自動カーテン装置とは
自動カーテン装置(カーテン開閉装置)は、ハウス内に張ったスクリーン状の被覆資材をモーターやワイヤー、ラックピニオン等で水平または傾斜方向に開閉する装置です。日射量や室温、時刻に応じてカーテンを自動で動かし、ハウス内の遮光・遮熱・保温・遮蔽(暗黒処理)を制御します。
施設園芸の生産性は、光環境と温度環境の最適化に大きく左右されます。自動カーテン装置を導入すると、日射が強すぎる時間帯は遮光して葉焼けや光合成阻害を防ぎ、夜間は保温カーテンを閉めて暖房負荷を抑え、必要に応じて電照栽培の遮蔽(短日処理)にも使えます。手動の開け閉めをやめるだけでも省力効果は大きく、複数棟を運営する農家ほど投資効果は高くなります。
カーテン素材の種類と用途
自動カーテン装置に張る「スクリーン」は、機能ごとに素材設計が異なります。主要なタイプは次のとおりです。
- 保温カーテン(不織布・アルミ蒸着フィルム複合): 夜間の長波放射熱の損失を抑え、暖房燃料を削減します。アルミ箔を編み込んだタイプは熱反射率が高く、保温性能が最も高い分類に入ります。
- 遮光カーテン(黒系・銀黒系ネット): 夏期の強光や高温対策に使用します。遮光率30〜75%程度の製品が一般的で、作物と季節に合わせて選びます。
- 遮熱カーテン(白系・アルミ蒸着系): 太陽光の近赤外領域を反射し、ハウス内の温度上昇を抑えながら可視光を一定程度通します。トマト・イチゴの夏期高温対策に有効です。
- 遮蔽(暗黒)カーテン: 菊の電照抑制栽培やイチゴの花芽分化制御で使う、光をほぼ完全に遮断するタイプです。
- 二重カーテン(多層化): 保温と遮光・遮熱のスクリーンを2層構成にし、季節ごとに使い分けます。近年の高度施設では標準仕様になりつつあります。
農研機構の研究では、布団状の高断熱資材を内張カーテンとして使うことで、従来資材と比較してパイプハウスの暖房燃料使用量を40%以上削減できることが報告されています。また2層カーテンでは、資材選択によって最大65%の放熱量減少が可能とされます。
自動制御によるメリット
自動カーテン装置の本質的な価値は、単なる省力化ではなく環境制御の精度向上にあります。具体的なメリットは以下のとおりです。
- 日射制御による光合成最適化: 日射センサーと連動して遮光カーテンを動かすことで、強光時の光阻害を避けつつ、薄曇りでは積極的に光を取り込めます。
- 暖房コストの削減: オランダWageningen大学の研究では、保温カーテンの放射特性(熱赤外領域の低透過・低放射率)が暖房エネルギー消費に大きく影響することが定量化されており、適切な保温カーテン運用は省エネの基幹技術と位置づけられています。
- 湿度コントロールとの両立: 通気性のある保温カーテンを使うか、開度を段階制御(スクリーンギャップ)することで、保温しつつ過湿による病害発生リスクを下げられます。
- 夏期の高温抑制: 遮熱カーテンを日中に閉じることで、ハウス内ピーク温度を数℃下げ、作物のストレスや軟弱徒長を抑えます。
- 労力削減: 手動カーテン開閉は1棟あたり毎日10〜30分の作業になり、複数棟経営では大きな負担です。自動化により、開閉のタイミングを逃さずに済む点もメリットです。
主要メーカーと製品
誠和(日本)
栃木県の株式会社誠和は、施設園芸の環境制御で国内最大級の実績を持つメーカーです。カーテン装置は50年以上の販売実績があり、自動カーテン、ダッチライト型ハウス向けのSHラック、パイプハウス内張り用のSHハンディ、二層構成のツインカーテンなどをラインナップしています。アルミ複合スクリーン「LSスクリーン Tempa」のような自社スクリーン資材も供給しています。
ネポン(日本)
ネポン株式会社は温風暖房機やハウス環境制御で広く知られるメーカーです。統合環境制御盤MC-6001と農業クラウドアグリネット アドバンスを組み合わせることで、カーテン・天窓・暖房機・CO2施用機をセンサー連動で統合制御できます。カーテン開閉単体ではなく、ハウス全体の統合制御を志向する場合に有力な選択肢です。
東都興業(日本)
東都興業株式会社は、ハウス骨材から付帯機器まで幅広く扱うメーカーで、巻上げ換気装置「電動カンキット」やルーフ・カーテン・サイドを一体制御する「TSエアユニット」など、中規模パイプハウス向けの開閉装置に強みがあります。新規就農者からの導入実績も多く、入手性と価格のバランスを取りやすい選択肢です。
住化農業資材(日本)
