資源が無駄になり、生産者・食料供給・環境のすべてにとって損失となる」と指摘しています。

SeeTreeの「ツリーインテリジェンス」が異なる点

SeeTreeが従来のリモートセンシング企業と大きく異なる点は、樹木作物に特化していることです。一般的な精密農業プラットフォームは畑作物(トウモロコシ、大豆など)を対象としたものが多く、樹木作物は「データ収集がより複雑」であるという理由から十分にカバーされてきませんでした。

SeeTreeは軍事・情報機関出身の創業チームの経験を活かし、ドローン・衛星・地上センサーなど複数のデータソースを統合して個々の樹木を識別・追跡する技術を開発しました。これにより、果樹園全体のデータを単に集めるのではなく、1本ごとの健康スコアを算出し、どの樹木に対してどのような介入が必要かを具体的に提示することが可能になっています。

導入実績

Citromax(アルゼンチン)

アルゼンチンのトゥクマン州に拠点を置く柑橘類の大規模生産者Citromaxとの協業では、初年度に以下の成果を達成しました。

  • 生産性のある樹木、欠損木、枯死木、新植木(非生産段階)を区別する完全な樹木インベントリの作成
  • 灌漑設備の故障による水ストレスの早期検出
  • 実際のバイオマスに基づいてブロックごとに農薬散布量を調整し、農薬使用量の削減を実現

その他の導入実績

SeeTreeはGoogle Cloudのインフラストラクチャを基盤としてプラットフォームを構築しており、Google Cloudの導入事例としても紹介されています。また、フィールド実験では果樹園内での樹木の位置特定精度が800回の試行で99%に達することが確認されています。

ビジネスモデル

SeeTreeはSaaS型のサブスクリプションモデルを採用しています。果樹園の規模に応じてプラットフォームの利用料を課金し、ドローンによるデータ収集サービスとAI解析結果の提供を継続的に行います。また、シリーズBラウンドでは柑橘類のジュース大手Citrosucoやオルビア(灌漑大手Netafimの親会社)といった業界パートナーからの出資を受けており、バリューチェーン上の企業との戦略的関係を構築しています。

資金調達の推移

  • シリーズA:1,150万ドル(Hanaco Ventures主導、Canaan Partners Israel、Wazeの共同創業者Uri Levine、iAngels、Mindset Venturesが参加)
  • シリーズB(2020年12月):3,000万ドル(IFC(世界銀行グループ)主導、Citrosuco、Orbia Ventures、クボタが参加)
  • シリーズC(2024年1月):1,750万ドル(HSBC Asset ManagementとEBRDが主導、OurCrowd、SmartAgro、Hanaco Ventures、Mindset Ventures等が参加)

シリーズBでは世界銀行グループのIFCが主導し、日本のクボタも参加するなど、農業インフラの主要プレイヤーからの支持を得ている点が特徴的です。

競合との比較

  • Aerobotics:航空画像と機械学習による作物パフォーマンス分析。樹木作物も対象としており、最も直接的な競合
  • Aurea Imaging:深層学習を用いた精密果樹園管理。個々の樹木レベルでの可変施用に対応
  • Ceres AI:航空画像とデータ分析による農業意思決定支援。畑作物がメイン
  • IntelinAir:航空データによる作物の健康モニタリング
  • Sentera:精密農業向けのセンシングとアナリティクス

SeeTreeの優位性は、樹木作物に完全に特化し、ドローン・衛星・地上センサーなど複数のデータソースを統合した包括的なプラットフォームを提供している点にあります。また、約4億本という管理実績のスケールも競合を大きく上回っています。

今後の計画

2024年1月のシリーズC調達資金を活用し、アジア太平洋地域への展開を加速しています。また、果樹園だけでなく森林管理への適用も進めており、ユーカリなどの商業林を対象としたツリーインテリジェンスの提供も開始しています。シリーズCにはEBRD(欧州復興開発銀行)とHSBC Asset Managementが参加しており、ESG・サステナビリティの観点からも評価を受けています。

コメント

SeeTreeの「1本1本の樹木を個別に管理する」というアプローチは、精密農業の概念を果樹園という新しい領域に持ち込んだものです。畑作物向けのリモートセンシング技術は数多くありますが、樹木は3次元構造が複雑で、かつ数年単位の長期投資が必要なため、1本ごとの管理がより切実な課題となります。

また、シリーズBでクボタが出資していることからもわかるように、日本の農機メーカーにとってもIoTセンサーとAIを活用した農業データプラットフォームは注目分野です。日本国内の柑橘・果樹農業においても、高齢化に伴う管理の効率化ニーズは高く、こうしたツリーインテリジェンスの技術が導入される可能性は十分にあるでしょう。

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