ピンポイントな気象データが欲しい農家の味方。灌漑タイミングを最適化する、The Yield のミクロ気象観測装置を紹介します。

気温や湿度、降水量などは、同じ地域であってもわずかな地形で変化します。そのわずかな違いが、作物の生育に影響する場合も。そこで、圃場内のミクロな気象を観測するため、The Yield は小型気象観測装置 Sensing+ を発売しています。一般的な気象データに加え、水分の収支バランスを評価できるため、灌漑タイミングの最適化に役立ちます。広大な農場で灌漑水を効率的に使うことで、経営にも環境にも優しい営農が可能になるでしょう。

The Yield 基本情報

住所:AU 2010 NSW Surry Hills Suite 201 50 Holt Street

Managing Director:Ros Harvey

設立:2014年

従業員数:10〜50人

ミクロな気象を可視化する気象観測装置を提供

圃場単位での気象を観測できる Sensing+

気温や湿度、降雨量などの気象現象は、同じ地域であっても標高や川からの距離、周囲の植生などによりわずかに異なります。そのようなミクロな気象も、作物の生育に大きな影響を及ぼす可能性があります。しかし、広域の天気予報だけでは、ひとつひとつの圃場の気象まではカバーできません。

そこで The Yield は、圃場単位のミクロな気象を観測したい農家の需要に応えて、小型の気象観測装置「Sensing+」を提供しています。これにより、ユーザーは圃場の気象をピンポイントに確認できます。

灌漑水の効率的利用をサポートする

The Yield がサービスを展開しているオーストラリアでは、広大な農地に作物を植え、大規模な灌漑設備で灌水するスタイルの農業がおこなわれています。

灌漑水を効率的に使うには、作物の水分要求量を見極めて、最適なタイミングで灌水する必要があります。そのためには、地面の湿り気や葉の萎れ具合を観察して、作物に水分が足りているかどうかを確認する方法もあります。しかし、広大な圃場でひとつひとつの作物を見て回るのは現実的ではありません。そこで Sensing+ を使えば、圃場の気象データをもとに作物の水分収支を解析することで、最適な灌水タイミングが分かります。

観測装置 Sensing+ で見える数値

【水分バランス】水分の収支を可視化

Sensing+ が最大の強みとしているのは、水分の収支バランスの可視化です。作物は土壌から水分を吸収しますが、同時に蒸発や蒸散によって水分を失っており、水分の収支が光合成や成長に影響します。

Sensing+ は、作物の葉から蒸散・蒸発する水分量を観測し、蒸発散指数(Evapotranspiration value; ET)という数値を算出します。作物の種類や成長段階によってETを補正した指標がETcであり、ETcと降水量を比較することで、水分バランスが評価できます。

水分バランスがマイナスのときに灌水すれば、最小限の灌漑水で最大限の効果を期待できるため、経営面でも環境面でも効率的です。

【気象】ミクロな気象状況を観測

圃場単位で、以下の気象データを観測できます。

  • 降水量
  • 気温
  • 湿度
  • 風向風速

過去の観測データは全て保存されるため、栽培期間中の推移と栽培結果を照らし合わせて、収量に影響を与えた要因を調べることもできます。

さらに、今後7日間の予報がアプリ上で閲覧できるため、作業予定を組む際にも使えます。

【地温】地表からの深度ごとに測定

地温は作物の生育や肥料成分の効果に影響します。年間の推移を観測して、極端に地温が低い場所や高い場所があれば、対策が必要になるでしょう。Sensing+ は、地表からの深度ごと(20cm、40cm、60cm)に温度を測定し、過去の推移も確認できます。

観測装置 Sensing+ の導入方法

観測装置本体を圃場に設置

The Yield の職員が圃場をアセスメントし、適切な場所へ観測装置を設置します(日本では対応していません)。

観測装置は高さ2m程度で、地面から直立させて使います。野外で運用できるよう丈夫な構造になっているため、本体を保護するために小屋などを建てる必要はありません。

パソコンやスマートフォンとの通信は3G/4Gでおこないます。そのため、通信を中継するゲートウェイの設置が必要です。

解析用ソフトウェアをインストール

解析用ソフトウェアをインストールし、圃場に設置したSensing+ 本体と連携させます。観測データはクラウド上に保存されるため、遠隔地にいてもパソコンやスマートフォンで閲覧できます。

作物情報を入力

解析用ソフトウェアから、栽培する作物の種類、生育段階、定植日などの情報を入力します。これらの情報をもとに、必要な水分量をソフトウェアが自動で算出し、水分バランスを評価してくれます。

まとめ

作物の生育には圃場単位のミクロな気象が影響するため、広域の天気予報だけでは不十分な場合もあります。The Yield が提供する Sensing+ は、圃場内のミクロな気象を観測し、水分バランスを評価してくれます。これにより、データに基づいて灌水タイミングを最適化できるでしょう。

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