住友化学グループの住化農業資材株式会社は、被覆資材(フィルム・スクリーン)のメーカーとして遮光・遮熱ネット類を多数供給しています。カーテン開閉装置そのものよりも、装置に張るスクリーン素材選びで候補に入るメーカーです。
Ridder(オランダ)
オランダのRidderは、欧州型大規模温室の標準サプライヤーの一つで、エネルギー節約スクリーン(RES)、遮光スクリーン(RSS)、暗黒スクリーン(RBO)、光拡散スクリーン(RLD)など用途別に細分化した製品群と、専用の駆動システムを提供しています。大型のフェンロー型ガラス温室で、保温と遮光を多層で運用したい場合の選択肢になります。
Hoogendoorn(オランダ)
Hoogendoorn Growth Managementは、温室統合制御コンピュータの老舗です。自社製スクリーン素材は供給しませんが、統合制御システムIIVOと「Connected Screening」機能により、Svensson等のスクリーンと連動して湿度移動・光透過・省エネ効果をリアルタイムに把握しながら自動制御できる点が特徴です。データドリブンな運用を志向する大規模生産者向けです。
選び方の指針
自動カーテン装置の選定では、ハウスの規模・構造、栽培作物、優先したい機能の3軸で考えると失敗しにくくなります。
- 小〜中規模パイプハウス(1〜5棟): 国内メーカーの標準型(誠和SHハンディ、東都興業の電動カンキット系)が現実的です。電源容量と既存骨材との適合性を必ず確認します。
- 中〜大規模施設(連棟・軒高ハウス): ラックピニオン式の本格カーテン装置(誠和SHラック等)と二層構成を検討します。保温と遮光を別系統で動かせると運用自由度が大きく上がります。
- 大規模ガラス温室・植物工場: Ridderのスクリーンと駆動システム、Hoogendoornのような統合制御を組み合わせ、最初から多層・多機能を前提に設計するのが合理的です。
- トマト・キュウリ: 夏の遮熱と冬の保温の両立がポイントです。遮熱カーテンと保温カーテンの二層化が有効です。
- イチゴ: 暗黒処理や夜冷との組み合わせも視野に入ります。遮蔽性能の高いスクリーンが選択肢に入ります。
- 葉物(ホウレンソウ・レタス類等): 夏期の遮光・遮熱効果と通気性のバランスを重視します。
導入費用の目安
カーテン装置の費用は、ハウス間口・奥行き・層数・スクリーン素材で大きく変動するため、公開価格はあくまで目安になります。一般的なパイプハウス向けの自動カーテン装置単体(モーター・ワイヤー・コントローラー一式、スクリーン除く)で、間口5〜6m程度の標準的な単棟ハウスなら数十万円規模、連棟・軒高ハウスで多層化する場合は1棟あたり数百万円〜という幅で考えます。
スクリーン素材は1平方メートルあたり数百円から、高機能アルミ複合タイプで1,500円超まで幅があります。費用対効果を判断する際は、装置価格だけでなく、燃料削減効果(保温カーテンで20〜40%の暖房費削減が見込めるケースも多い)と省力効果を合わせて回収期間を試算することが重要です。
補助事業としては、農林水産省の「省エネルギー型ハウス転換事業」など、設備導入を後押しする制度が継続的に整備されています。導入検討時には、最新の公募要領を農水省サイトで確認することをおすすめします。
まとめ
自動カーテン装置は、施設園芸の収益性を左右する「光と熱」のコントロールを担う基幹設備です。素材選定と制御の組み合わせ次第で、暖房費の大幅削減、夏期の高温対策、品質向上のいずれにも効きます。まずは自分のハウス規模と栽培作物にとって優先したい機能を整理し、国内主要メーカーの実機を見学した上で、必要であれば海外メーカーの多層・統合制御まで視野を広げて比較するのが、後悔の少ない導入につながります。
参考URL
- 農研機構: 高断熱資材はパイプハウスの保温性能向上に有効である
- 農林水産省: 施設園芸 省エネルギー生産管理マニュアル(改定2版)
- 農林水産省: 温室の保温性向上技術
- Wageningen University & Research: Energy saving screen materials
- Wageningen University & Research: Radiometric properties of screens and energy saving in greenhouses
- 株式会社誠和 製品ラインナップ
- ネポン株式会社: アグリネット アドバンス
- 東都興業株式会社
- Ridder Greenhouse Climate Screens
- Hoogendoorn Growth Management