コーヒー栽培をデータでサポート。気候変動や情報格差の課題に挑む WeatherSafe のアプリケーションを紹介します。

嗜好飲料として、文化的にも経済的にも重要な位置を占めるコーヒー。その原料となるコーヒー豆は、コーヒーノキという樹木の種子を加工したものであり、栽培地である熱帯高地では貴重な収入源です。一方、コーヒーの栽培と加工には、気候変動による栽培適地の減少、栽培農家と輸入国の情報格差などの課題があります。そこで WeatherSafe は、コーヒー栽培をデータでサポートし、農家の収益性向上に貢献するアプリケーションを提供しています。本記事では、WeatherSafe が解決しようとしているコーヒー栽培の課題と、具体的なプロダクトを紹介します。

WeatherSafe 基本情報

住所:Didcot, Oxfordshire, Atlas Building, OX11 0QX, Harwell Oxford, UK

CEO:David Mills

設立:2013年

従業員数:11〜50人

データサイエンスでコーヒー栽培をサポート

WeatherSafe は、人工衛星や気象観測データを基に、コーヒー栽培をサポートするアプリケーションを提供しているイギリスの企業です。コーヒーの品質と栽培環境の関係を解明するためのモデル開発を手掛けており、WSC EG という栽培支援アプリケーションをリリースしています。経済的価値の高いコーヒー栽培にデータサイエンスを導入しようとする取り組みが評価され、欧州宇宙機関や Innovate UK も出資しています。

WeatherSafe が挑むコーヒー栽培の課題

【環境面】栽培適地の減少

コーヒー豆の原料植物であるコーヒーノキは、環境に対して非常に繊細です。熱帯の気候でありながら21℃付近の気温と地温が維持できる、標高の高い地域でしか栽培できません。このような栽培条件を満たす地域は「コーヒーベルト」と呼ばれていますが、気候変動により栽培適地の縮小が懸念されています。イギリスのキュー王立植物園の調査によると、アラビカコーヒーの栽培に適した環境のうち、65〜90%が2080年までに消滅する恐れがあります。コーヒー栽培に適した環境を失うことは、文化的にも経済的にも大きな損失になるでしょう。

栽培適地が減少する中でコーヒー栽培を持続するには、今ある栽培地で生産性を上げるか、新たな栽培適地を見出す必要があります。WeatherSafe のアプリケーションは、圃場ごとの気候をモニタリングして収量を予測したり、病害虫の発生状況を監視したりすることが可能です。これにより、より収量の高まる圃場や栽培方法を選定したり、病害虫による収量低下を防いだりできるでしょう。

【情報面】栽培農家の情報不足

コーヒーノキを栽培している熱帯の国々にとって、コーヒーの実を輸出して得られる利益は重要な財源です。輸出されたコーヒーの実は輸入国で加工されてコーヒー豆になり、高品質なものは高値で取引されます。たとえば、1999年から開催されている Cup of Excellence という国際コンペでは、市場相場の80倍に相当する1ポンド$80の価格がついたこともあります。

しかし、コーヒー豆の品質を高めるための栽培テクニックについて、栽培地の人々にはあまりノウハウが蓄積されないという課題があります。その原因のうち特に重要なのは以下の2つです。

  • 品質に関わる要因の複雑さ。コーヒーの香りは400種類以上の無機・有機化合物が関わってできる複雑なものなので、栽培条件と香りの関係が十分に解明されていません。さらに栽培農家は分析機器や情報管理設備が整備されておらず、自力でこれらのデータを収集するのは困難です。
  • 輸入国との情報ギャップ。コーヒー豆の焙煎などの加工工程は、多くの場合生産国ではなく輸入国で行われます。そのため、焙煎されたコーヒー豆の香りや品質に関する知見は、生産国ではなく輸入国に蓄積されます。栽培方法が最終製品の品質にどのように影響したのか、栽培地の農家へ十分なフィードバックが無いケースもあります。

WeatherSafe が提供するアプリケーションは、コーヒー豆の市場価格を調べたり、気候パターンと病害虫発生の関係を分析したりする機能があります。これにより、コーヒー豆の品質や取引価格に影響する要因を炙り出したり、輸入国との情報量のギャップを埋めたりできるでしょう。

3種類のプランから選べる

WeatherSafe が提供するアプリケーション WSC EG は、3種類のプランから選択して使えます。最も機能が充実している Pro Edition では、人工衛星によるモニタリングや、圃場ごとの収量予測が可能です。

  • Enterprise  Edition:会計ソフト、市場価格の確認、天気の予報と記録、作業者どうしのコミュニケーションなどの機能があります。
  • Core Edition:スマートフォン対応版。よりミクロな気象観測、病害虫警報、栽培計画・記録などの機能があります。
  • Pro Edition:人工衛星でのフィールドモニタリング、収量予測、気候パターンと病害虫発生の相関関係の分析、圃場ごとの収量のマッピングなどの機能があります。

まとめ

WeatherSafe の提供するアプリケーションは、人工衛星や気象観測装置から得られたデータを解析することで、コーヒーの収量や病害虫発生を予測できます。コーヒー栽培の生産性を高めたり、品質に影響する要因を見つけて重点的に対策をとったりすることが可能になり、コーヒー農家の収益性向上に貢献するでしょう。

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