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直売所に出荷している農業者や、産直を始めようとしている農業者は、お客さんが何を見て買うかを知っておくと、品揃えや表示を決めやすくなります。この記事は、日本政策金融公庫、消費者庁、福岡市の調査を使い、直売所で買う理由と買わない理由、不満の内容を整理したものです。
結論を先に書くと、直売所で選ばれる理由の上位は鮮度、価格、地元産です。一方で、午後になると品物が減ることへの不満や、スーパーと同じ値段なら買うという価格感覚も、調査にははっきり出ています。本文では、調査の年や対象を一つずつ示しながら、出荷者が売り場で試せる対応を書きます。
直売所を使ったことがある消費者はどれくらいいるのか
約6割が利用経験あり。ただし頻度は年に数回が最多
日本政策金融公庫が平成23年11月に実施した「農産物直売所に関する消費者意識調査」では、63%が直売所を「利用したことがある」と答えました。調査はインターネットで行い、全国の20歳以上の男女1,025人が回答しています。男性より女性、若い層より高い年代で利用経験の割合が高いと報告されています。
ただし、よく通う人は多くありません。利用頻度は「年に数回程度」が44.0%で最も多く、「月1回程度」が16.7%、「月2〜3回程度」が13.7%でした。週1回以上の人は合計しても9.3%にとどまります。「最近はほとんど利用していない」も16.2%います。
この調査は10年以上前のものです。直売所の数や客層は当時から変わっている可能性があります。そのため、この数字は消費者が直売所を選ぶ基準を見る材料として読んでください。直売所そのものの件数や販売額は、別の記事で統計を整理しています。https://smartagri.jp/p/10463/
野菜の購入場所で直売所を挙げた人は13.8%
同じ公庫の消費者動向調査(令和2年1月)は、全国の20〜70代の男女2,000人に、品目ごとの主な購入場所を3つまで選んでもらっています。野菜では「食品スーパー」が74.6%、「総合スーパー」が38.3%で、「直売所」は13.8%でした。果物では直売所が10.1%です。米は直売所が3.6%で、「生産者からの購入」が14.9%でした。
公庫はこの結果について、野菜と果物は直売所での購入が他の品目より高く、米は生産者から直接買う人が多いと説明しています。つまり、直売所の客は日常の買い物の大半をスーパーで済ませたうえで、野菜や果物を直売所で補っている姿が読み取れます。
消費者は直売所のどこに魅力を感じているのか
鮮度、価格、地元産が上位3つ
平成23年の公庫調査で、直売所の魅力を複数回答で聞いた結果は次のとおりです。
| 魅力として挙げられた項目 | 割合 |
|---|---|
| 鮮度がよい | 75.2% |
| 価格が低い | 65.2% |
| 地元産の食材が豊富 | 45.1% |
| 旬や季節感が感じられる | 34.2% |
| 産地や生産者が分かる安心感 | 28.5% |
| 食品の食味が良い | 25.9% |
| 珍しい商品がある | 25.6% |
| 商品の種類が豊富 | 10.1% |
| 農薬使用や栽培方法がわかる | 7.0% |
鮮度と価格が突出しています。生産者が分かることを魅力とする人は28.5%で、3割弱です。農薬や栽培方法が分かることを挙げた人は7.0%にとどまり、栽培へのこだわりを詳しく説明しても、それだけで来店理由になる人は少ないことが分かります。
スーパーと比べた印象は、鮮度80%、味61%、価格56%
同じ調査では、スーパーなどの商品と比べた直売所商品の印象も聞いています。「鮮度がよい」が80%、「味がよい」が61%、「価格が安い」が56%、「安全・安心が高い」が53%でした。「鮮度が劣る」は1%、「味は劣る」も1%と、否定的な回答はごく少数です。
