圃場管理システムを使うのは農家だけではない!投資家や商社が Agritask のプラットフォームに着目する理由とは?

農家が作業内容を記録したり、作物の生育状況をモニタリングしたりするために使う圃場管理システム。しかし、実は農家以外が活用している事例もあります。どのような目的で使われているのでしょうか?本記事では、35か国23万ユーザーに選ばれ、投資家や商社も利用する営農支援プラットフォームを提供する、 Agritask という企業をご紹介します。

Agritask 基本情報

住所:Tel Aviv, Israel

CEO:Ofir Ardon

設立:2010年

従業員数:51〜200人

23万ユーザーに選ばれるプラットフォーム Agritask

リモートセンシングで圃場管理をサポート

Agritask は、圃場管理と営農サポートのためのプラットフォーム「Agritask」を提供するイスラエルの企業です。人工衛星からのリモートセンシングによって、以下のデータを農家に提供できます。

  • 圃場ごとの衛星写真と天候データの収集・蓄積
  • 正規化植生指標(Normalized Difference Vegetation IndexI; NDVI)という数値を用いた、作物の生育状況モニタリング
  • 気象現象をもとに、発生する可能性のある病害虫を事前予測

これらの情報から、農家はリスクを事前に察知して適切な圃場管理ができます。作業記録や収益管理などの経営サポート機能も備わっているため、農家の基幹情報システムとして利用されています。

対象品目が幅広く、23万ユーザーを獲得

Agritask は穀物、野菜、果樹など50品目の栽培に対応でき、他社サービスでは対応していない場合が多いハウス栽培や木材用プランテーションの管理にも使用できます。

対応できる品目・栽培方法が多いため、Agritask は35か国23万ユーザーに使用されています(2021年現在)。

農家以外が Agritask を使う理由とは?3つの視点で見たベネフィット

Agritask のユーザーは農家だけではありません。投資家や保険会社、政府機関、NGOなど、一見圃場管理システムとは縁のなさそうな事業者や団体も、Agritask を活用しています。農家以外のユーザーにとって、Agritask を使うベネフィットとは何なのでしょうか。

①商社・メーカーの視点:トレーサビリティの保証

農家から作物を買い取る側にとって、Agritask の情報は仕入れた商品のトレーサビリティを保証するデータになります。 Agritask 上で農家とデータを共有することで、作物がどこで栽培され、いつ収穫されたのか、栽培期間中にどのような肥料や農薬が投入されたのかが分かります。農作物の安全性を示すデータを得ることで顧客や最終消費者の安心感に繋がるため、商社・メーカーにとって他社との差別化ポイントになるでしょう。

②投資家・保険会社の視点:リスクの見積もり

農家に出資している投資家、農家を対象としている保険会社にとっても、 Agritask は意思決定の助けになります。

投資を計画している農家や保険加入した農家の圃場を Agritask でモニタリングすれば、期待できる収量、天候や病害虫による変動幅などを見積もることができます。リスクを見積もれば、出資額の意思決定や保険プランの提案に活かせます。

③研究機関の視点:調査の効率化

大学や政府、NGOなどの研究期間は、バラバラに分布する多数の農地でフィールドデータを収集する場合があります。Agritask はハウス栽培も含めた様々な栽培方法に対応でき、小規模圃場も一箇所ごとモニタリングできるため、小規模圃場を多数調査する場合も効率良くデータ収集できます。

Agritask の導入事例紹介

【生産者の事例】基幹管理システムの構築に成功

ブラジルの農業コングロマリット Bon Jesus は、ダイズ、トウモロコシ 、ワタの生産効率を上げるため、Agritask を導入して圃場管理をデジタル化しました。その結果、NDVIを用いて生育をモニタリングし、圃場管理や農薬使用の最適化に活かせています。

同社は2018年時点で合計20万5千ha もの圃場管理に Agritask を活用しており、180人の従業員が 作業内容や圃場データを共有しています。

【資材業者の事例】ハウス栽培の病害虫データを農家と共有

Biobest は、生物農薬や受粉媒介用ミツバチを農家に販売する企業です。顧客である農家に適切な生物資材を提案するため、Agritask を用いた情報共有を行いました。

農家の圃場データや病害虫の発生状況を Agritask 上で共有し、Biobest のアドバイザーがリモートで確認することによって、必要な作業や投入すべき生物資材をリアルタイムで提案できます。特に商品価値の高い17品目については、病害虫の発生予測をもとに適切な管理方法をあらかじめ策定できるようになりました。

【研究機関の事例】広大なフィールドで害虫をモニタリング

国際昆虫生理学・環境センター(International Centre of Insect Physiology and Ecology; ICIPE)とテル・アビブ大学は、ケニアで農作物に被害をもたらしている昆虫ツマジロクサヨトウのモニタリングに Agritask を活用しました。

調査対象の圃場はひとつひとつの面積が小さく、広大なフィールドに点在していました。しかし、衛星によるリモートセンシングによって2万箇所もの圃場をモニタリングし、ツマジロクサヨトウの被害を受けた圃場の特定に成功しました。被害データは12か月で1万2千件集まり、ツマジロクサヨトウ被害の早期対応に活かされています。

まとめ

圃場管理システムを活用するのは農家だけとは限りません。農作物のトレーサビリティを保証したり、農業分野に投資する人々の意思決定を助けたりと、様々な場所で圃場管理システムが活躍しています。

今は農業と関係のない業界で働いている方々も、圃場データの一元化やリモートセンシングについて学んでおけば、意外な形で関わる日が来るかもしれませんよ。

URL

  • Agri task https://start.agritask.com/
  • Agri task | Linkedin https://www.linkedin.com/company/agritask/about/
  • Mapfre Colombia selects the Agritask Platform to empower its crop-insurance business with data-driven analytics and digital claim management tools (Jan. 25, 2021 )| Market  Watch https://www.marketwatch.com/press-release/mapfre-colombia-selects-the-agritask-platform-to-empower-its-crop-insurance-business-with-data-driven-analytics-and-digital-claim-management-tools-2021-01-25