トラクターのカメラが施肥量を最適化し肥料を削減: Augmenta

今回は、Augmenta社による、トラクターに搭載可能な、画像処理デバイスを紹介します。このデバイスは、取得した画像をAI技術により解析、瞬時に植物の健康状態を判断し、必要な追肥量を算出することができます。この新技術により、農作業の効率化や、農地に投入する肥料を削減できる可能性があります。

Augmenta社の概要

Augmenta社は、ギリシャ・アテネにおいて、2016年に設立された企業です。Dimitri Evangelopoulos氏とGeorge Varvarilis氏により設立され、現在では数十名規模となった新興企業です。AI技術を利用した、農業の効率化を目指しています(1)。

 Augmenta社の事業と慣行法の比較

(慣行法)

農作物の増産と、化学肥料はきっても離せない関係です。20世紀中頃の緑の革命では、高収量品種の利用と共に、化学肥料の多量投入により、収量の増加を実現しました。

しかし、このような農法では、多量に使用された肥料が、農地から環境へ流出し、地下水汚染や河川・湖沼の富栄養化など、水質汚染の原因となることが指摘されています(2)。また、ムギ類栽培においては、窒素肥料が少ないと茎葉が淡い色となり、多いと濃緑色となり、軟弱徒長するといわれ、麦の生育を大きく左右することがしられています(3)。さらに、一般に施肥や追肥を行う場合、決められた量を農地全体に対し、均一に散布することが多いと考えられますが、同一農地内でも、もともとの土壌肥料分が異なることもあり、生育にばらつきが生じる原因ともなりえます。

(Augmenta社の事業と、その優位点)

Augmenta社の新技術は、これらの問題を解決できる可能性があります。

この新技術は、トラクターの上部に、AFA(Augmenta field analyzer)を取り付け、植栽されている植物の画像を取得し、瞬時に健康状態等を把握、必要な施肥量などを計算することを可能としました(4)。

トラクター上部にあるのがAugmenta社のカメラ。前方の土壌を分析しその場で施肥量を決定する

すなわち、農地内を細分化し、エリアごとに収量を最大化するために、必要最小限の施肥量を把握することが可能となりました。その結果、ナタネ栽培における実証実験では、農地に投入する肥料を32%削減することができました(5)。

カメラによる分析でどこに重点的に施肥すべきか、またどこに不要か分析ができる

また、同様の技術として、ドローン、衛星画像や多数のセンサーを用いる、栽培管理法もありますが、これら既存の技術と比べ、高解像度の画像をリアルタイムに解析することが可能であることに加え、安価に装置を導入できることが優位点として挙げられます(6)。

現在は、栽培期間中における追肥での利用を想定し開発を行っていますが、今後は、植物成長調節剤の散布や綿栽培における枯葉剤の散布などにも活用できるよう開発を継続しています(6)。

 コメント

現在の人口増加による、食糧需要増加に対する増産のため、必要に応じた施肥は重要です。一方で、過剰施肥による環境汚染問題に対する対応も喫緊の課題です。今回紹介した技術の導入事例では、実際に施肥量が大きく削減されています。このことは、環境への配慮のみならず、施肥コスト削減による、農家の利益増大にも寄与できる技術であると考えられます。

また、昨今の農業従事者減少に伴い、農家1人当たりの耕作面積は広がる傾向にあり、管理の効率化が求められますが、この点についても、一つの解決策となりえるものと考えられます。

 参考サイト