福岡市が令和2年7〜8月に実施した市政に関する意識調査(市内在住の18歳以上、回収2,410件)でも、直売所に期待することの1位は「新鮮さ」で80.2%、2位は「価格の安さ」で73.7%でした。3位以下は「安全・安心」47.6%、「旬のものが楽しめる」44.7%、「商品の種類の豊富さ」44.4%、「味」37.3%、「地場産」34.0%と続きます。調査の主体も時期も地域も違いますが、上位2つは公庫の調査と一致しています。
来店の目的は日常の買い物と観光に分かれる
公庫の平成23年調査で訪問目的を聞くと、「日常の食料品等の調達のため」が53.8%、「観光のついでにお土産を買うため」が44.3%でした。「農村特有の雰囲気を楽しむため」は14.5%、「贈答品を買うため」は1.2%です。1回の消費額は「500〜1,000円程度」が35.6%、「1,000〜2,000円程度」が28.2%、「500円以下」が18.4%で、2,000円を超える人は合計17.8%でした。
日常の買い物客と観光客では、欲しい品物が違います。前者は毎日使う野菜を求め、後者は加工品や土産物を探します。野菜の購入は93.4%、果物は53.2%、農産物加工品は17.6%、パン・菓子類は15.1%でした。
直売所を使わない人や、不満を持つ人は何を理由に挙げるのか
使わない理由の上位は、知らない、遠い、スーパーで足りる
公庫の平成23年調査で、利用経験がない37%の人に理由を聞くと、「直売所を知らないから」が41.9%、「交通の便がよくない、または遠すぎるから」が39.8%、「スーパーなどの他の店で間に合っているから」が37.0%でした。「直売所に魅力を感じないから」は6.5%です。
この結果から、使わない人の大半は、存在を知らないか、行きにくいか、既存の買い物で足りていると考えています。直売所を知ったきっかけは、「通りすがり時に発見」が75.7%で、「口コミ」が20.0%でした。「インターネット」は5.3%、「広報誌・チラシ」は6.6%です。広告媒体で知った人は少なく、道路沿いで目に入ることが認知の中心でした。
品揃えの不満は午後と端境期に集まる
直売所の利用者に品揃えの不満を聞くと、「品揃えに特に不満はない」が27.3%で最多でした。不満の内訳では、「時間帯によって商品の種類が少ない」が25.9%、「時期によって商品の種類が少ない」が18.4%、「時間帯によって商品の量が不足している」が16.8%です。「いつも商品の種類が少ない」は8.3%でした。
午後に棚が空くことと、端境期に品目が減ることが、不満の中心です。改善要望を全体で聞いた設問では「特にない」が37.9%と最も多く、全体の不満は強くありません。そのうえで、要望として「直売所の場所・交通の便」17.6%、「営業時間の長さ」16.5%、「商品の種類」14.8%、「商品の価格」13.3%が上位に並びました。「接客態度」は4.5%、「商品の説明内容」は4.4%と少数です。
スーパーと同じ値段なら買う人が最多。1〜2割の値引きを求める人も半数近い
価格について、公庫はスーパーの商品価格を基準に「どこまで安ければ直売所で買うか」を聞いています。結果は次のとおりです。
| 買う条件 | 割合 |
|---|---|
| 3割程度以上安ければ買う | 11.0% |
| 2割程度以上安ければ買う | 22.7% |
| 1割程度以上安ければ買う | 25.8% |
| ほぼ同等の価格であれば買う | 32.1% |
| 1割程度までなら高くても買う | 4.7% |
| 2割程度までなら高くても買う | 1.4% |
| 3割程度以上高くても買う | 0.5% |
| 価格に関わらず買わない | 1.9% |
同等の価格で買う人が32.1%で最も多く、価格以外の理由で選ぶ人が一定数います。一方で、1割または2割の値引きを条件にする人は合計48.5%で、3割以上を加えると59.5%に達します。スーパーより高くても買う人は合計6.6%でした。
