人工合成フェロモンによってオスの害虫を混乱させ繁殖を抑えるProvivi社の技術を解説

Provivi社の事業概要

Proviviは、害虫を制御するフェロモン製品を開発する企業です。Frances Arnold氏, Pedro Coelho氏, Peter Meinhold氏の3名によって2013年にアメリカのカリフォルニア州を拠点として設立されました。

フェロモンによって昆虫を誘引することで、化学物質による農薬を使う必要がなく、有益な昆虫を保護しながら有害な害虫を防除することができます。

https://vimeo.com/447280459

創業者の一人であるFrances Arnold氏は、2018年にノーベル科学賞を受賞した人物で、指向性進化法のパイオニアとされています。

テクノロジー:人工合成フェロモンによってオスの害虫を混乱させ、繁殖を抑える

フェロモンは昆虫によって生成される天然の化合物で、他の昆虫の行動に影響を与えます。通常フェロモンは風で運ばれ、昆虫の仲間で食べ物を見つけたり、捕食者から逃れたりと、多くの役割を持っています。

中でもメスの昆虫がオスの昆虫を引き付けるために放出されるフェロモンは「性ホルモン」と呼ばれています。これらの強力な誘引物質は人工的な合成が可能で、昆虫の制御に使用することができます

Provivi社は、メスの害虫が放出するのと同様のフェロモンをより強く放出することで環境を飽和させ、オスの昆虫を混乱させます。オスはメスが見つけられなくなるため、交尾が阻止され、繁殖を防止することができます。結果的に将来世代の害虫が少なくなります。

メスがフェロモン(ピンク色)を出しているが、Provivi社の製品が出すフェロモン(水色)が強いためオスはメスを見つけられない(公式動画より)

フェロモンを利用することで有益な昆虫を保護することができ生物の多様性を維持しながら作物の生産が可能になります。また化学物質由来の農薬を利用しないため、食品上有害な残留物を削減することができます。

また、害虫は殺虫剤耐性が年々強くなる傾向にありますが、フェロモン製品の利用によって、より強力な殺虫剤を利用する必要がなくなります。

低コストで生産可能なProvivi社のフェロモン

Provivi社は、独自のバイオ触媒と、低コストの原料を使用してフェロモン合成に必要な工程を減らし、大規模かつ低コストでの生成を実現しています。この製造方法はProvivi社によって特許取得済みであり、製造コストを段階的に変更することができます。

同社の製品。一定間隔で圃場に置くだけで良い(公式動画より)

Provivi社の製品は低コストのため、トウモロコシ、米、大豆など大面積作物でも利用ができます。また中国とインドネシアでの広範囲に及ぶ試験で性能を発揮し、害虫による作物被害の軽減と、殺虫剤の利用量削減に成功しています。

今後の計画

Provivi社は2019年10月に、8500万ドルの資金調達を完了しました。この資金調達により、今後はフェロモンの有効成分の生産を拡大し、農家と協力してフェロモン製品の有効性を引き続き実証していく方針です。

コメント

化学物質による殺虫剤を使わないメリットは自然にとっても人間にとっても多く、フェロモン製品の利用が広まれば生物の自然な生態系を維持しながらの生産が可能になるだけでなく、化学物質の農薬による食品上有害な残留物を削減することができます。Provivi社のような技術で、今後ホルモン製品の利用が一般的になり、より安心して作物を食すことのできる将来が期待されます。

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