令和2年1月の公庫調査では、食品購入時の判断基準は全11品目で「価格」が1位でした。野菜は「価格」70.3%、「鮮度」70.2%で、平成27年調査の「鮮度」70.9%、「価格」67.5%から順位が入れ替わっています。「国産」は47.0%から37.1%に下がりました。近隣のスーパーの売価を確認し、品質の差を客が目で見て分かるようにする対応が、この傾向に合います。
表示や商品説明について、消費者は何を求めているのか
料理方法と鮮度の情報を求める人が3割前後
公庫の平成23年調査は、直売所の商品説明やシールに書いてほしい内容も聞いています。「特にない」の31.5%を除くと、上位は次のとおりです。
| 記載してほしい内容 | 割合 |
|---|---|
| 料理方法 | 30.1% |
| 鮮度に関する情報(収穫日・出荷日など) | 28.2% |
| 農薬や肥料の使用量 | 22.6% |
| 味など商品の魅力 | 18.6% |
| 生産地 | 17.0% |
| 農家のこだわり | 15.9% |
| 生産者(氏名・住所・連絡先等) | 12.2% |
| 栽培方法 | 10.8% |
| 売れ筋ランキング | 10.1% |
| 商品の栄養素 | 8.1% |
| アレルギーに関する情報 | 5.1% |
生産者名よりも、料理方法と収穫日の方が求められています。サービスの設問でも、「試食の提供」が42.6%、「レシピの提供」が25.5%、「農薬・肥料の使用や生産方法など商品の特徴説明」が24.6%で、食べ方を知りたい需要がはっきりしています。
福岡市の調査では、市内産の農産物の販売を促進するために必要な取り組みとして「市内産であることがわかるような表示をする」が56.9%で、「販売する場所を増やす」の57.4%に次ぐ2位でした。農産物を買うときに重視する点としては、「生産者の表示」が18.3%、「有機栽培かどうか」が9.0%でした。産地の表示は、販売促進の手段として半数を超える人が必要だと答えています。
消費者庁の調査では、原産地表示を参考にする人が約7割
消費者庁が令和8年3月に公表した「令和7年度食品表示に関する消費者意向調査」は、全国の15歳以上6,050人にインターネットで実施されました。食品表示を知っている人は76.1%です。使用されている原材料の産地(原料原産地)の表示を「いつも参考にしている」が29.3%、「ときどき参考にしている」が39.4%で、合計は68.6%でした。
年代差は大きく、「いつも参考にしている」は、女性の70代以上で45.6%、女性の60代で40.5%に対し、男性の20代は18.5%、女性の20代は17.5%です。報告書は、重み付けなどの補正をしていないため、一般人口全体を代表するものではないと明記しています。
この調査の設問は、主に包装された加工食品の表示を対象にしています。直売所の生鮮品の値札にそのまま当てはまる数字ではありません。ただし、自由回答には「加工場所は明記してあって材料の産地は書いていない」「店舗の表示は信用できない」といった声があり、産地を確認したい消費者がいることは読み取れます。直売所の加工品を出荷する場合は、使った原料の産地を書いておくと、その要望に応えられます。
調査から言える、出荷者が明日からできること
値札とPOPに、収穫日と食べ方を入れる
公庫の調査では、記載を望まれた内容の1位が料理方法(30.1%)、2位が収穫日などの鮮度情報(28.2%)でした。魅力の1位も鮮度です。値札に品目名、価格、収穫日、一言の食べ方を並べると、消費者が求めている情報の上位2つを満たせます。
生産者の氏名や連絡先を求める人は12.2%と少数ですが、「産地や生産者が分かる安心感」を魅力に挙げた人は28.5%います。名前を書く場合は、収穫日と食べ方を先に書くと、調査の順位に沿った値札になります。
書き方の具体例は、別の記事で整理しています。https://smartagri.jp/p/10468/
午後の棚を空にしない出荷量と、補充の時間を決める
品揃えの不満で最も多かったのは、時間帯による種類の不足(25.9%)でした。出荷者が自分の品目だけを昼前に全量納品すると、午後の棚に自分の品物が残らない場合があります。午前と午後に分けて納品できる直売所なら、2回に分けるのが調査の傾向に合います。分けられない場合は、前日の収穫分で午後の品目を補う方法があります。
端境期の不足(18.4%)も同じ構造です。出荷者が少なくなる時期に出せる品目を持っていると、売り場で目立ちます。作付けする品目は、直売所の担当者に品物が少ない時期を聞いて決めると、売り場に空きのある時期に出荷できます。
価格はスーパーの売価を見て決める
同等の価格で買う人が32.1%、1〜2割安ければ買う人が48.5%という結果は、スーパーの売価を基準にして直売所の価格を決める客が多いことを示しています。近隣のスーパーの同じ品目を月に一度でも確認し、自分の値付けとの差を把握しておくと、値付けの根拠になります。品質に差があれば、大きさや糖度、収穫日を値札に書いて示します。
直売所は値付けを出荷者が自分で決める販売方法です。委託販売の精算や手数料については、別の記事で扱います。https://smartagri.jp/p/10469/
試食とレシピの提供を、直売所と相談する
公庫の調査で、直売所に望むサービスの1位は「試食の提供」(42.6%)でした。福岡市の調査では、期待することとして「試食サービス」を挙げた人は7.1%と少なく、地域や調査方法で差があります。ただし、商品説明の中ではレシピや食べ方が上位であり、試食が難しい直売所でも、食べ方を書いたカードを置くことはできます。
直売所以外の販売先との組み合わせも、検討する価値があります。農家が使える販売先の全体像は、農業の販路開拓にまとめています。
よくある質問
直売所を使う消費者の割合は、最近の調査でも約6割ですか
約6割という数字は、日本政策金融公庫が平成23年11月に実施した調査の結果です。最近の同じ設問の調査は、今回確認した資料の中にありませんでした。現在の割合として使わず、当時の消費者の傾向を示す数字として扱ってください。
直売所に出す野菜は、スーパーより安くするべきですか
公庫の調査では、スーパーと同等の価格なら買う人が32.1%で最多でした。1割または2割安ければ買う人は合計48.5%います。一律に安くする必要はありませんが、近隣のスーパーの売価と大きく離れる場合は、収穫日や大きさなどで理由を値札に書いておくと、客が納得しやすくなります。
生産者の名前は、値札に必ず書いたほうがよいですか
公庫の調査で、商品説明に生産者の氏名や連絡先を載せてほしいと答えた人は12.2%でした。料理方法の30.1%や鮮度情報の28.2%よりも少ない割合です。直売所によっては出荷者名のシールを貼る運用が決まっていますので、まずその仕組みに従い、空いている欄に収穫日や食べ方を書くのが現実的です。
消費者庁の食品表示調査は、直売所の野菜にも当てはまりますか
消費者庁の令和7年度調査は、加工食品を中心に表示の活用状況を聞いたもので、直売所の生鮮品を対象としたものではありません。原料原産地の表示を参考にする人が68.6%いるという結果は、加工品を直売所に出す場合の参考になります。野菜や果物の値札については、公庫と福岡市の調査を中心に考えてください。
まとめ
公的調査から読み取れる直売所の客は、鮮度、価格、地元産を基準に来店し、使わない人は直売所を知らないか、行きにくいか、スーパーで足りていると考えています。値札には収穫日と食べ方を入れ、午後の棚と端境期の品揃えを意識し、価格は近隣のスーパーを見て決めるという3点が、調査の数字から出荷者が試せる対応です。ただし、中心となる直売所の調査は平成23年のもので、福岡市の調査は一つの市に限られます。自分の直売所の客層を観察しながら、数字を参考値として使ってください。
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